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マルチエージェントモデルを用いた 交通流シミュレーション

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Academic year: 2021

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(1)

中央大学理工学部情報工学科 卒業研究論文

マルチエージェントモデルを用いた 交通流シミュレーション

柄沢 聡太郎 Sotaro KARASAWA 学籍番号 04D8104007D

指導教員 田口 東 教授

2008 年 3 月

(2)

あらまし

本研究は,運転者の判断によるアクセル・ブレーキのコントロールといった自動車単位のミクロ な動きをエージェントしてとらえ,混雑・渋滞といった交通流としてのマクロな動きを表現する マルチエージェントモデルを用いた交通流シミュレーションモデルを構築することを目的とする.

より人間社会に近いシミュレータを構築することにより,新しい道路の設計・建設や既存道路 の渋滞に対する解決策の提案などに活用することができる.

キーワード:マルチエージェントモデル,交通流シミュレータ

(3)

目 次

1

章 序論

1

2

章 シミュレーションモデル

2

2.1

運転者のパラメータ

. . . . 2

2.1.1

加減速踏み込み度

. . . . 3

2.1.2

ペダル踏み替え時間

. . . . 3

2.1.3

余裕認識距離

. . . . 3

2.1.4

危険認識距離

. . . . 3

2.1.5

最高速度

. . . . 4

2.2

自動車のパラメータ

. . . . 4

2.2.1

状態

. . . . 4

2.2.2

アクセル・ブレーキ開度

. . . . 5

2.2.3

速度・向き

. . . . 5

2.2.4

位置座標

. . . . 6

2.3

障害物の検知・判断

. . . . 6

2.3.1

線分交差による障害物の認知判定

. . . . 6

2.3.2

障害物認知状況による運転者の加減速判断

. . . . 9

2.4

位置座標の決定

. . . . 9

2.4.1

速度による移動距離

. . . . 9

2.4.2

位置座標決定までのアルゴリズム

. . . . 9

3

章 シミュレーションモデルの実装

11 3.1

実装環境

. . . . 11

3.2

フィールドの設定

. . . . 11

3.2.1

フィールドのパラメータ

. . . . 11

3.2.2

フィールドオブジェクト

. . . . 12

3.2.3

本研究に用いるフィールド

. . . . 13

3.3

自動車の設定

. . . . 15

4

章 シミュレーション実験と考察

16 4.1

計測方法

. . . . 16

4.2

交通量の違いによる平均速度と密度変化

. . . . 16

4.2.1

シミュレーションの設定

. . . . 16

4.2.2

結果

. . . . 19

(4)

5

章 結論

22 5.1

まとめ

. . . . 22 5.2

今後の課題

. . . . 22

謝辞

23

参考文献

24

(5)

1 章 序論

人が自動車を運転をするときには,環境上の条件や状況に応じ,ブレーキ・アクセル・車間距 離などさまざまな判断をする.それら一人ひとりの判断が自動車単体のミクロな動きとなり,マ クロな世界の秩序,つまり交通流が生まれる.

より人間社会に近い秩序を表現し,実際の地形に当てはめ,シミュレーションモデルで再現す ることで,新しい道路建設の設計や現在多くの幹線道路が抱えている渋滞の問題への解決策を効 率よく提案することができる.

本研究は,運転者の判断によるアクセル・ブレーキのコントロールといった自動車単位のミク ロな動きをエージェントしてとらえ,混雑・渋滞といった交通流としてのマクロな動きを表現す る交通流シミュレーションモデルを構築することを目的とする.

(6)

2 章 シミュレーションモデル

本研究では,より人間社会に近い秩序を表現するため,マルチエージェントモデルを用いてシ ミュレータを構築する.

マルチエージェントモデルとは,自動車・人など多数の自律して行動をするエージェントから 構成されるモデルである.それぞれのエージェントは,環境を知覚し,自分のもつルールに従っ て行動し,目標を達成しようとする.モデル全体の振る舞いは,エージェント同士が相互に影響 しあうことによって決定される

(

ボトムアップ

)

.そしてその振る舞いは,エージェントの行動決 定に影響をあたえる

(

トップダウン

)[1]

本研究では,道路交通において自動車とその運転者をエージェントとしてとらえ,個別の運転 者の判断によって生じる自動車の動きから,全体としての交通流を表現する.以下にマルチエー ジェントモデル構築の流れを述べる.

まず,

2.1

節では自動車を運転するであろう運転者にパラメータを与える.次に,微小な時間ス テップごとに変化する自動車のパラメータを定義する

(2.2

)

.そして,

2.3

節では運転者が障害 物を検知し,自動車の速度や交通環境に応じた判断を行い,自動車の状態を決定する.

2.4

節では 自動車の状態から単位時間後の移動距離を決定し,位置座標を決定するまでのアルゴリズムを述 べる.

2.1 運転者のパラメータ

本研究では,人間の運転する交通社会を表現するため,運転者が状況に応じた判断・運転操作 を行い,それに従って自動車の挙動が決定するモデルを考える.より人間らしい判断をさせるた め,自動車それぞれに運転者を設定し,

5

種類の特有のパラメータ

(

以下,運転者パラメータとす る

)

を与える.

加減速踏み込み度

k

ペダル踏み替え時間

(

通常時

,

非常時

) = (α, β)

sec

余裕認識距離

W

margin

m

危険認識距離

W

emerg

m

最高速度

ν

max[

km/h

本節ではこの

5

種類のパラメータについて説明する.

(7)

2.1.1 加減速踏み込み度

運転者により,どの程度アクセルペダルを踏み込むのか,どの程度ブレーキペダルを踏み込む のかは一定ではない.運転者の中には,急発進・急ブレーキをする人もいれば,ゆっくりとアク セルペダル・ブレーキペダルを踏み込む人もいる.

本モデルでは,運転者の個性を表現するため,どの程度急にペダルを踏み込むかの度合いを加 減速踏み込み度として定義する.加減速踏み込み度は以下の式で与えられる.

k = N (0.05, 0.002

2

) (2.1)

ここで

N (µ, σ

2

)

は,平均

µ

,分散

σ

2 の正規分布を表す.

2.1.2 ペダル踏み替え時間

通常,人間は加速・減速の切り替えをする際,アクセルペダルから足を離し一定時間後にブレー キペダルを踏み始めるという動作をする.この切り替えには,非常時で一般的に

0.75

sec

]を要 するとされている

[2]

本モデルでは,

[2]

を参考に,非常時のペダル踏み替え時間は

β = N (0.75, 0.1

2

)

sec

],通常時 走行時のペダル踏み替え時間は

α = N(1.2, 0.1

2

)

sec

]とする.

2.1.3 余裕認識距離

運転者は,運転をするときに常に前後左右の障害物と一定の距離を保っている.この距離は,安 全に運転をするために,例えば前方の自動車が減速した際,急ブレーキをかけなくても安全に車 間距離を補正することができるほどの距離であり,運転者はこの距離を保ち運転をしている.通 常運転時に余裕をもって自動車を加減速できると運転者が判断する距離を余裕認識距離

W

margin として定義する.

本モデルでは,車線変更を考慮しないため,運転者は前方の視界だけを持つものとし,余裕認

識距離

W

margin は,自動車本体の位置座標

(2.2.4

)

から進行方向の直線距離とする.

余裕認識距離は,自動車の速度

ν

km/h

(2.2.3

)

によって変動する.運転者はその時々の自 動車の速度から,どの程度の車間距離を保てばよいかを判断しているからである.

本モデルでは,

[2]

を参考に以下の式で定義する.

W

margin

=

{ 1.2νN (1, 0.1

2

)

(ν > 5.0)

1.2νN (1, 0.1

2

) + 1.0

5.0)

m

(2.2) ν 5.0

のとき,

1.0

を加算することにより,最低限守られるべき車間を維持することができる.

2.1.4 危険認識距離

運転者は,一定の距離より近い位置に障害物があった場合,危険だと判断し急ブレーキをかけ る場合がある.この距離は,余裕認識距離と同様に,自動車本体の位置座標から進行方向に直線 距離で与えられ,自動車の速度より変動する.

(8)

危険認識距離を,余裕認識距離と同様に自動車の速度

ν[km/h]

を用いて,以下の式で定義する.

W

margin

=

{ 0.7νN (1, 0.1

2

)

(ν > 5.0)

0.7νN (1, 0.1

2

) + 1.0

5.0)

m

(2.3)

2.1.5 最高速度

最高速度は,運転者がその道路の法定速度

(3.2.2

) V

max のもとに,出そうとする最高の速度 である.運転者によって,法定速度より速度を出さない運転者や,法定速度を多少こえて速度を 出す運転者はさまざまである.本モデルでは,法定速度を用いて以下の式で与える.

ν

max

= V

max

K (2.4)

ここで

K

は,

N (M + 1, 0.1

2

)

に従う確率変数である.

M

は,自動車の車種特有の値であり,

3.3

節で説明する.

2.2 自動車のパラメータ

本研究では,セルオートマトンモデルのように,領域を細かく分割することによって自動車の 移動方向を限定しないよう,微小時間ごとに各自動車の状態に応じた速度を決定し,速度から微 小時間後の位置を決定する.速度を決定するために,自動車に以下の

4

種類のパラメータ

(

以下,

自動車パラメータとする

)

を与える.

状態

υ

アクセル・ブレーキ開度

(A, B)

速度

ν

km/h

向き

R

[度]

位置座標

P = (P

x

, P

y

)

これらは,時間とともに変化する値であり,この値は運転者と自動車性能

(3.3

)

によって決定さ れる.

本節では,各自動車パラメータについて説明する.

2.2.1 状態

自動車は以下の

3

つの状態のいずれかを持つものとする.

1.

アクセルペダルが踏まれている状態

(

アクセルオン状態

) 2.

ブレーキペダルが踏まれている状態

(

ブレーキオン状態

)

3.

アクセルペダルもブレーキペダルも踏まれていない状態

(

ペダルオフ

)

(9)

これらの状態は単位時間ごとに変化する

各状態は,状態

3

を経由しなければ遷移できず,遷移にかかる時間は

(α, β) (2.1.2

)

に従うも のとする.

(

2.1)

各状態間の遷移は運転者の判断により決定される.運転者の判断は

2.3

節で説明する.

アクセル アクセル

アクセル アクセル状態 状態 状態 状態 ブレーキ ブレーキ

ブレーキ ブレーキ状態 状態 状態 状態

ペダルオフ ペダルオフ ペダルオフ ペダルオフ

α = 1.5 + σ β = 0.75 + σ

状態の遷移にかかる時間

2.1

状態の遷移

2.2.2 アクセル・ブレーキ開度

アクセルとブレーキはオン・オフの切り替えでだけではなく,開度を設定する.アクセル開度 は

A = [0.0, 1.0]

,ブレーキ開度は

B = [0.0, 1.0]

と定義し,それぞれ,まったく踏まれていない 状態を

0.0

,いっぱいに踏まれている状態を

1.0

とする.

アクセル・ブレーキ開度は,自動車の状態

(2.2.1

)

と加減速踏み込み度

(2.1.1

)

によって決 定される.状態

1

または状態

3

のときは,ブレーキ開度は常に

0.0

である.同様に,状態

2

また は状態

3

のときは,アクセル開度は常に

0.0

である.

状態が遷移した単位時間後から,加減速踏み込み度によって開度は

1.0

に向かって徐々に大き くなる.

アクセル・ブレーキ開度は,いっぱいに踏み込まれた状態は

1.0

だが,通常走行状態では

0.8

を 上限とする.これは,非常時でない限り,アクセルやブレーキをいっぱいに踏み込んで加減速を することは考えにくいからである.

2.2.3 速度・向き

自動車の速度は,[

km/h

]で与えられる.また,自動車の向きは,

R = [0, 360)

[度]で与えら れ,

R = 0

[度]のとき,自動車は

x

軸の正の方向を向いているものとする.

(10)

2.2.4 位置座標

本モデルでは,自動車の位置を座標上の点

(P

x

, P

y

)

で表す.単純化のため,進行方向にむかっ て左先端の点を自動車の位置座標として定義する.

(x,y) 進行方向

2.2

位置座標

2.3 障害物の検知・判断

運転者は,危険認識距離に障害物や自分以外の自動車を検知したとき,安全な車間距離を維持 しながら,減速・加速の判断をする.本節では,運転者の障害物検知をするアルゴリズムを説明 する.

2.3.1 線分交差による障害物の認知判定

運転者は余裕認識距離・危険認識距離内にあるすべての障害物を認識する.障害物とは,マッ プ上の道路の境界・信号・坂道等の道路上のオブジェクト

(3.2.2

)(

以下,フィールドオブジェク トとする

)

と,自分以外の自動車の後方部分

(

以下,他車オブジェクトとする

)

であり,これらはす べて座標上の

2

点間を結ぶ線分として定義する.フィールドオブジェクトと他車オブジェクトを あわせて,障害物オブジェクトとする.

認知は,線分交差判定をすることにより判定する.自動車の位置座標と,余裕認識距離・危険 認識距離を結ぶ線分を定義することにより,この線分と道路上のオブジェクトや他の自動車と交 差しているかを判定することで,認知判定をする.

自動車の位置座標と,そこから進行方向にむかって余裕認識距離分進んだ点

(W

marginx

, W

marginy

)

を結ぶ線分を余裕認識距離線分,危険認識距離分進んだ点

(W

emergx

, W

emergy

)

を結ぶ線分を危険 認識距離線分とする

(

2.3)

(11)

余裕認識距離線分

危険認識距離線分

(P

x

, P

y

) (W

emerg x

, W

emerg y

)

(W

margin x

, W

margin y

)

2.3

余裕認識距離線分・危険認識距離線分

線分同士の交差を以下の要領で判定する

(

2.4,

2.5)

線分交差判定のアルゴリズム

step1

判定したい

2

つの線分をそれぞれ

L

1

= { P

1

(x

1

, y

1

), P

2

(x

2

, y

2

) }

L

2

= { P

3

(x

3

, y

3

), P

4

(x

4

, y

4

) }

とする.

L

1

L

2は標準の位置にあるものとする.

step2 3

(p

1

, p

2

, p

3

)

が時計回りかどうかを調べる関数を

C(p

1

, p

2

, p

3

) =

{ 1

(3

点が時計回り

)

1

(3

点は反時計回り

) (2.5)

とする.

step3 C(P

1

, P

2

, P

3

)C(P

1

, P

2

, P

4

) = −1

かつ

C(P

3

, P

4

, P

1

)C(P

3

, P

4

, P

2

) = 1

ならば交差する.

この線分交差判定により,障害物オブジェクトと余裕認識距離線分または危険認識距離線分と が交差していると判定された場合,運転者はその障害物オブジェクトを認知しているとする.

(12)

時計回り = 1 時計回り = 1

反時計回り = -1

反時計回り = -1

P

1

P

2

P

3

P

4

2.4

線分の交差判定:交差

時計回り = 1

反時計回り = -1

時計回り = 1

P

1

P

2

P

3

P

4

時計回り = 1

2.5

線分の交差判定:非交差

(13)

2.3.2 障害物認知状況による運転者の加減速判断

2.3.1

項の線分交差判定を用い,運転者が障害物と自動車がどのような関係にあるかを認識する

ことができる.

余裕認識距離線分と障害物オブジェクトが交差しているとき,自動車は何かしらの障害物に近 づいているので,減速する必要がある.このとき,アクセルペダルが踏まれている状態

(2.2.2

)

ならば,ペダル踏み替え時間

(

通常時

) α (2.1.2

)

だけペダルオフ状態を経て加減速踏み込み度 にしたがってブレーキペダルを踏み始める.ペダルオフ状態であれば,ペダル踏み替え時間によ らず,加減速踏み込み度にしたがってブレーキを踏み始める.

危険認識距離線分と障害物オブジェクトが交差しているとき,自動車は緊急に停止する必要が ある.このような状態は,例えば前方で信号が急に赤に変わったなどの場合が考えられる.この とき,アクセルペダルが踏まれている状態ならば,ペダル踏み替え時間

(

非常時

) β

だけペダルオ フ状態を経てブレーキ開度を

B = 1.0

とする.

余裕認識距離線分と危険認識距離線分が,どの障害物オブジェクトとも交差をしておらず,最 高速度に達していない状態であるならば,運転者は,加減速踏み込み度にしたがって,アクセル ペダルを踏み始める.このとき,自動車はアクセルオン状態となり,アクセル開度

A

は徐々に上 昇する.

2.4 位置座標の決定

この節では,運転者が障害物や自分以外の自動車を認識し,速度や状態に応じた判断に従った 操作を行い,自動車の位置座標が決定されるまでのアルゴリズムを説明する.

2.4.1 速度による移動距離

2.2.3

項の速度と向きより,単位時間ごとの移動距離[

m

]を決定する.本モデルでは,

(x, y)

標あたり

1.0

m

]とする.単位時間ごとの移動距離は以下の式より求められる.

x

i+1

= x

i

+ ν 1000

3600F cos( R π ) y

i+1

= y

i

+ ν 1000

3600F sin( R

π ) (2.6)

ただし,

F

はフレームレートであり,シミュレーションにおける単位時間

dt

を用いて以下の式 で決定する.

F = 1

dt (2.7)

2.4.2 位置座標決定までのアルゴリズム

自動車の状態・障害物オブジェクトの認知・運転者の判断から,単位時間後の自動車の位置座 標は以下の手順で決定する.

(14)

位置座標決定のアルゴリズム

step1

ペダル踏み替え時間中ならば,現在の状態をペダルオフとし,

step5

へ.

step2

すべてのフィールドオブジェクトと,危険認識距離線分・余裕認識距離線分の交差を判定

する.

1.

青状態の信号機は,判定対象としない.

2.

坂道の場合,フィールドの設定にしたがって自動車を減速させる.

3.

それ以外の場合,

(a)

危険認識距離線分と交差している場合,仮の遷移状態をブレーキオン状態・非常時 とし,

step5

へ.

(b)

余裕認識距離線分と交差している場合,仮の遷移状態をブレーキオン状態・通常時 とし,

step5

へ.

(c)

どちらでもない場合,

step3

へ.

step3

すべての他車オブジェクトと,危険認識距離線分・余裕認識距離線分の交差を判定する.

1.

危険認識距離線分と交差している場合,仮の遷移状態をブレーキオン状態・非常時と し,

step5

へ.

2.

余裕認識距離線分と交差している場合,仮の遷移状態をブレーキオン状態・通常時と し,

step5

へ.

3.

どちらでもない場合,

step4

へ.

step4 step2

から

step5

を経て,仮の遷移状態が未定の場合,

1.

最高速度に到達していない場合は,仮の遷移状態をアクセルオン状態とする.

2.

最高速度に到達している場合は,仮の遷移状態をペダルオフ状態とする.

step5 1.

単位時間前の状態がペダルオフ状態ならば,仮の遷移状態を確定する.

(a)

アクセルオン状態の場合で,アクセル開度

A < 0.8

ならば,ペダル踏み込み度に したがい,

A

i

= A

i1

+ k

とする.

(b)

現在の状態がブレーキオン状態で,ブレーキ開度

B < 0.8

ならば,ペダル踏み込 み度にしたがい,

B

i

= B

i−1

+ k

とする.

2.

単位時間前の状態がアクセルオン状態かつ仮の遷移状態がブレーキオン状態の場合,ま たは単位時間前の状態がブレーキオン状態かつ仮の遷移状態がアクセルオン状態の場 合,非常時・通常時にしたがいペダル踏み替え時間中となり,ペダルオフ状態へ遷移 する.

step6

現在の自動車の速度と向きにより,

2.4.1

項にしたがって単位時間後の位置座標を決定する.

(15)

3 章 シミュレーションモデルの実装

本章では,

2

章で構築したモデルをもとに,道路や自動車に適切なパラメータを与えシミュレー ションモデルの実装をする.本シミュレータでは,実装におけるフレームレートを

F = 15

とし,

単位時間

dt =

F1 とする.

まず,

3.1

節では,本研究でシミュレーションモデルの実装を行った実装環境を記す.

3.2

節で はシミュレーションを行うフィールドの設定し,次に

3.3

節で自動車の設定をし,発生させる.

3.1 実装環境

本シミュレータは,

Microsoft Visual C# 2005 Express Edition

を用いて

C# 2.0

および

OpenGL

で実装され,

Microsoft .NET Framework 2.0

のインストールされた

Windows

環境で動作する.

3.2 フィールドの設定

フィールドの設定では,シミュレーションを行う仮想世界の定義を行う.フィールドは,

2

次元

空間

(x, y)

上に定義され,座標の単位は[

m

]である.本節では,フィールドのパラメータ・フィー

ルド上に設定される道路のパラメータを説明する.

3.2.1 フィールドのパラメータ

シミュレーションを行う仮想世界を定義する.

最小座標

(F

minx

, F

miny

)

最大座標

(F

maxx

, F

maxy

)

交通量

T

最小座標・最大座標

フィールドを定義する最小の座標と最大の座標を定義する.シミュレーションを行うフィール ド全体は,最小座標から最大座標までの間にあるものとする.

交通量

交通量は,

T

秒おきに

1

台の自動車が発生するものと定義する.

(16)

3.2.2 フィールドオブジェクト

本研究では,フィールド上のオブジェクトとして以下の

3

つを設定する.

道路境界

信号機

坂道

発生点

フィールドはいくつか用意され,それらはメニューから切り替えを行うことことができる

(

3.1)

3.1

メニューによるフィールドの切り替え

また,それぞれのフィールドには定数として以下が設定される.

法定速度

V

max

km/h

道路境界

道路の境界は,道路を構成する境界であり,

2

点間を結ぶ線分として定義する.

始点

P

roado

= (x

roado

, y

roado

)

終点

P

roade

= (x

roade

, y

roade

)

道路境界は超えてはならない障害物オブジェクトとして運転者に認識される.

(17)

信号機

信号機には以下の

4

つのパラメータがある.

始点

P

signalo

= (x

signalo

, y

signalo

)

終点

P

signale

= (x

signale

, y

signale

)

状態

インターバル

I

sec

信号機も道路境界と同様に,

2

点間を結ぶ線分として定義する.また,信号機には信号を切り替 える間隔があり,これをインターバルとして定義する.信号機の状態には,

2

種類があり,これは信号機インターバル

I

sec

]にしたがって切り替えられる.

坂道

坂道もまた

2

点間を結ぶ線分として定義する.

始点

P

slopeo

= (x

slopeo

, y

slopeo

)

終点

P

slopee

= (x

slopee

, y

slopee

)

自動車は坂道を認識したとき,毎秒

1.5

km/h

]ずつスピードが落ちる.

発生点

発生点は,自動車が現れることのできる点として定義する.発生点は,以下の

2

つの要素から なる.

座標

AP

i

= (x

api

, y

api

)

向き

R

api

自動車は,交通量

(3.2.1

)

に定義された頻度で,一様分布にしたがう乱数によって発生点に定 義された点のうちの

1

つからフィールド上にあらわれるものとする.

3.2.3 本研究に用いるフィールド

フィールドは,片側

2

車線の大きな道路に片側

1

車線の道路が

2

本交差し,信号機のあるフィー ルドである

(

3.2)

.このフィールドは,幹線道路に小さな道路が交差するような道路を想定して いる.このフィールドでは,交通量と信号による混雑の様子を観察する.フィールドの設定値を 表

3.1

に示す.

(18)

3.2

フィールド

3.1

フィールドの設定値 法定速度

60

km/h

] 信号

1(

)

インターバル

60

sec

] 信号

2(

)

インターバル

30

sec

(19)

3.3 自動車の設定

フィールド上に現れる自動車を設定する.自動車はそれぞれ大きさや加速力など,車種ごとに 異なる特有の値を持つ.本研究では,以下の

3

種類のパラメータを定義する.

幅,長さ

(w, l)

m

加速性能,減速性能

(p

a

, p

b

)

最高速度補正

M

km/h

本研究では,数ある車種の中から,

5

つの一般的な車種に限って取り扱い,それぞれに対して固 有の値

(

以下,自動車性能とする

)

を設定する.表

3.2

にそれぞれの自動車性能を示す.

幅・長さはそれぞれの車種による一般的な大きさをあらわす.加減速性能は,普通乗用車

(5

ナ ンバー車

)

1.0

としたときの,相対値であらわす.また,

2.1.5

項の最高速度に対し,その自動 車の性能としてどの程度の速度が出るのかを補正するために最高速度補正を与えた.

3.2

自動車性能表

車種 幅[

m

] 長さ[

m

] 加速性能 減速性能 最高速度補正 普通乗用車

(5

ナンバー車

) 1.70 4.45 1.0 1.0 0.0

ミニバン

(3

ナンバー車

) 1.80 4.80 0.8 1.0 0.0

軽自動車

1.50 4.00 1.0 1.0 0.0

2t

トラック

2.00 6.00 0.6 0.8 -0.1

10t

トラック

2.50 10.0 0.5 0.7 -0.2

(20)

4 章 シミュレーション実験と考察

本章では,

2

章,

3

章によって構築・実装したシミュレーションにしたがって,交通流を発生さ せ,その様子を観察する.まず,

4.1

節では,本研究において交通量を計測する方法・指標につい て説明する.

4.2

節では,異なる交通量・異なる状況で混雑の様子がどのように変化するかを比較 する.

4.1 計測方法

混雑・渋滞の様子を観察するため,本研究ではそれぞれの設定に対して一定時間ごとにフィー ルド上に存在する自動車の総台数

T

total[台]と平均速度

ν

avg

km/h

]を計測する.平均速度

ν

avg は以下のように定義する.

ν

avg

= Σ

Ti=1total

ν

i

T

total

(4.1)

また,

[3]

を参考に,以下のように密度

D

を定義し,計測ごとの密度をグラフにプロットする.

D = T

total

K

total

(4.2)

ただし,

K

total[

km

]はフィールド上の道路の総距離である.例えば,

1

km

]片側

2

車線の道路

の総距離は

4

km

]である.

4.2 交通量の違いによる平均速度と密度変化

交通量による混雑の違いを,密度の変化を観察することにより比較する.

シミュレーション開始から十分時間経過後から計測を開始し,以後

60

秒ごとに指定秒後まで,

フィールド上の自動車の総台数と平均速度を記録する.結果を散布図にプロットする.

4.2.1 シミュレーションの設定

共通の設定は表

4.1

に示す.また,車種別の発生比率を表

4.2

に示す.

比較実験は,交通量

T

を,

T = 1.25

から,

0.25

ずつ段階的に

T = 3.0

まで増やし,密度・交 通量の変化を比較する.計測は,

60

秒ごとに

25

回行う.

このシミュレーションの様子を図

4.1

4.2

に示す.緑色はアクセルオン状態,赤色はブレーキ オン状態,黒色はペダルオフ状態である.

(21)

4.1

交通量による密度変化 共通の設定

設定項目 設定値

フィールド

1

法定速度

60

km/h

] 信号

1(

)

インターバル

60

sec

] 信号

2(

)

インターバル

30

sec

4.2

車種の比率

車種 比率

普通乗用車

(5

ナンバー車

) 0.4

ミニバン

(3

ナンバー車

) 0.2

軽自動車

0.2

2t

トラック

0.1

10t

トラック

0.1

4.1

シミュレーションの様子:

T = 1.5

(22)

4.2

シミュレーションの様子:

T = 2.25

(23)

4.2.2 結果

交通量の違いによる平均速度と密度変化のシミュレーションの結果を表に示す.時間経過にお ける平均時速の変化を表

4.3

に,密度の変化を表

4.4

に示した.

4.3

時間経過と平均速度変化

時間経過[

sec

/

交通量

T 1.25 1.5 1.75 2.0 2.25 2.5 2.75 3.0

0 26.68 37.95 45.27 33.87 50.95 43.85 54.13 35.51

60 28.82 43.65 39.67 42.67 39.27 42.07 42.09 39.13

120 28.55 36.31 43.46 37.88 48.54 38.66 50.31 37.11

180 28.93 41.21 38.27 38.60 46.20 43.41 43.02 43.33

240 26.77 35.12 48.18 32.52 47.41 40.16 43.57 45.03

300 28.55 39.34 40.82 39.73 43.26 43.65 40.10 49.40

360 25.17 31.43 47.27 34.26 53.01 46.11 51.61 42.43

420 25.81 37.73 42.78 40.37 43.16 42.21 43.44 37.98

480 23.83 34.11 50.36 35.66 48.88 43.84 47.85 45.76

540 23.52 35.23 41.97 42.31 41.64 46.10 47.24 39.95

600 17.69 32.22 46.72 37.37 49.73 42.43 51.85 37.69

660 18.96 37.72 40.95 42.67 40.98 45.35 44.49 46.38

720 23.51 33.78 48.39 36.30 48.80 36.27 55.22 36.60

780 21.25 34.82 40.50 43.43 45.07 40.55 44.41 42.12

840 22.73 29.27 46.62 31.96 49.35 37.89 55.66 39.70

900 20.99 35.11 39.63 41.98 42.41 38.67 38.38 40.19

960 21.81 28.60 49.26 33.78 50.59 40.30 48.12 35.51

1020 20.90 35.68 39.57 40.25 42.03 46.52 38.39 45.74

1080 23.16 27.65 45.79 36.80 52.55 42.97 53.24 48.16

1140 20.09 34.98 40.83 44.38 41.14 45.25 38.78 39.34

1200 21.72 29.73 44.35 43.27 49.96 44.89 52.26 39.75

1260 20.89 34.47 40.10 44.68 41.12 42.85 39.93 46.71

1320 21.55 23.69 47.53 44.63 50.78 48.70 53.85 37.22

1380 18.66 32.34 41.77 41.01 40.26 44.48 42.30 47.29

1440 20.51 26.37 48.54 39.54 52.77 39.57 52.68 48.38

時間経過と密度の変化

これらのシミュレーションを行った結果から得られる時間経過と密度の変化を図

4.3

に示す.こ の結果から,密度は一定の値まではあがるものの,ある値に達するとそれ以上は密度が高くなら ないことがわかる.

T = [1.75, 3.0]

では,交通量が減ったときの密度の減少も顕著には現れない.これは,交通量と

交通流が均衡状態となっており,一定の速度で流れているということである.また,信号機が一

(24)

定のインターバルで切り替わっているため,交わる

2

つの道路の交通量に差がある場合でも一定 時間赤信号を待たなければならないからである.

一方,

T = [1.25, 1.5]

では,密度が著しく上がっている.

4.4

時間経過と密度変化

時間経過[

sec

/

交通量

T 1.25 1.5 1.75 2.0 2.25 2.5 2.75 3.0

0 4.33 2.83 2.42 2.12 1.73 1.69 1.29 1.54

60 4.17 2.94 2.48 2.06 1.77 1.42 1.35 1.40

120 4.54 3.00 2.44 2.27 1.75 1.58 1.42 1.48

180 4.31 3.02 2.77 2.02 1.81 1.62 1.38 1.38

240 4.75 3.23 2.50 2.29 1.67 1.65 1.40 1.42

300 4.50 3.25 2.62 2.23 1.83 1.50 1.67 1.15

360 4.73 3.62 2.35 2.35 1.67 1.48 1.50 1.17

420 4.71 3.52 2.56 2.38 1.73 1.40 1.50 1.19

480 5.08 3.52 2.23 2.42 1.71 1.60 1.29 1.29

540 5.04 3.25 2.29 2.12 1.77 1.46 1.42 1.17

600 5.29 3.69 2.27 2.23 1.77 1.56 1.35 1.35

660 5.65 3.54 2.50 1.98 1.92 1.35 1.50 1.21

720 5.58 3.52 2.27 2.23 1.81 1.60 1.31 1.29

780 5.77 3.27 2.40 1.96 1.83 1.58 1.21 1.33

840 5.65 3.77 2.29 2.06 1.56 1.81 1.27 1.46

900 5.79 3.67 2.46 2.19 1.81 1.73 1.33 1.29

960 5.56 3.90 2.44 2.40 1.79 1.92 1.33 1.40

1020 5.92 3.90 2.40 2.27 2.02 1.56 1.50 1.38

1080 5.96 3.98 2.35 2.23 1.67 1.52 1.50 1.44

1140 5.98 4.02 2.50 2.06 1.67 1.42 1.54 1.04

1200 5.90 4.00 2.44 2.15 1.65 1.46 1.42 1.17

1260 6.29 3.88 2.40 1.75 1.83 1.40 1.44 1.17

1320 6.06 3.79 2.42 1.75 1.79 1.46 1.35 1.31

1380 6.27 3.77 2.60 1.69 1.83 1.29 1.04 1.29

1440 6.31 3.96 2.40 1.88 1.83 1.60 1.29 1.35

密度と平均速度の関係

密度と平均速度の関係を図

4.4

に示す.

60

秒ごとに

25

回の計測を

8

つの設定について行ったた め,図中には

200

の点がプロットされている.

グラフより,密度と平均速度には負の相関が見られる.すなわち,交通量が多く道路が混んで いると,それだけ平均速度が遅くなっている.しかし,時間経過と密度変化の結果で得られた考 察と同様,密度が下がってもある一定より平均速度が上がることはない.

(25)

0 1 2 3 4 5 6 7

0 120 240

360 480

600 720

840 960

1080 1200

1320 1440 時間経過 [sec]

密度 [台 / K]

1.25 1.5 1.75 2 2.25 2.5 2.75 3

交通量 T

4.3

時間経過と密度変化

0 10 20 30 40 50 60

0 1 2 3 4 5 6 7

密度 [台/K]

平均 速度

[k m/

h]

1.25 1.5 1.75 2 2.25 2.5 2.75 3

交通 量 T

4.4

密度と平均時速

(26)

5 章 結論

5.1 まとめ

マルチエージェントモデルを用いて,加速減速など運転者の判断から生じる自動車単位のミク ロな動きと,交差点での赤信号や交通量による混雑といったマクロな動きを表現する,交通流シ ミュレータを構築した.

交通量が一定以上になり密度が高まると,混雑が解消されず増え続けてしまう現象や,一定以 下の交通量では,交通量によらず平均速度や密度が変化しない様子が観察できた.道路や信号機の ような環境から受ける影響と,交通量や密度といった他のエージェントである自動車から受ける 影響で自己の判断を行い運転の操作を選択する様子

(

トップダウン

)

や,多くの自律したエージェ ントが交通流を作り出す

(

ボトムアップ

)

交通流シミュレータを構築できた.

エージェントである運転者と自動車に与えたミクロなルールの上でシミュレーションを行い,マ クロな現象を観察することができた.

5.2 今後の課題

今後の課題として以下の項目が挙げられる.

実験結果の密度と平均速度の数式化と解析

高速道路のような信号のない道路で発生する自然渋滞の表現

車線変更・追い越し・右左折といった,現実に起こりうる運転操作

交通量変化による信号インターバルの動的変更

(27)

謝辞

本研究を進めるにあたり,中央大学理工学部田口東教授に多大なるご指導,ご助言を頂きまし た.本研究の成果をこのような論文の形にまとめることができたのも,田口東教授の熱心で適切 なご指導によるものです.ここに,深く感謝いたします.

また,研究を進めていく上で,さまざまな場面で貴重なご助言を頂いた,海上技術安全研究所 の鳥海重喜氏,田中祐介氏,河野敬之氏,佐藤春樹氏をはじめとする田口研究室の皆様には大変 お世話になりました.心から感謝いたします.

(28)

参考文献

[1]

高玉圭樹

,

マルチエージェント学習

-

相互作用の謎に迫る

-,

コロナ社

, 2003

[2]

全日本交通安全協会

,

交通の教則

, 2007

[3]

西成活裕,渋滞学

,

新潮社

, 2006

図 3.2 フィールド
表 4.1 交通量による密度変化 共通の設定 設定項目 設定値 フィールド 1 法定速度 60 [ km/h ] 信号 1( 下 ) インターバル 60 [ sec ] 信号 2( 上 ) インターバル 30 [ sec ] 表 4.2 車種の比率車種 比率普通乗用車(5ナンバー車)0.4ミニバン(3ナンバー車)0.2軽自動車0.22tトラック0.1 10t トラック 0.1 図 4.1 シミュレーションの様子: T = 1.5
図 4.2 シミュレーションの様子: T = 2.25

参照

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