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A resolvent trace formula of Jacquet-Zagiertype for Hilbert Maass forms

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

A resolvent trace formula of Jacquet-Zagier type for Hilbert Maass forms

久家, 聖二

http://hdl.handle.net/2324/4784421

出版情報:九州大学, 2021, 博士(数理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式6-2)

氏 名 久家 聖二

論 文 名 A resolvent trace formula of Jacquet-Zagier type for Hilbert Maass forms(ヒルベルトマース形式に対するJacquet-Zagier型レゾルベン ト跡公式)

論文調査委員 主 査 九州大学 准教授 権 寧魯 副 査 九州大学 教授 金子 昌信 副 査 九州大学 教授 落合 啓之 副 査 上智大学 教授 都築 正男

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

保型形式の整数論においては、保型L関数の解析的性質や特殊値、保型形式の周期などの意味付 けやそれらの相互の関係を調べることは大きな主題のひとつである。セルバーグ跡公式およびその 一般化である様々なタイプの“跡公式”は、保型形式やL関数を研究するための強力な道具であり、

試験関数を選ぶことによって保型形式の整数論の研究にさまざまな応用がある。

久家聖二氏は本論文において、ヒルベルトマース形式に対する「Jacquet-Zagier 型跡公式」(以 下、JZ跡公式と呼ぶ)の明示公式について研究し、大きな成果を挙げた。

JZ 跡公式の研究は 1977 年の Zagier の研究に始まり、重さを固定した正則尖点形式の空間に作 用するヘッケ作用素の核関数にアイゼンシュタイン級数を掛けて積分することで,Eichler-Selberg 跡公式の複素パラメータ付きの一般化(JZ跡公式Ⅰ)を得た。このJZ跡公式Ⅰの応用として、正 則尖点形式の二次対称積L関数の解析接続やその特殊値の代数性の別証明が導かれるなど、保型形 式の整数論の研究において大変重要である。また、このJZ跡公式Ⅰは水本(1984年)、高瀬(1986 年)によって、狭義類数1の総実代数体に対するヒルベルトモジュラー形式の場合に拡張され、数 論的な応用も得られている。正則でない場合については、Zagier(1981 年)により同様の手法で、

モジュラー群に対する重さ0のマース形式の空間に作用するラプラシアンのスペクトルを記述する セルバーグ跡公式の複素パラメータ付きの一般化(JZ 跡公式Ⅱ)が得られている。この場合にも、

スペクトル辺にはマース形式に対する二次対称積L関数が現れる。

1987 年にJacquetと Zagierは上記の JZ跡公式ⅠとⅡを統合かつ一般化する目論見で、任意の

代数体上のGL(2)とコンパクト台をもつ試験関数に対して、Arthur-Selberg跡公式を与える核関数 をアイゼンシュタイン級数と掛けて積分することで、アデール化されたJZ跡公式(アデリックJZ 跡公式)を得ている。しかしながら、このJZ跡公式には明示的に与えられていない(計算されてい ない)項がいくつか存在するため、このままでは数論的な応用には向かない形をしていた。

杉山と都築は 2018 年に、正則ヒルベルト尖点形式の場合に、数論的な応用を念頭に置いて上記 のアデリックJZ跡公式の明示的な研究を行い、杉山‐都築の跡公式(ST跡公式)を得た。基礎体 である総実体の類数が任意、2が完全分解、レベルが平方因子なし、という緩やかな仮定の下で、

スペクトル辺、幾何学的辺とも完全に明示的公式を与えた。試験関数の無限素点成分に離散系列表 現の行列係数を用いたことと、コンパクト台でない為、平滑アイゼンシュタイン級数を用いた点が

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鍵であった。このST跡公式は、Zagier(1977)、水本、高瀬らの結果を復元し、かつ新たに、二次 対称積L関数の中心値が消えないような正則ヒルベルト尖点形式の無限個の存在を示すなど、保型 形式の整数論にとって応用範囲が広く、非常に重要である。これまでの JZ 跡公式の研究状況に鑑 みて、杉山‐都築の跡公式を正則でない場合に拡張することは、ヒルベルトマース形式と関連する L関数を研究する際に、重要で新しい問題と言える。

久家氏は、ヒルベルトマース形式の場合にアデリック JZ 跡公式の明示的な研究を行い、新たに

「JZ型レゾルベント跡公式」を得ることに成功した。基礎体である総実体の類数が任意、2が完全 分解、レベルが平方因子なし、という同様の仮定の下で、スペクトル辺、幾何学的辺とも完全に明 示的公式を与えた。試験関数の有限素点成分は、ST跡公式と同様であるが、無限素点成分として上 半平面上のラプラシアンのレゾルベント核関数を採用している点がポイントである。久家氏によっ て得られた跡公式のスペクトル辺には、ヒルベルトマース形式に対する二次対称積L関数が現れる 点は、これまでのJZ跡公式と同様であるが、ST跡公式には現れなかった、ヘッケL関数の積分を 含む項が新たに出現する。また、幾何学的辺には、ST 跡公式では 1 変数の超幾何関数で記述され ていた項が、Appell の F_3 をさらに一般化した 2 変数超幾何関数を用いて表示される点など、新 しくかつ興味深い。また、Zagier(1981)の JZ 跡公式Ⅱを復元することも示されており、他にも 様々な数論的な応用が期待できる。

以上の結果は、保型形式、L関数と跡公式の研究において既に知られている深い結果に立脚しな がら、さらにそれを深めた大変優れたものであり、保型形式の整数論の分野において大変価値のあ る業績と認められる。

よって、本研究者は博士(数理学)の学位を受ける資格があるものと認める。

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