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平成22年度地球温暖化問題等対策調査事業,海外の環境規制・環境産業の動向に関する調査報告書

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平成22年度地球温暖化問題等対策調査事業

平成 22 年度

海外の環境規制・環境産業の動向に関する調査

告 書

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(3)

(目次) はじめに 1. 海外環境規制の状況(制定状況・執行状況)···1 1-1. 中国における公害対策規制調査···1 1-1-1. 中国における公害対策規制の全体像···1 1-1-2. 中国における公害対策規制の執行状況···25 1-2. ASEAN における公害対策規制調査 ···36 1-2-1. マレーシアにおける公害対策規制の全体像···38 1-2-2. タイにおける公害対策規制の全体像···41 1-2-3. インドネシアにおける公害対策規制の全体像···49 1-2-4. フィリピンにおける公害対策規制の全体像···52 1-2-5. ベトナムにおける公害対策規制の全体像···54 1-2-6. ASEAN における環境規制執行状況 ···58 1-3. インドにおける公害対策規制調査···64 1-3-1. インドにおける環境規制の全体像···64 1-3-2. 法規制執行状況···70 1-4. EU における公害対策規制調査···75 1-5. 米国における公害対策規制調査··· 107 2. 公害対策分野におけるビジネス概況··· 125 2-1. ビジネス概況調査の範囲··· 125 2-2. 環境ビジネス全般··· 126 2-3. 大気汚染防止··· 137 2-3-1. 環境保全用触媒等··· 140 2-3-2. 集じん装置··· 142 2-3-3. 排煙脱硫装置··· 146 2-3-4. 排煙脱硝装置··· 149 2-4. 水質汚染防止··· 151 2-4-1. 産業排水処理··· 158 2-4-2. 下水処理··· 161 2-4-3. 水処理機器・資材··· 165 2-5. 土壌汚染対策··· 168 2-6. 廃棄物処理・リサイクル··· 172 2-6-1. 廃棄物処理事業(総合サービス提供)··· 174 2-6-2. 有害廃棄物・医療廃棄物処理··· 175 2-6-3. 資源回収・リサイクル··· 177

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2-7. 下水汚泥処理・再生··· 186 2-8. 環境モニタリング・分析装置··· 188 3. 公害対策市場ニーズ調査··· 193 3-1. 中国市場における公害対策市場ニーズ調査··· 195 3-1-1. 工業排水処理分野に係るニーズ調査··· 195 3-1-2. 下水汚泥処理分野に係るニーズ調査··· 200 3-1-3. 土壌汚染分野に係るニーズ調査··· 215 3-2. ASEAN 市場における公害対策市場ニーズ調査··· 220 3-2-1. 工業排水処理分野のニーズ調査··· 220 3-2-2. その他のニーズ調査··· 229 3-3. インド市場における公害対策市場ニーズ調査··· 232 3-3-1. 公害発生状況··· 233 3-3-2. ニーズ調査··· 244 4. 公害対策技術シーズ調査··· 251 4-1. 世界環境ビジネスのキープレーヤーと保有技術シーズ··· 252 4-1-1. 大気汚染防止··· 252 4-1-2. 水質汚染防止・汚泥処理··· 256 4-1-3. 廃棄物処理··· 265 4-2. アジア市場現地企業の技術力··· 272 5. アジア諸国における環境協力・環境ODA の実施状況 ··· 273 5-1. アジア諸国における環境協力・環境ODA の概要··· 273 5-2. 国別の概要··· 274 6. アジア市場における我が国公害対策技術展開にむけて··· 280 6-1. アジア市場において我が国公害対策技術展開が期待される分野··· 280 6-2. 我が国環境産業がとるべきアジア市場展開戦略··· 282 6-2-1. 我が国環境産業のアジア市場展開の現状と課題··· 282 6-2-2. 我が国環境産業に期待されるアジア市場展開戦略··· 283 6-3. アジア市場展開に向けた国への提言··· 286 参考資料 1:環境関連基準値 参考資料 2:日本・現地ヒアリング調査概要

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はじめに

我が国は、過去に深刻な公害問題を経験し、これを国や企業が連携を図りながら、法の整 備や環境対策投資等により克服してきた歴史を有する。公害克服の過程で公害対策分野の環 境産業は成長し、極めて高い水準の製品・サービスを安定的に供給できる体制が整備されて きた。国、企業による公害克服努力により、我が国において公害問題が顕在化する機会はほ とんどなくなってきた。それに伴い、日本国内での公害対策ビジネス分野はメンテナンスや 消耗品販売、旧式装置等の入れ替えに限定されつつあり、公害対策分野の環境産業は成長段 階から成熟段階へと移行してきた。高品質の公害対策製品・サービスを有する環境産業がさ らなる成長を図るには、海外市場への展開が避けては通れない状況にある。また、こうした 我が国の経験に基づく公害対策ノウハウを、現在公害問題に苦しむ市場に紹介し、適用を図 ることは、当該地域の環境汚染対策にも貢献できる。 一方、近年、急速な経済発展を続けているアジア諸国は、経済成長に伴い、大気汚染、水 質汚濁等の激甚型の産業公害や健康被害・生活環境汚染が顕在化し、大きな社会問題となっ ている。環境対策よりも経済発展が優先され、経済発展が急速に進みすぎたために環境対策 にかかる制度整備が遅れている国も多いのが実態である。例え環境規制は整備されていても 執行が適切ではなく、その結果、工場等への公害防止装置の導入が進まず、導入した工場で も適切に運用されていないケースがよく聞かれる。また、アジア諸国における環境問題は、 酸性雨や漂着ゴミとして我が国の環境にも大きな影響を及ぼしてきている。また、他方、日 本の多くの企業はアジア各国に製造拠点を有しており、アジアに環境負荷を押し付けている との批判があるのも事実である。このように、アジア地域の公害問題は、多くの人々に健康 被害を及ぼしているほか、我が国を含むアジア全体の経済成長の阻害要因ともなりえること から、我が国としてもアジア地域の環境問題を無視できない状況にある。 さらに、欧米では近年、EUを中心に公害対策分野の環境規制が厳格化される傾向がある。 日本と同様、既に激甚型の産業公害の発生はひと段落しているが、農業起源による地下水の 硝酸塩汚染対策や、自動車排ガスに掛かる規制強化など、新たなターゲットを念頭に置いた 規制が整備されつつある。今後、我が国においても適切な環境規制を整備するためには、世 界標準となる可能性のある新しい公害対策について充分に把握しておく必要がある。 以上のような背景を踏まえ、本事業では、我が国環境産業が国際競争力を高め、今後とも 継続的に成長していくとともに、アジア地域に最適な公害対策を提供することを通じて環境 問題の解決に貢献することを最終目標ととらえ、対象地域の環境規制・環境産業の動向を踏 まえ、対象地域の公害対策分野における市場ニーズを描出し、それに即した我が国環境産業 の展開可能性を検討する。合わせて、アジア市場において競合となりえる欧米環境産業等の 動向を把握した上で、我が国環境産業の海外展開にあたっての課題や展望を検討する。 本調査の全体像を次項図に示す。

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(1)アジア諸国における環境規制・環境産業の動 向に関する調査 (2)欧米における環境規制・環境産業の動向に 関する調査 (3)公害対策分野における我が国環境産業の海外展開に向けた検討 ①アジア諸国の環境規制の状況(策定状況・執行状況) ②アジア諸国における環境産業の市場規模 ③アジア諸国における公害対策関連ビジネスの市場ニーズ・技術シーズ調査 ④アジア諸国における環境協力・環境ODAの実施状況 ⑤アジア市場展開にかかる課題 ②欧米諸国における環境産業の市場規模 ④海外展開状況等調査 ①欧米諸国の環境規制の状況(策定状況・執行状況) 対象国: EU 硝酸塩指令(1991 年 ) ■法概要: ・ 各国が 硝酸塩脆 弱地域を指定 し、同 地 域の農 家に対す る硝酸 塩散布規 制値を 設ける。 ・ ・・・ ■適用状 況: ・ 特に南 欧にお ける 硝酸塩脆 弱地域の 指 定が充 分では ない こと、 加盟各国の行 動 計画も実効性が 無いこと が欧州委員 会で は懸念 して いる。 ・ 1 カ国以外の全ての 加盟国が本指令に つ いての 違反訴訟手続きを せまられ た~ ■改正等 動向: 1. 欧州環境負荷物質関連法体系 ※ 赤字 は近 年制 定・改 正の動 きのあるもの [ 水質関連 ] ⑤海洋指令 <策定中 > ① 水 枠組 み 指 令 (2000/60/EC) ⑧飲 料水指 令 (1998/83/EC ) ⑦ 都 市 排 水 指 令 (1991/271 /EEC ) ⑥洪 水リ スク 指令 < 2006.1提案> ④水政策分野に おけ る 環境基準に 関する 指令 <2006.7提案中> ②地下水の 保全に 関す る 指令( 2006/118/EC) ③ 遊泳 場指 令 (2006/7/EC) [ 大気関連 ] ~ タイ の市場ニーズ 業界共通的な課題 【 大気汚染防止】 ・規制強化に伴って集じん機を取り付 け た工場は 多いが、 じん灰濃度が高いた め故障が多く 稼動し ていない工場も。 →安価な前処理工程が必要 ・ 脱硫装置はメンテナンスにコ スト が~ 【水質汚濁防止】 ・・ ・・ ・・ 【 土壌汚染対策】 ・ ・・・ ・・ 【廃棄物処理・ 汚泥処理】 ・・ ・・・ ・ 金属加工業 繊維・染色産業 石油化学産業 【 大気汚染防止】 ・国産の安価な処理装 置は騒音が~ 【 水質汚濁防止】 ・ ・・ ・・ 【大気汚染防止】 ・国産の安価な処理 装置は騒音が~ 【水質汚濁防止】 ・・ ・・ ・ 【大気汚染防止】 ・ 国 産の安価 な処理 装置は騒音が~ 【水質汚濁防止】 ・・ ・・・ 食品産業 【 大気汚染防止】 ・国産の 安価な 処理 装置は 騒音が~ 【 水質汚濁防止】 ・ ・・ ・・ ・ 国産 では ●社製 が シェ ア 大。○バーツ /m 3 程度で~ ・ 規模の大き な工場ではドイ ツ製~ ・ ○工業(現地企業)の○○で あれ ば○バーツ以下で~ ・ ・ ・ ③欧米諸国における公害対策関連ビジネスの市場ニーズ・技術シーズ調査 <公害対策分野欧米技術シーズリスト> 【大気汚染防止分野】 <小型集じん装置> ① ○○型集じん装置 ② ~ ③ ~ ④ <簡易ガス分析装置> ① 携行型簡易ガス 分析~ ② ~ ―――――――――――――――――― 【水質汚濁防止分野】 <無機廃水処理装置> ・・・ ―――――――――――――――――― 【土壌汚染対策分野】 ~ 技術名 ○○簡易分析装置 保有企業(国) △△( ドイ ツ) 概要 特徴( 同分 野日本製 品との比較) アジア市場で の 強み ・弱み 価格帯 ○ド ル/m 3 実績 【EU内】 【アジア】 現地調査 現地調査 図 調査の全体像

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1.海外環境規制の状況(制定状況・執行状況)

1-1.中国における公害対策規制調査

1-1-1.中国における公害対策規制の全体像

(1) 中国法規制の概観 中国における現状(2010 年 7 月時点)の公害対策分野における法規制の制定状況は図1 -1のとおりである。 中国の環境法令は、憲法を頂点とし、基本法である環境保護法、大気汚染など個別の領域 を専門的に扱う法律が制定されている。また、このほかに国務院(内閣にあたる)が制定す る環境行政法規、国務院の環境行政部門が制定する環境部門規章、さらに地方人民代表大会 や地方人民政府が定める地方性法規・行政規章がある。各環境法令の概略を以下に示す。 <法律> 法律は全人代(全国人民代表大会)により制定されている法令であり、環境基本法のほか、 特定の対象を専門的に扱う単行法が制定されている。環境汚染防止に関しての単行法は、海 洋汚染、水質汚濁、大気汚染、廃棄物、騒音に関する 5 つの単行法だが、別に自然保護に関 する単行法(水土保護法、草原法等)もあり、これらが環境法として分類されることもある。 <行政法規> 行政法規は、憲法及び法律の規定に基づいて国務院により制定されている法令で、その名 称は、「実施細則」「条例」「規定」「弁法」「決定」「通知」の 6 つがある。環境保護に関する 行政法規には、①法律による授権のもとに制定されたもの、②法律に定められていない制度 について一時的に法律に代替して制度内容を規定するもの、③具体的な政策実施の方法や方 向性を定めたもの、の 3 つの類型があると言われる。 <部門規章> 部門規章は日本の省庁に相当する国務院の構成部門(部、委員会)が単独、もしくは他の 行政部門との連名で制定する法令を指す。「規定」「弁法」等の名称で出される。なお、環境 基準や排出基準も環境部門規章として位置づけられている。なお、これ以外に、国務院各部・ 委員会による部門規章以外の「通知」「意見」もある。 <地方性法規等> 全国レベルの規制のほか、省レベルでは、各省の人民代表大会及び常務委員が定める地 方性法規のほか、各省の政府・省内立法権を持つ市級政府が定める地方政府規則がある。ま た、各省政府、省内立法権を持つ市級政府、各省庁局レベル部門では法的効力は無いが、「通 知」「意見」等の政策等を出している。

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図 1-1 中国における環境関連法体系図

その他

【法律】クリーン生産促進法(2002) 【部門規章】清潔生産審査暫定弁法(2004) 【部門規章】環境違法行為処分暫定規定(2006) 【 部 門規 章】 環 境汚 染防止 施設 運営 資質 許可 管理弁 法 (2004) 【行政法規】排汚費徴収使用管理条例(2003 改)★ 【政策】排汚費徴収基準管理弁法(2003 改) 【法律】環境影響評価法(2003 施)★ 【行政法規】計画環境影響評価条例(2009 施) 【目録】外商投資産業指導目録(2007 改)★ 【目録】産業構造調整指導目録(2005 施) 【目録】環境保護専用設備企業所得税優遇目録、省エネルギー・節水専 用設備企業所得税優遇目録及び安全生産専用設備企業所得税優遇目 録の施行における関連問題に関する通知(2008 施)★ 【目録】国が発展を推奨する環境保護産業設備(製品)目録(2007 改) 【法律】環境行政処罰弁法(2010 施)★

環境管理手法

【法律】水汚染防止法(1984)★ 【基準】水環境質基準(2000)★ (地表水への排出)地表水水質基準 (漁業保護区への排出)漁業水質基準 (農地灌漑用水への活用)農地灌漑水質基準 【基準】汚水総合排出基準(1998)★ 【基準】汚水業種別基準★ (製紙工業)製紙工業水汚染排出基準 (合成アンモニア工業)合成アンモニア工業水汚染物排出基準 (燐肥料工業)燐肥料工業水汚染物排出基準 ・ ・・・2010.8 現在で 23 業種 【基準】下水処理施設からの放流水基準(2003 施)★ 【法律】海洋保環境保護法(1982)★ 【行政法規】船舶による海洋環境汚染の防止に関する管理条例(2010 施) 【行政法規】水汚染防止法実施細則(2000) 【行政法規】重点流域水質汚染防止特別計画実施状況調査暫定規則(2009) 【部門規章】水汚染物質排出許可証管理暫定弁法(1988) 【目録】国が発展を奨励している節水設備(製品)目録(第一期 2001、第二期 2003) 【法律】大気汚染防止法(2000 改)★ 法の目的は、大気汚染を防止することにより、生活環境及び生態環境の保全及び改善を図り、人の健康を保護するとともに、経済と社会の持続可能発展を 促進させるため、この法律を制定する。 【基準】環境大気質基準(1996 改) 【基準】大気汚染物質総合排出基準(1996 制)★ 【基準】大気汚染物質排出源・業種別基準 (火力発電所)火力発電所大気汚染物質排出基準(2010 改)★ (ボイラー)ボイラー大気汚染物質基準(2001 制) (工業炉)工業炉大気汚染物質基準(1996 制) (コークス炉)コークス炉大気汚染物質基準(1996 制) (セメント工場)セメント工場の大気汚染物質基準(2004 制) (電気めっき)電気めっき汚染物排出基準(2008 制)ほか、 全 12 業種別基準 (悪臭物質排出事業所)悪臭汚染物の排出基準(2010 改)★ 【政策】火力発電所窒素酸化物防止技術政策(2010 制)★ 【意見】大気汚染合同防止を推進して区域大気質を改善する指導意見(2010 制)★ 【行政法規】オゾン層破壊物質管理条例(2010 制)

大気

【法律】固形廃棄物環境汚染防止法(1996)★ 【法律】循環型経済促進法(2009)★ 【部門規章】廃棄危険化学品汚染環境防止弁法(2005)★ 【行政法規】廃棄電気・電子機器回収処理条例(2011 予定)★ 【部門規章】電気情報製品汚染規制管理弁法(2007) 【行政法規】有害廃棄物経営許可証管理弁法(2004) 【行政法規】医療廃棄物管理条例

廃棄物処理

【法律】土壌汚染防止法(未) 【基準】工業企業土壌環境質のリスク評価基準(1999 制)★ 【基準】土壌質量標準(1995 制)/地下水質量標準(1993 制)★

土壌

中国

【政策】都市部おける汚水処理場の汚泥の取り扱い(2007 施) ★ 【基準】生活ごみ埋立所の汚染抑制基準(2008 施)★ 【政策】下水汚泥の汚染状況利用用途に関する技術政策(2009 発表) ★ 【通知】都市部汚水処理場汚泥汚染防止対策の強化に関する通知(2010 発表)★ 【法律】環境保護法(1979 制)★ 1979 年に施行された環境分野の基本法で、環境保護の方針,任務,政 策措置を規定。中国の環境保護に関する 3 つの基本原則:汚染源対策、汚 染者への課徴金、環境保護管理の強化を盛り込んでいる 【計画】第十二次五ヵ年計画(2011 採択)★ GDP 等の経済指標や人口、環境基準値まで幅広く定量的な目標値を定 める。この計画に示された目標が、全ての環境政策の基本方針となる。

全体

★の法規制について次ページ以降で詳細説明

汚泥処理

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(2) 全般・基本法 基本法として「環境保護法」(1974 年試行法として制定)が定められている。ただし、 環境保護法は文化財や都市・農村の生活環境まで含む基本法であり、概念的な内容にな っている。 また、中国では、中期的な重点事業や経済運営のあり方を示す五ヵ年計画策定時に、 計画期間における環境政策の方針を定めた国家環境保護計画を発表している。2006~ 2010 年は国家環境保護十一・五計画が全ての環境政策の基本方針として示され、第十一 次五ヵ年計画の最終年となる本年は、目標達成に向けて国務院から地方政府への努力要 請が強まった。また、2011 年 3 月、第十二次五ヵ年計画が全国人民代表会議で採択され、 2011~2015 年の環境保全方針が示されたほか、国家環境保護十二・五計画の準備が進んで いる。 ■環境保護法(1974 年試行法として制定、1989 年改正) 環境保護に関する原則的な理念を示している。国務院の環境保護行政主管部門(具体的に は環境保護部を指す)と地方の環境行政の役割分担に触れ、地方政府による排出基準値の 上乗せ、横出しを認める法的根拠を明記している。また、中国の基本的な環境管理制度と して、三同時制度、排汚費徴収制度、環境影響評価制度などについても触れ、実施根拠と なっている。具体的な環境規制については、本法の下に設けられる各種汚染防止法等によ って執行される。 ■第十一次五ヵ年計画(2006 年採択) 2006 年 3 月に開催された全国人民代表大会(全人代)において、第十一次五ヵ年計画(十 一・五計画)(2006~2010 年)が採択された。従来、中国のエネルギー政策は経済発展およ びエネルギー生産拡大を最優先課題としていたが、十一・五計画では GDP 成長率 7.5%を維 持しつつ、同時に資源節約型社会構築を重要な目的とするように大きく方針転換した。 ■ 第十二次五ヵ年計画(2011 年採択) 2011 年 3 月に開催された全国人民代表会議(全人代)において、第十二次五ヵ年計画(十 二・五計画)(2011 年~2015 年)が採択された。 第十一次五ヵ年計画期間中には四川大地震、チベット等の政治騒乱、世界金融危機等の不 測の事態が発生したにも関わらず、GDP 含め目標を超えたパフォーマンスを達成できた。し かし一方で、エネルギー・環境問題、所得格差、技術革新能力の脆弱さ等を含む「不協調・ 不均衡・持続不可能」な社会構造を抱えているとの認識のもと、今回の五ヵ年計画では『経 済発展方式転換の加速』に焦点を当てている。 具体的には、①安定的で比較的高い経済発展の実現、②経済構造の戦略的調整が著しい進

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④社会的なソフトインフラ整備の著しい強化、⑤改革開放のさらなる深化の 5 つの目標を 明示し、その達成のための任務として以下の 10 点を掲げている。 1) 内需拡大 2) 農業近代化の推進 3) 近代的産業システムの発展と産業コア競争力の向上 4) 均衡の取れた地域(国土)開発 5) 資源制約・環境保護型社会への転換 6) 科学教育立国と人材強国戦略の実施 7) 社会事業建設の推進と基礎公共サービスシステムの整備 8) 文化大発展の推進 9) 社会主義市場経済体制の精緻化 10) 互恵的でウィン・ウィンの開放戦略の実施 このうち、公害対策関連政策は主に 5)に含まれるが、ここでは、基本的には第十一次五 ヵ年計画の政策を踏襲しつつ、GDP あたりの排出削減を拘束力のある指標にするとともに、 炭素税の導入を明言している。 環境関連の主要目標値としては以下が掲げられている。 なお、第十二次五ヵ年計画では第十一次五ヵ年計画の目標設定物質項目にアンモニア性窒 素、窒素酸化物が加わった。これは 2007 年末に初めて全国規模で実施された「第1回全国 汚染源全面調査」の結果を受けたものと考えられる。第 1 回全国汚染源全面調査結果では、 この 2 年間で工業由来の SO2、COD の排出量は減少している一方、窒素酸化物やアンモニア 性窒素の排出量は変化がない、もしくは増加傾向にあることがわかった。特に火力発電所 からの窒素酸化物排出総量は 2003 年から 2007 年にかけて 40%以上増え、全国排出総量の 35~40%を占め、排出原単位は日本やドイツ等の先進国より高くなっている。これを受け て、環境保護部では第十二次五ヵ年計画期間中には、窒素酸化物質の排出を抑制すること を要求していた。 <主要汚染物質排出量> COD、SO2、アンモニア性窒素、窒素酸化物の 4 物質全てについて、単位 GDP あたりの 排出量を 2010 年比で 1.5%削減

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第十二次五ヵ年計画は地方政府単位でも策定されている。 【(参考)第 1 回全国汚染源全面調査の概要】 ■全国汚染源全面調査とは ・ 中国ではこれまで、環境統計公報と環境統計年報で環境汚染源に関する統計情報を公表してきたが、 これら統計の対象となる環境汚染源は主要な工業系企業等(2008 年では約 11 万箇所)で、調査対象 外企業については案分による推計値であった。これに対し、全国汚染源全面調査は、中国全土の汚染 源を全数調査で徹底的に調べるもので、工業汚染源 158 万箇所、農業汚染源 290 箇所、生活汚染源 145 箇所、下水処理場などの集中式汚染防止施設が 4790 で、対象総数は 593 万箇所という、これま での 50 倍以上の大規模な調査。 ・ 第十一次五ヵ年計画で主要汚染物質排出総量 10%削減という目標を定めたことを契機に、2006 年 10 月、国務院が全国汚染源全面調査の実施に係る通知を発表。 ・ 調査の概要は以下の通りで、第 1 回調査は 2007 年 12 月 31 日を基準日とし、約 10 億元の経費を投入 したと発表されている。 ○ 必要経費は中央政府と地方政府の共同負担 ○ 10 年毎に 1 回実施し、対象年の 12 月 31 日を基準日とする ○ 調査対象は国内の汚染発生源となる組織及び個人経営者 ○ 対象範囲は工業汚染源、農業汚染源、生活汚染源、集中型汚染処理施設ほか ○ 本調査の指導組織は国務院環境保護部門に設置し、ここで汚染源調査票を作成(地方政府は実 情に応じて調査別表を付けることができる) ○ 調査は二名以上による直接訪問形式 ○ 収集された情報は国家機密に該当。個別の情報は本調査目的のみに利用し、汚染物質総量削減 計画の実行状況審査やその他行政処罰、汚染排出費算定根拠には利用してはならない。 等 ■第 1 回全国汚染源全面調査結果 ・ 今回の調査結果では、これまでの環境統計に比べて COD 等水質汚染に関連した数値が大きくなってお り、これまでカウントされていなかった農業汚染源からの排出量が大きく影響している。一方、SO2 等の大気汚染関連数値はこれまでと大きな差は無く、これまでも調査対象となっていた主要工業系企 業等による排出割合が比較的大きく、新たに対象となった小規模企業等の寄与は少ないことが予想さ れる。 ・ また、工業固体廃棄物は従来の 2 倍以上の数値になっており、特に貯蔵量(最終処分されずに山積み 保管されている量)と投棄量の差が非常に大きい。これまで調査対象としてこなかった小企業等を中 心に、廃棄物の最終処理があまり適正に行われていないことが予想される。 (情報源)日経エコロミー2010 年 2 月 25 日記事 http://eco.nikkei.co.jp/column/eco-china/article.aspx?id=MMECcj000023022010&page=1 社団法人海外環境協力センター 中国環境情報 2010 年 2 月以降の報道発表より

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表 1-1にて、各種報道発表資料をもとに地方政府の第十二次五ヵ年計画の重点分野ついて 整理した。

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表 1-1 地方政府第十二次五ヵ年計画における重点取組内容 地方 重点取組内容 北京市 最も厳しい水資源管理制度を制定(都市住民の家庭省水機器普及率 95%以上、工業 用水リサイクル率 95%以上) 浙江省 50 件の郷鎮汚水処理施設と 1500km の汚水配管ネットワークの増設 湖南省 グリーン GDP 審査評価体系の完備 主要汚染物質排出権取引と生態補償の試行 広東省 汚染排出の目標責任制強化 環境アセスの審査、企業に対する管理監督の強化 省内火力発電所窒素酸化物抑制目標:総合脱硝率 70%以上 河北省 風力発電基地の建設を推進し、新エネルギー発電量を全省発電の 15%にする 雲南省 でん池汚染対策の強化(流域での新規工業プロジェクトの禁止、現有企業の順次立 ち退き) (出典)社団法人海外環境協力センター 中国環境情報コーナーをもとに MRI 作成 また、第十二次五ヵ年計画を受けて主要個別分野に関する五ヵ年計画も策定される予定 である。公害対策関連の計画としては、国家環境保護十二・五計画と、重金属汚染防止十 二・五計画が挙げられる。 ■ 国家環境保護十二・五計画 (未発表) 2008 年から作成作業がスタートし、2010 年 12 月に初稿が環境保護部内で採択されてい る。十一・五計画の中期評価を行った上で、全体構想、任務設定及び確保措置等について 記載。最終的な計画は、早ければ 2011 年 4 月ごろ発表予定だが、拘束性の高い目標が増え ることが予想されている。 ■ 重金属汚染防止十二・五計画(未発表) 重金属汚染防止十二・五計画は、2011 年 2 月 18 日に国務院に認可されているが、2011 年 3 月現在、全文は発表されていない。報道発表資料によると、環境保護部長の発言内容 から以下内容が予想される。 重金属汚染の防止対策は国民とりわけ子供の健康、ひいては社会全体の調和と安定に係 る重大な措置であることから全力を挙げて重金属汚染事業の頻発傾向を抑制すべきと位置 づけている。計画は、汚染発生の源からの予防策、汚染発生過程における歯止め策、及び クリーンな生産や末端の対策を含めた全過程を対象とする総合対策理念を掲げ、2015 年ま での重金属汚染防止対策の以下目標を打ち出した。  2015 年までに重金属汚染防止対策体系、事故緊急対策体系及び環境と健康リスクの評 価体系を構築し、国民の健康被害が際立つ汚染問題を解決する。  重金属関連産業構造を最適化(合理化)し、突発的な重金属汚染事件の頻発傾向を抑 制する。

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金属汚染物排出量は 2007 年の水準を超えないこととし、重金属汚染を効果的に抑制す る。 さらに、以上の目標を達成するために、以下のような具体的な措置を講じる。  指導を強化し、責任を明確化する。各省・自治区・直轄市政府は「計画」の実施主体 となって、実施の推進を着実に仕切り、「計画」の目標を各地域の経済発展計画に盛り 込み、各重点地域の重金属汚染防止対策計画と年度実施方案をそれぞれ編成し、具体 措置の実施と所要資金の確保を着実に行う。  実施結果に対する査定方法を制定する。環境保護部は関係部門と共同で部門間の横断 的な連携体制を構築し、「計画」実施結果に対する査定方法を検討・制定し、地方政府 関係部門の責任分担を明確化し、「計画」の実施を全面的に推進し、所定の要件を達成 できない地域の関係者に対して責任を追及する。重金属汚染防止対策実施結果を各地 域の経済社会発展の総合的な評価体系に取り入れ、地方政府指導幹部の総合的な査定 評価及び企業責任者の業績考課の重要な項目とする。  重点問題に集中し、対策措置を厳格化する。重金属汚染防止対策を今年度の環境保護 特別対策の重点とし、各地の重金属汚染企業、とりわけ生産工程が立ち遅れ、汚染が 酷い鉛蓄電池や鉛精錬などの企業の環境安全リスクに対する検査を徹底し、汚染発生 の可能性を芽の状態で取り除く。環境影響評価や「三同時」の検収を受けない企業の 生産を一律中止させ、期間限定の改正・補足を命じる。飲用水水源地の企業を一律閉 鎖する。汚染対策施設の正常な運転ができず、長期間にわたり汚染排出基準を達成で きない企業の生産を一律中止させ、改善を命じる。重大な環境安全リスクが発見され た企業の生産を一律中止させ、問題の解決を命じる。上記の問題解決ができない企業 を容赦なく断固として閉鎖する。環境関連不祥事のある企業の上場又は融資申請に対 し、問題発生から 2 年以内各レベルの環境保護部門はこれに同意するような認可書類 を提出してはいけない。  汚染の源から予防し、参入基準を厳格化する。重金属企業の環境安全防護距離を科学 的に調整し、重要な生態機能区及び重金属汚染により環境品質が基準達成の安定性が 低い地域における新規建設プロジェクトの実施を禁止する。重点地域における重金属 産業発展計画や重点産業専門発展計画に対する環境影響評価をしっかり実施し、法規 基準体系を健全化し、これを当該地域における重金属産業関連建設プロジェクトの環 境影響評価報告を受け入れる前提条件とする。今後、遅れた設備の淘汰が所定基準を 達成できない地域及び重大な汚染事件が発生した地域に対し、重点汚染物排出の防 止・抑制関連の新規建設プロジェクトの審査を中止する。  事件を善処し、安定を確保する。各レベルの環境保護部門は重金属汚染事件関連情報 の報告を徹底的に強化し、問題が発生した場合、即時報告し、善処を行い、地方政府 の情報公開に全力支援し、民衆への対応をしっかり実施する。これにより、民衆の環 境権益を着実に保護し、社会の調和と安定を維持する。

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【(参考)国家環境保護十一・五計画(2006~2010)の概要】 2007 年 11 月 26 日、第十一次五ヵ年計画に基づく国家環境保護十一・五計画(2006~2010)が発表さ れた。本計画では、2005 年までの第十次五ヵ年計画における環境対策の実施状況及び環境改善の状況が 総括されるとともに、第十一次五ヵ年計画期間における環境保護計画を示している。 ■国家環境保護十・五計画の到達状況(2007 年時点)  環境保護計画指標は全てが実現されておらず、二酸化硫黄(SO2)排出量は 2000 年比 27.8%増加、化 学的酸素要求量(COD)は 2.1%減少で 10%の削減目標に至らなかった。  2005 年のエネルギー消費は 2000 年比で 55.2%増加しており、新設の火力発電所は SO2低減の設備を 備えておらず、旧式設備を環境に優しい技術で改良する計画もうまくいっていない。  製紙業も重大な環境問題を起こしている。  水の汚染は悪化しており、河川・湖沼の水の 26%は全く利用不能な状態で、62%は魚が棲むのに適さ ず、市街地の川の 90%は汚染されている。  第十次五カ年計画期間に解決が図られた深いレベルでの環境問題の一部は、いまだブレイクスルーを 得られていない。具体的には以下のとおり。  不合理な産業構造や粗放な経済成長方式は全く転換されていない。  環境保護が経済発展に遅れを取っている状況も変わらない。  体制の不備、構造の行き詰まり、資金投入不足、能力の低さなどの際立った問題が残された ままとなっている。  法律があってもそれに依拠せず、違法行為は追及が困難で、監督管理は脆弱、法執行は怠慢 で、管理監督力が不足している、などが普遍的な状況となっている。  地方政府の中には環境保護より経済成長を重視しており、環境保護当局もそれを管理する強 力な力を欠いている。 ■国家環境保護十一・五計画での取組方針  重点業務と主要任務は、第十次五カ年計画で決定された主要汚染物排出抑制目標を達成すること。汚 染予防対策業務を重点項目中の最優先事項とし、都市・農村住民の飲料水安全確保を第一の任務とす る。  歴史的転換をさらに促進し、長い間環境保護発展の足を引っ張ってきた制度面での障害の解決に尽力 しなければならない。中央政府と地方政府の職権、政府と企業の職責にそれぞれきちんと境界線を引 き、バランスある統一的で効率の高い環境監督管理体制を健全化する。  地方政府をモニターするための評価メカニズムを設定する。  半年ごとに全ての地区の主な汚染物質排出の報告を発表し、2008 年と 2010 年には地方政府 の計画達成度合いの診断を行なう。  第十一次五ヵ年計画の環境保護目標を実現するため、全国の環境保護投資が毎年、GDP の 1.35%相当 となる。  2005 年に政府は環境保護に GDP の 1.31%に相当する 318 億ドルを投入した。  計画作成に参加した中国環境計画学院の副所長は、水の汚染の処理に 853 億ドル、空気汚染 処理に 800 億ドル、固形廃棄物処理に 280 億ドルの投入を予想している。  計画では 2010 年に COD を 2005 年比で 10%カット、SO2排出を 10%カットする。これにより 2010 年ま でに、中国の大都市の 75%が、毎年 292 日以上の良好な大気環境(Level Ⅱ以上)となる。(2005 年 は平均 69.4 日)  飲み水問題を最優先課題とし、水の汚染に対する罰金を大幅に引き上げる。飲み水の安全性、主な河 川・湖沼の浄化、汚染・排出規制、都市の廃棄物処理を取り上げている。  汚染物排出者が浄化のコストを負担する原則を採用、排出や汚染を減らすための税制改革も行なう。 廃棄物処理コストを反映した価格メカニズムも導入する。  102 億ドル以上を排出者から徴収し、処理のために使用する。  汚染物質を飲み水の水源に流したものや、汚染物質を河川や湖沼の沿岸に貯蔵したものに、 現行の 20 倍の罰金を科す。  水汚染事故の場合、コスト全額負担のうえ、罰金も引き上げる。重大な事故の場合は工場閉 鎖とする。 (情報源)社団法人 海外環境協力センターウェブサイト http://www.oecc.or.jp/c_info07tokusyu-2.html

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(3) 大気汚染防止 中国における大気汚染対策は、大気汚染防止法によって規定されており、大気環境質 基準・大気汚染物質排出基準が定められている。但し、大気汚染防止法の中に基準値が 定められているのではなく、別途、国家レベルについては環境保護部が、地方レベルに ついては省や自治区、直轄市の環境担当部局が定めている。 中国では特に、二酸化硫黄、工業由来の粉塵、ばいじんの 3 種類に対する規制に力を 入れており、具体的には大気汚染防止法での総量コントロール対象地区として対策を進 めている。また、近年は、窒素酸化物対策について着目し始めており、今後重点規制対 象となる可能性もある。 ■大気汚染防止法(1987 年制定 2000 年 4 月改正)(大気環境質基準:参考資料 1 参照) 大気汚染を防止することにより、生活環境及び生態環境の保全及び改善を図り、人の健 康を保護するとともに、経済と社会の持続可能な発展を促進させるため、この法律が制定 されている。同法では、大気汚染を排出する工場等の新設・拡張時の環境影響評価の手続 き、排汚費徴収制度、大気汚染物質の総量規制の実施、環境行政機関の立ち入り検査権限、 国家環境保護部や地方政府による大気汚染物質排出基準設定を認めること等の基本規定 が示されている。また、本法には、自動車や船舶等移動発生源による大気汚染防止、悪臭 防止規定も含まれる。 1987 年に制定された後、1995 年、2000 年に改正され、内容の強化が進められてきた。 2000 年改正では、特に石炭燃焼による大気汚染規則の強化と、大気汚染防止重点都市に 対する規制の強化が行われている。2010 年 6 月には環境保護部ほか 9 省庁連名で「大気 汚染防止の推進による地域における大気改善に関する指導意見」を公表し、この中で 2015 年までの大気汚染防止メカニズムの形成、地域における大気環境管理法体系の策定を示し ていることから、今後大規模な法改正の可能性が見込まれる。 <総量コントロール> 一定地域での大気汚染物質の排出総量をコントロールするために、総量コントロール制 度があり、国務院と省レベル政府が指定した『総量コントロール区』では、企業等に対 して、主要な大気汚染物質の排出総量がそれぞれに割り当てられ、達成することが求め られる。ただし、総量コントロール制度には強制手法はない。 『総量コントロール区』は、①大気環境質基準が達成できていない地域、②酸性雨コン トロール区、③二酸化硫黄汚染コントロール区の 3 つ。②、③は国務院の承認を得て指 定されており、1998 年 2 月に 11 の地域指定が行われている。

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<大気汚染防止改善重点都市> 国務院によって大気汚染防止改善重点都市が指定されている。具体的には、直轄市、省 都、沿海開放都市、重点観光都市で、113 都市が重点都市に指定されている。 重点都市では、大気環境質基準を達成できない場合、期限を定めた達成計画を作成し、 より厳格な措置を実施することになる。 <自動車排出対策> 排出基準に適合しない自動車の製造・販売・輸出、及び走行を禁止。また、良質燃料の 生産と使用を推奨し、燃料油の有害物質を減らすための措置をとることになっている。 ■大気汚染物質排出基準(参考資料 1 参照) 汚染源は、国が定める国家大気汚染物質排出基準、あるいは省・自治区・直轄市政府が 定める地方排出基準を超える汚染物質を排出してはならない。なお、排出基準については、 省レベル政府は上乗せ(国より厳しい)、あるいは横出し(国が未制定のもの)の地方基準 を制定できる。排出基準が国家と地方で並行して規定されている場合には地方基準が優先 することになっていることに留意が必要である。排出基準違反の大気汚染行為は、期限付 きでの改善を要求されるほか、過料の行政処分が課される。 以下、ここでは国レベルの排出基準について述べる。 中国の大気汚染物排出基準には、『業種別・排出源別排出基準』と『総合排出基準』とが ある。『業種別・排出源別排出基準』ではボイラー、工業炉等の汚染リスクの高い排出源に ついてそれぞれ排出基準を定めているほか、悪臭汚染物発生源についての排出基準が制定 されている。現在、以下の 12 業種に対する基準値が定められている。 ・ 火力発電所 ・ ボイラー ・ 工業炉 ・ コークス炉 ・ セメント工場 ・ 電気めっき ・ 合成皮革工業 ・ 石炭工業 ・ 二輪車 ・ 車両 ・ 軽自動車 ・ 悪臭物質排出事業所 個別に排出基準が制定されていない排出源については、『総合排出基準』が適用される。

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<総合排出基準(1996 年制定)> 1997 年 1 月 1 日時点での既設施設向けと、新設施設向けの 2 つの排出基準値を規定さ れている。 規制対象となる大気汚染物質は 33 物質と多く、基準値は標準状態における濃度(mg/m3)、 1 時間あたり排出量(kg/h)(煙突高さ別、排出場所の環境基準区分別に規定)、開放排出 のモニタリング濃度(煙突を通さない場合の工場敷地境界での測定値)の 3 種類について 規定されている。 濃度基準値について日本の大気汚染防止法と比べると、ほぼ同レベルの数値である。た だし、日本では規定されていない亜鉛とその化合物、日本では一部施設に対して指定物 質抑制基準が定められているベンゼンについては、厳しい基準値が定められているため 留意が必要である。また、日本の大気汚染防止法では施設の種類ごとに細かく数値が規 定されているが、中国の施設分類は少ないため、施設種類によっては中国の規定は厳し いものとなる。 <業種別・排出源別排出基準-悪臭汚染物質排出基準> 2010 年、1993 年に制定された悪臭汚染物質排出基準を改定するために、基準の適用範 囲、汚染物質項目、濃度上限値、測定方法などについて意見を募集。現在、中国の食肉 加工工場、化学製品生産工場、都市汚水処理場等では悪臭問題が目立っており、問題視 されている。 <業種別・排出源別排出基準-火力発電所排出基準> 2010 年、新設火力発電所の設備を対象に、運転時間当たりの排出ガス、煤塵の排出量を 厳しく規制する新たな排出基準を策定。(現段階では公布見通し) ■火力発電所窒素酸化物防止技術政策(2010 年 4 月発表) 2010 年 4 月、環境保護部が火力発電所窒素酸化物防止技術政策を発表。統計によると、 火力発電所による窒素酸化物の排出総量は 2007 年度に 2003 年度の 40.6%近く増えている。 2007 年度の中国の火力発電所の窒素酸化物の排出原単位は 3.1g/kwh で、日本、ドイツ等の 先進国原単位より高い。専門家の予測では、今後の経済発展に伴い、中国の窒素酸化物排 出量は引き続き増大するとされ、2008 年には排出量 2000 万 t に達して世界一に、抑制措置 を施さない場合には 2020 年までに 3000 万トンまで達する見込みとしている。この状況を 受けて、排煙脱硝技術についての技術開発・普及政策を示す本政策を示した。 ■大気汚染合同防止を推進して区域大気質を改善する指導意見(2010 年 5 月発表) 大気汚染防止の強化も区的として環境保護部などの 8 部門合同で発表。各地域が統一的 に大気汚染防止に係る計画、監視、監督・管理、評価、調和を行う区域大気汚染合同防止

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メカニズムを構築することを求めるもの。2015 年までのメカニズム構築を目標とし、主要 な大気汚染物質の排出総量を顕著に下げ、重点企業全てが基準を達成し、重点区域全ての 大気質を 2 級基準以上とし、酸性雨・砂塵・光化学スモック汚染を減少させることを目指 すとしている。2010 年 6 月まで各地域から意見募集を実施。 (4) 水質汚染防止 中国の環境保護政策のなかで、水質汚濁対策は最も重要度の高い課題である。前述の 通り、第十一次五ヵ年計画においても重点的に水質汚濁防止対策が進められており、COD やアンモニア性窒素を対象とした総量規制の導入、汚水処理場の集中的整備、旧式生産 設備を持つ中小規模工場の操業停止等が実施されている。 一方、個別法としては、中国の水質汚染防止対策は、水汚染防止法と、その実施細則 (主に生活飲用水の汚染防止について規定)によって大枠が規定されている。 ■水汚染防止法(1984 年施行、2008 年改正) 水質汚染を防止し、環境の保護と改善を行うことで、人の健康を保障し、水資源の有効 利用を保障し、社会主義現代化建設の発展を促すことが、本法律の目的とされている。1984 年に施行され、最近では 2008 年に改正されている。 適用範囲は、河川、湖沼、運河、水路、ダム等の表流水と地下水で、海洋については『海 洋環境保護法』(1982 年制定、1999 改正)に規定されている。水汚染防止法では、環境影 響評価の実施、都市汚水集中処理の推進、飲料水源保護対策、地表水・地下水の汚染防止、 国家環境保護部や地方政府による水質汚濁防止物質に対する排出基準の設定権限、水質汚 濁防止対策への三同時制度、排汚費徴収制度等の環境管理制度導入などの幅広い項目を規 定している。 本法は排汚費の徴収を求めるものの、汚染物質の基準を超過した排出を禁止してはおら ず、企業の汚染物質排出削減、政府の監督・管理を奨励するメカニズムが不十分であった。 そこで、2008 年改正では、環境保護目標制度、重点水質汚染物排出総量規制制度、汚染 物質排出許可制度、飲料水水源区保護制度等を追加し、水質汚染防止に関する政府の責任 を強化、基準を超過した場合の企業に対する処罰を強化した。 <排出規制> 水汚染への排出規制として、①生活飲用水の地表水源一級保護区内での汚水排出監視に 関する規定で、新設の禁止や既設排出口の期限付き取り壊し等が定められているほか、 ②小型化学産業(紙パルプ、捺染、染料、皮革、めっき等)は汚染防止措置のない場合 の新設が禁止されている。

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<水質環境保護目標責任制度・査定評価制度> 水質汚染防止・対策を地方政府の業績査定の指標とすることを規定し、政府の責任を強 化。 具体的には、省長、市長、県長(知事)などが任期内における具体的な環境保護目標を規 定し、目標の達成に責任を持つ旨の文書に調印。その達成度に応じて賞罰を受ける形式。 <重点水質汚染物排出総量規制制度> 汚染源が排出基準を達成しても水環境質基準が達成できないような水系に対しては、重 点汚染物質に対する総量コントロールが実施でき、企業に対して排出量が割り当てられ る。 重点汚染排出規制対象とされる企業・事業所は水質汚染排出の自動モニタリング設備を 設置し、行政側の環境保護主管部門の監視設備と連結して正常に稼動することを保障し なければならない。 <汚染物質排出許可制度> 汚染物質を直接または間接的に水系に排出している全ての企業・事業者・個人経営者に 対して、県級以上の人民政府への届出義務を課す。 基準を超過した排出を違法と規定し、これにより企業の汚染物質排出行為を規範化した。 ■水環境質基準(2000 年改正)(参考資料 1 参照) 環境質基準は国務院環境行政部門が制定し、省、自治区、直轄市政府は横だしの地方補 充基準を制定できる。国レベルの水環境質基準では、地表水についての基準のほか、漁業 保護区等特別の地域ごとに制定されている。地表水の基準は、基本項目と、特定項目とに 分けられ、前者は全国の河川、湖水、運河、用水路、ダムなどの地表水域全体を対象とし、 後者は県クラス以上の地方人民政府環境保護主管部門が必要性に基づき自ら選択し、基本 項目の補足とすることが認められている。 ■水質汚濁物質排出基準(参考資料 1 参照) 水汚染物質を排出する企業と事業組織に対しては、排出基準の遵守を求め、基準を超え た排出者に対しては基準超過汚染課徴金(超標排汚費)が課されるほか、改善計画の策定 が求められる。改正前は基準超過自体は違法行為とされず排汚費支払いのみが規定されて いたが、2008 年の水汚染防止法改定に基づき、基準超過は違法行為として罰則が設けられ た。 また、大気汚染防止と同様、排出基準については、省レベル政府は上乗せ(国より厳し い)、あるいは横出し(国が未制定のもの)の地方基準を制定できる。以下、ここでは国レ ベルの排出基準について述べる。

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大気汚染防止と同様、水質についても『業種別排水基準』と『汚水総合排出基準』とが ある。前者では、23 業種(うち 11 業種は 2008 年に追加)の汚染リスクの高い排出源につ いてそれぞれ排出基準を定めている。 ・ 製紙工業 ・ 合成アンモニア工業 ・ リン肥料工業 ・ 船舶工業 ・ 海洋石油開発業 ・ 紡績捺染工業 ・ 肉類加工工業 ・ 合成アンモニア工業 ・ 鉄鋼工業 ・ 航空宇宙燃料使用業 ・ 兵器工業 ・ 苛性ソーダ工業 ・ 塩化ビニル工業 ・ インク工業 ・ 製薬工業 個別に排出基準が制定されていない排出源については、『汚水総合排出基準』が適用され る。 <汚水総合排出基準(1998 年施行)> 汚水総合排出基準では、総水銀、アルカリ水銀等の毒性を有する 13 項目を第一類汚染 物、pH,懸濁物質(SS)、COD、BOD 等の 56 項目を第二類汚染物と規定している。第一類 汚染物については、工場内各施設の排出口での濃度が規制されるため、各施設専用の排 水処理装置を排出口前に設置する必要がある。第二類汚染物については、工場敷地から の排出口で規制されるため、複数施設排水の集約処理が認められる。 第一類汚染物の排出基準値は、日本の基準値とほぼ同等レベルであるが、総ニッケル、 総銀、3.4 ベンゾ(a)ビレン、総ベリウム、総α放射線、総β放射線の 6 項目について は日本では規制対象となっていないため注意が必要である。 第二類汚染物については、1998 年 1 月 1 日時点での既設施設向けと、新設施設向けの 2 つの排出基準値を設定している。新設施設向け基準は、放流先の水質によって 3 つの区 分別(第一級:飲料水水源、第二級:一般水源、第三級:下水道放流)に基準値が定め られており、日本の一律排出基準値と比べると中間的な区分である第二級でほぼ同等レ

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但し、COD について、中国ではクロム法が採用されている。日本ではマンガン法が採用 されており、COD 基準値の見方に留意する必要がある。日本の基準値をクリアする排水処 理装置を中国に持ち込んでも、中国基準値を達成できないことが多いとされる。 このほか、アンモニア性窒素、銅の基準値は日本に比べて厳しいと言われている。 また、1998 年 1 月以降に建設された鉱山、非鉄金属等業種については濃度規制のみなら ず、排水量の上限も規制されている。製品 1t あたりの排水量を規制しているケースのほ か、数種の業種については用水使用の循環率で規制している。 特にヒアリング調査によると、金属加工業に対する『水の循環利用率 80%』という規制 値は非常に厳しい規制として知られている。後述の通り、地方レベルではさらに厳しい 基準値も設定されている。特に日本のめっき産業などでは、節水対策が進んでおり、使 用水量が少ない中でさらにリサイクルを推進することは困難な状況にある。 ■下水処理施設からの放流水基準(2003 年施行) 都市下水処理場または住宅区、コミュニティ、各規模の下水処理施設からの処理水に対 する放流水の基準。基本項目については強制で、管理目標項目については地方環境保護行 政機関・部門が受け入れる水に含まれる汚染物質の種類と環境の保護レベルに合わせて選 択的に行うことになっている。現地ヒアリング調査によると、基準値のうちの特に全窒素 と全リンについて基準達成が困難な状況にあるとされた。 ■海洋環境保護法(2000 年施行) 海洋汚染の防止・対策、海洋環境の保護を原則とし、陸上及び海上において海洋環境汚 染をもたらす可能性のある事業体が負うべき環境保護義務を規定している。 重点海域では汚染物質排出総量規制制度の導入が規定されており、海洋に汚染物を直接 排出する事業体等は排汚費の支払いを求められる。 ■重点流域対策(2006~2010 年の計画) 中国国務院は第十一次五ヵ年計画の期間(2006~2010)において重点的に汚染防止対策 を実施すべき重点流域を決め、これを受けた環境保護部等が重点流域水汚染防止計画(2006 ~2010 年度)を定めている。重点流域範囲は拡大し続けており、第十一次五ヵ年計画の対 象は中国全土の 40%に達している。

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表 1-2 第十一次五ヵ年計画期間における重点流域対策 1 淮河流域水質汚染防止対策計画★ 2 海河流域水質汚染防止対策計画★ 3 遼河流域水質汚染防止対策計画★ 4 松花江流域水質汚染防止対策計画※ 5 三峡ダムと長江上流流域水質汚染防止対策計画※ 6 丹江口ダムと漢水上流流域水質汚染防止対策計画※ 7 黄河中上流流域水質汚染防止対策計画 8 テン池流域水質汚染防止対策計画★ 9 巣湖流域水質汚染防止対策計画★ 10 太湖流域水環境総合対策全体案★ ★は第九次五ヵ年計画・第十次五ヵ年計画からの継続対象 ※は第十次五ヵ年計画からの継続対象 (出典)各種資料よりMRI 作成 これらの重点流域については、重点的に投資が行われ、様々な汚染防止・対策プロジェ クトが実施される。例えば、2009 年には、8 箇所(表 1-2の太湖、丹江口ダム以外)に 対して 715 億元が投資され、1270 件のプロジェクトが終了、785 件のプロジェクトが進行 中である。うち、特に松花江流域の汚染対策プロジェクトは 101 件、41 億元が投じられて いる。 2009 年には重点流域水質汚染防止特別計画実施状況調査暫定規則が採択され、重点流域 の水質調査制度が確立。重点流域の水質汚染防止に関する対策を推進できるようになった。 ■地方政府における水質汚濁防止分野の規制 前述の通り、中国では、国が定める国家基準に対し、地方政府が上乗せ、横出し規制を 定めることが認められており、実際、都市部の地方政府では厳しい規制値を定めている。 例えば、天津市では国家基準:COD100 のところ、市の基準として COD50 を設定している。 この基準値は中国企業にとって非常に厳しいものである。また、水不足が著しい中国北部 では工業用水の価格が高騰しつつあり、高い費用をかけて工業用水を導水して、さらに高 い費用をかけて COD50 を達成して放流するよりも、高度な水処理を行って循環利用する方 が経済的メリットを生じるようになりつつある。 また、水質監視システム導入を促進する規制も増えている。例えば、遼寧省政府は、2010 年に汚水処理場運営の監督管理に関する規定を施行し、汚染物質排出基準の達成を目指し、 オンラインでの水質監視システムの導入を定めている。汚水処理場は汚染物質オンライン 監視装置及び国の基準を達成できるコントロールシステムを設置し、運営及び排水の状況

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(5) 土壌汚染対策 中国では、土壌汚染防止法の策定が進められている。2005~2008 年に行った全国土壌汚 染状況調査を踏まえ、2010 年 2 月に専門家等による土壌汚染防止法草案がまとめられ、近 いうちに公布される見込みとされる。しかし、土壌汚染防止法はこれまで何度となく公布 見込みとされながら公布に至っておらず、土壌分野専門家へのヒアリング調査では具体的 な公布予定時期については不透明との見解も聞かれた。2015 年施行予定との情報もある。 法としては整備途上であるが、中国では 1999 年に国家環境保護部基準として施行された 「工業企業土壌環境質のリスク評価基準」や、土壌・地下水に関する環境基準は設けてい る。 ■工業企業土壌環境質のリスク評価基準(1999 年施行)(参考資料 1 参照) 1999 年に国家環境保護部基準として施行。本基準は工業企業の立地選定等に用いること としており、採鉱、農地、住宅地の評価には適用しないとしている。本通知では、基準を 超過する汚染土壌の処理は有害廃棄物の処理と同様に汚染原因企業が自己責任で実施する と規定されている。 基準は、89 項目について『土壌地下水を現在及び将来とも飲料水として使用しない場合 の基準』と『飲料水として使用する場合の基準』の 2 種類がそれぞれ定められている。い ずれの基準も土壌中の汚染物質濃度を規定され、基準値を超過した土壌は有害廃棄物と同 様の処理が求められる。 日本の土壌汚染対策法と比べ、対象とする項目数が格段に多いことに留意が必要である。 (土壌汚染対策法上の特定有害物質は 25 物質)基準値自体は、総砒素以外については日本 に比べてゆるい基準となっている。また、本通知では、89 項目について、汚染の有無を判 断するための地下水水質基準も定めている。 ただし、本基準は参考という位置づけであり、実際にはほとんど使用されていないとの 情報もある。 ■土壌質量標準(1995 年制定)/地下水質量標準(1993 年制定)(参考資料 1 参照) 土壌と地下水の状態を分類するための環境基準として両者が定められているが、これら 基準に基づく調査や対策を求めるものではない。 ■地方政府における土壌汚染防止分野の規制 中央政府による土壌汚染対策法制定が遅れていることから、一部地方政府では独自に土 壌汚染関連規制の制定に向けた動きもある。広東省土壌汚染専門家へのヒアリング調査で は、土壌汚染問題は法規制によって責任者が明確にされない限り対策が進まないとの観点 から、広東省内鉱業による大規模土壌汚染への対策推進に向けて、省独自の土壌汚染対策

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規制の制定可能性を検討しているとの情報が得られた。 また、内陸部においては、土壌汚染よりも土壌流出防止の観点から対策を進めている。 例えば遼寧省では 2009 年 9 月末現在、土壌流出防止に 8300 万人民元を投入し、153 万 8000 ムーの土壌整備を完成させている。 (6) 廃棄物処理・リサイクル 中国において、廃棄物問題は、大気汚染、水汚染と並んで大きな課題となっている。 特に都市部では急速な廃棄物の増加への対応が急務となっている。廃棄物対策について は、第十一次五ヵ年計画においても重点的に対策がとられてきたほか、個別法では固形 廃棄物環境汚染防止法で規定されている。また、2009 年 1 月に施行された循環型経済法 では、資源有効利用の観点から、廃棄物の減量化・再利用・資源化についての規定が設 けられている。 ■固形廃棄物環境汚染防止法(1996 年施行) 固形廃棄物による環境汚染を防止し、人体の健康を保障し、生態系の安全を保ち、経 済社会の持続可能な発展を促すため、本法を制定している。固形廃棄物は、固体あるい は半固体の廃棄物質と定義されているが、液体廃棄物や、容器に入った気体廃棄物も対 象となっている。固形廃棄物は、①工業固形廃棄物、②都市生活ごみ、③有害廃棄物に 分けられ、特に、有害廃棄物については固形廃棄物環境汚染防止法のほか、廃棄危険化 学品環境汚染防止弁法でも規定されている。固形廃棄物による海洋環境汚染の防止と放 射性固形廃棄物による環境汚染の防止には本法は適用されない。 本法は、固形廃棄物の管理体制、管理制度、廃棄物の収集、貯蔵、運搬、処理に関す る規定を定めている。また、廃棄物の減量化・無害化・資源化の廃棄物処理 3 原則、廃 棄物のリサイクルと管理に関する責任・義務規定も定められている。 また、産業廃棄物については排出企業が自己責任で処理することが規定されているが、 このうちの有害廃棄物の処理・運搬は許可証を有する業者へ委託する必要がある。 <国家有害廃棄物カタログ> 固形廃棄物環境汚染防止法に基づいて、1998 年に規定。有害廃棄物の対象となる廃棄 物を 60 グループ、数百種の物質数で挙げている。このうち、PCB や医療廃棄物、飛灰等 の毒性が高いものについては特別有害廃棄物として区分されている。 ■循環型経済促進法(2009 年施行) 循環型経済を発展させることが国家経済社会の発展における重要な戦略とし、その推進

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資源有効利用の観点から、廃棄物のみならず、エネルギー、水を含めて減量化・再利用・ 資源化に関する規定を盛り込んでいる。廃棄物については、強制回収リストに挙げられた 製品または包装物を生産する企業は、自らの責任で、廃棄された製品または包装物を回収 しなければならないとし、生産者責任を製品の回収、利用、及び処理段階まで拡張してい る。エネルギーや水については消費単位の改善を推進している。 本法のカバー範囲は非常に広く、日本での資源有効利用法に加え、各種リサイクル法や、 環境配慮設計、グリーン購入法等の概念までも含むものとなっている。野心的な政策であ る一方、実現性が懸念されているところである。 <減量化> 製品等の設計者は、資源消費量と廃棄物発生量を削減し、易分解設計、無害・無毒な材 料選択等に努めることが規定されている。特に、電気電子製品については、国が禁止する 有害・有毒物質を使用してはならないとする。 その他、節水や水使用量の抑制について規定している。また、使い捨て製品の生産・販 売を制限し、使い捨て製品リストを作成することとされている。 <再利用・資源化> 国や地方政府に対し、情報システム構築による産業系廃棄物の交換促進、エネルギーカ スケード利用、節水や水循環利用の推進等の産業政策を求めると同時に、企業に対しても 同様の再利用・資源化を求めている。 地方政府に対しては、廃棄物回収ステーションや廃棄物交換市場の設置、回収御すや問 うによる廃棄物回収・保管・運搬等支援を求める。 <奨励措置> 経済的インセンティブとして、循環型経済促進のための基金設立、モデル事業等への支 援、クリーナープロダクション等への税制優遇、政府によるグリーン購入等を規定。 ■廃棄危険化学品環境汚染防止弁法(2005 年) 中国国内における廃棄危険化学品の発生、収集、運送、貯蔵、利用及び処理に係る活動 に適用されるもので、危険廃棄物について以下の規定を有する。 危険廃棄物については、他の廃棄物に比べて詳細に規定されている。まず、都市政府は 危険廃棄物の集中処理施設の建設を進めることとなっている。 危険廃棄物を産出するものは、規定に従った処理を行うことが義務付けられ、行われな い場合には期限付き改善命令、さらには代行処理が行われる。 また、危険廃棄物の収集、貯蔵、処理の業者に対する許可制度や、従事する人員への資 格制度も規定されている。

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危険廃棄物には医療廃棄物も含まれるが、SARS 問題が発生した際に医療廃棄物が適正に 処理されていなかったことが問題となり、別途医療廃棄物管理条例が制定された。 ■廃棄電気・電子製品回収処理管理条例(2011 年施行予定) 廃棄電気・電子製品の処理資格許可制度を規定している。資格を取得した事業者は、廃 棄された電気・電子製品を解体、原材料を抽出した上で最終的な処分を行うこととなって いる。集中処理制度を想定した制度といえる。 (7) 汚泥処理 中国では、水質保全に力を入れる一方で、汚泥処理に対する政策を整備してこなかった。 その結果、排水処理設備で大量に発生する汚泥の処理設備が整備されず(整備されても稼 動せず)、2008 年ごろから未処理の汚泥による二次汚染問題が顕在化し始めた。多くの場合、 汚泥は簡単に脱水した後(含水率 80%程度)、無害化処理を経ずに直接埋立処分されてきた が、汚泥が大量に投入された埋立処分場では凝固した汚泥によってメタンガスが滞留し、 爆発事故の懸念が生じる地域もあるとされる。 これに対応するため、建設部と環境保護部によって基準等が示されている。 ■都市部おける汚水処理場の汚泥の取り扱い(2007 年施行) 汚泥の減容化、無害化と脱水率向上を図るために建設部が発表。汚泥埋立にあたっては、 その含水率を 60%以下に抑えるよう規定している。 ■生活ごみ埋立所の汚染抑制基準(2008 年施行) 土壌、地下水等への汚染防止を強化する目的で環境保護部が発表。埋立時の汚泥含水率 は、建設部の定めた規定同様含水率 60%以下としている。 ■下水汚泥の汚染状況別利用用途に関する技術政策(2009 年 2 月発表) 中央政府環境保護部等から各省、直轄市等に対し、下水汚泥の利用用途別の基準値を国 家基準の一歩前の段階として技術政策として発表。技術政策では、汚泥処理の責任主体を 地方政府と定め、汚泥の排出削減、全過程での適切な管理監督を原則とし、適切な汚泥処 理技術を選択することを求めている。地方政府に対しては地域の実態を踏まえた上で処理 方法を確定し処理施設の設置場所を定めることや、汚泥処理ルートと用途についての報告、 下水処理場建設・改造・拡大時に汚泥処理施設を同時に計画することを求めた。また、処 理方法についても言及し、「農業用汚泥の汚染物コントロール標準」を満たす汚泥について は堆肥利用を提唱したほか、多様な汚泥処理技術について以下の通り推奨している。

表 1-2 第十一次五ヵ年計画期間における重点流域対策 1 淮河流域水質汚染防止対策計画★ 2 海河流域水質汚染防止対策計画★ 3 遼河流域水質汚染防止対策計画★ 4 松花江流域水質汚染防止対策計画※ 5 三峡ダムと長江上流流域水質汚染防止対策計画※ 6 丹江口ダムと漢水上流流域水質汚染防止対策計画※ 7 黄河中上流流域水質汚染防止対策計画 8 テン池流域水質汚染防止対策計画★ 9 巣湖流域水質汚染防止対策計画★ 10 太湖流域水環境総合対策全体案★ ★は第九次五ヵ年計画・第十次五ヵ年計画からの継続対象 ※
表 1-11 オンライン上の水質汚染モニタリングシステム導入が求められる業種 BOD online COD online
表 1-15 タイの廃棄物処理業者数
表 1-17 環境関連法令違反として摘発された事例 プロジェクト及び違反の概要 Jairam Ramesh 環境森 林大臣による POSCO(韓 国資本大手)の製鋼所 大型プロジェクトの見 直し(3 年遅延) オリッサ州に建設予定である韓国大手製鉄会社 POSCO の大型製鋼所 (年間生産量 1,200 万トン、プロジェクト額約 120 億ドル)が、森林保護や海域保護の観点から、環境関連法に違反しているとして、Jairam Ramesh 環境森林大臣がプロジェクトの見直しを命じた。これにより、建設はすでに
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