今回もレイ・ブラッドベリ (Ray Bradbury) の 作品を取り上げます。『華氏451度』は彼の傑作 の一つとされていて、タイトルの温度は摂氏で は約232.8度に相当しますが、副題には《本のペー ジに火がつき、燃えあがる温度》と記されてい ます。この小説の内容は、本を読んだり所有し たりすることが禁じられた未来社会の話です。
主人公のガイ・モンターグは火の色が大好き です。通報を受けて出動し、摘発された本に石 油を掛けて燃やすという焚ふんしょ書係の仕事に従事し ています。ある日、彼はいつものように、仕事 の後、シャワーで石油の匂いを洗い流してから 帰路につきましたが、角を曲がったところで最 近隣に引っ越してきたクラリス・マックルラン に会いました。クラリスはモンターグの石油の 匂いと火トカゲの腕章を見て彼の職業が何であ るか直ぐに分かり、昔はファイアマンというの は火事の際に消火活動をする仕事だったそうだ と言うと、モンターグは20歳でこの仕事につい てから10年以上経過しているが、そんなことは 聞いたことがないと、憤然として答えます。彼 女は夜歩くのが好きで、雨の滴をなめたり、月 を眺めたりする情緒豊かな17歳の少女ですが、
未来社会では変な子として扱われていました。
モンターグは別れ際に、幸せかどうか尋ねられ、
当たり前だと思ったのですが、その直ぐ後で自 分が本当に幸せかどうか、気になり始めます。
家の中に入ると、妻のミルドレッドは睡眠薬 を誤って呑み過ぎて倒れており、救急病院に連 絡すると医者ではない白衣を着た男たちがやっ てきて体液を全て入れ替え、無愛想な態度で帰っ て行きます。庭に降り立ったモンターグの目に は、夜更けまで家族が楽しく話し合っている隣 のクラリスの家がまぶしく映りました。
翌朝回復したミルドレッドは薬を呑み過ぎた 前夜のことは記憶にありません。彼女は、その 日の朝に送られてきた脚本を見て、自分が番組 に出演してセリフを言うことになっているとい うことに興奮しています。彼女は三方の壁に取 り付けられたテレビ壁だけでは番組が十分楽し
めず、僅か2000ドルだからもう一つ買い足して 四方をテレビ壁にしたいと言います。しかし、
モンターグは2 ヶ月前に第3のテレビ壁を取り付 けたばかりだし、2000ドルという価格は僅かど ころか自分の年俸の3分の1なので、賛成しませ んでした。
モンターグは、また帰り道にクラリスと顔を 合わせ、話をしているうちに17歳の彼女の方が 30歳の妻のミルドレッドよりも知識が豊富なこ とに驚かされます。モンターグはクラリスと話 すようになってから、今まで全く気にしていな かった周囲の事柄にいつの間にか関心を抱くよ うになっていたのでした。
ある日、通報を受けて出動した家の屋根裏に 隠されていた本を運び出す作業中、モンターグ は偶然のことから一冊の本を胸の内側に隠しま す。本を燃やす準備を終えた時、持ち主の老女 は山積みにされた本の中にひざまずいたまま動 こうとしません。モンターグは彼女を連れ出そ うとしますが、署長のビーティは、「こういう狂 信者どもは、ともすれば自殺したがるものだ」
と言って全く意に介しません。老女は威厳ある 態度で自らマッチを擦って火を点け、本と共に 焼死してしまいます。
モンターグは、自分の命よりも本を大切にす る老女の姿が忘れられません。持ち帰った本は 自分のベッドの枕の下に隠しました。その夜、
彼は自分たちが最初にいつどこで出会ったのか 思い出せず、ミルドレッドに尋ねますが、彼女 も忘れています。また、クラリスの姿を見掛け なくなったと言うと、車に轢かれて死んだそう だが、それは4日前のことで言い忘れていたとい う返事。彼は唖然とするばかりでした。
(次号へ続く)
参考文献
1. Ray Bradbury “Fahrenheit 451 ” (Harper Voyager, 2013)
2. レイ・ブラッドベリ著、宇野利康訳 『華氏451度』(早 川書房、1975)
おざわ ふみひこ(図書館参与)
名作再読、拾い読み(₄₀)
名作再読、拾い読み(₄₀)
『華氏 451 度』(1) “Fahrenheit 451” 小澤文彦
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図書館員の文献紹介と 資料の活用