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日本の市町村における児童福祉費の扶助費の動向分析

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(1)

1 .地方総体としての地方財政計画が児童福祉に係る地方財政運営に及ぼす影響

現在、日本の社会福祉分野のサービスでは分権化が進展し、市町村優先主義の方向性が定められて おり、市町村を中心とした福祉行政の展開や福祉の基盤整備の推進が図られている。国が指針を示 し、それに基づく計画策定を地方自治体に義務づけることによって分権的に社会保障関係施策を拡 充している。その背景には、国が中心となって進める社会福祉サービスは画一的になりがちで、地 域住民が求める多様なニーズに対して基礎自治体である市町村が責任をもつ体制のほうが効果的で あり、有効性が高いという考え方がある

1

【要 旨】

現在、日本の社会福祉分野において、市町村が重要な役割を担っており、政策を実施するにあた り、必要な財源を確保することが重要になっている。本稿では、地方財政計画における一般財源の 確保が個別の市町村の政策選択に与える影響について、児童福祉分野の政策の実施状況における児 童福祉費の扶助費の財源内訳から類型化して財政力との関係を分析し、市町村の単独事業の意義と それに必要な財源の確保に向けた課題を考察する。

【目 次】

1.地方総体としての地方財政計画が児童福祉に係る 地方財政運営に及ぼす影響

2.総体としての市町村の児童福祉費の歳出内訳と財 源内訳の動向

3.個別の市町村における児童福祉費の扶助費の分析 4.児童福祉に係る市町村の単独事業の実施の意義と

必要な財源確保への課題

長嶋 佐央里 NAGASHIMA Saori A study on the Trend of Child Welfare Expenses in

Japanese Municipal Governments

日本の市町村における児童福祉費の扶助費の動向分析

*沖縄国際大学経済学部講師、沖縄経済環境研究所所員

(2)

特に、児童福祉に関しては、市町村の果たす役割は大きい。近年では、平成27年度から社会保 障・税一体改革の一環として本格的に施行された「子ども・子育て支援新制度」では、市町村が実 施主体であり、施設型給付などからなる子どものための教育・給付と、地域子ども・子育て支援事 業を実施する。また、従来の児童手当制度が子ども・子育て支援給付として位置づけられた。この 制度では、 「地域の実情に応じた」ものとなることを重視し、保育量の需給計画を定めるものとして、

政府の示す基本指針に即した5年を1期とした「市町村子ども・子育て支援事業計画」の策定が全市 町村に義務づけられるようになった。また、都道府県にも、「都道府県子ども・子育て支援事業支援 計画」の策定が義務づけられ、市町村計画の数値の積上げを基本に広域調整を踏まえた一定区域ご との量の見込みと確保方策の設定等が義務づけられている

2

。このように、国、都道府県、市町村は 相互に関係を持ちながら、役割分担を行い、児童福祉サービスを実施している。

続いて、社会保障関係費における国と地方を通じた財政の視点からみると、国と地方の歳出純計 額の目的別歳出額構成比では、平成28年度において社会保障関係費が最も大きな割合を示しており、

34 . 4%である

3

。この社会保障関係費のうち、民生費(年金関係を除く)の地方の占める割合は、平成 28年度では71%であり

4

、最終的に地方を通じて支出される割合は高い水準となっている。一方、歳 入における国と地方の財政関係をみると、地方の民生費に占める国からの財政移転の割合は、平成28 年度では32 . 1%である

5

。残りは地方税など地方の自主財源が充てられている。地方自治体は、社会福 祉の充実を図るため、国の施策に加え、地方の実情に応じた地方自治体独自の施策も実施し所得再分 配機能の役割を果たしている一方で、地方の自主財源を含め必要な財源の確保が重要となっている。

地方財政制度の財源の中心は、地方税であるべきであるが、日本では、自治体間の財政力格差が 大きいことから、実態としては地方交付税が重要となっている。個別の地方自治体に配分される地 方交付税を確保するためには、まず、地方財政計画で地方交付税の総額を確保する必要がある。こ こで、個別の地方自治体の必要な財源の確保について説明する

6

。図1に示すように、地方財政計画 により地方交付税を総額として確保し、各地方自治体に地方交付税の一部である普通交付税を配分 するために、基準財政需要額の総額を決定する。そして、基準財政需要額と基準財政収入額の算定 を通じて、普通交付税を全国の都道府県と市町村に配分する。個別の地方自治体への交付額は、基 準財政需要額から基準財政収入額を控除した額を基本として決定される。なお、基準財政需要額は 地方財政計画の歳出中一般財源対応分を算入するものある。また、基準財政需要額の地方税等対応 分と地方交付税対応分は、地方財政計画の歳入に占める地方税と地方交付税の割合によって変わる。

地方税が伸長して、地方交付税が圧縮されると、基準財政収入額の普通交付税に対する割合が増え ることになる。

社会保障制度との関連では、地方財計画の歳出のうち、一般行政経費が主なものとなる。一般行

政経費は、補助事業と単独事業に大別される。児童福祉との関連では、児童手当や私立保育所運営

費など国庫補助負担金が充当される補助事業費は、国の予算に連動して決まり、補助事業費のうち

の国庫補助負担金以外の一般財源を充てる部分「補助裏」も含めて地方財政計画に補助事業費とし

て計上する。地方交付税を通じて、地方自治体は補助事業を執行するだけの一般財源が確保できる。

(3)

一方、公立保育所運営費や地方自治体の独自施策の事業費など地方の独自財源が充てられる単独事 業は、社会保障関係費の増加等、国の予算の状況を適切に反映して計上することにより、財源の重 点的配分を図ることとしている。そのほか、少子化対策と関連した施策として、平成27年度以来、

「まち・ひと・しごと創生事業費」(単独事業分)が別枠で計上されている。

個別の地方自治体への地方交付税の配分について、普通交付税の配分基準となる基準財政需要額 には、地方財政計画で計上された施策については相応分の算入がされるものもある。たとえば、地 方財政計画に計上された「まち・ひと・しごと創生事業費」のうち、「人口減少等特別対策事業費」

については、人口を基本として必要な経費を普通交付税で算定することとした上で、まち・ひと・

しごと創生の「取組の必要度」と「取組の成果」を反映する。人口減少率が平均に比べて大きい団 体は、一般的にその分だけ地方創生の「取組の必要度」が高いと考えられるので、標準的な経費を 割増する。一方、人口の増加率が平均に比べて大きい団体は、一般的にその分だけ地方創生の取組 に多くの経費を投入して成果を出したと考えられるので、標準的な経費を割増する。こうして普通 交付税が増額される。この事業に関連し、人口減少抑制策や少子化対策に都道府県が市町村と連携 をし、積極的に子ども・子育て支援を行う団体もある

7

地方財政の一般財源の総額は、平成23年度以降、交付団体の一般財源総額を基準に前年度を下回 らない水準(一般財源総額実質同水準)とされ、基調として総額が伸びない状況にある。その一方 で、社会保障給付などの義務的経費の占める割合が上昇しているので、財源配分の自由度のある裁 量的経費に充てる財源が圧縮され、個別の地方自治体の予算編成に影響を与えることになる。特に、

対人サービスが主となる児童福祉をはじめとする社会福祉は、地域の実情に応じた施策の実施が困 難になる可能性がある。

また、地方財政計画で必要な一般財源総額が決まり、地方交付税総額が決まる。したがって、留

1

 地方財政計画と地方交付税の関係(平成

29

年度)

(出所)地方交付税制度研究会編『地方交付税のあらまし』平成30年度、16頁。

(4)

保財源総額が増加すると基準財政需要額は縮小するという関係になる。地方財政計画の歳出規模と それに伴う地方交付税総額が変わらないことを前提とすれば、基準財政需要額の総額は留保財源を どの程度に設定するのかと表裏一体の関係にある。

個別の地方自治体への配付額を決定する際に算定される基準財政収入額は、標準的な税収見込額 に0 . 75を乗じて算定する。残りの0 . 25の部分は、普通交付税による財政調整の対象として留保され ることから、一般にこの部分を留保財源という。地方税収の25%分である留保財源は、地方自治体 の財政運営の自由度を表す指標となる。しがって、普通交付税の交付団体であっても、留保財源に よる財政力格差が地方自治体の財政力格差を反映しているといえる。

このように、個別の地方自治体の地方交付税の額は、地方財政計画において地方交付税総額が決 定された後に、それを前提として配分額が決定される仕組みになっている。したがって、地方財政 計画における地方交付税総額の確保が重要なものとなる。

社会福祉分野に関連する財政分析の研究として、マクロの視点から、長嶋[12]は一般行政経費 について地方財政計画と決算を分析し、三位一体改革や社会保障・税一体改革によって自主財源で ある地方税は拡充されたが、一般財源総額実質同水準により一般財源が大きく増額せず、改革の効 果は限定的であることを示している。この結果については、星野[16]でも、地方財政計画の社会 保障の充実分が計上されているにもかかわらず、社会保障の単独事業の充実が図られたとはいえな いと指摘している。

また、市町村の社会保障分野の地方単独事業と財政力について、星野[15]は、人口規模や財政 力が単独事業に与える影響について回帰分析を行い、「子ども・子育て」分野での「保育所等」には 有意ではなかったが、「子育てそれ以外」には有意な結果を得ている。同様の分析では、別所[14]

が、財政力や人口構成が市区町村による子育て支援予算の市町村負担に与える影響について分析し、

財政力が高ければそれだけ子育て支援予算が多いという結果を得ている。

さらに、事例の研究として、星野[16]では、社会保障関係の地方単独事業について長野県3町 村を取り上げ、単独事業でも義務づけられた事業が多いことや県の補助事業が市町村間の格差是正 の役割を果たしていることを示している。一方、高橋[10]では、老人福祉財政について神奈川県 の分析を行い、市町村と県の補助事業は地方税収の割合が高いなど一般財源に余裕のある市町村で ないと継続的な実施が困難であると指摘している

8

これらの研究結果から、総じて、個別の市町村の財政力が政策の実施に少なからず影響を及ぼし

ており、地方財政計画による一般財源の確保が重要であることが示唆される。それらを踏まえ、本

稿では、地方総体としての一般財源の確保が個別の市町村の政策選択に与える影響について、児童

福祉費の扶助費の財源内訳と財政力から分析を行う。総体としての市町村の児童福祉費の動向を概

観し、次に政策の実施状況について財源内訳から類型化して財政力との関係を分析し、最後に、児

童福祉に係る市町村の単独事業の意義とそれに必要な財源の確保に向けた課題を考察する。

(5)

2 .総体としての市町村の児童福祉費の歳出内訳と財源内訳の動向

社会福祉分野においては、国の指針に基づく計画策定を地方自治体に義務づけることよって分権 的に社会保障関係施策を拡充してきた。平成12年度以降、社会保障施策が国の重点施策となってお り、児童福祉の分野では、子ども・子育て支援新制度の施行など、多くの国庫補助負担金等を伴う 事業が実施されている。ここでは、児童福祉費の歳出とその財源について、平成12年度以降の市町 村の単純合計の動向をみる。

児童福祉費の歳出総額の推移をみると、図2に示すとおり、平成12年度の3 . 2兆円から平成28年 度には7 . 5兆円と2倍強に増加し、歳出総額に占める割合は、平成12年度の6 . 1%から28年度には 13 . 0%に上昇した。児童福祉費の性質別の内訳をみると、平成12年度から28年度の間では大きく増 減もなく微減している一方で、扶助費は、先に述べたとおり、子ども手当の創出(のち、「児童手 当」)、社会保障・税一体改革による子ども・子育て新支援制度の実施、待機児童の解消に向けた事 業、少子化対策など、地方財政計画に社会保障の充実分を計上、普通交付税の配分に係る基準財政 需要額への算入を受けて増加傾向にある

9

次に、児童福祉費の財源内訳の推移について、図3に示すとおり、平成12年度以降、一般財源等は 増加傾向にある。これは、平成12年度から平成21年度までは、国庫補助負担金の一般財源化などの 国庫補助負担金の整理合理化が進められたことによる。平成22年度以降は、先に述べたとおり、社 会保障施策の充実による国庫補助負担金事業や、地方財源による事業が増加して一般財源等は国庫 支出金とともに増加しているが、その割合は低下傾向にあり、平成28年度では43 . 8%となっている。

続いて、児童福祉費の扶助費に補助事業と単独事業に区分してみる。ここでいう補助事業とは、国 庫補助負担金等を伴う事業のことであり、単独事業とは、国庫補助負担金等を伴わない事業のこと

2

 市町村の児童福祉費の性質別歳出の推移    (注)図中の棒の外側の数値は歳出総額の値である。

   (資料)総務省「地方財政統計年報」各年度決算により作成。

(6)

であり、地方自治体の財源のみで実施する事業である。市町村の単独事業は、(1)市町村独自の施 策を独自の財源のみで行う事業

10

、(2)国の補助事業での対象範囲の拡大やサービス水準の引上げ を市町村が独自判断で独自の財源から負担する国の補助事業の「上乗せ・横出し」、(3)都道府県支 出金を伴う補助事業、の3つに分類できる。

扶助費の内訳の推移をみると、図4に示すとおり、単独事業に比べ補助事業のほうが高い水準であ る。平成12年度から単独事業と補助事業の増加率はともに低かったが、平成22年度の子ども手当の 創設により補助事業が急増した。平成27年度以降は、子ども・子育て新支援制度や少子化対策が実 施され、単独事業ともに増加傾向にある。また、17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費は、扶助 費総額の増加と17歳以下人口の減少とが相まって、平成12年度の6 . 4万円から拡大傾向にあり、平 成28年度には約4 . 3倍の27 . 8万円となった

11

そして、児童福祉費の扶助費の単独事業と補助事業の構成比については、図5に示すとおり、一 貫して補助事業が単独事業に比べ高い水準で推移している。大きく増減はしていないが、平成22年 度以降、単独事業がわずかに増加し続けており、平成28年度には20 . 9%となった。これを財源内訳 からみると、図6に示すとおり、国費(国庫支出金)と地方財源(国庫支出金以外の財源)に分け てみると、平成12年度には国費と地方財源の比率が1:2であったが、徐々に国費の割合が増加した。

その後、三位一体改革による国庫補助負担金の一般財源化(平成16年度から平成18年度)などの国 庫補助負担金の整理合理化が進められたことにより、国費は割合とともに低下したが、平成22年度 に子ども手当が創設され、国費の割合が大幅に上昇し、国費と地方財源の比率が1:1となった。そ れ以降は、扶助費の増減はあるものの、国費と地方財源の比率は、おおむね2:3となり、再び地方 財源が上回っている。

3

 市町村の児童福祉費の財源内訳の推移      (注)図中の棒の外側の数値は財源総額の値である。

     (資料)総務省「地方財政統計年報」各年度により作成。

(7)

により

4

 市町村の児童福祉費の扶助費の推移

(注) 17歳以下人口は「国勢調査」から算出した。17歳以下人口は、平成12 〜 16年度は平成12 年、平成17 〜 21年度は平成17年、平成22 〜 26年度は平成22年、平成27、28年度は平成 27年の数値から、17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費を算出した。図中の棒の外側 の数値は歳出総額の値である。四捨五入してているので、合計額が合わない場合がある。

(資料)総務省「国勢調査」平成12年、平成17年、平成22年、平成27年、総務省「地方財政状況    

調査」各年度決算(ともに、政府統計の総合窓口(

e

Stat

)ウェブサイト)により作成。

5

 市町村の児童福祉費の扶助費の構成比の推移

(資料)総務省「地方財政状況調査」各年度決算(政府統計の総合窓口(

e

Stat

)ウェブサイト)により作成。

(8)

また、地方財源については、特に、近年、都道府県支出金が著しく増加している。その財源内訳 の割合は13%と低いが、市町村による都道府県の補助事業の実施の増加がうかがえる

12

。したがっ て、一般財源等の増加は、国の補助事業の地方負担分や市町村の独自施策の増加に加え、都道府県 の補助事業の市町村負担分の増加が要因であることが分かる。

総じて、国の施策や市町村の独自施策、都道府県の補助事業が拡充され、児童福祉費、特に扶助 費が増加している。扶助費では、国の補助事業が増加し、近年では都道府県の補助事業も増加し、

市町村の一般財源による負担が増加していることが見出せた。今後、保育の無償化をはじめ、子ど も・子育て支援や少子化対策は国や都道府県、市町村で継続的に拡充していくことが推測されるの で、市町村の一般財源の確保が重要となるといえる。

3 .個別の市町村における児童福祉費の扶助費の分析

2節では、市町村の総体としての児童福祉費の動向を考察した。ここでは、国の児童福祉に関す る施策が拡充し、地方財政計画における一般財源総額実質同水準により一般財源が大きく増額しな いことが個別の市町村の政策選択に与える影響について、児童福祉費の扶助費の財源内訳をもとに 類型して、財政力との関係の分析を行う。

対象期間は、社会保障・税一体改革の前の年度から最新の決算まで、平成25年度から平成28年度 間である。対象団体は、1 , 733団体とする

13

。市町村の類型については、政策の実施状況を児童福祉 費の扶助費の財源内訳に基づいて、次のように分類した。

児童福祉費の扶助費の財源内訳を、「国の補助事業」、「市町村の単独事業」、「市町村の単独事業で ある都道府県の補助事業」(以下「都道府県の補助事業」という)に3区分し、それらを組み合せて

6

 市町村の児童福祉費の扶助費の財源内訳の推移

 (注)図中の棒の外側の数値は財源総額の値である。四捨五入しているので、合計額が合わない場合がある。

 (資料)総務省「地方財政状況調査」各年度決算(政府統計の総合窓口(

e

Stat

)ウェブサイト)により作成。

(9)

8類型に分類した(表1参照)

14

。具体的には、 「国の補助事業」と「市町村の単独事業」については、

平成25年度から平成28年度間の平均変化率がプラスの値を補助事業の増加団体、マイナスの値を減 少団体とした。一方、「都道府県の補助事業」については、近年、増加傾向にあるので実施の有無と して分類することとし、平成28年度決算の単独事業のうちの都道府県支出金が0以上の場合を都道 府県の補助事業の実施団体、0の場合を実施なし団体とした。

また、組み合せた政策の実施の結果について、「17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費」を算 出し、そして平成25年度から平成28年度の平均変化率を算出し、プラスの値の団体を「増加団体」、

マイナスの値の団体を「減少団体」とし、この2つ区分において算出した8類型を比較する。財政力 を示す指標については、歳入に占める留保財源(以下「留保財源比率」という)とし

15

、平成28年 度決算から算出した。以上により、政策の実施状況8類型の留保財源比率の分布状況を比較し、政 策選択と財政力の関係を考察する。

市町村における児童福祉費の扶助費による実施状況の類型について、表1をみると、類型Ⅰは国 の補助事業、単独事業の財政規模が増加し、都道府県の補助事業を実施している団体であり、これ に分類される団体は1 , 179団体と最も多い。一方、類型Ⅷは、国の補助事業、単独事業の財政規模 が減少し、都道府県の補助事業を実施していない団体であり、これに分類される団体は16団体と最 も少ない。

また、表1には、17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費について、平成25年度から平成28年度 間の平均変化率がプラスの値を増加団体、マイナスの値を減少団体とし、市町村の児童福祉費の扶 助費の8類型ごとの団体数を示している。その増加団体は1 , 627団体、減少団体は106団体と、全体 の94%の団体で増加している。これは、平成27年度から子ども・子育て新支援制度に係る施策と いった社会保障の充実分などが地方財政計画の一般行政経費に計上され、普通交付税の配分に係る 基準財政需要額への算入を受けたことにより増加団体が多いことがうかがえる。また、減少団体106 団体は、人口10万人未満の都市、町村で構成される。

歳出―扶助費比率の増減は、対象期間で児童福祉費の扶助費に配分される割合の変化を示す指標 であり、17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費が増減する要因となる。17歳以下人口当たり児童 福祉費の扶助費の増加団体のうち、歳出―扶助費比率の増加団体は、1 , 064団体であり、全体の64%

を占める。都道府県の補助事業を実施していない団体である類型Ⅱ、類型Ⅳ、類型Ⅵは、歳出―扶 助費比率の増加団体の割合が少ないことが特徴である。また、扶助対象である17歳以下人口比率の 減少団体は、1 , 495団体で、全体の92%を占める。このことは、児童福祉費の扶助費はほとんど変 化がない、減少している場合に、17歳以下人口が減少すると、実質的に17歳以下人口当たり児童福 祉費の扶助費が増加する団体もあるといえる。

一方、17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費の減少団体では、歳出―扶助費比率の減少団体の

割合が多い。また、17歳以下人口比率の減少団体は56団体、全体の53%であり増加団体に比べその

割合は低い。このことから、17歳以下人口が増加しているが、地方自治体として扶助費に充てる財

源が減少し、その結果、17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費が減少した団体が多いことが推測

(10)

される。さらに、類型Ⅴ、類型Ⅵ、類型Ⅶ、類型Ⅷは、国の補助事業の規模が対象期間で減少して いる団体であり、財政力の大きさが関係していることもうかがえる。

表2は、17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費の増減団体別に、17歳以下人口比率と留保財源 比率を示したものである

16

。増加団体と減少団体の17歳以下人口比率の平均値を比べると、増加団 体では減少団体に比べ低い。また、留保財源比率の中央値をみると、増加団体では減少団体に比べ 高い。増加団体については、独立性の検定により、8類型間で17歳以下人口比率と政策の実施状況 との間に何らかの関係があることが示された。このことは、表1の考察と同様に、17歳以下人口が 減少すると、実質的に17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費が増加する団体があると推測され る。また、留保財源比率との間にも何らかの関連があることが示され、財政力の大きさが政策の選 択に影響を与えているといえる。

一方、減少団体では、8類型間で17歳以下人口比率と政策の実施状況との間に何らかの関係があ ることが示された。17歳以下人口が増加すると、実質的に17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費 が減少する団体があると推測される。また、留保財源比率との間には何ら関係がないことが示され た。減少団体では、どの政策を選択するかは、財政力とは関係がないと推測される。

続いて、扶助費の8類型と平成28年度決算の留保財源比率の分布の関係を考察する。図7と図8は、

8類型を17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費の増加団体、減少団体ごとに示し、それぞれ留保 財源比率の中央値が高い順に示したものである。

1

 市町村における児童福祉費の扶助費による実施状況の類型

(11)

増加団体について、図7に示すとおり、留保財源比率の中央値が最も高い類型が類型Ⅴ、次いで類 型Ⅰ、類型Ⅲととなっている。これら3つ類型は、都道府県の補助事業を実施している団体である。

国の補助事業、市町村の単独事業ともに増加、都道府県の補助事業を実施している類型Ⅰは1 , 179団 体で増加団体数の73%を占めている。留保財源比率の分布をみると、2 . 5%以上5 . 0%未満の団体が 最も多く、337団体で28 . 6%を占める。留保財源比率の低い団体でも、国の補助事業、市町村の単 独事業ともに増加、都道府県の補助事業を実施していることから、児童福祉に関する政策に重点を 置いている団体があることがうかがえる。

国の補助事業は減少する一方で、都道府県の補助事業は実施している類型Ⅴの留保財源比率の 分布をみると、類型Ⅰと同様に2 . 5%以上5 . 0%未満の団体が最も多く、19団体で23 . 8%を占めるが、

2

 市町村における

17

歳以下人口当たり児童福祉の扶助費の記述統計量

(12)

7 . 5%以上10 . 0%未満の団体も17団体で21 . 3%とほぼ同じ割合であり、他の類型に比べ、最も高い割 合を示している。このことから、国の補助事業ではなく、地域の実情に応じた政策が優先され、単 独事業が増加、都道府県の補助事業を実施していることがうかがえる。

類型Ⅲでは、17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費の増加は、国の補助事業の増加が一因であ るといえる。また、単独事業の規模が減少している一方で、都道府県の補助事業を実施しているこ とから、全額市町村の負担ではなく、都道府県からの補助を受けることで市町村の負担分を少なく している団体であることもうかがえる。

都道府県の補助事業を実施していない類型Ⅱ、類型Ⅳ、類型Ⅵは、増加団体全体の留保財源比率 の中央値を大きく下回っている。留保財源比率が5 . 0%未満の団体は、類型Ⅱでは全体の約7割、類 型Ⅳでは全体の65%を占め、財政力の弱い団体が多い。なお、類型Ⅳでは、補助事業のみを実施し ている団体もある。そして、類型Ⅵは、留保財源比率が0%以上2 . 5%未満の団体が53 . 8%を占めて いる。また、表2に示した17歳以下人口比率が低い団体が多く、表1に示した歳出―扶助費比率が 低い団体が多い。このことは、先の考察と同様、児童福祉費の扶助費はほとんど変化がない、減少 している場合に、17歳以下人口が減少すると、実質的に17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費が 増加する団体が多いことが推測でき、少なからず財政力と関係があるといえる。

次に、17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費の減少団体をみると、独立性の検定により、8類 型間で、政策の実施状況と財政力との間に何ら関連がないことが示された。それは、留保財源比率 の分布の傾向は、類型間でほぼ同様であることが見出せる。

7

 市町村における

17

歳以下人口当たり児童福祉の扶助費の留保財源比率の分布

17

歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費・増加団体】

(注)留保財源比率は、平成28年度決算から算出した。構成比の前の数値は、当該団体数を示している。

(資料)総務省「国勢調査」平成22年、平成27年、総務省「地方財政状況調査」平成25 〜 28年度決算(と    

もに、政府統計の総合窓口(

e

Stat

)ウェブサイト)により作成。

(13)

図8に示すとおり、総じて、国の補助事業の規模が増加していること、都道府県の補助事業を実 施している団体で、留保財源比率が高いことが分かる。

詳細をみると、類型Ⅲと類型Ⅳは、国の補助事業が増加する一方で、単独事業が減少しており、こ のことが17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費の減少要因となっている。先に示した増加団体の 類型Ⅲと類型Ⅳは、国の補助事業が17歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費の増加要因であった。

これらの類型の留保財源比率の分布の状況を比較すると、増加団体に比べ減少団体の留保財源比率 が低い団体が多いというわけではないが、財政力が弱い団体では、単独事業の増加が困難であるこ とがうかがえる。

類型Ⅴ、類型Ⅵ、類型Ⅶ、類型Ⅷにおいては、国の補助事業の減少が17歳以下人口当たり児童 福祉費の扶助費の減少の大きな要因であるといえる。ただし、類型Ⅴでは、単独事業の規模を増加、

都道府県の補助事業を実施していることから、当該団体の実情に応じた政策の実施に関し、限られ た財源で有効的と考えられる政策の選択をしているということも推測できる。

ここに分類される団体は、先に述べたとおり、人口10万人未満の市、町村で、比較的小規模自治 体が多い。小規模自治体では、公債費の負担が大きく、財源を事業費に充てることができない団体 が多く、国の補助事業への市町村の負担が困難であり、また、市町村財源のみの事業の財政規模も 小さいことがうかがえる。このことから、政策の優先順位に、財政状況が少なからず影響を与えて いることが推測できる。

これらの分析から、個別の市町村の政策選択と財政力との関係から、都道府県の補助事業の実施状

8

 市町村における

17

歳以下人口当たり児童福祉の扶助費の留保財源比率の分布

17

歳以下人口当たり児童福祉費の扶助費・減少団体】

(注)留保財源比率は、平成28年度決算から算出した。構成比の前の数値は、当該団体数を示している。

(資料)総務省「国勢調査」平成22年、平成27年、総務省「地方財政状況調査」平成25 〜 28年度決算(と    

もに、政府統計の総合窓口(

e

Stat

)ウェブサイト)により作成。

(14)

況に着目すると、以下のように推測できる。都道府県の補助事業を実施している団体について、国 の補助事業、市町村の単独事業ともに増加、都道府県の補助事業を実施している類型Ⅰでは、比較 的財政に余裕がある団体であるといえる。また、財政力とは関係なく、児童福祉の政策の優先度が 高い団体であることもうかがえる。

一方、類型Ⅲ、類型Ⅴ、類型Ⅶは、都道府県の補助事業の実施により市町村の負担分を抑える類 型と考えられる。市町村の単独事業は減少しているが、都道府県の補助事業は実施している類型Ⅲ は、全額市町村の負担ではなく、都道府県からの補助を受けることで市町村の負担分を抑えている 団体であるといえる。国の補助事業は減少しており、都道府県の補助事業を実施している類型Ⅴで は、国と都道府県の補助事業に対する裏負担の額が比較され、都道府県の補助事業を選択した団体 であることがうかがえる。国の補助事業、市町村の単独事業はともに減少、都道府県の補助事業を 実施している類型Ⅶは、国の補助事業や市町村の全額負担の単独事業を実施する財源がなく、都道 府県の補助事業を実施している団体であるといえる。

また、見方を変えれば、比較的財政力の弱い団体での都道府県の補助事業の実施は、当該団体の 実情に応じた政策の実施に関し、限られた財源で有効的と考えられる政策を選択しているというこ とも推測できる。

4 .児童福祉に係る市町村の単独事業の実施の意義と必要な財源確保への課題

本稿では、個別の市町村の政策選択に与える影響について、児童福祉費の扶助費の財源内訳をも とに類型して、財政力との関係の分析を行った。その結果、政策の選択には、少なからず財政力の 影響があること、また、財政力が低い団体でも、限られた財源のなかで都道府県の補助事業を実施 するなど、地域の実情に応じた政策を実施していることが推測された。

以上の結果を踏まえ、児童福祉に市町村の単独事業の意義とそれに必要な財源の確保に向けた課 題を考察する。

市町村の単独事業は、財政上の分類では、地方自治体の地方交付税を含む独自財源で実施する事 業である。それは、地方の独自事業として、地域の実情などに応じたサービスを提供する事業であ り、国庫補助事業と連携して、社会保障制度全体が拡充していくことが望ましい。その独自事業は、

国よりも先駆的で、サービス水準が高く、対象範囲も広い。特に、近年は、児童福祉分野に関わる 都道府県の補助事業が増加し、それが市町村の政策選択に加わることで、財政力の強い団体や財政 力が強いとはいえない団体も実施している。そうすると、市町村の政策選択は、国の補助事業、都 道府県の補助事業、市町村の独自施策の3択となる。国の補助事業は、裏負担と政策の意図、目的 などによって選択されることになる。国の補助事業も都道府県の補助事業で誘導されるとの指摘も あるが、地域の実情に応じた事業であれば、国の補助事業に都道府県の補助事業が優先される場合 があってよいと考える。

また、子育て支援などの少子化対策は、人口減少時代において優先度が高い政策の一つであり、

その対応には、先駆的な政策が重要となる。財政力が強い地方自治体では先駆的政策も実施できる。

(15)

一方、財政力が弱い地方自治体では都道府県の補助事業の活用も実施することが難しく、少子化は さらに進行することになるだろう。

人口減少や少子高齢化が進行していくなかにあって、必要な一般財源を確保し、地方交付税の配 分、基準財政需要額への算入なども考慮すべきである。近年、国庫補助負担事業については毎年度 不用が生じており、その地方負担分についても不用が生じていることとなる。この点については精 査が必要ではあるが、一般行政経費の単独事業を拡大することも含め、財政調整制度のあり方を検 討すべきであろう。

本稿では、財政の観点から政策の選択と財政力の関係を整理した。地方自治体の歳出の規模と政 策の優先順位は必ずしも一致しているとはいえない。また、市町村の単独事業の内容について、市 町村独自の施策を独自の財源のみで行う事業、国の補助事業での対象範囲の拡大やサービス水準の 引上げを市町村が独自判断で独自の財源から負担する国の補助事業の「上乗せ・横出し」、都道府県 支出金を伴う補助事業に係る事業内容と市町村の実施状況などについて、精査する必要がある。こ れらの点については、聞き取り調査を行うなど、詳細な分析が必要であると考える。

1磯部・府川編著(2017、224頁)を参照。

2衣笠(2018、194頁)を参照。

3総務省編(2018)『地方財政白書』平成30年度版、3頁を参照。

4前掲書、4頁を参照。

5前掲書、第32表、資50頁により算出。

6地方財政計画や地方交付税制度については、黒田(2018)、小西(2018)を参照した。

7「特集2015年度都道府県予算3

.

5

%

増:法人2税伸び、消費増税も追い風結婚支援や女性活躍、移住促進 に重点」『日経グローカル』(第266号、2015年4月20日、15頁、28

-

31頁)、「特集 2016年度都道府県予 算、0

.

3

%

増地方創生やマイナンバー対策に重点」『日経グローカル』(第289号、2016年4月4日、16頁、

27頁)を参照。

8市町村が県の補助金を充当した県の補助事業は、国庫補助負担金が充当されないため、地方単独事業で ある。

9扶助費には、現金や現物の別を問わず、被扶助者に対して支給されたものを計上している。児童福祉費 の扶助費として、児童手当、児童扶養手当、私立保育所保育委託、公立保育所運営費、私立児童福祉施 設補助などがある。

10公立保育所運営費など一部は法令で決められた費目に充てられる。

11児童福祉法での「児童」の定義を「満18歳に満たない者」と規定していることに則して、17歳以下人口 当たり児童福祉費の扶助費とした。

12市町村の実施状況は不明であるが、平成28年度には次のような児童福祉に係る都道府県の補助事業が実 施されている。山梨県では、第1子の年齢に関わらず、第2子以降の3歳未満児の保育料を無償化にして

(16)

いる県内市町村に助成を行っている。和歌山県では、①第1、2子の年齢を問わない②保育所、幼稚園の ほか無認可保育所や企業内の託児所、発達障害のある子どもを預かる「児童発達支援センター」も対象 施設に含めるなどの条件で保育料を無償している市町村に助成を行っている。島根県では県内市町村が 独自に保育料の軽減措置を実施してきたが、新年度から3歳未満なら第1子、第2子でも市町村が定める 保育料の3分の1を軽減する。(「特集2016年度都道府県予算、0

.

3

%

増地方創生やマイナンバー対策に重 点」『日経グローカル』第289号、2016年4月4日、16頁、27頁を参照)。

13平成28年度決算の団体数から、平成25年度から平成28年度の間に合併した団体と、扶助費の内訳の数値 に不備があると思われる団体、東日本大震災により国勢調査から人口の数値が得られなかった団体を除 いている。また、特別区を含み、一部事務組合を除いている。

14平成25年度から平成28年度のすべての年度において単独事業を実施していない団体は、「単独・減」に 分類している。

15留保財源は、標準税収入から基準財政収入額を控除した額とした。

16ここでは示していないが、1

,

733団体における17歳以下人口比率の平均値は14

.

7%、留保財源比率の中央 値は5

.

5%である。

参考文献

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180、12月号、209

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45

-

74.

(18)

参照

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