18環境安全−1
調査・研究報告書の要約
書 名 平成18年度特定粉じん及び有害大気汚染物質発生抑制等に関する調査 報告書
発行機関名 社団法人 日本機械工業連合会・社団法人 産業と環境の会
発 行 年 月 平成19年3月 頁数 127頁 判型 A4
[目次]
本 編
第1章 大気環境の現状の対策 1.1 有害大気汚染物質
1.1.1 有害大気汚染物質の概要
1.1.2 有害大気汚染物質における指針値の導入 1.1.3 事業者による自主管理対策
1.1.4 有害大気汚染物質の大気環境濃度の状況 1.2 アスベスト
1.2.1 最近のアスベスト問題の概要
1.2.2 アスベストの性質とこれまでの使用状況 1.2.3 国による対策
1.2.4 アスベストの大気環境濃度の状況 第2章 クロロホルム等の排出状況について
2.1 指針値設定物質等の排出源の整理 2.1.1 クロロホルム
2.1.2 1,2-ジクロロエタン 2.1.3 1,3-ブタジエン 2.1.4 アセトアルデヒド
2.2 指針値設定物質等の排出実態について 2.2.1 クロロホルム
2.2.1.1 平成16年度排出量
2.2.1.2 平成13年度〜15年度排出量(経年変化)
2.2.2 1,2-ジクロロエタン 2.2.2.1 平成16年度排出量
2.2.2.2 平成13年度〜15年度排出量(経年変化)
2.2.3 1,3-ブタジエン
2.2.3.1 平成16年度排出量
2.2.3.2 平成13年度〜15年度排出量(経年変化)
2.2.4 アセトアルデヒド 2.2.4.1 平成16年度排出量
2.2.4.2 平成13年度〜15年度排出量(経年変化)
2.3 アスベストの排出実態について
2.3.1 大気汚染防止法に基づくアスベスト発生施設について 2.3.2 アスベストの排出量
2.3.2.1 平成16年度排出量
2.3.2.2 平成13年度〜15年度排出量(経年変化)
第3章 産業界における削減対策の現状と課題 3.1 有害大気汚染物質の削減対策の現状
3.1.1 有害大気汚染物質の削減処理技術 3.1.2 クロロホルム等の排出抑制対策について 3.1.3 クロロホルムにおける漂白工程の変更 3.2 大気環境におけるアスベスト対策の現状
3.2.1 産業界におけるアスベスト対策 3.2.2 アスベストの無害化処理技術 3.3 今後の課題
[要約]
<調査目的>
産業界における環境対策は、近年の環境問題の多様化を背景として、直接規制への確実 な対応とともに、諸外国の環境規制の動向を踏まえた対策や自主的取組の積極的な推進等、
より広範囲な対策が求められている。
そして、窒素酸化物、硫黄酸化物、石綿(アスベスト)に代表される大気汚染の原因と なる物質については環境基準等が設定され、その達成・維持を目標に大気汚染防止法に基 づいた対策が講じられてきた。しかしながら、近年、低濃度でも長期暴露によって人の健 康を損なうおそれのある有害大気汚染物質も対策の対象となり、産業界が自ら目標を設定 した自主管理計画による削減対策がなされてきた。
しかしながら、有害大気汚染物質のうち環境基準未設定物質について、今般、クロロホ ルム等4物質の指針値設定の検討が行われた。すなわち、新たに指針値が設定された3物 質は、指針値を目標とする対策が産業界に求められることとなる。加えて、特定粉じんで
ある石綿(アスベスト)による健康影響への懸念より、飛散防止、適正処理及び物質代替 等の対策も急務となっている。
このため、大気汚染物質に対する規制の強化拡大等に対処し、良好な大気環境を維持す るためには、さらなる技術開発に基づいた対策装置の設置等による対応が必須であること から、今後の機械工業の振興に資するために、特定粉じん等に関する排出実態や産業界に おける対策の現状等について調査を実施した。
<調査結果>
第1章 大気環境の現状の対策 1.1 有害大気汚染物質
①平成18年11月に、健康リスクに関する評価がなされたことから、中央環境審議会 での検討を経て、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及び 1,3-ブタジエンの 3 物質 について指針値が設定された(表 1 参照)。これにより有害大気汚染物質のうち健 康リスクがある程度高いとされる優先取組物質 21 物質(ダイオキシン類を除く)
に関して、環境基準または指針値が設定された物質は合計11物質となった。なお、
アセトアルデヒドに関してもクロロホルム等3物質と同様に検討が進められており、
WHOとの整合性が確認でき次第指針値が設定される見込である。
表1 新たに指針値が設定された物質と指針値 物質名 指針値(年平均値)
クロロホルム 18μg/m3 以下 1,2-ジクロロエタン 1.6μg/m3 以下 1,3-ブタジエン 2.5μg /m3 以下
②有害大気汚染物質については、19物質(環境基準設定物質が4物質、指針値設定物 質が7物質、その他の物質が8物質)に関して大気環境のモニタリングが行われて いる。平成17年度のモニタリング結果は下記のとおりである。
環境基準設定物質のうちベンゼンに関しては、平均濃度は低下しており、環境基 準超過割合も改善傾向にあり、環境基準超過率は 4%、平均濃度は 1.7μg/m3であ った。また、ベンゼン以外の環境基準設定物質(トリクロロエチレン、テトラクロ ロエチレン及びジクロロメタン)は、環境基準超過地点はなく平均濃度も低下傾向 にある。
指針値設定物質については、今回新たに指針値が設定された3物質のモニタリン グ結果(濃度)と指針値を比較すると、全て指針値を下回っている。なお、平成15 年度に指針値が設定された物質については、ニッケル化合物で超過地点があったが
(超過率は0.9%)、その他の物質(アクリルニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀 及びその化合物)については超過地点はなかった。
環境基準等が設定されていない8物質の濃度は、物質によっては若干の変動が見 られるが、全般的に濃度の低減が図られている。
表2 クロロホルム等3物質の調査結果(平成17年度)
濃度(μg/m3) 物質名
(指針値)
地点数 検体数
平均 最小 最大 クロロホルム(18μg/m3) 402 4,623 0.32 0.032 39 1,2-ジクロロエタン(1.6μg/m3) 403 4,642 0.13 0.0045 2.7 1,3-ブタジエン(2.5μg/m3) 446 5,134 0.22 0.0054 1.7 出典:環境省(「平成17年度地方公共団体等における有害大気汚染物質モニタリング調査 結果について」より作成)
1.2 アスベスト
飛散性アスベスト製品による健康への影響が問題となり、代替化が進み、昭和 50 年 代以降吹き付け材として使用することは原則として禁止され、以降、その他の製品につ いても代替化や、青石綿・茶石綿の輸入・製造・使用の禁止措置がとれた。しかし、一 部(アスベストを含むシール材等)は、安全確保等の観点から代替化が困難と判断され、
使用が認められている。また、アスベスト含有率 1%以下の製品も使用禁止の対象とな っていない。
また、大気汚染防止法ではアスベストを特定粉じんとして規制を行っているほか、平 成7年度及び平成 17年度に大気環境濃度について全国的なモニタリング調査が実施さ れている。平成 17年度の調査結果を平成 7年度の結果と比較してみると、アスベスト 製品製造事業場の濃度は概ね低下しており、その他の地域においても濃度は低いレベル であった(表3及び表4)。なお、アスベストの濃度は自治体が独自に調査を継続してい るところがあり、東京都、大阪府、大阪市及び兵庫県では敷地境界基準(WHO 基準)
と比較し、低い濃度となっている。
表3 平成7年度アスベストのモニタリング結果の概要
(単位:f/l)
地域分類 地点数 検体数 最小値 最大値 幾何平均
発生源周辺I 11 66 0.04 2.58 0.29 発生源周辺II 14 84 0.09 13.47 0.88 発生源周辺III 12 72 0.13 1.96 0.42 バックグラウンドI 6 36 0.04 0.99 0.19 バックグラウンドII 23 150 ND 1.76 0.23 計 66 408 ND 13.47 0.34
出典:環境庁
表4 平成17年度アスベスト緊急大気濃度調査結果(平成7年度測定地点での調査結果)
濃度(単位:本/L)
地域分類
地 域 数
地 点 数
試 料
数 最小値 最大値 幾何 平均値 H7/アスベスト製品製造事業場等 5 13 39 0.11未満 0.70 0.28
H7/廃棄物処分場等(最終処分場) 3 6 18 0.45 2.62 1.16
H7/蛇紋岩地域 2 4 12 0.16未満 0.58 0.30
H7/高速道路及び幹線道路沿線 6 12 36 0.22未満 2.50 0.53
H7/内陸山間地域 3 5 15 0.11未満 0.48 0.20
H7/離島地域 1 2 6 0.11未満 0.11 0.11
H7/住宅地域 7 13 39 0.11未満 1.10 0.30
H7/商工業地域 4 8 24 0.14未満 0.65 0.23
H7/農業地域 1 2 6 0.11未満 0.16 0.13
合計 32 65 195
出典:環境省「平成17年度アスベスト緊急大気濃度調査結果について」
第2章 クロロホルム等の排出状況について
平成16年度のPRTRデータに基づいて、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,3-ブタ ジエン、アセトアルデヒド(以上有害大気汚染物質)及びアスベストの排出状況について 分析を行った。
2.1 指針値設定物質等の排出源の整理
図1に示すようにクロロホルム及び1,2-ジクロロエタンは届出排出量(事業場からの 排出)が殆どである。一方、1,3-ブタジエン及びアセトアルデヒドは届出排出量が 2〜
4%程度である(自動車排出ガスに含まれているため、推計値(移動発生源)が多くなっ ている)。また、物質別に排出量の多い業種を見てみると下記のとおりとなっている(表 5〜表8)。
・クロロホルム……パルプ・紙・紙加工品製造業が 51.8%、化学工業が 20.3%、
電気機械器具製造業が13.2%で、上位3業種で約85%を占めている。
・1,2-ジクロロエタン……化学工業が 54.5%、医薬品製造業が 20.9%、倉庫業が 15.7%で、上位3業種で9割以上となっている。
・1,3-ブタジエン……化学工業が98.8%とその排出の殆どである。
・アセトアルデヒド……化学工業が77.6%、繊維工業が12.4%、プラスチック製品 製造業が9.7%であり、3業種でほぼ100%となっている。
0% 20% 40% 60% 80% 100%
1,3-ブタジエン 1,2-ジクロロエタ
ン クロロホルム アセトアルデヒド
2681169511
届出排出量・大気 届出排出量・水域 届出外排出量(推計値)
図1 4物質の届出排出量及び届出外排出量の割合
出典:経済産業省・環境省 PRTRデータの概要(平成15年度、16年度)より作成
表5 大気中へのクロロホルムの業種別排出量(平成16年度)
業種 届出事業所数 大気への排出量(kg) 排出割合 パルプ・紙・紙加工品製造業 22 535,190.0 51.8%
化学工業 90 210,142.4 20.3%
電気機械器具製造業 4 135,950.0 13.2%
医薬品製造業 42 74,003.9 7.2%
農薬製造業 2 41,710.0 4.0%
上記5業種以外 29 36,832.8 3.6%
合計(注) 189 1,033,829.1 100.0%
(注)クロロホルムの大気への排出があった事業所の合計。ただし、「高等教育機関」を除く。
出典:経済産業省・環境省 PRTRデータの概要(16年度)より作成
表6 大気中への1,2-ジクロロエタンの業種別排出量(平成16年度)
業種 届出事業所数 大気への排出量(kg) 排出割合
化学工業 58 267,098.3 54.5%
医薬品製造業 12 102,245.0 20.9%
倉庫業 2 77,000.0 15.7%
その他の製造業 3 20,300.0 4.1%
電気機械器具製造業 2 7,300.0 1.5%
上記5業種以外 7 15,810.0 3.2%
合計(注) 84 489,753.3 100.0%
(注)1,2-ジクロロエタン大気への排出があった事業所の合計。
出典:経済産業省・環境省 PRTRデータの概要(16年度)より作成
表7 大気中への1,3-ブタジエンの業種別排出量(平成16年度)
業種 届出事業所数 大気への排出量(kg) 排出割合
化学工業 35 209,392.0 98.8%
石油製品・石炭製品製造業 2 1,680.0 0.8%
食料品製造業 1 830.0 0.4%
自然科学研究所 1 66.0 0.0%
繊維工業 1 1.5 0.0%
合計(注) 40 211,969.5 100.0%
(注)1,3-ブタジエンの大気への排出があった事業所の合計。
出典:経済産業省・環境省 PRTRデータの概要(16年度)より作成
表8 大気中へのアセトアルデヒドの業種別排出量(平成15年度)
業種 届出事業所数 大気への排出量(kg) 排出割合(注)
化学工業 37 70,875.7 77.6%
繊維工業 3 11,320.0 12.4%
プラスチック製品製造業 2 8,900.0 9.7%
窯業・土石製品製造業 1 160.0 0.2%
農薬製造業 1 110.0 0.1%
合計(注) 44 91,365.7 100.0%
(注) アセトアルデヒドの大気への排出があった事業場の合計。
出典:経済産業省・環境省 PRTRデータの概要(16年度)より作成
2.2 指針値設定物質等の排出実態について
事業所ごとの排出量について分析を行った。物質別の概要は下記のとおりである。
・クロロホルム……パルプ・紙・紙加工品製造業では10t以上の届出事業所が多く、
化学工業では 10tを超える届出はごくわずかで、届出事業所数では1t未満の事 業所が約7割に上っている。
・1,2-ジクロロエタン……化学工業は10t以上の排出量の届出事業所(9事業所)
で化学工業の排出量の過半数を占めており、医薬品製造業は1事業所が医薬品製 造業の8割近くの排出量となっている。
・1,3-ブタジエン……排出の殆どが化学工業であるが、10t以上の排出量のある事業 所で7割以上の排出を占めている。
・アセトアルデヒド……化学工業が排出量の約 8 割を占めているが、1t 以上の排 出量のある事業所が化学工業の排出量の9割以上となっている。
2.3 アスベストの排出実態について
大気汚染防止法に基づき、特定粉じん(アスベスト)発生施設の事業者の届出は、平 成18年8月末時点で工場・事業場(廃止済を含む)は全国で400(38都道府県)であ り、そのうち製造・加工中の事業場・工場は13(7府県)である。なお、特定粉じん(ア スベスト)の製造・加工を実施している工場等の数は減少しており、この傾向は今後も 続くと見られている(図2、図3)。
平成16年度のPRTRデータを見てみると、アスベストの排出量の届出があったのは、
化学工業、窯業・土石製品製造業、非鉄禁則死蔵行、輸送用機械器具製造業で、排出量 の96%は窯業・土石製品製造業からである。
113
42 39
13 0
20 40 60 80 100 120
製 造
・ 加 工 中 の 工 場 等 の 数
H17年3月 H17年8月 H17年11月 H18年8月 図2 石綿関連製品の製造・加工中の工場等の数の推移
出典:環境省資料より作成
1,556
1,236
1,137
929
555
207 192 181 158 113
0 400 800 1,200 1,600
H12年度 H13年度 H14年度 H15年度 H16年度
届出施設数 工場・事業場数
図3 特定粉じん(アスベスト)発生施設届出施設数の推移
出典:環境省「平成17年度大気汚染防止法施行状況調査」より作成
第3章 産業界における削減対策の現状と課題 3.1 有害大気汚染物質の削減対策の現状
産業界における有害大気汚染物質削減対策は、代替物質の使用、工程変更、運転条件 や運転管理の見直しによる回収率向上によるものと、処理技術を利用した削減対策に大 別される。クロロホルム等4物質について、自主管理計画策定業種における排出抑制対 策を見てみると、排出量が多い場合などは処理装置による対策が一般的であるが、処理 装置の導入が済んでいる場合や、装置導入が困難な場合は、運転条件の変更、物質代替、
作業管理の徹底等が挙げられる。
3.2 大気環境におけるアスベスト対策の現状
アスベストは代替化の検討、使用設備での飛散防止対策が講じられているが、廃棄物 からの飛散が懸念されている。すなわち、アスベストが多種多様な製品に使用されてい ることから、適正処理(製品の分別)の困難性が指摘されている。そのため、各種の無 害化処理技術の特許申請がなされている。
3.3 今後の課題
環境基準の設定されていない優先取組物質についても、今後科学的知見の集積を踏ま え、環境目標値の設定を順次行うこととされていることから、今後の自主的取組を促進 するために、高効率の除去装置や簡易測定法の実用化・汎用化とともに、国による各種 の支援も必要である。
また、アスベストに関しては、代替が困難とされる製品(シール材やガスケット)など があるものの、諸外国においても原則使用等が禁止となっていることから代替製品の開発 が必要である。そして、代替化促進や開発が進められている簡易測定技術の確立等、機械 技術の寄与が不可欠である。
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
http://keirin.jp/