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あとがき
実は 3 人の著者は,専門は違うが,一時同じ研究室で研究していた同僚で ある.石浦は認知症,笹川はトリプレットリピート病,二井は酵母の分子生 物学が専門だが,三人は脳と心の分子生物学に興味を持っており,線虫を使っ たトリプレットリピート病モデルの作製や,酵母を用いたアルツハイマー病 γセクレターゼ再構成などの研究を行っていた.
同時に私たちは生命科学教育にも関心があり,どのようにして難解な脳科 学を大学生に講義するかという点についても試行錯誤を繰り返していた.東 京大学では,生命科学構造化センターという組織において大学生の生命科学 履修教材を作っており,石浦がセンター長だったときに教科書, IT 自習教材,
生命科学データベース,英語教材などを公表してどこからでもアクセスでき るようにしたが(http://www.csls.c.u-tokyo.ac.jp/),脳神経科学関連の入門 教材がなく,この分野だけが遅れを取っていた.そこで三人で協議し,分担 して新しい教材を作ることを思いついたのである.生命科学構造化センター は,現在は教養教育高度化機構・生命科学高度化部門に改組したが,本書の 成立に当たっても,この部門の協力を得た.
本書は,高校生の生物知識と一般常識を基礎として,誰にでも読める脳科 学の教科書を目指したもので,特にコラムには文系の方や特段の生命科学の 知識がない方にも,リラックスして読める最新知識をちりばめた.実際には 心の問題は,そう簡単に 1 つの分子の構造や化学反応で割り切れるものでは ないが,遺伝子変異やモデル動物の行動を通して,環境や学習では説明でき ない確実な事実もあることを本書から読み取っていただければ幸いである.
私たちは,本書の執筆に際しては,まず自分が楽しむことのできる教科書 を書こうと決めた.それがどの程度完成したかは読者の皆様の判断を仰ぐし かない.最後に編集部の野田昌宏さんには,全体の流れから内容に至るまで,
いろいろご助力をいただいた.この場を借りて感謝したい.
あとがき■