六
大
體
大
に
就
て
金
山
穆
韶
十 一 上 來 一 般 佛 教 の 教 理 上 よ り 見 た る 六 大 體 大 説 の 立 場 、 及 び 大 師 が 六 大 説 を 立 す る に 當 り 依 憑 と し 給 ひ し 經 文 等 に つ き 一 往 述 ぶ る と こ ろ あ り し が ゆ ゑ 、 以 下 正 し く 六 大 説 を 明 か さ う と 思 ふ 。 六 大 説 を 釋 す る に は 種 多 の 方 面 よ り の 觀 察 を 要 す る も 、 先 き に 述 べ し が 如 く 六 大 體 大 は こ れ 如 來 の 自 覺 自 證 の 果 體 で あ る 。 隨 て 六 大 と は 大 日 如 來 の 三 摩 地 な り 、 五 佛 の 三 摩 地 な り 、 一 切 如 來 の 三 摩 地 に し て 、 ま た 一 切 衆 生 の 菩 提 心 體 な る こ と を 了 知 す る こ と が 、 六 大 説 を 解 す る 關 鍵 で あ る 。 さ れ ば 密 教 の 教 理 上 よ り 更 に こ の 義 に 言 及 し よ う と 思 ふ 。 凡 そ 佛 教 に 二 つ の 途 が あ る 。 一 は 我 等 衆 生 の 妄 分 別 た る 無 明 煩 惱 を 滅 し 、 寂 滅 に 歸 す る こ と を 教 ゆ る も の 、 即 ち 生 死 よ り 涅 槃 に 、 有 爲 よ り 無 爲 に 、 生 滅 よ り 眞 如 に 、 有 限 よ り 無 限 に 、 差 別 よ り 平 等 に 有 よ り 空 に 、 因 よ り 果 に 、 此 岸 よ り 彼 岸 に 至 ら ん こ と を 示 す 途 に し て 、 一 は 妄 想 分 別 の 絶 離 の 極 致 た る 如 來 果 體 に 直 住 す る 教 で あ る 、 即 ち 直 に 無 限 に 住 し 、 永 劫 無 限 の 見 地 よ り 一 切 を 見 ん と す る 途 で あ 六 夫 體 大 に 就 て 一 五六 大 體 大 に 就 て 一 六 る 。 後 者 は 眞 言 密 教 の 立 場 な る が 眞 言 密 教 は 入 佛 道 の 最 初 よ り 佛 地 の 三 昧 道 に 住 す る 教 な り 、 直 佳 月 宮 の 教 な り 等 と 云 ふ は 、 凡 て 如 上 の 秘 旨 を 語 る も の で あ る 。 ま た 眞 言 密 教 は 從 凡 入 佛 位 の 階 級 を 明 す に 初 地 の 一 位 を 説 き 、 或 は 因 行 果 の 修 生 の 五 轉 も 、 こ れ 初 地 の 上 に 建 立 す る を 以 て 經 の 正 意 と な す と い ひ 、 ま た は 初 地 の 前 に 六 無 畏 の 階 級 を 立 て 初 無 畏 發 心 を 説 く も 、 こ れ 次 入 識 發 心 に し て 眞 言 行 者 は 發 心 の 最 初 よ り 、 生 佛 不 二 の 三 味 耶 戒 を 受 け 、 三 密 平 等 の 法 門 を 修 す る も の に し て 、 六 無 畏 を 經 て 初 地 に 契 證 す と 云 ふ も 、 た や こ れ 生 佛 不 二 の 心 地 の 開 顯 の 淺 深 に 外 な ら す 等 の 説 は 、 凡 て こ れ 眞 言 密 教 は 入 佛 道 の 最 初 よ り 如 來 果 體 に 歸 入 し 、 如 來 果 地 の う し ち に 分 別 妄 念 を 空 う し 感 應 道 交 、 入 我 々 入 一 念 に 佛 智 を 成 就 す る 法 門 な る こ と を 明 す も の で あ る 。 一 切 諸 法 は 皆 こ れ 如 來 の 本 誓 三 昧 耶 を 表 現 す る 差 別 智 印 に し て 、 事 々 の 當 位 に 絶 對価 値 を 見 ん と す る 大 師 の
若
能
明
察
密
號
名
字
深
開
荘
嚴
秘
藏
。
則
地
獄
天
堂。
佛
性
闡
提
。
煩
惱
菩
提
。
生
死
涅
槃
。
邊
邪
中
正
。
空
有
偏
圓
二 乗 一 乗 。 皆 是 自 心 佛 之 名 字 。 焉 捨 焉 取 。 等 の 秘 釋 は 能 所 分 別 を 混 し 、 法 爾 瑜 伽 の 能 所 た る 理 智 不 二 の 菩 提 心 體 に 契 證 せ ば 、 秘 密 曼 荼 羅 の 果 體 を 現 身 に 體得 せ ら る ゝ 秘 旨 を 明 す も の で あ る 。 而 し て 六 大 無 碍 常 瑜 伽 の 説 は 、 こ れ 果 體 爲 本 の 秘 密 教 の 原 理 を 開 示 せ ら れ た る も の に し て 、 秘 密 曼 荼 羅 の 果 體 よ り い へ ば 、 一 切 諸 法 は 六 大 法 身 の 表 現 に し て 、 萬 法 は 當 位 に 於 て 色 心 不 二 の 毘 盧 遮 那 具 體 を 呈 露 せ る 曼 荼 羅 體 な る 秘 義 と 、 滅 應 道 交 、 入 我 々 入現 身 に 佛 身 を 體 得 す る 修 生 三 密 の 成 す る 理 趣 を 開 演 せ ら れ た る も の で あ る 。 眞 言 密 教 は 果 上 の 法 門 な る こ と 、 及 び 顯 密 二 教 に 因 果 二 分 の 異 な り あ る 等 の こ と は 、 二 教 論 、 寳 錦 等 大 師 の 御 作 の 書 の 處 々 に 示 さ れ た れ ば 、 密 教 を 教 理 上 よ り 解 せ ん と す る も の ゝ 等 し く 知 れ る と こ ろ な る も 、 こ は 六 大 體 大 の 實 義 を 解 す る に 重 要 な る 點 な る ゆ ゑ 、 兩 部 大 經 の 開 題 の 文 を 引 用 し 、 更 に そ の 意 を 述 ぶ る で あ ら う 。 大 師 の 金 剛 頂 經 の 開 題 に 曰 く
蝸
角
民
盲
羅
喉
。
蚊
腋
族
聾
三
大
鵬
。
况
乎
法
佛
三
密
四
種
言
語
不
能
及
。
曼
荼
四
身
九
種
心
識
不
得
縁
。
是
故
名
言
絶
而
機
水
涸。
身
土
隠
而
應
月
没
。
大
恵
懇
請
能
仁
不
許
。
迦
葉
至
扣
寂
尊
猶
悶
。
海
妙
但
見
月
光
。
地
藏
略
讃
日
蔽
。
大
術
稱
其
絶
離
。
地
論
顯
其
不
説
。
三
大
異
域
一
心
別
源
。
廢
詮
之
客
憩
郊
放
牛
。
絶
慮
之
賓
臨 廟 待 鶏 。 冰 照 椎 輪 摧轅 染 淨 之 岳 。 水 波 游 艇 折 揖 風 水 之 海 。 以 上 の 釋 は 顯 教 の 大 乗 教 た る 法 相 、 三 論 、 天 台 、 華 嚴 も 如 來 自 證 の 果 體 を 開 説 せ ざ る こ と を 明 す も の で あ る 。 即 ち 人 法 二 無 我 、 入 不 中 道 、 三 諦 圓 融 、 事 々 無 碍 法 界 觀 等 は 皆 こ れ 因 分 の 衆 生 の 妄 分 別 を 絶 離 す る を 宗 と す る も の に し て 、 そ の 絶 離 の 極 致 に 顯 は る ゝ 如 來 の 自 覺 自 證 の 果 地 の 實 相 を 開 説 せ ざ る こ と を 述 べ し も の で あ る 。 衣 に 如 來 内 證 の 果 境 を 開 演 す も る の は 眞 言密 教 な る こ と を 明 か し て 妙 雲 開 塔 之 朝 。 金 薩 灌 頂 之 時 。 三 密 秘 藏 嚇 神 光 而 曜 大 虚 。 五 智 大 我 湛 妙 相 以 坐 靈 臺 。 十 六 輪 王 六 大 體 大 に 就 て 一 七六 大 體 大 に 就 て 一 八
各
領
自
國
。
四
攝
宰
輔
分
職
利
他
。
恒
沙
萬
徳
森
羅
自
居
。
無
盡
荘
嚴
塵
麻
非
喩
。
各
奉
大
日
之
埀
拱
。
如
衆
星
共
北
辰
。
三
十
七
圓
智
微
細
住
自
然
。
四
種
曼
荼
羅
本
居
金
剛
性
。四
種
法
身
共
陳
斯
道
。
十
八
瑜
伽
同
示
此
趣 。 斯 乃 不 捨 此 身 頓 證 傭 位 。 不 共 佛 法 速 疾 神 通 之 教 也 云 云 以 上 は 金 剛 頂 經 は こ れ 諸 經 論 絶 離 の 、 如 來 自 證 の 果 界 の 實 相 を 開 説 す る も の な る こ と を 明 す も の な る が 、 金 剛 頂 經 と 同 じ く 大 日 經 も ま た 如 來 自 證 の 境 を 開 演 せ る も の で あ る 。 大 師 の 大 日 經 開 題 に 曰 く夫
法
界
淨
心
超
十
地以
絶
絶
。
一
如
本
覺
孕
三
身
而
離
離
。
况
復
曼
荼
性
佛
圓
圓
之
又
圓
。
大
我
眞
言
本
有
之
又
本
。
風
水
之
龍
不
得
動
其
波
瀾
。
業
轉
之
霧
不
能
蔽
其
赫
日
。
恒
沙
眷
属
鎭
住
自
心
之
宮
。
無
盡
荘
嚴
優
遊
本
初
之
殿
。
然
非
輪
王
之
性
金
剛
之
種
。
誰
能
見
三
密
之
曼
荼
。
聞
四
印
之
神
秘
。
所
謂
大
毘
盧
遮
那
成
佛
神
變
加 持 經 者 。 是 則 諸 佛 之 大 秘 衆 生 之 極 妙 。 云 云 か く 兩 部 大 經 は こ れ 如 來 の 自 覺 自 證 の 果 體 の 實 相 を 開 説 せ る も の に し て 、 六 大 體 大 と は こ の 自 覺 の 果 體 な り と は 、 こ れ 大 師 の 教 義 の 中 樞 で あ る 。 き れ ば 中 古 の 宗 學 者 は 齊 し く 大 師 の 教 義 の 正 意 の 發 揮 に つ と め し も の で あ る 。 例 へ ば 宥 快 法 印 の 大 日 經 住 心 品 疏 の 鋤 に 曰 く 眞 言 自 宗 ノ 意 ハ 兩 部 ノ 大 經 ヲ 以 テ 所 依 ト 爲 ス 。 愛 ヲ 以 テ 大 師 釋 シ テ 云 ク 、 眞 言 密 教 爾 部 秘 藏 是 法 身 住 金 剛 法 界 宮 及 眞 言 宮 殿 等 自 受 法 樂 故 所 演 説 文 此 ノ 意 兩 部 ノ 大 經 ハ 諸 佛 理 智 ノ 體 性 、 衆 生 色 心 ノ 實 相 ヲ 開 示 ス ル 也 。 爰 ヲ 以 テ 大 師 當 經 ノ 開 題 ニ 大毘 盧 遮 那 成 佛 神 變 加 持 經 者 。 是 則 諸 佛 之 大 秘 衆 生 之 極 妙 文 此 理 智 色 心 、 生 佛 二 界 ハ 本 來 不 二 則 一 ノ 故 ニ 兩 部 又 タ 不 二 ノ 體 性 ナ リ (中 略 ) 他 宗 ノ 意 ハ 差 別 ヲ 會 シ ヲ 一 味 ニ 歸 ス ル ヲ 所 宗 ト 爲 ス 。 法 相 ノ 廢 詮 一 實 、 三 論 ノ 獨 空 畢 竟 ノ 理 。 天 台 ノ一 乗 一 如 ノ 談 、 華 嚴 ノ 智 寂 不 二 ノ 一 心 皆 此 ノ 意 ナ リ 。 ( 中 略 ) 然 ル ヲ 今 自 宗 ノ 意 ハ 兩 部 ヲ 以 テ 諸 法 ノ 本 源 ト 意 得 フ ル 事 其 ノ 源 意 如 何 。 答 顯 教 ハ 是 レ 對 機 遮 情 ノ 教 ナ ル 故 ニ 差 別 ヲ 會 シ テ 平 等 ニ 歸 ス ル ヲ 宗 旨 ト 爲 シ 。 遮 情 ト ハ 迷 情 ヲ 遮 遣 ス ル 義 ナ リ 。 迷 倒 ノ 衆 生 ハ 而 二 隔 歴 ノ 差 別 ノ 境 ヲ 縁 ス 。 彼 情 ヲ 遮 遣 セ ン カ 爲 メ ニ 差 別 ヲ 遣 テ 平 等 ニ 歸 ス 。 彼 ノ 遮 情 ノ 上 ニ 顯 ル ル 所 ノ 各 各 守 自 性 、 各 各 自 建 立 ノ 性 徳 ヲ ハ 未 タ 顯 サ ズ 、 故 ニ 獨 空 一 如 ノ 理 ヲ 以 テ 至 極 ト 執 ス ル ナ リ 大 師 吽 字 義 ノ 中 ニ 此 事 委 細 ニ 釋 シ 玉 フ 。 今 自 宗 ノ 意 ハ 即 事 而 眞 ノ 道 理 ヲ 談 ス ル 故 ニ 色 心 生 佛 ノ 各 各 ノ 當 相 ヲ 動 セ ズ シ テ 、 實 ノ 如 ク 實 相 ヲ 開 示 ス ル 是 レ 表 徳 ノ 實 義 ナ ル 故 ニ 遮 二 詮 一 ノ 義 ナ シ。 就 中 自 宗 ハ 六 大 ヲ 以 テ 諸 法 ノ 本 源 ト 爲 シ 。 六 大 ト ハ 色 心 ナ リ 。 此 ノ 色 心 即 チ 兩 部 ナ リ 。 仍 テ 兩 部 ノ 外 ニ 別 ニ 所 歸 ノ 法 體 ナ シ 。 此 ノ 色 心 兩 部 ノ 法 ニ 付 ク 不 二 ノ 義 ヲ 談 ス ル ハ 只 是 レ 義 用 ナ リ 。 實 ニ ハ 色 心 ノ 外 ニ 法 體 ナ シ 。 之 ニ 依テ 大 師 ノ 御 相 承 ハ 兩 部 ヲ 極 位 ト 爲 ス 。 他 門 相 承 ノ 眞 言 ノ 中 ニ ハ 兩 部 ヲ 以 テ 而 二 ト ナ シ 此 外 ニ 蘇 悉 地 ヲ 立 テ 、 不 二 ノ 極 位 ト 爲 ス 猶 ホ コ レ 即 順 常 途 ノ 義 邊 ニ シ テ 顯 綱 ノ 域 ヲ 出 デ ザ ル ナ リ 。 云 云 六 大 體 大 に 就て 一 九
六 大 體 大 に 就 て 二 〇 こ れ 眞 言 密 教 は 諸 佛 理 智 の 體 性 、 衆 生 色 心 の 實 相 を 開 示 す る 教 な る こ と を 明 す も の で あ る 。 即 ち 色 心 に 即 し て 實 相 常 住 の 理 趣 を 體 得 す べ き を 説 く も の で あ る 。 大 日 經 に は 如 實 知 自 心 と い ひ 、 大 師 は 十 住 心 論 に 秘 密 荘 嚴 住 心 と は 即 ち 是 れ 究 竟 し て 自 心 の 源 底 を 覺 知 し 、 實 の 如 く 自 身 の 數 量 を 證 悟 す と い へ り 。 而 し て 色 心 理 智 の 法 門 を 明 す に 一 往 再 往 の 二 門 あ り 、 一 往 は 金 剛 界 は 心 法 即 ち 智 の 實 相 を 明 す も の に し て 修 生 、 胎 藏 は 色 法 即 ち 理 の 實 相 を 明 す も の に し て 本 有 な り 。 而 も 再 往 は 兩 部 各 各 理 智 色 心 本 有 修 生 を 其 す る も 、 兩 部 何 れ も 理 智 本 有 り 六 大 一 實 の 理 趣 を 明 す を 宗 の 秘 旨 と な す 。 即 ち 法 の 本 源 は 理 智 六 大 の 不 二 無 量 の 體 に し て 、 色 心 各 々 萬 徳 を 具 足 し 、 法 界 曼 荼 羅 の 實 義 を 成 す る 旨 を 明 す も の で あ る 。 此 の 如 く 眞 言 密 教 は 色 心 、 迷 悟 、 染 淨 、 陰 陽 等 の 無 量 無 數 の 差 別 の 對 立 、 即 ち 而 二 の 當 位 に 即 し て 、 色 心 不 二 、 主 客 合 一 の 不 二 の 一 如 具 體 の 法 身 を 體 得 す る 道 を 明 す も の で あ る 。 所 謂 六 大 無 碍 常 瑜 伽 の 義 を 説 く も の で あ る 。 眞 言 密 教 は 因 分 を 超 ね 、 直 に 果 分 に 住 す る 秘 旨 を 明 す も の な り と 云 ふ も 、 そ の 果 分 の 境 界 と て 因 分 の 外 に 其 實 體 あ る に あ ら ず 、 一 切 衆 生 色 心 の 當 相 本 來 不 生 に し て 、 同 一 實 際 に 住 す る を 本 覺 法 身 と い ひ 本 來 果 分 に 住 す と 云 ふ 。 所 謂 一 相 一 味 到 於 實 際 と 云 ふ も の こ れ で あ る 。 而 し て 眞 言 密 教 も 始 覺 修 生 門 に て は 、 都 絶 能 所 の 無 相 觀 を 明 す 。 即 ち 如 來 果 地 の う ち に 、 我 等 の 分 別 妄 念 を 空 う し 、 如 來 果 體 に 應 同 す る 義 趣 を 説 く 。 こ の 密 教 の 無 相 觀 と 顯 教 の 無 相 觀 と 釋 相 同 じ け れ ば 、 人 多 く そ の 紫 朱 に 迷 ふ 。 古 來 密 宗 學 者 に し て そ の 正 宗 の 發 揮 に 努 め た る も の 多 き う ち 。 今 果 寳 師 の 自
宗 學 者 所 傳 傍 正 事 な る 古 草 の 所 釋 に 準 じ 、 以 て 密 教 々 理 上 に 於 け る 六 大 體 大 説 の 立 場 を 更 に 明 か さ う と 思 ふ 。 十 二 兩 部 大 經 の 説 相 廣 し と い へ ど も 、 其 綱 要 を 明 か せ ば 大 に 二 重 あ り 、 初 め に は 心 地 の 不 生 を 明 か し 、 後 に は 秘 密 瑜 伽 を 示 す 。 即 ち 金 剛 頂 經 に は 、 初 め に 無 識 身 三 昧 に 住 す る 義 を 明 か し 、 次 に 五 相 成 身 を 示 す 。 ま た 大 日 經 に 依 ら ば 、 初 め に 自 心 等 空 の 觀 を 示 し 、 後 に 五 輪 成 身 を 明 か す 。 こ れ に つ き 中 古 の 自 宗 の 學 者 の 所 見 鼠 々 た る も 、 大 途 三 傳 に 歸 す 。 第 一 傳 に は 初 め に 心 の 不 生 を 示 す 、 之 を 以 て 所 依 と な し 、 更 に 加 持 方 便 の 妙 用 を 起 す を 五 相 五 輪 の 觀 門 と な す 。 而 し て 佛 法 の 歸 す る と こ ろ 修 行 の 本 つ く と こ ろ 、 た ゞ そ の 不 生 觀 に あ り 。 即 ち 金 剛 頂 經 の 無 識 身 觀 、 大 日 經 の 自 心 等 空 觀 た る 不 牛 觀 に あ り と な す 。 か く の 如 く 不 生 觀 の 上 に 加 持 の 妙 用 を 起 す と は 、 諸 佛 内 證 の 境 界 を ば 空 三 昧 と 名 け 、 ま た 正 覺 三 昧 と 稱 す 。 如 來 こ の 不 生 察 三 昧 に 住 す る も 、 こ の 不 生 空 三 昧 は 因 人 の 思 議 を 絶 す る が 故 に 、 如 來 こ の 三 昧 に の み 住 し 給 ふ と き は 一 切 衆 生 を 攝 取 す べ か ら ざ る が 故 に 、 如 來 こ の 不 生 自 覺 の 體 を 動 せ ず し て 、 十 方 三 世 の 無 盡 の 衆 生 界 に 化 他 の 爲 め に 無 盡 無 數 の 三 密 門 を 示 現 し 給 ふ 。 一 念 に 不 生 を 觀 じ 、 如 來 自 證 の 不 生 の 體 に 契 證 し 得 ざ る 隨 他 の 機 根 は こ の 如 來 示 現 の 三 密 門 を 修 し 、 こ の 神 通 の 寳 輅 に 乗 じ て 如 六 大 體 大 に 就 て 一 二
六 大 體 大 に 就 て 二 二 來 自 證 の 體 に 契 合 す 。 而 も 所 修 の 三 密 も 所 成 の 妙 果 も 、 凡 て こ れ 因 縁 所 生 に し て 不 生 空 な り 。 即 ち 畢 竟 等 空 三 昧 に 歸 す 。 こ の う ち 顯 教 と 密 教 と の 所 説 を 分 別 す れ ば 、 そ の 不 生 空 三 昧 に 至 つ て は 、 顯 密 の 不 同 あ る こ と な し こ の 等 空 三 昧 よ り 無 盡 の 三 密 門 を 示 現 し 、 こ の 三 密 門 を 修 し て 不 生 空 の 體 に 契 證 す る は 密 教 に し て 、 止 觀 六 度 の 行 に 依 て 不 生 の 覺 體 に 契 ふ は 顯 教 な り 。 即 ち 顯 密 二 教 は 所 歸 の 不 生 空 三 昧 は 一 な る も 、 二 教 の 差 は そ の 三 昧 を 發 得 す る 所 修 の 行 體 に あ り と な す 。 第 二 傳 に は 初 傳 に て 不 生 空 觀 は 顯 密 の 教 體 な り と 云 ふ も 、 こ の 不 生 觀 は こ れ 遮 情 の 方 便 教 に し て な ほ 入 佛 道 の 初 門 と し 、 こ の 遮 情 不 生 觀 よ り 表 徳 觀 に 轉 し 、 そ の 表 徳 の 法 體 を 眞 言 密 教 の 教 體 な り と す 。 即 ち 因 人 の 能 所 思 惟 を 絶 せ し と こ ろ に 顯 は る ゝ 法 爾 瑜 伽 の 能 所 た る 理 智 不 二 、 色 心 不 二 、 六 大 無 碍 、 兩 部 曼 荼 羅 の 法 體 を 正 し く 密 教 の 教 體 と な す 。 寳 鍮 に は
九
種
心
藥
拂
外
塵
而
遮
迷
。
金
剛
一
宮
排
内
庫
而
授
寳
又 曰 く 心 外 礦 垢 於 此 悉 盡 。 曼 荼 荘 巖 是 時 漸 開 。 云 云 理 趣 經 開 題 に 曰 く人
者
此
有
五
部
之
別
。
(中
略
)
是
即
五
大
所
起
五
智
所
成
。
自
性
之
又
性
。
法
體
之
又
體
。
三
自
三
大
未
見
其
邊
一 如 一 心 誰 到 其 極 。 云 云 か ゝ る 高 祖 の 解 釋 を 以 て 本 經 の 説 相 を 案 す る に 、 大 日 經 に は 三 却 十 地 の 階 級 を 立 て 以 て 地 位 の 淺 深 を 示 す 。 而 し て か の 自 心 等 空 の 觀 行 は 、 こ れ 第 三 劫 の 法 門 な り 。 十 住 心 論 第 一 に 如 上 二 宮 、 但 芟 薙 宅 中 之 荒 穢 。 猶 未 開 地 中 之 寶 藏 。 大 日 經 に 曰 く 。 此 經 宗 從 初 地 。 即 得 入 金 剛 寶 藏 故 。 云 云 即 ち 此 等 の 釋 に 依 れ ば 地 前 三 劫 の 位 に は 未 だ 金 剛 寶 藏 を 開 か ざ る な り 。 し か れ ば 云 ふ と こ ろ の 金 剛 寶 藏 と は 自 體 何 物 な り や 、 こ れ 釋 摩 訶 術 論 に 明 す と こ ろ の 、 不 二 果 海 の 十 界 曼 荼 羅 に し て 、 二 教 論 に 二 重 の 二 諦 を 建 立 し 、 言 説 の 相 を 離 れ 、 名 字 の 相 を 離 れ 、 心 縁 の 相 を 離 れ 生 佛 の 假 名 を 絶 す る と 云 ふ 顯 教 の 眞 諦 、 即 ち 諸 經 論 に 明 す 絶 離 の 境 を 密 藏 の 本 分 と し 、 こ の 絶 離 の 境 に 開 く 十 界 曼 茶 羅 、 即 ち 眞 言 密 教 の 眞 諦 こ れ 金 剛 寶 藏 の 自 體 で あ る 。 空 三 昧 に 住 し 、 能 所 の 分 別 を 絶 し 、 時 空 因 果 の 束 縛 を 遠 離 し 、 理 智 法 爾 の 本 有 菩 提 心 の 開 見 せ ら れ た る 境 界 に し て 、 こ の 境 に て は 一 切 は 皆 如 來 の 本 誓 を 表 現 せ る 三 昧 耶 身 な り 、 差 別 智 印 な り 、 四 重 海 會 の 聖 尊 字 印 形 像 の 體 性 な り 。 萬 法 皆 阿 字 大 空 位 に 住 し 、 一 相 一 味 到 於 實 際 の 無 盡 荘 嚴 の 體 な り 、 大 師 の 六 大 無 碍 常 瑜 伽 と は こ の 法 性 自 爾 の 境 を 釋 せ る も の で あ る 。 即 ち 如 來 の 自 覺 自 證 の 境 を 六 大 無 碍 と 釋 し 給 ひ し な り 。 こ の 心 内 の 無 盡 荘 嚴 藏 を 開 か ん に は 、 心 外 の 礦 垢 た る 分 別 妄 念 を 絶 せ ざ る べ か ら ず 、 こ の 故 に 經 に は 衆 因 縁 生 本 來 不 生 の 觀 門 を 示 し て 、 凡 夫 妄 執 の 心 地 を 平 治 し 、 然 し て 後 に 本 有 の 無 盡 荘 嚴 藏 を 開 見 す 。 さ れ ば 經 に 自 ら 彼 の 自 心 等 空 の 觀 門 を 指 し て 初 法 明 六 大 體 大 に 就 て 二 三
六 大 體 大 に 就 て 二 四
道
と
い
ひ
寶
鍮
次
八
住
心
に
、
無
相
虚
空
相
及
非
青
非
黄
等
言
。
並
是
明
法
身
眞
如
一
道
無
爲
之
眞
理
。
佛
説
此
名
初
法
明
道
。
智
度
名
入
佛
道
初
門
。
言
佛
道
者
指
金
剛
界
宮
大
日
曼
茶
羅
佛
。
於
諸
顯
教
是
究
竟
理
智
法
身
。
望 眞 言 門 是 則 初 門 。 大 日 世 尊 及 龍 猛 菩 薩 並 皆 明 説 不 須 疑 惑 。 金 剛 頂 經 に は 無 識 身 三 昧 の う ち に 十 縁 無 生 の 觀 を 明 し 、 こ の 無 生 觀 は 入 佛 道 の 初 門 な れ ば 、 こ の 觀 に 住 す る と き 、 諸 佛 の 警 覺 開 示 あ る こ と を 説 い て 曰 く諦
觀
諸
法
皆
由
自
心
。
一
切
煩
惱
及
隨
煩
惱
蘊
界
入
等
。
皆
如
幻
稲
腱
闥
婆
城
。
如
旋
火
輪
。
如
空
谷
響
。
如
是
觀
已
不
見
身
心
。
住
於
寂
滅
無
相
平
等
。
以
爲
究
竟
眞
實
之
智
。
爾
時
即
觀
空
中
。
無
數
諸
佛
猶
如
大
地
満
中
胡
麻
。
皆
舒
金
色
臂
彈
指
而
警
作
此告
。言
善
男
子
汝
所
證
處
一
道
清
淨未
為
證
語
金
剛
瑜
伽
三
薩
婆
若
智
。
勿 爲 知 足 云 云 か く の 如 く 無 相 等 空 の 寂 滅 觀 の な ほ 究 竟 の 解 脱 境 に あ ら ざ る を 開 説 し 、 更 に 五 相 成 身 觀 を 明 す 。 こ の 五 相 成 身 觀 と は 所 謂 種 三 尊 の 觀 に し て 、 淨 満 月 の 一 心 周 遍 法 界 の 義 と 、 そ の 一 心 の 妙 用 の 表 象 と 、 そ の 靈 格 化 を 明 す も の に し て 、 こ れ 淨 菩 提 心 は 無 限 の 靈 體 妙 用 あ る こ と を 示 す も の な り 。 ま た こ れ を 大 日 經 に 觀 る も 、 第 三 劫 巳 超 の 十 地 は こ れ 一 切 の 妄 執 を 超 度 せ る 、 淨 菩 提 の 眞 實 相 を 開 發 す る 佛 境 界 な る が 、 こ の 十 地 の 上 に 因 根 究 竟 の 三 句 の 法 門 を 建 立 す る を 經 の 正 意 と な す よ り 見 る も 、 淨 菩 提 心 は 無 限 の 大 智 大 悲 の 妙 用 あ る 靈 活 自 在 の 體 な る こ と を 知 り 得 ら る 。 要 す る に 爾 部 大 經 に 寂 滅 無 相 觀 を 明 すも 、 こ れ 淨 菩 提 心 に 遮 情 表 徳 の 二 方 面 あ る 中 、 そ の 遮 情 の 義 を 明 す も の に し て 、 こ の 遮 情 の 一 理 顯 教 に 同 す る 義 あ る も 、 こ れ を 以 て 顯 密 二 教 同 じ く 無 相 寂 滅 觀 を 以 て 正 宗 と す と い ふ べ か ら ざ る な り 。 而 も 密 教 は 遮 表 不 二 の 淨 菩 提 心 體 を 明 し 、 寧 ろ そ の 表 徳 を 正 宗 と な す と 聞 き 、 密 教 は 吾 等 六 識 所 縁 の 實 右 の 迷 執 を 改 め す 、 欲 觸 愛 慢 の 迷 情 を 即 實 相 な り と 説 く も の な り 、 こ れ 即 事 而 眞 の 法 門 な り 等 と 云 ふ も の あ ら ば 、 こ れ ま た 大 な る 邪 見 な り 。 か の 理 趣 經 に 慾 觸 愛 慢 、 色 聲 香 味 等 凡 て こ れ 清 淨 句 の 菩 薩 位 な る こ と を 説 か れ た る も 、 何 故 に こ れ 菩 薩 位 な る か の 所 由 を 明 か し て 何 以 故 一 切 法 自 性 清 淨 故 、 般 若 波 羅 蜜 多 清 淨 な り と い へ り 。 理 趣 經 の 梵 本 を 見 れ ば 、 一 切 法 自 性 清 淨 故 の 句 の 次 に 一 切 法 自 性 空 に よ り て 般 若 波 羅 蜜 多 も 清 淨 な り と の 文 あ り 。 以 て 知 る べ し 、 慾 觸 愛 慢 、 色 香 味 燭 等 の 諸 法 凡 て こ れ 清 淨 の 菩 薩 な り と 云 ふ は 、 こ れ 般 若 の 空 觀 に 依 て 、 分 別 の 妄 情 を 遮 遣 せ し 、 不 二 佛 智 見 の 境 界 を 明 か せ し も の な り 。 即 ち 一 分 の 迷 情 を 斷 せ ず 、 六 塵 の 境 そ の ま ゝ 即 事 而 眞 な り と い へ ば こ れ 邪 見 な り 、 さ れ ば 兩 部 大 經 何 れ も 、 最 初 に 遮 情 方 便 を 明 か し 、 實 有 の 迷 情 を 除 く を 以 て 入 道 の 通 門 と せ り 。 以 て 實 有 の 迷 情 を 改 め ず と 云 ふ が 如 き は 、 こ れ 己 に 經 文 の 説 相 に 相 違 す 、 大 に 宗 旨 を 失 す る や 明 か な り 。 而 し て 空 を 説 く も 、 空 を 至 極 と せ ざ る こ と は 、 上 述 の 如 く 兩 部 大 經 の 釋 文 、 高 祖 の 提 撕 に 依 つ て 明 か な る も 、 か の 理 趣 經 の 第 七 段 文 殊 師 利 菩 薩 理 趣 六 大 體 大 に 就 て 二 五
六 大 體 大 に 就 て 二 六 會 品 に 空 、 無 相 、 無 願 の 三 解 脱 門 を 説 き 、 次 に 諸 法 光 明 般 若 波 羅 蜜 多 清 淨 故 等 の 文 、 或 は 三 十 七 尊 心 要 に 空 無 相 無 願 の 三 解 脱 門 を 明 し 、 一 切 分 別 念 を 絶 す る と こ ろ に 遍 照 法 界 光 明 自 在 の 無 碍 の 身 を 成 す る こ と を 明 す 。
無
願
者
凡
所
修
道
。
絶
三
界
希
望
之
心
。
有
所
願
求
皆
是
有
相。
永
絶
妄
想
。
斷
所
願
求
之
心。
無
願
無
求
是
眞
解
脱
。
由
此
三
相
空
故
。
即
入
解
脱
法
門
悟
斯
正
理
。
即
身
有
光
明
廓
周
法
界
。
即
同
毘
盧
遮
那
正
體
智 也 。 皆 由 誦 秘 密 眞 言 結 此 密 印。 即 入 三 密 觀 解 脱 門 。 一 境 一 心 當 證 悟 云 云 ま た 曰 く雖
具
能
所
能
所
之
體
本
空
。
空
有
之
理
本
無
中
道
之
心
斯
契
。
今
此
建
立
金
剛
界
三
十
七
尊
大
曼
荼
羅
及
賢
劫
千
佛
外
金
剛
部
二
十
天
及
四
十
天
等
。
此
爲
初
原
。
展
轉
相
生
無
量
曼
荼
羅
也
。
大
日
經
疏
に
曰
く
今
觀
諸
法
無
生
乃
至
無
待
對
故
。
則
知
阿
耨
多
羅
三
貌
三
菩
提
於
法
平
等
無
有
高
下
。
是
故
如
來
亦
名
一
切
金
剛
菩
薩
。
亦
名
四
果
聖
人
。
亦
名
凡
夫
外
道
。
亦
名
種
種
悪
趣
衆
生
。
砺
名
五
逆
邪
見
人
。
大
悲
曼
荼
羅
正
表
此
義
也
。
即
ち
眞
言
密
教
は
兩
部
曼
荼
羅
を
宗
體
と
す
。
兩
部
曼
荼
羅
と
は
無
相
觀
に
依
り
、
一
切
分
別
の
念
を
絶
し
、
無
分
別
智
を
以
て
見
れ
ば
、
諸
法
々
爾
と
し
て
阿
字
大
空
位
に
住
し
、
境
智
不
二
、
理
智
不
二
、
法
界
遍
周
の
毘
盧
遮
那
法
身
の 徳 を 表 現 せ る 境 地 な り 。 こ の 無 盡 荘 嚴 の 曼 荼 羅 の 體 こ れ 眞 言 秘 密 の 體 な り 。 第 三 傳 初 傳 に は 顯 密 二 教 同 じ く 無 相 空 三 昧 を 正 宗 と す る も 、 二 教 の 差 は 一 は 六 度 止 觀 に 依 て 、 空 三 昧 を 體 得 す る と 、 一 は 五 相 三 密 の 妙 行 に 依 つ て 契 證 す る の 修 行 の 異 な り に あ り と し 、 第 二 傳 は 二 教 の 相 異 は た ゞ 修 行 の 異 な り の み な ら ず 、 所 證 の 理 趣 に 異 な り あ り と 見 る も の な り 。 即 ち 密 敷 は 遮 表 不 二 の 菩 提 心 體 を 體 得 す る 道 に し て 、 顯 教 は そ の 遮 情 無 相 の 理 に 契 證 す る を 教 ふ る も の な り と す 。 而 し て 今 次 三 傳 よ り い へ ば 上 來 所 説 の 第 一 傳 第 二 傳 の 中 に は 大 師 の 密 教 の 正 意 は 第 二 傳 に あ り と し 、 而 も 初 傳 の 無 相 觀 こ れ 無 盡 荘 嚴 の 曼 荼 羅 の 體 に 契 證 す る 能 入 の 門 な り と 見 る も の な り 。 凡 そ 一 切 衆 生 發 心 し て 佛 果 菩 提 を 成 す る に 至 る 修 行 の 歴 程 を 見 れ ば 、 實 に 無 量 無 數 な る べ し 。 所 謂 機 根 萬 差 な り 、 隨 て 機 根 分 類 古 來 種 多 の 説 あ る も 、 今 か り に 修 行 成 佛 の 機 根 、 發 心 即 到 即 ち 極 大 頓 機 の 二 つ に 分 ち 、 そ の 修 行 成 佛 の う ち に 最 初 顯 教 に 依 て 修 行 し 、 後 に 密 教 に 入 る も の 所 謂 迂 回 の 機 根 と (常 に こ れ を 別 に 扱 ふ こ と あ る も 今 は 同 じ く 修 行 成 佛 の 機 根 と し て 見 る ) 最 初 よ り 密 教 に 入 り 五 相 三 密 の 行 を 修 す る 機 根 あ り と の 見 地 よ り 解 せ ん に 、 顯 教 よ り 密 教 に 入 る 迂 回 の 機 根 に し て も 、 最 初 よ り 秘 密 曼 荼 羅 の 行 を 修 す る も の に し て も 、 修 行 成 佛 の 機 根 は 何 れ も 初 め に 遮 情 無 相 觀 に 住 し 、 分 別 妄 執 を 超 度 し て 、 遮 表 不 二 の 無 盡 曼 荼 羅 の 菩 提 心 に 契 證 す 。 即 ち 初 傳 の 等 空 觀 に 依 て 、 第 二 傳 の 表 徳 の 體 に 契 ふ も の な り 。 最 初 よ り 密 教 に 入 り 三 昧 耶 戒 を 授 り 、 生 佛 不 二 の 開 示 を 蒙 り 、 三 密 平 等 の 如 來 果 地 の 六 大 體 大 に 就 て 二 七
六 大 體 大 に 就 て 二 八 法 門 を 修 す る も . な ほ 隔 歴 妄 執 の 念 を 離 れ ず 、 能 所 差 別 の 念 あ る を 以 て た と ひ 三 密 平 等 の 觀 行 を 修 す と も 、 所感 の 佛 身 は 加 持 身 に し て 、 眞 に 能 所 を 絶 す る 遍 一 切 の 法 身 を 見 る 能 は す 、 故 に 行 者 無 相 觀 に 住 し て 心 垢 を 除 淨 し 、 遍 一 切 の 法 身 を 證 得 す る 道 は 、 こ れ 六 無 畏 を 經 て 初 地 に 入 る 階 級 な り 。 即 ち 眞 言 門 の 行 者 も 心 地 を 除 淨 す る 道 と し て 無 相 觀 を 修 す 。 所 謂 心 を 本 不 生 際 に 住 し 、 無 念 に し て 念 じ 、 不 信 に し て 信 じ 加 持 感 應 と 無 相 觀 に 依 つ て 能 所 の 細 念 を 離 れ 、 加 持 身 に 即 し て 能 所 を 絶 せ る 具 體 法 身 を 體 驗 す る を 得 る な り 。 此 の 如 く 顯 教 よ り 密 教 に 入 る 迂 回 の 機 根 も 、 ま た 最 初 よ り 密 教 を 修 す る 直 往 の 機 根 も 共 に 無 相 觀 を 修 す る も 、 細 か に 見 れ ば そ こ に 種 多 の 相 違 あ る 。 今 そ れ ら の 異 點 を 委 説 す る こ と を 省 略 す る も 、 顯 教 よ り 密 教 に 入 る 機 は 因 よ り 果 に 歸 す る も の 、 即 ち 有 限 よ り 無 限 に 歸 せ ん と す る も の に し て 、 最 初 よ り 密 教 を 修 す る 人 は 、 直 に 如 來 果 地 に 佳 し . 如 來 果 體 の う ち に 、 分 別 の 細 念 を 空 う し て 、 如 來 の 果 體 に 應 同 す る の 異 な り あ り と い ひ 得 ら る べ し 。 し か も 迂 回 の 機 根 も 直 往 の 機 根 も 、 修 行 成 佛 の 機 根 は 何 れ も 初 め に 遮 情 無 相 觀 を 修 し 、 後 に 表 徳 の 境 に 入 る 。 次 に 發 心 即 到 無 相 頓 大 の 機 根 は 、 無 我 遮 情 觀 に 入 ら ず 、 一 切 諸 法 皆 こ れ 、 色 心 不 二 、 理 智 相 即 の 毘 慮 遮 那 具 體 法 身 の 體 と 見 る も の な り 。 義 訣 に 無 識 身 三 昧 を 釋 し て
若
頓
入
者
亦
不
由
之
。
一
切
色
塵
爲
佛
事
故
云
云
十
三
余 は 六 大 體 大 の 義 を 述 べ ん と し て 、 そ の 本 論 に 入 る に 先 だ ち 、 上 來 餘 り 多 く 語 つ た き ら ひ が あ る 。 し か し 六 大 體 大 説 は 種 々 の 立 場 よ り こ れ を 解 せ ら る 。 而 も 六 大 説 を 正 當 に 解 せ ん に は 、 佛 教 々 理 上 よ り 、 ま た 密 教 々 理 上 よ り 見 て 如 何 な る 立 場 に て 解 す べ き か を 明 す こ と が 、 緊 要 な れ ば 敢 て 如 上 の 説 を な し た わ け で あ る 。 が 以 下 正 し く 大 師 の 六 大 説 を 釋 す る で あ ら う 。 大 師 は 即 身 成 佛 義 に 六 大 説 を 立 せ ん と し て 、 大 日 經 及 び 金 剛 頂 經 の 六 ヶ の 文 を 引 い て 六 大 義 を 證 釋 し 、 更 に 此 等 の 經 意 に 依 り 、 六 大 義 を 宣 説 せ ら れ た る 文 あ る 。 大 師 の 六 大 説 は 此 の 釋 文 に 顯 れ た れ ば 、 今 そ の 文 を 引 用 し 、 一 往 そ の 釋 を な れ 、 更 に 聊 か 所 見 を 述 べ よ う と 思 ふ の で あ る 。
如
此
經
文
皆
以
六
大
爲
能
生
。
以
四
法
身
三
世
間
爲
所生
。
此
所
生
法
上
達
法
身
下
及
六
道。
雖
麁
細
有
隔
大
小
有
差
。
然
猶
不
出
六
大
。
故
佛
説
六
大
爲
二
法
界
體
性
。
諸
顯
教
中
以
四
大
等
爲
非
情
。
密
教
則
説
此
爲
如
來
三
摩
耶
身
。
四
大
等
不
離
心
大
。
心
色
雖
異
其
性
即
同
。
色
即
心
心
即
色
無
障
無
碍
。
智
即
境
境
即
智
。
智
即
理
理
即
智
無
碍
自
在
。
雖
有
能
所
生
都
絶
能
所。
法
爾
道
理
有
何
造
作
。
能
所
等
名
皆
是
密
號
。
執
常
途
淺
略
義
不
可
作
種
稱
戯
論
。
如
是
六
大
法
界
體
性
所
成
之
身
。
無
障
無
碍
互
相
渉
入
相
應
。
常
住
不
變
同
住
實
際
。
故
頌
曰
六
大
無
碍
常
瑜
伽
。
無
碍
者
渉
入
自
在
義
。
常
者
不
動
不
壤
等
義
。
瑜
伽
者
翻
云
相
應
。
相
應
渉
入
即
是
即 義 。 こ の 文 義 多 含 な る も 、 其 主 な る 理 趣 を あ ぐ れ ば 六 大 體 大 に 就 て 二 九六 大 體 大 に 就 て 三 〇 一 、 六 大 を 以 て 十 界 の 依 報 正 報 の 體 性 、 即 ち 法 界 の 體 性 と な す こ と 。 二 、 六 大 は 色 心 不 二 、 境 智 不 二 、 理 智 不 二 の 體 な る こ と を 明 す 。 即 ち 諸 顯 教 中 以 四 大 等 爲 非 情 。 乃 至 即 智 無 碍 自 在 に 至 る ま で は 、 六 大 と は 色 心 不 二 、 物 心 一 如 具 體 の 眞 實 在 體 な る こ と を 示 す 。 地 水 火 風 空 の 五 大 を 普 通 非 情 物 と 云 ふ も 、 こ の 非 情 に も 心 を 具 す れ ば 、 非 情 物 に あ ら す 、 不 二 摩 訶 術 六 大 一 實 の 境 地 よ り い へ ば 、 こ れ 心 智 を 具 す る 如 來 の 三 摩 耶 身 な る こ と を 明 す 。 三 、 六 大 は 能 生 萬 法 は 所 生 な り と 云 ふ も 、 こ の 能 所 は こ れ 不 二 果 界 都 絶 能 所 の 能 所 に し て 性 相 常 住 な る こ と を 明 す 。 即 ち
雖
有
能
所
生
都
絶
能
所
。
法
爾
道
理
有
何
造
作
。
能
所
等
名
皆
是
密
號
。
執
常
途
淺
略
。
不
可
作
種
種
戯 論 。 こ れ 能 生 所 生 共 に 法 爾 無 作 の 義 を 明 す も の で あ る 。 即 ち 六 大 體 大 は 理 智 不 二 、 境 智 末 分 、 色 心 一 如 の 毘 盧 遮 那 具 體 の 法 界 體 な り 。 所 謂 六 大 體 性 は こ れ 分 別 妄 念 を 絶 せ る 如 來 の 自 覺 自 證 の 果 體 な れ ば 、 分 別 智 を 以 て 解 す べ き 境 な ら ず 。 さ れ ば 六 大 能 生 萬 法 所 生 と い へ ど も 、 都 絶 能 所 の 果 界 に 立 つ る 能 所 な れ ば 、 密 號 名 字 の 能 所 に し て 、 常 途 の 能 生 所 生 に 異 な り 、 性 相 常 住 、 即 ち 實 在 と 現 象 の 不 二 即 一 な る こ と を 明 す 。 此 く の 如 く 六 大 體 性 は 次 九 識 の 所 緑 に あ ら す 、 次 十 一 一 心 識 の 所 縁 あ ら す 、 不 二 心 所 證 の 佛 果 の 境 地 な り 。 隨 て 凡 夫 の 分 別 智 を 以 て こ の 境 を 解 せ ん か 、 こ れ 戯 論 に 墮 す と の 御 釋 は 、 殊 に 留 意 を 要 す べ き 點 で あ る 。四 、 六 大 は 無 碍 常 瑜 伽 の 體 な る 義 を 明 か し て 、 體 大 よ り 見 た る 即 身 成 佛 義 を 示 す 。
如
是
六
大
法
界
體
性
所
成
之
身
。
無
障
無
碍
互
相
渉
入
相
應
。
常
住
不
變
同
住
簀
際
。
故
頌
曰
六
大
無
碍
常
瑜
伽
。
無 碍 者 渉 入 自 在 義 。 常 者 不 動 不 壤 等 義 。 瑜 伽 者 翻 云 相 應 。 相 應 渉 入 即 是 即 義。 こ れ 六 大 體 性 よ り 成 せ し 無 盡 無 數 の 身 は 、 無 障 無 碍 に し て 、 互 相 渉 入 し 常 瑜 伽 の 體 な る 義 を 明 す も の で あ る 。 即 ち 法 界 の 衆 生 は 眞 實 在 た る 體 大 に 於 て 、 一 即 多 、 多 即 一 、 圓 鯉 無 碍 を な し 、 各 々 の 當 相 を 動 せ ず 、 壊 せ ず 、 法 界 を 統 攝 し 、 法 界 曼 荼 羅 を 成 せ し 、 即 身 成 佛 の 體 な る 秘 旨 を 示 す も の で あ る 。 上 述 の 如 く 六 大 能 生 萬 法 所 生 と 云 ふ も 、 こ の 能 所 は 都 絶 能 所 の 能 所 な る が 故 に 能 所 の 二 相 あ る に あ ら す 、 同 一 六 大 體 の 平 等 と 差 別 、 統 一 と 分 化 、 一 と 多 と の 兩 面 に し て 、 こ の 一 即 多 、 多 即 一 、 一 多 不 二 な る を 六 大 法 界 の 性 相 と な す 。 六 大 體 大 よ り 見 れ ば 萬 法 は 皆 六 大 體 大 の 所 成 の 身 に し て 、 六 大 體 大 は 一 多 不 二 、 六 大 無 碍 常 瑜 伽 の 立 場 に 於 て 、 一 切 を 統 攝 せ る 唯 一 不 二 の 法 界 身 な る も 、 所 成 の 身 よ り い へ ば 、 一 切 が 各 々 守 自 性 、 各 々 自 建 立 に し て 、 そ の 當 相 を 動 せ ず 壊 せ ず 、 ま た 一 多 不 二 、 六 大 無 碍 常 瑜 伽 の 立 場 に 於 て 無 盡 法 界 を 統 攝 し 、 法 界 曼 荼 羅 を 成 す 、 即 ち 六 大 よ り 成 す る 一 切 の 身 は 、 各 々 六 大 法 身 の 萬 徳 を 顯 現 せ る 差 別 智 印 に し て 、 六 大 法 身 に 統 攝 せ ら る ゝ と 共 に 、 各 々 の 當 位 に 於 て 法 身 の 全 體 を 顯 現 し 、 絶 封 自 主 で あ る 。 當 相 即 全 體 で あ る 。 こ の 立場 よ り い へ ば 能 成 所 成 、 統 攝 す る も の と 統 攝 せ ら る ゝ も の 區 別 な く 、 唯 一 不 二 の 法 界 體 で あ る 。 此 の 如 く 六 大 法 界 體 性 所 成 六 大 體 天 に 就 て 三 一六 大 體 大 に 就 て 三 二 の 身 は 一 多 不 二 、 無 碍 常 瑜 伽 の 立 場 に 於 て 法 界 を 統 攝 し 、 法 界 曼 荼 羅 を 成 せ る 即 身 成 佛 の 體 な る こ
と
を
明
す
。
所
謂
法
易
三密入
織
芥
而不
逡
。亘
大
虚
而不寛不簡瓦
石
草
木不擇
人
天
鬼
畜
。
何
處 不 遍 何 物 不 攝 。 即 ち 法 身 は 一 切 に 周 流 し 、 一 切 の 差 相 に 即 し て 全 體 を 表 現 す る も の な れ ば 、 一 に し て 一 な ら す 、 多 に し て 多 な ら す 、 一 多 不 二 具 體 の 體 で あ る 。 六 大 所 成 の 無 盡 無 數 の 身 は 、 各 々 六 大 無 碍 常 瑜 伽 の 宣 場 に 於 て 法 界 を 統 攝 し 、 法 界 朗 荼 羅 を 成 せ る 即 身 成 佛 の 體 な る こ と を 明 す 。 大 師 は 即 身 義 に 重 々 帝 綱 名 即 身 の 義 を 釋 す に 當 り 、 三 部 三 昧 耶 の 中 の 入 佛 三 昧 耶 の 眞 言 た る 即 ち 無 等 に し て 三 平 等 な る 眞 言 を 引 い て 、 三 大 圓 融 無 碍 の 義 を 證 述 せ ら れ た る が 、 こ の 眞 言 は ま た 以 て 六 大 無 碍 常 瑜 伽 の 義 を 釋 す べ き で あ る 。 所 謂 心 佛 衆 生 の 六 大 の 體 性 は 無 碍 常 瑜 伽 、 平 等 々 々 に し て 法 界 に 周 遍 し 、 重 々 無 盡 各 々 當 位 を 動 せ ず 壊 せ ず 、 法 界 を 統 攝 し 法 界 曼 荼 羅 を 成 じ 、 當 位 即 全 體 、 絶 對 自 主 に し て 待 對 す べ き も の な き 義 で あ る 。 六 大 無 碍 常 瑜 伽 の 義 は 此 の 如 く 入 佛 三 昧 の 眞 言 を 以 て 釋 す る と 共 に 即 ち 我 身 は 法 界 の 自 性 た る 毘 盧 遮 那 に 同 な り 、 我 身 は 法 界 自 性 た る 金 剛 に 同 な り と の 、 法 界 生 及 び韓 法 輪 の 眞 言 の 義 を 以 て も 釋 し 得 ら る 。 要 す る に 大 師 は 六 大 體 大 の 義 を 演 暢 し 給 ひ し は 、 こ れ 一 種 の 哲 學 を 説 か ん が 爲 め に あ ら す し て 、 我 身 法 界 に 周 遍 し 、 身 心 の 當 相 を 動 せ す 、 即 ち 本 來 解 脱 の 床 に 住 せ る 、 即 身 成 佛 の 體 な る こ と を 明 か さ ん が 爲 め で あ る 。 し か し て 即 身 義 の 文 に 顯 れ た る が 如 く 、 注 界 の 體 性 た る 六 大 は 色 心 不 二 、 境 智 不 二 、 理 智 不 二 の 具 體 の 眞 實 在 體 な る こ と 、 及 び 六 大 は 法 界 の 體 性 た る 眞 實 在 な る も 、 か ゝ る 形 而 上 學 的 實 在 が あ つ て こ の 實 在 體 よ り 萬 象 が 生 起 す べ き も の と 解 す べ き で な い 。即 ち 能 所 の 相 對 分 別 智 を 以 て 説 く べ き 境 で な い 。 ま た 分 別 智 を 以 て 課 識 す べ き 境 で な い 。 即 ち 因 人 の 思 議 を 絶 せ る 境 な れ ば 、 分 別 智 の 邊 よ り い へ ば 、 不 可 得 な り 、 無 相 な り 、 空 な り と 説 き 、 遮 情 否 定 に よ つ て 詮 示 す る よ り 途 な し 。 今 云 ふ と こ ろ の 六 大 は 分 別 智 を 絶 し た る 都 絶 能 所 の 、 不 二 佛 智 見 の 境 界 で あ る 。 如 來 の 自 覺 自 證 の 果 境 で あ る 。 六 大 體 大 は 因 人 の 分 別 思 惟 を 絶 せ る 果 地 の 境 な れ ば 、 分 別 智 を 以 て 種 々 の 釋 を な す も 、 凡 て ご れ 戯 論 邪 見 に 墮 す る こ と 、 及 び 六 大 體 性 は 本 來 無 碍 常 瑜 伽 の 立 場 に 於 て 法 界 の 一 切 を 統 攝 し 、 法 界 曼 荼 羅 を 成 す る が 如 く 、 六 大 體 性 よ り 成 ぜ し 一 切 の 無 盡 無 數 の 身 も 、 ま た 各 々 其 當 相 を 動 ぜ ず 、 六 大 無 碍 常 瑜 伽 一 多 不 二 の 立 場 に 於 て 法 界 を 融 攝 し 、 各 々 法 界 曼 荼 羅 を 成 せ る 金 剛 身 な り 。 毘 盧 遮 那 法 界 身 と 同 な り と の 秘 旨 は 六 大 説 を 解 せ ん と す る も の ゝ 留 意 を 要 す る 點 で あ る 。 六 大 體 大 に 就 て 三 三
六 大 體 大 に 就 て 三 四 十 四 以 上 の 六 大 説 を な ほ 布 演 し よ う と 思 ふ が 、 眞 言 密 教 に は 、 法 界 の 體 性 即 ち 如 來 の 自 覺 自 證 の 體 、 及 び 衆 生 の 菩 提 心 體 を 、 大 日 經 に は 阿 字 本 不 生 と い ひ 、 金 剛 頂 經 に は 五 智 と い ひ 、 釋 摩 訶 術 論 に は 不 二 摩 訶 術 と い ひ 、 高 祖 大 師 は 六 大 と 説 き 給 ふ 。 固 よ り 此 等 は 釋 相 の 相 違 に し て 意 越 一 致 と 相 承 し 來 れ る が 、 今 六 大 説 を 叙 す る に 當 り 兩 部 大 經 及 び 釋 摩 訶 術 論 の 所 説 に も 言 及 し よ う と 思 ふ 。 蓋 し 大 師 の 六 大 説 は 此 等 諸 説 に 依 り 給 ひ し も の に し て 、 此 等 諸 説 は 六 大 説 の 基 礎 た る ゆ ゑ で あ る 。 大 日 經 は 如 實 知 自 心 即 ち 自 心 の 實 相 を 如 實 に 體 得 す る 道 を 説 く も の で あ る 。 し か し て 自 心 は 本 不 生 な り と 示 す 。 こ の 本 不 生 に 遮 情 表 徳 、 淺 略 深 秘 等 重 々 の 義 あ り 、 今 詳 説 を 略 す る も 、 要 は 自 心 の 無 相 を 觀 じ 、 分 別 の 妄 念 を 離 れ 、 生 死 業 生 の 生 を 絶 し て 、 如 來 法 性 の 生 を 得 す る 道 で あ る 。 即 ち 分 別 妄 念 を 遮 す る 道 と し て 、 遮 情 の 義 を 説 か れ 法 性 の 性 た る 如 來 の 生 を 得 す る 秘 義 と し て 、 表 徳 の 義 を 明 か さ る 。 こ の 表 徳 門 に は 簀 に 無 量 の 深 趣 が 存 す る 。 即 ち 本 不 生 の 一 心 と は 如 來 法 身 の 體 で あ る 。 こ の 法 身 は 不 生 不 滅 遍 法 界 身 な れ ば 、 こ の 法 身 を 得 せ ば 、 利 衆 生 の 化 他 の 妙 業 法 性 と 共 に 盡 る こ と な き こ と 等 を 明 か さ る 。
不
可
得
空
之
自
性。
即
是
第
一
常
住
法
佛
之
身
。
以
離空
非
空
等
八
顛
倒
相
是
即
甚
深
從
縁
起
法
。
無
爲
無
作
而
能
不
動
法
界
普
應
衆
生
機
應
相
關
如
目
現
清
水
。
如
是
縁
起法
不
可
思
議
也
。
空
之
自
性
常
有
不
是
先
無
今
有
巳
有
還
無
云
云
大
日
經
疏
第
十
一
或
有
説
言
若
如
是
者
便
是
無
因
無
果
墮
斷
滅
見
者
。
此
亦
不
然
。
但
離
業
生
之
性
。
既
離
業
生
即
有
法
性
之
生
。
等
於
虚
空
。
虚
空
無
邉
故
當
知
所
成
功
徳
利
衆
生
事
亦
無
邊
無
盡
故
非
斷
也
。
大
日
經
疏
次
十
六
今
此
菩
提
之
性
(
中
略
)離
於
因
縁
實
相
常
住
。
即
是
大
日
如
來之
體
。
云
何
不
離
生
死
耶
大
日
經
疏
第
十
九
出
過
一
切
獻
論
如
常
虚
空。
於
内
證
所
行
得
深
信
力
。
薩
婆
若
心
堅
固
不
動
。
離
業
受
生
成
就
眞
性
生
。
大
日
經
疏
第
一
こ
の
本
不
生
の
體
は
色
心
不
二
、
理
智
不
二
、
境
智
不
二
の
體
な
る
こ
と
を
明
か
し
て
曰
く
初
云
識
心。
是
心
自
覺
之
智
。
次
又
言
心
即
是
心
之
實
相
。
意
明
境
智
倶
妙
無
二
無
別
故
云
云
大
日
經
疏
第
一
本
不
生
理
自
有
理
智。
自
覺
本
不
生
御故
大
日
經
供
養
次
第
法
疏
如
上
大
日
經
疏
に
云
ふ
本
不
生
の
理
智
を
、
大
師
は
六
大
體
大
と
開
説
せ
ら
れ
し
も
の
で
あ
る
。
金
剛
頂
經
に
つ
い
て
は
慈
覺
大
師
は
教
王
經
疏
に
正 明 經 體 者 爲 二 。 謂 總 別 體 。 初 總 體 者 是 即 本 有 阿 字 一 部 之 指 歸 。 衆 義 之 都 會 也 云 云 こ れ 金 剛 頂 經 も 大 日 經 と 同 じ く 阿 字 本 不 生 を 經 體 と 見 る も の で あ る 。 金 剛 頂 部 に は 所 々 に 阿 字 不 生 の 理 を 説 け る を 見 る の で あ る 。 さ れ ば 古 來 兩 部 共 に 理 智 色 心 の 本 不 生 の 實 義 を 明 す と 云 ふ 。 さ れ ど 金 剛 頂 經 を 一 往 大 日 經 に 對 比 せ ば 金 剛 頂 經 は 五 智 を 教 體 と す と 云 ふ べ き 歟 。 金 剛 頂 經 は 理 智 を 説 く も 寧 ろ 六 大 體 大 に 就 て 三 五六 大 體 大 に 就 て 三 六 智 を 表 と す る こ と は 、 か の 金 剛 頂 經 義 釋 に
一
切
諸
法
體
性
空
寂
。
諸
佛
妙
智
依
空
而
轉
自
在
無
礙
。
一
切
建
立
及
不
建
立
依
空
不
空
智
相
常
住。
猶
如
虚
空
遍
一
切
處
。
照
用
無
歇
故
。
大
空
自
在
無
智
無
用
無
縁
無
依
爲
智
所
依
。
智
唯
實
相
。
空
非
實
相
空
性
唯
空
無
所
得
故
。
妙
智
不
空
善
巧
用
故
。
是
以
大
日
如
來
以
一
切
智
現
其
智
相
名
不
空
王
也
。
極
智
妙
相
稱
之
爲
王
云
云
以
上
は
不
空
王
菩
薩
の
釋
な
る
も
、
理
智
の
う
ち
不
空
の
智
を
表
と
す
る
こ
と
よ
く
看
取
せ
ら
る
。
法
性
の
無
相
を
観
じ
、
有
空
分
別
の
念
を
絶
す
る
と
こ
ろ
に
廓
法
界
に
周
ね
き
自
在
無
碍
の
大
智
を
成
就
す
、
こ
の
無
碍
自
在
の
大
智
の
妙
用
の
示
現
を
明
か
せ
し
も
の
は
金
剛
界
の
曼
荼
羅
な
る
と
を
開
説
せ
る
文
を
金
剛
頂
經
の
處
々
に
見
る
の
で
あ
る
。
ま
た
金
剛
頂
大
教
王
經
、
瑜
祇
經
等
に
本
有
の
五
智
を
現
證
せ
る
大
日
如
來
よ
り
曼
荼
羅
を
示
現
せ
る
釋
文
、
或
は
大
師
の
金
剛
頂
經
開
題
に
密
義
五
智
佛
名
一
切
如
來
。
聚
一
切
諸
法
共
成
五
佛
身
故
。
此
五
佛
則
諸
佛
之
本
體
諸
法
之
根
源
。
云
云
或
は
秘
藤
寳
錦
に
五
相
五
智
法
界
體
と
い
ひ
即
身
義
に
法
然
具
足
薩
般
若
。
心
數
心
王
過
刹
塵
。
各
具
五
智
無
際
智
。
圓
鏡
力
故
實
覺
智
等
と
釋
せ
ら
れ
た
る
が
、
此
等
は
五
智
を
法
界
體
性
と
せ
る
も
の
で
あ
る
。
即
ち
金
剛
界
は
心
法
を
本
と
し
、
そ
の
心
法 に 無 盡 の 性 徳 あ る も 五 智 に 振 盡 す 。 こ れ 五 智 を 法 界 體 性 と な す 所 以 で あ る 。 而 し て 即 身 成 佛 義 に 五 智 と 六 大 と 同 一 理 趣 と し て 釋 し
上
文
所
引
我
覺
本
不
生
乃
至
遠
離
於
因
縁
偈
。
及
諸
法
本
不
生
乃
至
因
業
等
虚
空
。
如
是
等
偈
皆
明
法
然
具
足
之
義 。 大 日 經 及 び 金 剛 頂 經 に 明 す 六 大 の 經 文 を 以 て 五 智 の 義 を 成 す 。 こ れ 五 輪 即 是 五 智 輪 即 ち 色 心 不 二 の 見 地 よ り 、 金 剛 頂 經 の 五 智 法 界 體 性 の 義 を 六 大 法 界 體 性 の 義 に 釋 成 せ ら れ し も の で あ る 。 釋 摩 詞 術 論 は 不 二 の 實 義 を 説 く を 以 つ て 、 弘 法 大 師 同 論 を 眞 言 密 教 の 論 藏 と 制 定 し 給 ふ 。 而 し て 不 二 の 義 は 性 宗 の 齊 し く 説 く と こ ろ な れ ば 、 そ の 義 ま た 淺 深 重 々 で あ る 。 或 は 衆 因 縁 生 法 即 空 、 即 ち 色 心 の 當 體 即 空 な る を 不 二 と い ひ 、 或 は 色 心 共 に 眞 如 一 心 の 所 變 に し て 色 心 同 じ く 眞 如 な る を 不 二 と い ひ 、 或 は 色 心 當 體 即 空 の 故 に 無 障 無 碍 に し て 、 三 諦 圓 融 、 三 千 具 足 の 實 相 の 體 な る を 不 二 と い ひ 、 或 は 法 界 縁 起 を 説 き 色 心 共 に 重 々 無 盡 の 法 界 體 な る を 不 二 と い ふ 。 而 も 大 師 の 見 地 よ り い へ ば こ れ 皆 眞 妄 和 合 の 縁 起 の 上 の 説 で あ る 。 有 空 相 即 を 根 底 と せ る 説 で あ る 。 即 ち 因 分 の 説 で あ る 。 し か る に 密 教 の 所 説 は 眞 妄 未 分 の 法 爾 法 性 の 上 の 説 で あ る 。 性 相 常 住 不 二 果 分 の 上 の 説 で あ る 。 釋 摩 詞 術 論 は こ の 法 爾 法 性 の 性 海 果 分 を 開 説 す る 論 藏 な る よ り 、 秘 密 の 奥 旨 を 開 説 す る 眞 言 密 教 の 論 藏 と な す の で あ る 。 六 大 體 大 に 就 て 三 七六 大 體 大 に 就 て 三 八