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誌名 水稲における放射性物質移行低減対策技術の開発 巻/号

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(1)

水稲における放射性物質移行低減対策技術の開発(プロ ジェクト研究成果シリーズ564)

誌名

誌名 水稲における放射性物質移行低減対策技術の開発 巻/号

巻/号 564号

掲載ページ

掲載ページ p. 1-75 発行年月

発行年月 2017年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター

Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

(2)

農林水産技術会議事務局

研 究 成 果

564

︵ ・ ︶

 

農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発

 

農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発│水稲における放射性物質移行低減対策技術の開発│研究成果 

─水稲における放射性物質移行低減対策 技術の開発─

Development of radioactive materials removal and reduction technology   for forests and farmland

̶ Reduction technology of radioactive materials for paddy rice ̶

(3)

農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発

─水稲における放射性物質移行低減対策 技術の開発─

Development of radioactive materials removal and reduction technology for forests and farmland

— Reduction technology of radioactive materials for paddy rice —

2 0 1 7 年 3 月

(4)

序   文

 研究成果シリーズは、農林水産省農林水産技術会議事務局が研究機関に委託して推進した研究の成果をと りまとめたものであり、研究機関、行政機関等に配布することにより、今後の研究及び行政の推進に資する ことを目的として刊行するものである。

 この第 564 集「農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発-水稲における放射性物質移行低減対策技術 の開発-」は、農林水産省農林水産技術会議事務局の委託プロジェクト研究として、2012 年度から 2015 年 度までの 4 年間にわたり、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構を中心に実施した研究成果を とりまとめたものである。

 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災に端を発した東京電力福島第一原子力発電所の事故により環境中に放射 性物質が放出され、福島県及び周辺県の農地が汚染された。事故後、土壌から玄米への放射性セシウムの 移行には、土壌中の交換性カリが影響を及ぼすことが明らかとなり、2012 年度に土壌中の交換性カリ含量 25 mg/100 g を目標としたカリ上乗せ施用による吸収抑制対策が打ち出され、その後の放射性セシウム移行 低減に貢献した。しかし、基準値超過や基準値に近い玄米も散見されたことから、更なる要因解析や移行低 減技術の確立が求められた。一方で、玄米の放射性セシウム濃度が基準値を大きく下回る、あるいは検出限 界未満となるような地域では、通常の施肥管理に戻したいという生産者の声も上がっている。

 このような背景をふまえ、本研究では、カリ施肥法や水管理による移行低減技術を開発するとともに、各 種土壌における水稲の放射性セシウム吸収リスク、放射性セシウム濃度を上昇させない適正な土壌中カリ水 準を明らかにする。

 本研究を担当し、推進された方々の労に対し深く感謝の意を表するとともに、本書が、研究機関、行政機 関等において幅広く利用されることを期待する。

 2017 年 3 月

農林水産省農林水産技術会議事務局長    西郷 正道  

(5)

目   次

研究の要約………1

第 1 編 水稲における放射性セシウム移行要因の解明および移行低減対策技術の開発………9 第 1 章 土地利用型作物における放射性セシウムの移行係数の解析と吸収抑制技術の開発………9   1 水稲における放射性セシウムの移行要因の解析と吸収抑制技術の開発………9

  2 茨城県南部における水稲の放射性セシウムの移行係数の解析と吸収抑制技術の開発………14

  3 福島県における水稲の放射性セシウムの移行係数の解析と吸収抑制技術の開発………21

  4 栃木県における水稲の放射性セシウムの移行係数の解析と吸収抑制技術の開発………28

  5 茨城県北部における水稲の放射性セシウムの移行係数の解析と吸収抑制技術の開発………33

第 2 章 土壌の放射性セシウム可給性評価手法の開発………38

第 2 編 カリ施用からの卒業に向けた土壌リスク評価技術の開発………42

第 1 章 低リスク地域におけるカリウム適正施用量の設定………42

  1 福島県における水稲のカリウム適正施用量の設定………42

  2 福島県におけるそばのカリウム適正施用量の設定………47

  3 宮城県における水稲のカリウム適正施用量の設定………51

  4 宮城県におけるそばのカリウム適正施用量の設定………55

  5 栃木県における水稲のカリウム適正施用量の設定………58

第 2 章 高リスク地域における土壌中カリ濃度維持手法の開発………62

  1 水稲における高リスク地域の要因解析と土壌中カリ濃度維持手法の開発………62

  2 そばにおける高リスク地域の要因解析と土壌中カリ濃度維持手法の開発………64

第 3 章 土壌リスク評価技術の開発………67

第 4 章 セシウム吸収リスク評価のための土壌中カリウム測定手法の開発………71

(6)

Ⅰ 研究年次・予算区分

研究年次:2013 年度~ 2015 年度

予算区分:農林水産省農林水産技術会議事務局       委託プロジェクト研究「農地等の放射

性物質の除去・移行低減技術の開発-

水稲における放射性物質移行低減対策 技術の開発及びカリ施用からの卒業に 向けた土壌リスク評価技術の開発-」

Ⅱ 主任研究者 推進リーダー:

      (研)農業・食品産業技術総合研究機 構東北農業研究センター

     農業放射線研究センター      上席研究員

     太田 健(2013 ~ 2015 年度)

Ⅲ 研究担当機関

1 水稲における放射性セシウム移行要因の解 明および移行低減対策技術の開発

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機 構東北農業研究センター

(委託先) 国立研究開発法人農業・食品産業技術 総合研究機構中央農業総合研究セン ター

(委託先)国立研究開発法人農業環境技術研究所

(委託先)福島県農業総合センター

(委託先)栃木県農業試験場

(委託先)茨城県農業総合センター

2 カリ施用からの卒業に向けた土壌リスク評 価技術の開発

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機 構東北農業研究センター

(委託先)国立研究開発法人農業環境技術研究所

(委託先)宮城県古川農業試験場

(委託先)福島県農業総合センター

(委託先)栃木県農業試験場

Ⅳ 研究目的

1 水稲における放射性セシウム移行要因の解 明および移行低減対策技術の開発

 2011 年度の科学技術戦略推進費による水稲への 放射性セシウムの移行係数の解析により、交換性カ リ含量が移行に与える影響が大きいことが明らかに なった。2012 年度は、この成果に基づき交換性カ リ含量 25 mg/100 g を目標としたカリ上乗せ施用に よる吸収抑制対策が指導され、2012 ~ 2013 年産米 の放射性セシウム濃度の大幅低減に貢献した。しか し、基準値超過や基準値に近い玄米が散見され、更 なる要因解析や移行低減技術の確立が必要である。

そこで、カリ施肥法や水管理による移行低減技術の 確立、移行係数の経年変化の解明を行うとともに、

土壌溶液中カリウム濃度などから玄米中放射性セシ ウム濃度を予測する簡易診断法の検証を行う。ま た、除染後水田において移行低減に必要なカリ水準 を明らかにする。ゼオライトのカリ保持能をポット 栽培試験やカラム試験で検証する。さらに、水稲の 放射性セシウム吸収リスクを予測するために、土壌 の放射性セシウム可給性を評価する。

2 カリ施用からの卒業に向けた土壌リスク評 価技術の開発

 2013 年産農産物において放射性セシウム吸収抑 制対策の実施面積は、水稲で宮城・福島・栃木・群 馬の 4 県で約 8.4 万 ha、そばでは岩手・宮城・福 島・栃木の 4 県で 2.4 千 ha となっている(農業環 境対策課 2014 年 11 月)。吸収抑制対策としては主 にカリの上乗せ施用が実施されているが、土壌中の 放射性セシウム濃度が低い地域などでは、通常の施 肥管理に戻すことが求められている。そこで、吸収 抑制対策としてのカリ増施を実施しない場合の土壌 中カリ含量の推移と玄米あるいは玄そば中放射性セ シウム濃度の関係を現地試験やポット試験で明らか にし、放射性セシウム濃度を上昇させない適正な土 壌中カリ水準を明らかにする。

 抑制対策として塩化カリを増施しても、溶脱など により、水稲の生育期間中の土壌中カリ含量が必要 とされるレベルに維持されない圃場がある。そこ

研 究 の 要 約

(7)

で、フィンランドなどにおいて緩効性のカリ肥料と して利用されている金雲母を施用した圃場試験を行 い、土壌中カリ含量の維持効果及び玄米あるいは玄 そばへの放射性セシウム吸収抑制効果を検証する。

 シュウ酸抽出法などを適用して土壌のセシウムの 可給性を評価すると共に、各種土壌特性を加えて説 明変数とした土壌リスク評価技術を開発する。

 大豆畑における土壌中水抽出カリウムイオン濃度 に基づく大豆子実中放射性セシウム基準値超過リス ク診断技術を開発する。また、併せてカリウムイオ ンメーターによる土壌溶液及び土壌の水抽出液診断 技術を開発する

Ⅴ 研究方法

1 水稲における放射性セシウム移行要因の解 明および移行低減対策技術の開発

 移行低減技術を確立するため、施用時期などカリ 施肥法による移行低減効果、ゼオライト、バーミ キュライト等各種資材施用や稲わら還元による移行 低減効果、中干し期間の延長や落水時期の早期化な ど水管理による移行低減効果を調査する。栃木県や 茨城県の南部・北部において三要素や有機物連用試 験を継続し、移行係数の経時変化を明らかにする。

栽培期間中の土壌溶液中カリウム濃度が玄米中放射 性セシウム濃度に及ぼす影響を解明し、玄米中放射 性セシウム濃度予測技術を確立する。表土削り取 り・客土を行った除染後水田において吸収抑制に必 要なカリ水準を明らかにする。また、ポット試験に てゼオライト施用が必要な CEC 水準を解明し、カ ラム試験にてゼオライトのカリ保持能を検証する。

複数の土壌-玄米のサンプルセットを用いて、交換 性放射性セシウム、分配係数などの既存の方法およ び新たな抽出液の種類や濃度と玄米の放射性セシウ

ム濃度との関係を明らかにし、放射性セシウム可給 性評価手法を開発する。

2 カリ施用からの卒業に向けた土壌リスク評 価技術の開発

 現地農家圃場において無カリ区を設置し、土壌中 交換性カリ含量が低下した場合の土壌中交換性カリ 含量と移行係数の関係(カリ曲線)を調査する。こ れらのデータ及び農水省消費・安全局「放射性物質 移行要因調査」のデータを用いて、玄米あるいは玄 そば中放射性セシウム濃度を上昇させない適正な土 壌中交換性カリ含量を明らかにする。また、水稲や そばが放射性セシウムを吸収しやすいポット試験に おいて、カリ無添加で水稲やそばを栽培し、土壌中 交換性カリ含量が極端に低下したときの玄米中放射 性セシウム濃度を求め、潜在的リスク評価を行う。

 フィンランド Siilinjärvi 産金雲母を施用した圃場 試験を実施し、土壌中カリ含量の維持効果及び玄米 あるいは玄そばへの放射性セシウム吸収抑制効果を 解明する。

 複数の土壌-玄米のサンプルセットを用いて、

シュウ酸など各種溶媒による土壌からの Cs-133  抽 出量と玄米中の Cs-133 濃度との関係を解析する。

玄米セシウムを目的変数、抽出セシウム及び各種土 壌特性を説明変数として抽出溶媒別にステップワイ ズ法による重回帰解析を行い、リスク評価が可能か 検討する。

 大豆畑における土壌中水抽出カリウムイオン濃度 と大豆子実中放射性セシウム濃度の関係を解析し、

水抽出カリウム濃度により基準値超過リスクを診断 可能か検討する。また、カリウムイオンメーターに よる土壌溶液及び土壌の水抽出液診断技術を開発す る。

(8)

研究計画表(研究室別年次計画)

研究課題 研究年度 担当研究機関・研究室

12 13 14 15 機関 研究室

1  水稲における放射性セシウム移行要因の解 明および移行低減対策技術の開発

(1)土地利用型作物における放射性セシウム の移行係数の解析と吸収抑制技術の開発  1)水稲における放射性セシウムの移行要因

の解析と吸収抑制技術の開発

2)茨城県南部における水稲の放射性セシウ ムの移行係数の解析と吸収抑制技術の開 発

3)福島県における水稲の放射性セシウムの 移行係数の解析と吸収抑制技術の開発 4)栃木県における水稲の放射性セシウムの

移行係数の解析と吸収抑制技術の開発 5)茨城県北部における水稲の放射性セシウ

ムの移行係数の解析と吸収抑制技術の開 発

(2)土壌の放射性セシウム可給性評価手法 の開発

2  カリ施用からの卒業に向けた土壌リスク評 価技術の開発

(1)低リスク地域におけるカリウム適正施用 量の設定

1)福島県における水稲のカリウム適正施用 量の設定

2)福島県におけるそばのカリウム適正施用 量の設定

3)宮城県における水稲のカリウム適正施用 量の設定

東北農業研究セン ター

中央農業総合研究 センター

福島県農業総合セ ンター

栃木県農業試験場

茨城県農業総合セ ンター

農業環境技術研究 所

福島県農業総合セ ンター

東北農業研究セン ター

福島県農業総合セ ンター

東北農業研究セン ター

福島県農業総合セ ンター

宮城県古川農業試 験場

農業放射線研究セ ンター

土壌肥料研究領域

生産環境部作物園 芸部

研究開発部土壌環 境研究室

農業研究所環境・

土壌研究室 土壌環境研究領域 生産環境部

農業放射線研究セ ンター

作物園芸部・生産 環境部

農業放射線研究セ ンター

作物園芸部 土壌肥料部・水田 利用部

(9)

Ⅵ 研究結果

1 水稲における放射性セシウム移行要因の解 明および移行低減対策技術の開発

 基肥重点のカリ施肥が放射性セシウムの移行低減 に有効であることが明らかになった。塩化カリとケ イ酸カリの放射性 Cs 吸収抑制効果は、施用 1 年目 は塩化カリの方がケイ酸カリより高いが、施用 2 年 目、3 年目は同程度であり、その効果は経年により 低下した。栃木の多湿黒ボク土水田や茨城県北部に おける試験において、水稲作付前に土壌中交換性カ リ含量を 25 mg/100 g 以上に高めることにより、玄 米の放射性セシウム吸収を低減できた。塩化カリ等 カリ資材による土壌改良、堆肥など有機物の連用が 有効であった。また、カリ増施は食味や玄米中のカ リウム含量に影響しないことを明らかにした。ゼオ ライトやバーミキュライトは投入量の増加に伴い、

玄米中放射性セシウム濃度が低下したが、資材に含 まれるカリの効果により吸収が抑制されているもの

と考えられた。稲わらや金雲母の施用により土壌中 交換性カリ含量及び土壌溶液中カリウム濃度は高ま り、玄米中放射性セシウム濃度が低下することを明 らかにした。中干しを省略し、落水を遅らせる水管 理は、水稲の放射性セシウム吸収を高めることが明 らかとなった。一方で、中干しや落水期間を延長す ることによる低減効果は小さかった。移行係数は 2011 年から 2012 年にかけて大幅に低下したが、そ の後の低下は小さい場合が多く、土壌中の交換性カ リ含量の年次変動の影響が大きくなった。茨城南部 での試験では 2012-2014 年にかけて、移行係数は圃 場平均で 2 ~ 3 割低下した。栃木の多湿黒ボク土で は 2012 年以降の 3 年間の移行係数は経年によりほ とんど低下しなかった。

 塩化カリの増肥に伴い、移植前の土壌溶液中カリ ウムイオン濃度が高まり、 玄米中放射性セシウム濃 度は低減された。移植前の土壌溶液中カリウムイオ ン濃度から基準値超過を予測する診断値を試算し 4)宮城県におけるそばのカリウム適正施用

量の設定

5)栃木県における水稲のカリウム適正施用 量の設定

(2)高リスク地域における土壌中カリ濃度維 持手法の開発

1)水稲における高リスク地域の要因解析と 土壌中カリ濃度維持手法の開発

2)そばにおける高リスク地域の要因解析と 土壌中カリ濃度維持手法の開発

(3)土壌リスク評価技術の開発

(4)セシウム吸収リスク評価のための土壌中 カリウム測定手法の開発

宮城県古川農業試 験場

栃木県農業試験場

東北農業研究セン ター

東北農業研究セン ター

福島県農業総合セ ンター

農業環境技術研究 所

福島県農業総合セ ンター

福島県農業総合セ ンター

土壌肥料部・水田 利用部

研究開発部土壌環 境研究室

農業放射線研究セ ンター

農業放射線研究セ ンター

生産環境部 土壌環境研究領域 生産環境部 生産環境部

注)文中の図、表に付した番号は、上記研究課題番号とその中の一連番号を組合せて表示してある。(例:1-(1)

-1)-①の課題の 1 番目の図の場合は、図 1111-1 と表示)

(10)

た。表土削り取り・客土による除染後圃場でも、カ リ増施により土壌溶液中カリウム濃度は高まった が、対照区でも交換性カリ含量が比較的高かったた め玄米中 RCs 濃度は低く、カリ増施による吸収抑 制効果は小さかった。低肥沃度の客土が行われた除 染後水田でも適切な施肥により収量確保は可能であ り、玄米中放射性セシウム濃度も低く抑えることが できた。

 ゼオライト施用によるポット水稲栽培試験では、

土壌中交換性カリ含量が大幅に低下し、移行低減効 果は明確ではなかった。一方、カリを除去したゼオ ライトを用いたカラム試験の結果、ゼオライト施用 によってカリ保持能の増加が認められた。

 シュウ酸による Cs-133 抽出量および土壌理化学 性と玄米 Cs-133 濃度との間における関係をステッ プワイズの重回帰分析で解析した結果、シュウ酸抽 出 Cs-133、交換性カリウム含量および土壌 pH が選 択され、シュウ酸抽出法による Cs-137 可給性評価 の可能性が示唆された。

2 カリ施用からの卒業に向けた土壌リスク評 価技術の開発

 水稲では、福島・宮城・栃木の圃場試験および 消安局事業データから、137Cs 移行係数が 0.017 以下

(暫定的に土壌中放射性セシウム濃度が 3,000 Bq/kg の圃場で玄米中の放射性セシウム濃度が基準値の半 分の 50 Bq/kg 以下を想定)となる収穫期の土壌中 交換性カリ含量の下限値は約 18 mgK2O/100 g と推 察された。宮城県での圃場試験の結果から、カリウ ムが生理的に不足すると玄米中放射性セシウム濃度 が高まると考えられ、水稲茎葉中 K および Na 含量 から玄米への放射性セシウム移行リスクを評価でき る可能性が考えられた。

 無カリのポット試験の結果、土壌中交換性カリ含 量が極端に低下する場合が多く、ポット試験は潜 在的リスク評価に有効と考えられた。福島におけ る移行係数の最大値は 0.27 であり、この時の収穫 後の土壌中交換性カリ含量は 1.2 mg/100 g 乾土で あった。この移行係数の最大値を用い、無条件で カリ肥料の上乗せを削減し、玄米中 Cs-137 濃度を 100 Bq/kg 以下とするための土壌中 Cs-137 濃度を 算出した結果、100/0.27=370 Bq/kg と試算された。

栃木では 9 地点の土壌を用いた無カリの水稲ポット

試験結果から、土壌の潜在的リスクを評価できた。

また、有機物連用による黒ボク土水田では移行係数 が 2012 年以降、経年によりほとんど低下しないこ とを明らかにした。

 そばでは、土壌から玄そばへの放射性セシウムの 移行は 2012 年以降低下傾向にあり、土壌の交換性 カリ含量の増加と交換性放射性セシウムの割合の低 下が関係するものと推察された。一部の地域では吸 収抑制対策を行わなくても基準値を下回る玄そばを 生産できると考えられた。

 フィンランド Siilinjärvi 産金雲母を施用した水田 3 圃場すべてで土壌溶液カリウム濃度は高く推移 し、交換性カリ含量が比較的低い圃場では顕著な移 行低減効果が見られた。金雲母施用はそばにおいて も土壌の交換性カリ含量の維持に有効である可能性 が示された。

 玄米のセシウムを目的変数、溶媒別の抽出セシウ ムおよび各種土壌特性を説明変数としてステップワ イズ重回帰解析を行った結果、硝酸カルシウム抽出 セシウムをパラメータとした場合に最も高い予測値 と実測値の相関が得られた。予測式には交換性カリ 含量もパラメータとして含むため、交換性カリ含量 の低減に伴う玄米セシウム低減を予測できる可能性 が示された。交換性カリ含量の低減に伴う、玄米の Cs-133 予測増加率と Cs-137 実測増加率は同様に変 化する傾向が認められた。

 生育ステージ毎の水抽出カリ含量と大豆子実中 Cs-137 濃度との間には高い相関がみられ、水田だ けでなく、大豆においても基準値超過の診断に水抽 出法が有用であることが示唆された。原子吸光光度 計によるカリウムイオン濃度とイオンメーターによ るカリウムイオン濃度との間には高い相関がみら れ、イオンメーターは現場での診断に有用であるこ とが示された。

Ⅶ 今後の課題

1 水稲における放射性セシウム移行要因の解 明および移行低減対策技術の開発

 塩化カリ施用では経年による土壌中の交換性カリ 含量の低下が認められる場合があることから、土壌 中の交換性カリ含量を維持するための効率的なカリ 施肥法を明らかにする必要がある。吸収抑制対策と してのカリ増施が不要となる条件の解明、また、放

(11)

射性セシウムの吸収リスクが高い土壌での要因解明 を継続して進める必要がある。

2 カリ施用からの卒業に向けた土壌リスク評 価技術の開発

 これまで実施されている抑制対策によって、圃場 の交換性カリ含量はかなり高い水準となっているた め、圃場レベルでの無カリ・抑制対策停止の影響を 検証するには、複数年の追跡が必要である。通常の 施肥管理に戻した場合、土壌中交換性カリ含量が低 下し玄米や玄そばの放射性セシウム濃度が増加する 懸念がある。対策を中止した場合の土壌中交換性カ リ含量と玄米あるいは玄そばの放射性セシウム濃度 の調査を継続することが必要である。また、水稲が 生理的なカリウム欠乏とならないための土壌条件の 解明及び有機物施用基準や施肥基準の策定が必要で ある。カリ増施を行っても吸収抑制効果が低い地点 では、その要因を解明する必要がある。その対策技 術としての金雲母のカリ供給能の持続性や、産地に よるカリ供給能の相違について、栽培試験により引 き続き明らかにしていく必要がある。

 試験畑では水抽出カリウムイオン濃度に基づく大 豆子実中放射性セシウム濃度の基準値超過リスク診 断技術が適用できることが明らかになったが、今後 は現地ほ場にて上記の技術が適用できるか検証する 必要がある。

Ⅷ 研究発表

1 水稲における放射性セシウム移行要因の解 明および移行低減対策技術の開発

  1) Eguchi T., Ohta T., Ishikawa T., Matsunami  H.,  Takahashi  Y.,  Kubo  K.,  Yamaguchi  N.,  Kihou  N.  and  Shinano  T. (2015) Influence  of  the  nonexchangeable  potassium  of  mica  on  radiocesium uptake by paddy rice. J. Environ. 

Radioact. 147: 33-42.

  2) 江口哲也・太田健・石川哲也・藤村恵人・松波 寿弥・高橋義彦・信濃卓郎 (2015) フィンランド 産金雲母施用による水稲への放射性セシウム移行 低減.日土誌講要.61:165.

  3) 真壁周平・鈴木雄一・池羽正晴・太田健・松波 寿弥・中村憲治(2014) 茨城県の水田における放射 性セシウムの玄米への移行に対する施肥・有機物

の影響.日本土壌肥料学会講演要旨集.61:264.

  4) 宮﨑成生・出口美里・廣澤美幸 (2013) 加里施 用による水稲の放射性セシウム吸収抑制効果.日 本土壌肥料学会講演要旨集.59:263.

  5) 宮﨑成生 (2013) 栃木県黒ボク土水田における カリ施用による放射性セシウム吸収抑制効果.日 本土壌肥料学会講演要旨集.59:154.

  6) 宮﨑成生・出口美里・吉澤比英子 (2014) 黒ボク 土水田での有機物連用による水稲の放射性セシウ ム吸収への影響.日本土壌肥料学会講演要旨集. 

60:273.

  7) 宮﨑成生 (2014) 栃木県黒ボク土水田における カリ施用による放射性セシウム吸収抑制効果.日 本土壌肥料学会講演要旨集.60:140.

  8) 宮﨑成生(2015)黒ボク土水田での有機物連用 による水稲の放射性セシウム吸収への影響 (第 2 報).日本土壌肥料学会講演要旨集.61:265.

  9) 宮﨑成生・鈴木未来・出口美里・吉澤比英子 

(2015) 栃木県黒ボク土水田における水稲の放射 性セシウム吸収-同一施肥管理ほ場での経年変 化-.日本土壌肥料学会講演要旨集.61:152.

10) Saito  T.  et  al. (2012) Effect  of  potassium  application on root uptake of radiocesium in rice. 

KUR Research Program for Scientific Basis of  Nuclear Safety: 165-169.

11) 齋藤隆・高橋和平・牧野知之・太田健・吉岡邦 雄 (2013) 福島県内の農地における放射性物質に 関する研究(第 11 報) 各種吸着資材施用による玄 米中放射性セシウムの吸収抑制効果.日本土壌肥 料学会講演要旨集.59:p152.

12) Saito T. et al. (2014) Studies on Radiocesium  transfer  in  agricultural  plants  in  Fukushima  Prefecture,  In  S.  Takahashi (Ed) Radiation  Monitoring  and  Dose  Estimation  of  the  Fukushima Nuclear Accident, Springer, Tokyo.

13) 齋藤隆・高橋和平・牧野知之・太田健(2014) 

福島県内の農地における放射性物質に関する研究

(第 17 報) 田植前の水溶性カリウムイオン濃度に 基づく玄米中放射性セシウム濃度の推定.日本土 壌肥料学会講演要旨集.60:p141.

14) Saito  T.  et  al. (2015) Effect  of  application  timing of potassium fertilizer on root uptake of 

137Cs in brown rice, Journal of Radioanalytical and 

(12)

Nuclear Chemistry. 303: 1585-1587.

15) 齋藤隆・牧野知之・太田健(2015) 福島県内の 農地における放射性物質に関する研究(第 29 報) 

水稲生育期間中の水溶性カリウム濃度に基づく玄 米中放射性セシウム濃度の推定.日本土壌肥料学 会講演要旨集.61:p166.

16) 若林正吉・高橋茂・伊藤純雄 (2014) 長期カリ 無施用が土壌セシウムの水稲移行量と交換性画分 量に及ぼす影響.日土誌講要.60:10.

17) 若林正吉・高橋茂・伊藤純雄 (2014) 水田の湛水 期間が水稲の放射性セシウム濃度に及ぼす影響.

日土誌講要.60:144.

18) 若林正吉・伊藤純雄・高橋茂 (2015) 水田土壌 セシウムの土壌溶液中での挙動と NH4・K・酢安 抽出セシウムとの関係.日ペド 2015 講要.20.

19) 若林正吉・高橋茂・伊藤純雄 (2015) 水田の湛 水期間が水稲の放射性セシウム濃度に及ぼす影響

(第 2 報).日土誌講要.61:153.

20) Wakabayashi S. et al. (2016) Influence of water  management and fertilizer application on 137Cs  and 133Cs uptake in paddy rice fields. J. Environ. 

Radioact. 157: 102-112.

2 カリ施用からの卒業に向けた土壌リスク評 価技術の開発

  1) 藤村恵人・久保堅司・江口哲也・松波寿弥・小 林浩幸・太田健・信濃卓郎 (2015) そばにおける土 壌の交換性カリ含量と放射性セシウムの吸収との 関係.日本作物学会第 240 回講演会要旨集.127.

  2) Kubo K., Nemoto K., Kobayashi H., Kuriyama  Y., Harada, H., Matsunami H., Eguchi T., Kihou  N., Ota T., Keitoku S., Kimura T. and Shinano  T. (2015) Decreasing  radioactive  cesium  in  buckwheat  in  Japan.  ICOBTE  Abstract  Book. 

359.

  3) 久保堅司・江口哲也・松波寿弥・藤村恵人・小 林浩幸・太田健・信濃卓郎 (2015) そばにおけるカ リウムとセシウムの動態と土壌の交換性カリ含量 との関係.日本作物学会第 240 回講演会要旨集. 

128.

  4) 久保堅司・平山孝・栗山泰・小林浩幸・太田健・

信濃卓郎 (2016) 土壌から玄そばへの放射性セシ ウムの移行性の年次変化と移行に及ぼす要因の解

析を基にしたカリによる吸収抑制対策の緩和に関 する考察.日本作物学会第 241 回講演会要旨集.

103.

  5) 久保堅司・小林浩幸・村上源吉・八戸真弓・高 橋義彦・濱松潮香・太田健・信濃卓郎 (2016) 放射 性セシウムの物理的除染を行った福島県伊達郡川 俣町山木屋地区の圃場におけるそばによる営農再 開の試み.日本作物学会第 241 回講演会要旨集. 

104.

  6) Kubo K., Kobayashi H., Nemoto K., Hirayama  T., Matsunami H., Ichihashi Y., Ota T., Keitoku S. 

and Shinano T. (2016). Decreasing radioactive  cesium in lodged buckwheat grain after harvest. 

Plant Prod. Sci. 19(1): 91-95.

Ⅸ 研究担当者

1 水稲における放射性セシウム移行要因の解 明および移行低減対策技術の開発

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター

太田 健、石川哲也、藤村恵人、江口哲也、 松波寿弥、信濃卓郎

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター

高橋 茂、若林正吉、木村秀也、加藤直人 国立研究開発法人農業環境技術研究所

牧野知之、石川 覚、藤原英司、木方展冶 福島県農業総合センター

齋藤 隆、高橋和平、佐久間裕樹、佐藤睦人、

新妻和敏、佐藤 誠、藤澤弥榮 栃木県農業試験場

宮崎成生、出口美里、鈴木未来 茨城県農業総合センター

鈴木雄一、真壁周平、池羽正晴、中村憲治

2 カリ施用からの卒業に向けた土壌リスク評 価技術の開発

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター

太田 健、石川哲也、久保堅司、藤村恵人、

江口哲也、松波寿弥

国立研究開発法人農業環境技術研究所

牧野知之、石川 覚、藤原英司、木方展冶

(13)

宮城県古川農業試験場

島 秀之、宮本武彰、金澤由紀恵、 石川亜矢子、安藤慎一朗

福島県農業総合センター

藤澤弥榮、佐久間祐樹、五十嵐裕二、平山 孝、 荒井義光、齋藤 隆

栃木県農業試験場 宮崎成生、出口美里

執筆者)

Ⅹ 取りまとめ責任者あとがき

 水稲においては、2011 年の研究成果に基づき 2012 年から土壌中の交換性カリ含量を 25 mg/100 g とする放射性セシウム吸収抑制対策が福島県をはじ めとする放射性セシウムに汚染された地域で実施さ れ大きな効果を上げできた。しかし、基準値超過や 基準値に近い玄米が散見され、その要因解析と適切 な施肥管理手法が求められ、このプロジェクトが進 められてきた。吸収抑制には速効性カリの基肥施用 が効果的であること、カリ増施は食味や玄米中のカ リウム含量に影響しないことなどが明らかになっ た。また、稲わらやゼオライト施用の効果の検証な ど、その成果の一部は「放射性セシウム濃度の高い 米が発生する要因とその対策について ~要因解析 調査と試験栽培等の結果の取りまとめ~」として公 表され、被災した各県における吸収抑制対策に活用 された。また、移行係数は 2011 年から 2012 年にか けては急速に低下し、その後の低下は緩やかな傾向 にあることを明らかにした。基準値を超過した玄米 が 2016 年にはゼロとなったことは、農業者や関係 部局の努力とともにこれまでの研究成果の貢献が大 きいと考える。

  土 壌 中 の 放 射 性 セ シ ウ ム 濃 度 は 事 故 後 6 年 の 2017 年 に は 物 理 的 減 衰 に よ っ て 事 故 時 の 半

分 に な る。 土 壌 中 交 換 性 カ リ 含 量 を 水 稲 で は 25 mg/100 g、そばでは 25 mg/100 g という一律的 なカリ増施による抑制対策から、土壌中放射性セシ ウム濃度レベルや土壌タイプ・地域による吸収リス クに応じたカリ施肥管理への移行が求められ、2015 年にはプロジェクトの目標を「放射性セシウム移行 を抑制するための適正な交換性カリ水準設定」に切 り替えた。これまでのカリ増施による吸収抑制対策 によって現地圃場の交換性カリ含量は高まってお り、無カリ区を圃場の一部に設置してカリ増施を中 止した場合にどれくらい放射性セシウムが吸収され るリスクがあるのか評価しようと試みた。しかし、

カリ施用を 1 年中止しただけでは交換性カリ含量の 減少程度はわずかな場合が多く、適正なカリ水準を 求めるための十分なデータは得られなかった。

 今後、数年かけてデータの積み重ねを行い、適正 なカリ水準の設定、さらに、そのカリ水準を維持す るための土壌・施肥管理法を策定する必要がある。

また、吸収抑制対策を中止した数年後に交換性カリ 含量が低下し、玄米中放射性セシウム濃度が上昇す ることが懸念される。抑制対策中止後の交換性カリ 含量と玄米中放射性セシウム濃度の推移をモニタリ ングすることが必要である。基準値を超過すること なく、適正なカリ水準に移行できるよう研究の進展 に期待したい。さらに、カリ対策を実施しても交換 性カリ含量が上昇しない地域や交換性カリ含量が高 いのに子実中の放射性セシウム濃度が比較的高くな りやすい地域での要因解析と対策技術の策定も重要 と考える。

 最後に本研究にご協力・ご指導いただいた現地農 業者、各県や市町村、農林水産省の関係部局の皆 様、また、試験研究機関の皆様に深くお礼申し上げ ます。

(推進リーダー:太田 健)

(14)

1 水稲における放射性セシウムの移行要因の 解析と吸収抑制技術の開発

 ア 研究目的

 2011 年度の科学技術戦略推進費による水稲への 放射性セシウム* 1の移行係数の解析により、交換 性カリ* 2含量が移行に与える影響が大きいことが 明らかになった。2012 年度は、この成果に基づき 交換性カリ含量 25 mg/100 g を目標とした施肥が指 導され、2012 ~ 2013 年産米の放射性セシウム濃度 の大幅低減に貢献した。しかし、基準値超過や基準 値に近い玄米が散見され、更なる要因解析や移行低 減技術の確立が必要である。そこで、カリ施肥法や 水管理による移行低減技術の確立、移行係数の経年 変化の解明を行うとともに、土壌溶液中カリウム* 2 濃度などから玄米中放射性セシウム濃度を予測する 簡易診断法の検証を行う。また、除染後水田におい て移行低減に必要なカリ水準を明らかにする。さら に、ゼオライトのカリ保持能力をカラム試験で検証 する。

 イ 研究方法

 (ア) カリ施肥法や水管理による移行低減技術の 確立と土壌溶液中カリウム濃度の影響評価(現地試 験)

  a 稲わら還元による移行低減効果の検証

(2013 年現地試験)

 稲わら還元量の異なる試験区における土壌中交換 性カリ含量の推移と、稲体や玄米中の放射性セシウ ム濃度を調査し、施用効果を検証する。

 場所:伊達市霊山町下小国現地農家圃場(灰色低 地土)

 稲わら施用量:0、0.5、1 t/10 a の 3 水準、稲わ らのカリ含量は乾物当たり 1.68%。なお、稲わらは 放射性セシウムを含まない長野県産のものを施用し た。

 面積:各処理区 5 × 5 m、2 連

 栽培条件:コシヒカリ 6/12 移植、窒素・リン酸・

カリ、それぞれ 6 kg/10 a を基肥として施用

 調査:水稲生育・収量、土壌中交換性カリ含量の 推移、稲体・玄米および土壌中放射性セシウム濃度   b 水管理による移行低減効果の検証(2013 年現地試験)

 中干し期間の延長が玄米中の放射性セシウム濃度 に及ぼす影響を調査する。

 場所:伊達市霊山町下小国現地農家圃場(灰色低 地土、aと同一圃場)

 処理:強中干し区として中干し期間(7/26-8/9)

を対照区より 1 週間延長。対照区は a の稲わら 0 t/10 a 区。

 面積:各処理区 5 × 5 m、2 連

 栽培条件:コシヒカリ 6/12 移植、窒素・リン酸・

カリ、それぞれ 6 kg/10 a を基肥として施用

 調査:水稲生育・収量、土壌中交換性カリ含量の 推移、稲体・玄米および土壌中放射性セシウム濃度   c 土壌溶液中カリウム濃度の影響評価(2014 年現地試験)

 カリ供給能力の異なる現地圃場において、栽培期 間中の土壌溶液中カリウム濃度が玄米中放射性セシ ウム濃度に及ぼす影響を評価する。

 場所:伊達市霊山町下小国現地農家圃場(灰色低 地土、aとは別圃場)、南相馬市小高区現地農家圃 場(灰色低地土)

 カリ資材施用量:0、0.5 t/10 a(細粒および粗粒 金雲母)

 面積:各処理区 4 × 4 m、2 連

 栽培条件:ひとめぼれ 6/6 移植、窒素・リン酸・

カリ、それぞれ 6 kg/10 a を基肥として施用(伊達 市)、コシヒカリ 5/21 移植、窒素 2.7 kg/10 a、リ ン酸 3.4 kg/10 a、カリ 1.4 kg/10 a を基肥として施 用(南相馬市)

第1編 水稲における放射性セシウム移行要因の解明および移行低減 対策技術の開発

第1章 土地利用型作物における放射性セシウムの移行係数の解析と

吸収抑制技術の開発

(15)

 調査:水稲生育・収量、土壌中交換性カリ含量・

土壌溶液中カリウム濃度の推移、玄米および土壌中 放射性セシウム濃度

  d 除染後水田のカリ水準の検証(2014 年現 地試験)

 表土削り取り・客土圃場において、塩化カリ 4 水 準および有機栽培用カリ 3 水準による試験栽培を実 施し、移行低減に必要なカリ水準を明らかにする。

 場所:川俣町山木屋地区現地農家圃場(灰色低地 土、砂質客土)

 カリ上乗せ施用量:塩化カリにて 0、10、20、

30 kg/10 a の 4 水準(有機ヤシ加里は水溶性カリ換 算とし、30 kg/10 a 区は設けない)

 面積:各処理区 6 × 5.55 m、3 連

 栽培条件:ひとめぼれ 5/26 移植、窒素・リン酸・

カリ、それぞれ 7 kg/10 a を基肥として施用

 調査:水稲生育・収量、土壌中交換性カリ含量・

土壌溶液中カリウム濃度の推移、玄米および土壌中 放射性セシウム濃度

 (イ) ゼオライト施用が必要な CEC* 3水準の解 明(2013 年ポット試験)

 比較的粘土含量が少なく CEC が低い土壌を用い て、ゼオライト施用量の異なる条件でポット栽培を 行い、土壌溶液中のカリウム濃度の推移と、玄米中 放射性セシウム濃度との関係を調査して、ゼオライ ト施用が必要な CEC 水準を明らかにする。

 土壌:南相馬市灰色低地土表土

 処理:ゼオライトを 0、0.5、1 t/10 a 相当の 3 水 準

 栽 培 条 件: コ シ ヒ カ リ 6/21 移 植、 窒 素 6 kg/10 a、リン酸 8 kg/10 a、カリ 8 kg/10 a(ゼオ ライト中のカリを含む)を基肥として施用

 栽培期間中に土壌溶液中カリウム濃度を調査(活 着期、幼穂形成期、出穂期、成熟期)、栽培後土壌 の CEC、交換性カリ含量および玄米中放射性セシ ウム濃度を測定

 (ウ) ゼオライトのカリ保持能力の検証(2014 年カラム試験)

 カリを除去したゼオライトを用いたカラム試験を 実施し、ゼオライトのカリ保持能力を検証する。

 供試資材:モルデナイト資材およびクリノプチ ロライト資材を 100℃の 1 M NaCl で複数回処理し、

カリを除去した。金雲母資材は TPB 抽出によりカ リを除去(バーミキュライト化)した。

 試験方法:塩化カリを混和して、交換性カリ含量 を 65 mg/100 g(高カリ土壌)または 30 mg/100 g

(低カリ土壌)に調製した砂質土壌に、各鉱物資材 を 0.5 wt%混和してから、溶脱処理(5 g に 100 mL 通水、約 4 h)を行った。

 調査:処理前の水溶性カリ含量および処理前後の 交換性カリ含量を測定した。

 ウ 研究結果

 (ア) カリ施肥法や水管理による移行低減技術の 確立と土壌溶液中カリウム濃度の影響評価(現地試 験)

  a 稲わら還元による移行低減効果の検証

(2013 年現地試験)

 稲わら施用区の稲体放射性セシウム濃度は幼穂形 成期・出穂期とも対照区より低く、玄米中放射性セ シウム濃度は対照区 7.2 Bq/kg に比べ、稲わら 0.5 t 区で約 13%低減、1 t 区では約 40%低減された(表 111-1)。また、反復別にみると、土壌中交換性カリ 含量の低下とともに濃度が上昇する傾向が認められ

表 111-1 稲わら還元および水管理が生育、収量および放射性セシウム移行に及ぼす影響(2013 年現地試験)

1) 玄米は 1.8 mm で篩選し水分 15%に補正、玄米中放射性セシウム濃度は収穫日に 減衰補正した

2)2 反復の平均を示した

3)収穫時の土壌中放射性セシウム濃度は 4,100 ~ 5,100 Bq/kg

処理 稈長

cm

倒伏

程度 穂数 0-4

玄米重 m-2

玄米 g m-2 千粒重

g

玄米中放射性

101.0

セシウム濃度 Bq/kg

4.0 395 526 21.9 7.2

97.1 3.8 396 523 22.2 6.2

93.9 3.5 373 569 22.6 4.3

95.5 2.0 対照

稲わら0.5t/10a 同1t/10a

強中干し 378 576 22.2 6.6

(16)

た(図 111-1)。

  b 水管理による移行低減効果の検証(2013 年現地試験)

 台風による倒伏が生じたため、収穫前早期落水の 効果は検証できなかった。強中干し区の玄米中放射 性セシウム濃度は対照区と同等であった(表 111- 1)。

  c 土壌溶液中カリウム濃度の影響評価(2014 年現地試験)

 前年に吸収抑制対策が実施された伊達市現地圃場 は、移植直後の土壌溶液中カリウム濃度や土壌中交 換性カリ含量が高かった。金雲母施用効果は中干し 前の調査時から認められ、出穂期の土壌溶液中カリ

ウム濃度は明らかに高かった。玄米中放射性セシウ ム濃度は各圃場とも比較的低かったが、出穂期の土 壌溶液中カリウム濃度が 1 mg/L を下回った南相馬 市現地圃場の対照区でやや高くなった(図 111-2)。

  d 除染後水田のカリ水準の検証(2014 年現 地試験)

 供試圃場内の客土の厚さには 3 ~ 9.5 cm と変動 が認められたものの、収量との関係は明確ではな かった(データ省略)。吸収抑制対策と同水準のカ リ増施により、土壌中交換性カリ含量は移植直後か ら収穫時まで対照区より高く推移した(図 111-3)。

玄米中放射性セシウム濃度は対照区でも低く、カリ 増施の効果は小さかったが、土壌溶液中カリウム濃

図 111-1 稲体および玄米中放射性セシウム濃度と土 壌中交換性カリ含量の関係(2013 年現地試験)

1) 塗りつぶし:対照区、グレー:稲わら 0.5 t 区、白抜き:

稲わら 1 t 区

2) 稲体は乾物当たり、玄米は 1.8 mm で篩選し水分 15%に補 正、玄米中放射性セシウム濃度は収穫日に減衰補正した 3)反復別に示した

図 111-2 土壌溶液中カリウム濃度(出穂期)と玄米 中放射性セシウム濃度の関係(2014 年現地試 験)

1) 玄米は 1.8 mm で篩選し水分 15%に補正、玄米中放射性 セシウム濃度は収穫日に減衰補正した

2)反復別に示した

図 111-3 除染後水田におけるカリ増施が土壌中交換性

カリ含量に及ぼす影響(2014 年現地試験)

1) 対照:カリ増施なし、塩化カリ 20・30:塩化カリにてカリ 20 kg/10 a および 30 kg/10 a を基肥としてそれぞれ増施。

(17)

度はカリ増施により高まる傾向が認められた(表 111-2)。カリ増施による食味値への影響は見られな かった(データ省略)。

 (イ) ゼオライト施用が必要な CEC 水準の解明

(2013 年ポット試験)

 ゼオライト施用による栽培後土壌の CEC、交換 性カリ含量(図 111-4)および玄米中放射性セシウ ム濃度(図 111-5)への顕著な影響は認められな かった。土壌溶液中のカリウム濃度は、活着期には ゼオライト施用により低下する傾向が認められた

表 111-2 除染後水田におけるカリ増施が生育、収量および放射性セシウム移行に及ぼす影響(2014 年現地試験)

1) 玄米は 1.8 mm で篩選し水分 15%に補正、玄米中放射性セシウム濃度は収穫日に減衰補正した 2)3 反復の平均を示した

3)収穫時の土壌中放射性セシウム濃度は平均 1,200(830 ~ 1,750)Bq/kg 資材・10a当たり 中干し前

施用量 kg

土壌溶液中 稈長

カリウム濃度 mg/L

cm

倒伏

程度 穂数

0-4

玄米重 m-2

玄米 g m-2 千粒重

g

玄米中放射性 セシウム濃度

Bq/kg

3.36 76.3 0.0 415 595 23.4 2.1

6.16 75.8 0.0 420 611 23.2 2.1 7.79 78.0 0.0 436 664 23.5 1.9 7.82 77.0 0.0 438 659 23.6 1.7

77.0 0.0 411 608 23.6 1.9

75.8 0.0 429

対照 塩化カリ10 塩化カリ20 塩化カリ30 有機ヤシ加里10

有機ヤシ加里20 614 23.4 1.9

図 111-4 栽培後土壌の CEC および交換性カリ含量(2013 年ポット試験)

1)3 反復の土壌をコンポジットして測定(2013 年ポット試験)

図 111-5 玄米中放射性セシウム濃度(2013 年ポット試験)

1)水分 15%、採取日に補正、3 反復の平均と標準偏差を示した 2)土壌中放射性セシウム濃度は平均 7,900 Bq/kg

(18)

が、幼穂形成期以降には処理間差は認められなかっ た(図 111-6)。

 (ウ) ゼオライトのカリ保持能力の検証(2014 年カラム試験)

 高カリ土壌では、ゼオライト施用で水溶性カリ含 量が顕著に低下し(図 111-7 左)、溶脱処理後の交

換性カリ含量が顕著に高まった(図 111-8 左)。金 雲母施用では、ゼオライトより効果は低いものの、

同様の傾向が認められた。低カリ土壌では、水溶性 カリ含量の低下が認められた(図 111-7 右)一方で、

溶脱処理後の交換性カリ含量に及ぼす鉱物資材の施 用効果は顕著ではなかった(図 111-8 右)。

図 111-6 土壌溶液中カリウム濃度(2013 年ポット試験)

1)3 反復の平均と標準偏差を示した 2)成熟期のデータは省略

図 111-8 カリ除去鉱物資材の施用が土壌中交換性カリ含量に与える影響(2014 年カラム試験)

1)高カリ土壌は 3 反復、低カリ土壌は 2 反復の平均を示した 2)Mo, モルデナイト ; Cp, クリノプチロライト

図 111-7 カリ除去鉱物資材の施用が土壌中水溶性カリ含量に与える影響(2014 年カラム試験)

1)高カリ土壌は 3 反復、低カリ土壌は 2 反復の平均を示した 2)Mo, モルデナイト;Cp, クリノプチロライト

(19)

 エ 考 察

 (ア) カリ施肥法や水管理による移行低減技術の 確立と土壌溶液中カリウム濃度の影響評価(現地試 験)

 本試験で施用した稲わらは水分 9.7%とかなり乾 燥していた。稲わらによるカリ供給量を試算する と、慣行栽培条件の現実的な施用量と想定される 0.5 t/10 a で 7.6 kg/10 a に相当し、施肥基準におけ るカリ施肥量と同程度である。本試験において稲わ ら施用によって放射性セシウムの吸収が抑制できる ことが検証されたことから、できるだけ稲わら還元 を行うことが望ましいと判断された。水管理につい ては、地域の気象・土壌条件や水利慣行の制約があ るため、抑制対策技術としての展開はむずかしいと 推察された。土壌溶液中カリウム濃度は、土壌中交 換性カリ含量と同様に玄米中放射性セシウム濃度と 密接な関係を示したことから、吸収抑制に必要なカ リの過不足の判定を現地で簡易に実施できるよう、

採取・測定手法の一般化を図る必要があると判断さ れた。

 (イ) ゼオライト施用が必要な CEC 水準の解明

(2013 年ポット試験)

 本試験においては、ゼオライトから供給されるカ リを差し引いて基肥を施用しているため、上乗せ施 用時に認められる吸収抑制効果が発揮されなかった と判断された。

 (ウ) ゼオライトのカリ保持能力の検証(2014 年カラム試験)

 本試験の結果から、すでに移行低減を目的とした カリ上乗せ施肥を継続して実施し、土壌中交換性カ リ含量が十分に高まっている圃場では、カリを除去 した鉱物資材の施用によりカリ保持能力が高まるこ とが示された。ただし、交換性カリ含量の目標値を 上回る 30 mg/100 g の条件では、資材の施用効果が 小さかったことから、カリ上乗せ施肥との併用が必 要と推察された。

 オ 今後の課題

 (ア) カリ施肥法や水管理による移行低減技術の 確立と土壌溶液中カリウム濃度の影響評価(現地試 験)

 吸収抑制対策としてのカリ増施が不要となる条件 の解明、また、放射性セシウムの吸収リスクが高い

土壌での要因解明を継続して進める必要がある。

 カ 要 約

 (ア) カリ施肥法や水管理による移行低減技術の 確立と土壌溶液中カリウム濃度の影響評価(現地試 験)

 稲わら施用によりカリが供給され、玄米中の放射 性セシウム濃度が低下した。金雲母の施用により出 穂期の土壌溶液中カリウム濃度は顕著に高まり、玄 米中放射性セシウム濃度が低下した。表土削り取 り・客土圃場でも、カリ増施により土壌溶液中カリ ウム濃度は高まったが、対照区でも比較的高い水準 であったため移行低減効果は明確ではなかった。

 (イ) ゼオライト施用が必要な CEC 水準の解明

(ポット試験)

 水稲栽培により土壌中交換性カリ含量が大幅に低 下し、ゼオライト施用による移行低減効果は明確で はなかった。

 研究担当者(太田 健、石川哲也、藤村恵人、

江口哲也、松波寿弥、信濃卓郎)

1:本稿における放射性セシウムは、134Cs と

137Cs の合計値である。

2:カリは肥料成分として表示される酸化物

(K2O)を、カリウムは元素を指す。

3:CEC:塩基置換容量

2 茨城県南部における水稲の放射性セシウム の移行係数の解析と吸収抑制技術の開発  ア 研究目的

 2011 年度の科学技術戦略推進費による水稲への 放射性セシウムの移行係数* 1の解析により、交換 性カリ* 2含量が放射性セシウム移行に影響するこ とが明らかとなった。そのため、移行低減対策とし てのカリ施肥が県により指導されており、効果的な 施用法・継続期間について、検討する必要がある。

また、水田土壌における湛水処理は、イネの放射性 セシウム吸収量を高めるという Tensho et al.1)の報 告があり、還元環境下の主要な窒素源であるアンモ ニウム(NH4)が放射性セシウムの溶出性を高める

(20)

ためと推定されている。そこで、カリ施肥法や水管 理による移行低減効果の解明を行う。土壌中に降下 した放射性セシウムは、時間経過により固定化する ことが知られており、エイジングと称されるこの時 間経過の影響が、土壌中放射性セシウムの交換性や 水稲への移行係数に及ぼす影響についても、エイジ ングと無関係な安定同位体(Cs-133)の動向を踏ま えて評価する。

 イ 研究方法

 (ア) カリ施肥履歴が土壌―作物系における放射 性セシウム動態へ及ぼす影響の解明

  a カリ施肥履歴が放射性セシウム移行へ及ぼ す影響の評価

 カリ施肥を行わずに 1981 年より水稲作を続ける 三要素試験圃場カリ無施用区(無カリ区)におい て、稲体中の Cs-134 と Cs-137 の合計濃度(以下、

RCs* 3と表記)の推移を、標準施肥区(標肥区)

と比較する。

 場所:つくば市観音台、中央農業総合研究セン ター所内(造成)水田 NP2-2(淡色黒ボク土)

 試験区画:標肥区(N-P2O5-K2O:10-15-10 kg/10 a)、

無カリ区(N-P2O5-K2O:10-15-0 kg/10 a)

 品種:コシヒカリ、日本晴(各反復数:1)

 調査項目:水稲生育・収量。玄米・稲わらの RCs・Cs-133 濃度。

  b カリ施肥履歴が土壌放射性セシウムの交換 性へ及ぼす影響の評価

 土壌 RCs の交換性、水稲移行性に及ぼすカリ施 肥履歴や年経過の影響を評価する。

 調査項目:施肥前・収穫後における土壌の RCs、

交換性カリ、交換性 RCs・Cs-133(1 M 酢安による 24 h 抽出法で評価)。

 (イ) 水管理およびカリ施肥による移行低減効果 の解明

  a 水管理による移行低減効果の検証

 中干しおよび登熟期の落水期間が水稲の放射性セ シウム吸収に及ぼす影響を解明する。

 場所:① つくばみらい市谷和原、所内水田Ⅷ -7

(灰色低地土)、10 a(2012 年より 3 年 間)

    ② つくば市観音台、所内水田 NP4-10(台 地造成土)、3.4 a(2013 年より 2 年間)

 試験区画:下記 3 水準の水管理(圃場内には反復 なし)。

 長期湛水(長湛):中干しなし。落水は、8 月末

~ 9 月はじめから。

 中期湛水(中湛):中干し 7 ~ 8 日間(*)。落水 時期は、長湛より 7 ~ 12 日早い。

 短期湛水(短湛):中干し 14 ~ 16 日間(*)。落 水時期は、長湛より 15 ~ 20 日早い。

 * 2014 年は長雨のため、20 日間に延長。

 栽培条件:コシヒカリ(移植 5 月中旬、収穫 9 月 中~下旬)

 調査項目:水稲生育・収量。玄米・稲わらの Cs- 137、Cs-133 濃度。施肥前・収穫後の土壌の交換性 カリ。

  b カリ施肥等による移行低減効果の検証  移行低減に有効な施肥法を明らかにする。

 試験区画:a の水管理区画に入れ子状に、4 ~ 6 水準の施肥処理(水管理の異なる 3 反復)。

 対照:N(硫安)基肥 3、追肥 3;P2O5(過石)

基肥 6;K2O(塩化カリ)基肥 6、追肥 3 kg/10 a  無カリ:(以下、対照区に対する相違点)K2O な し。

 基肥重点:K2O(塩化カリ)基肥 18 kg/10 a、追 肥なし。

 追肥重点:K2O(塩化カリ)基肥なし、追肥 9  kg/10 a。

 ケイカリ(谷和原のみ):K2O(ケイ酸カリ)基 肥 9 kg/10 a、追肥なし。

 追肥なし(2012 年、谷和原のみ):K2O(塩化カ リ)追肥なし。

 N 増施:(2013-2014 年、谷和原のみ):N(硫安 + 被覆尿素 LPSS100)基肥 4+4 kg/10 a。

 栽培条件・調査項目は、a に同じ。

  c 水管理および NH4が土壌からの Cs* 4の 溶出性に及ぼす影響の解明(2014 年)

 水管理が放射性セシウムの移行に及ぼす効果の要 因解明に向け、栽培期間中の土壌における Cs-133、

NH4、K 濃度の消長および関係性を明らかにする。

 場所・試験区画:谷和原圃場内、各水管理区内の 対照区、N 増区。中湛区内対照区には、遮根区を設 置した。

 調査時期:移植前(5/15)、中干し前(6/23)、中 干し後(7/16)、出穂期(8/6)、落水後(9/5)

(21)

 調査方法:各処理区内 3 反復で、株間より、ファ イバー式採水器で土壌溶液を採取。続いて、同位置 の表土(10 cm 深)を採取し、同日中に湿潤状態の まま、交換性 Cs-133 およびカリ(1 M 酢安による 1 h 抽出法で評価)、交換性 NH4の抽出に供試した。

土壌溶液については、Cs-133、NH4、K 濃度を測定 した。

 (ウ) 移行係数の経年推移の解明

 場所:(1)つくば市観音台 NP2-2(アと共通)

    (2) つくばみらい市谷和原Ⅷ -7、10 a(イ

①と共通)

    (3) つくば市観音台 NP4-10、1.6 a(イ② 試験区の隣)

 圃場(3)について、2012、2013 年には、対照区、

無カリ区、基肥重点区、追肥重点区(イと共通)を 設定したが、2014 年には、すべて対照区と同様の 管理とした(各 2 反復)。

 調査項目:移行係数(玄米 Cs-137 濃度/土壌 Cs- 137 濃度)

 ウ 研究結果

 (ア) カリ施肥履歴が土壌―作物系における放射 性セシウム動態へ及ぼす影響の解明

  a カリ施肥履歴が放射性セシウム移行へ及ぼ

す影響の評価

 無カリ区の玄米 RCs 濃度は、標肥区より、コシ ヒカリで 5 ~ 6 倍、日本晴で 2 ~ 3.5 倍高かった

(表 112-1)。稲わら中 RCs 濃度および玄米・稲わら 中の Cs-133 濃度も、無カリ区>標肥区となった。

なお、玄米収量については、試験区間で大差なかっ た。

  b カリ施肥履歴が土壌放射性セシウムの交換 性へ及ぼす影響の評価

 土壌 RCs に占める交換性画分の割合は、無カリ 区では標肥区の半分程度であり、いずれの試験区で も年経過によって低下した(表 112-2)。これらの 傾向は、交換性 Cs-133 でも同様で、RCs と Cs-133 の間には、正の相関が認められた(r = 0.680, p < 

0.01)。ただし、交換性 RCs に比べて試験区間の差 は小さかった。また、交換性 RCs を交換性カリと の比で示すと、玄米 RCs 濃度と正の相関を示した

(図 112-1)。

 (イ) 水管理およびカリ施肥による移行低減効果 の解明

  a 水管理による移行低減効果の検証

 玄米中 Cs-137 濃度は 2013 年の観音台を除き、稲 わら中 Cs-137 濃度は各年各圃場とも、長湛区>

中湛区≧短湛区となった(表 112-3)。Cs-133 濃度

表 112-1 三要素試験水田における水稲中の RCs、Cs-133 濃度

1)RCs(Cs-134 + Cs-137)の基準日は、各年の収穫日とした 2)土壌 RCs 濃度は、平均 391 Bq/kg(2014/9/30 基準)

表 112-2 土壌中の交換性カリ、RCs、Cs-133 量

交換性 RCs の割合は、土壌 RCs 濃度に対する百分率で示した

2012 2012 2012

秋 春 秋 春 秋 秋 春 秋 春 秋 秋 春 秋 春 秋

コシヒカリ

40 33 35 33 33 226 187 207 193 185 20 19 20 20 17 206 176 191 185 178 37 34 39 38 31 200 194 218 193 182 23 18 24 25 18 184 171 198 177 170 交換性Cs-133 (μg/kg)

2013 2014 2013 2014 2013 2014

交換性カリ (mg/100g) 交換性RCsの割合 (%)

標肥 25.2 32.8 27.7 32.6 29.6 無カリ 7.2 16.4 6.7 16.1 6.1  日本晴

標肥 29.7 27.3 29.7 30.3 28.2 無カリ 9.1 11.2 11.8 16.7 9.1

2012 2013 2014 2012 2013 2014 2012 2013 2014 2012 2013 2014 コシヒカリ

標肥 2.0 1.2 1.0 9.6 5.8 3.3 5.5 4.4 1.9 7.4 7.8 7.0 6.3

無カリ 11.2 6.2 35.0 18.8 19.6 20.3 17.3 18.4 44.9 35.7 52.1  日本晴

標肥 1.7 1.1 1.1 7.9 5.1 3.2 4.7 4.1 1.8 6.5 5.2 5.9 無カリ 5.7 2.1 3.8 19.9 7.4 11.1 10.7 6.4 9.5 25.1 11.7 28.1 玄米RCs (Bq/kg) 稲わらRCs (Bq/kg) 玄米Cs-133 (μg/kg) 稲わらCs-133 (μg/kg)

図 231-1  シュウ酸で抽出した土壌中 Cs-133 濃度と玄 米中 Cs-133 濃度との関係 図 231-2  シュウ安で抽出した土壌中 Cs-133 濃度と玄米中 Cs-133 濃度との関係R² = 0.5434y = 0.1347x + 0.00140.000.010.020.030.040.050.00.10.20.3シュウ酸Cs(mg /kg)玄米Cs(mg/kg)R² = 0.4797y = 0.0466x + 0.00160.000.010.020.030.040.050.00.20.4
図 241-1  各時期別の土壌中交換性カリ含量、土壌溶液中カリウムイオン濃度と玄米中放射性セ シウム濃度の関係 図 241-2 各時期別の土壌中交換性カリ含量、土壌溶液中カリウムイオン濃度と移行係数の関係0123010203040土壌溶液中K+濃度(mg/L)移植直後玄米中Cs-137(Bq/kg)01230中干し前後玄米中Cs-137(Bq/kg)10203040土壌溶液中K+濃度(mg/L)01230 20 40 60 80 100 120土壌中交換性カリ含量(mg/100gDW)移植直後玄米中Cs-

参照

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