1. はじめに LNG 需要の大幅な増加予測に基づき,近年新規に 発注されるLNG 船隻数が急増している.2014 年末で 竣工済み約390隻に加え,新規に発注されているLNG 船は約130 隻程度にのぼる(NYK 調べ). 運航各社ともにLNG を安定収益事業として位置づ け,重点的な投資により安定収益の拡大を目指してい く姿勢とともに,LNG ビジネスは米国からのシェー ルガス輸入の追い風に乗り,拡大の一途を辿っている. これまでは,聖域の如く取扱われてきたLNG 船の 推進機関は,2006 年竣工のフランスガス公社向けを皮 切りに,DFD 電気推進船(Dual Fuel Diesel Electric 船)が現在の主流になり,また,カタールガス向けでは 低速ディーゼル機関+再液化装置付き LNG 船が 20 隻発注されるなど,急激にディーゼル化,脱蒸気ター ビン革命が起こっている. 当社ではLNG 船の運航が始まり今日に至るまで, 推進機関として蒸気タービンがその主流を占めるが, 経済性を追求した高効率の再熱サイクル蒸気タービン も数隻のLNG 船に採用している. 本稿では当社が運航管理を行っているLNG 船に採 用される最新型舶用再熱蒸気タービンプラントに焦点 を当て,現在国内大手2 造船所で供給される舶用再熱 蒸気タービンプラントの特徴比較,川崎重工建造の再 熱再生蒸気タービン搭載船と同社在来型蒸気タービン 搭載船との性能比較,再熱蒸気タービンプラントの運 航状況について紹介したい. また近年LNG 船の新推進プラントとして多数採用 されている2 元燃料 4 サイクルエンジン電気推進機関 (DFD 電気推進)との燃費比較についても述べる. 2. 従来型蒸気タービンと再熱タービン 2.1 従来型蒸気タービン LNG 船の多くは天然ガスを推進,または電力など の燃料として利用できるよう,主機関に蒸気タービン プラントを採用している.蒸気タービンプラントは ディーゼルプラントに比べて,機関室のスペースを大 きく取らなければならないが,ディーゼル機関より故 障が少なく,機器の信頼性もあり,原動機の排気弁な どの定常整備作業が少ない.航海中にはBoil Off Gas をMain Boiler で 100%燃焼でき,発生した蒸気で推 進力が得られる.主機タービンに送られる過熱蒸気は 500℃にも達し,その圧力は 60 kg/cm2 に及ぶ.
図1 Conventional Steam Turbine Plant 概要図 陸上の発電プラントでは,超臨界圧貫流ボイラが主 流であるが,これを舶用へ転用することは出来ない。 6MPa, 525℃の舶用蒸気タービンプラントでの効率改 善の為には,やはり高温・高圧化となるが,新規には ディーゼル機関の適用がめざましく,この分野の開発 意欲が削がれているのが現状である. 2.2 再熱サイクル蒸気タービン 再熱サイクル蒸気タービンは,高圧タービンで使用 した過熱蒸気をボイラへ一旦戻し,再度加熱した後で 中圧・低圧タービンへと蒸気が送り込まれることによ り,再び蒸気を昇温昇圧化することで,効率向上が図 られたタービンを再熱サイクル蒸気タービン(Reheat Turbine)という.再熱再生サイクル,蒸気条件の改 善,高効率な排気ガスエネルギー回収装置(Gas Air Heater)等を採用することで,従来プラントに比べ, 燃料消費率約15%の低減が見込まれている.近年では
NYKの舶用再熱蒸気タービンプラントの運航状況
鬼 頭 弘 治NYK の舶用再熱蒸気タービンプラントの運航状況
鬼 頭 弘 治川崎重工業坂出造船所や三菱重工長崎造船所で建造さ れ,当社でも現在運航管理を行っている.
図2 Reheat Steam Turbine Plant 概要図 2.3 再熱(再生)蒸気タービンの特徴
-過去製造実績のある再熱再生蒸気タービンの フィードバック
-蒸気条件の変更(高温・高圧化)による熱効率の 改善
-改良型Gas Air Heater,多段給水加熱器の採用 -電動給水ポンプの採用
-主タービンの高効率化 -最新自動化技術の採用
表1 従来型 Turbine(CST)と Reheat Turbine の比較
3.川崎重工製再熱蒸気タービン
3.1 川崎重工再熱蒸気タービン
Reheat Turbine は,従来型タービンである UA 型 (5.9MPa/510℃)から新型の URA 型(12MPa/560℃) に変更され,その最大の特長はIP Turbine(中圧ター ビン)が装備されていることである.HP Turbine を通 った蒸気はBoiler 再熱器(Reheater)に送られ,再熱 された後にIP Turbine へ戻される.LP Turbine は従 来のUA 型構造と同様で,HP/IP Turbine は同軸上に 一体構造となっている. 当社運航船の例では,最大出力は29,890kw (MCO)×76rpm,常用出力26,900kw (90%MCO) , 蒸気条件は操縦弁入口で11.7MPa,560℃,IP Turbine 入口で2.9MPa,540℃となっている.
図3 川崎式 URA 型主タービン (HP/IP Turbine) 燃費に関しては,入口蒸気条件(圧力と温度)を高 くすることにより改善できるが,蒸気温度のみを高く すれば,使用材料の高温強度上の問題や,燃費改善率 の面で低く,一方,蒸気圧力のみを高くすると,ター ビン低圧部における蒸気の湿り度が高くなり過ぎてエ ロージョンの問題が生じ,効率的にも悪化する.これ らの問題を解決するために,前述の蒸気タービンの途 中段から蒸気を抜出し,ボイラにて再度加熱した後, 蒸気タービンへ戻す再熱方式が採用されるようになる.
図4 Reheat Steam Turbine Plant における t-s 線図 3.2 川崎重工再熱ボイラ
再熱ボイラとしては,過熱器(SH)出口圧力 12.0MPa,温度は 565℃に達し,従来型ボイラと比較 して圧力は2 倍,温度が 40℃高くなる.ボイラは 2 胴水管タイプで,Super Heater(SH)が 4 基(No.1~
4) ,Re-heater(RH)が 2 基(No.1&2)装備され,更に 熱回収のため煙道上部にはGas Air Heater(以下 GAH)も装備されるので,構造上かなり縦長のボイラ であり,総重量も599 トンと従来型の 2 倍にも及ぶ. また,Steam 及び Water Drum 容量が従来型と比較 すると少ない割合となっており,熱回収は主にメンブ レンウォールやSH/RH で行う構造となっている.
モードはNon Reheat mode(NRH,非再熱モード) とReheat mode(RH, 再熱モード)が選択可能で,RH モード選択可能負荷域は,主機(M/T)負荷で 35%以上 である.
尚,Re-heater 出口には Damper system が設けら れ,Reheat Mode(再熱モード)中の燃焼ガス流量を 制御することで,RH 出口温度調整が行われる. 図5 UTR-Ⅱ 舶用再熱ボイラ 3.3 再熱ボイラの特徴 -収熱割合に適合した伝熱管の配置(輻射型) -高圧使用に適した高い信頼性(全溶接構造) -ダンパシステム(再熱器保護,排ガス流量調整に よるRe-heater 制御) -シンプル&コンパクトな一体型再熱器の採用 -シンプルなバーナー構成 -G AH の採用(ボイラ熱効率の改善) 4. 再熱蒸気タービンプラントの運用 4.1 再熱蒸気タービンプラント運用上の特質 従来型再生タービンプラントと比較した場合に,特 質的な点として,再熱ボイラでの再熱器(Re-heater) の取扱いや,再熱蒸気タービンを含めたプラント全体 に注意を払う必要があること,従来型タービンプラン トでは装備されていない機器類のオペレーションに加 え,メンテナンスが増える点などが挙げられる. 4.1.1 タービン車室の熱変形と接触振動 再熱タービンは,再熱(RH)運転⇔非再熱(NRH)運 転の切換え時には,再熱蒸気入口の中圧タービン入口 温度が大きく変化するため,車室の異常な熱変形によ るロータとラビリンスの接触振動などに注意する必要 がある. この接触を避ける為,起動後はじっくりと時間を掛 けて昇温させる必要があり,現在当社の運航する再熱 蒸気タービン船では,NRH モード運転→RH モード 運転へ切換えに約50 分間を掛けて行っており,この 間主機回転数の増速は不可となる. 再熱タービンの増速操作は,NRH モードの状態か ら主軸回転数が54rpm 付近まで達すると,RH モード 運転に切換え,更に増速して定格運転に入る.減速操 作は,RH モード運転から NRH モード運転に切換え た後に減速され,タービンは停止される. またRH モード運転においても危急時には,NRH モードに速やかに切換えられ,主機タービン(M/T)も 23rpm まで自動減速される.その際には車室熱変形に は十分注意する必要がある. 通常は図6 の回転数増速 Table に従い,主機増減速 やNRH⇔RH モードの切換え操作を行っている.
RPM Spd V-Lift Cam BOG FOC BNR BLR NRH #1 #2 Remark Remark
k't(-5%) KW % (mm) Angle 1*TG MT/d NBR Mode RH NZL V NZL V (Increase) (Decrease)
23(DS) 0 2 Dual NRH Close Close 31(SL) 0 2
38(HF) 0 55.4 92 2215 66 2
46(FL) 0 58.3 97 2490 75 2 Close Drain VV (7Pcs) Open M.F.W.PP Recirc' VV Open Ast Guard VV, DrainVV
50 13.8 8,200 27 62.4 102 2980 89 3 Scoop → PP
51 14.1 9,000 30 3 Pump → Scoop LP 1st & 2nd BLD Close
53 14.7 10,000 33 104 3400 102 3 Close M.F.W.PP Recirc' VV
54 15.0 10,500 35 64.1 106 3500 105 3 FG Close Ast Guard VV, DrainVV
55 15.2 11,200 37 64.6 107 3720 112 3 RH 56 15.5 11,800 39 3 57 15.8 12,200 41 65.4 109 3720 112 3 58 16.1 13,000 43 3
59 16.3 13,800 46 3 IP BLD , C/O BLD Close
60 16.6 14,700 49 66.0 109 3800 114 3 LP 1st & 2nd BLD Open C/O BLD Close
61 16.9 15,000 50 3 62 17.2 16,300 55 3 63 17.4 17,000 57 3 IP BLD , C/O BLD Open 64 17.7 18,000 60 3 65 18.0 18,600 62 70.6 117 4570 137 3 66 18.3 19,500 65 3 Close Drain VV (6Pcs) 67 18.6 20,300 68 71.7 119 4800 144 3
68 18.8 21,200 71 3 FDF High → Low by Manual
69 19.1 22,000 74 3 HP BLD Close
70 19.4 23,300 78 74.0 123 5050 152 3 Open
71 19.7 24,200 81 3 Open HP BLD VV
72 19.9 25,000 84 3 OpenFDF Low → High by Manual
73 20.2 27,200 91 81.0 134 5850 176 3 74 20.5 28,300 95 3 75 20.8 29,890 100 89.2 147 6070 182 3 FG RH M/T(Slip 0%) 図6 再熱タービン主機増減速 Table 4.1.2 再熱ボイラ過熱蒸気温度制御 川崎UTR-Ⅱ再熱ボイラは,内部の蒸発管が少なく, 従来型ボイラに比べて,過熱器管(Superheater)の占 める割合が多い構造であるが故,ボイラ負荷変動に対 して,過熱蒸気温度が安定し難い面がある.比較的緩 慢な温度制御であるものの,出入港時急激にボイラ負 荷が増加すれば,燃焼ガス温度の上昇に伴って,過熱
蒸気温度が瞬時に上昇する傾向にあり,ボイラトリッ プや再熱蒸気プラントの安定運転に影響を及ぼす恐れ がある.よって,操船面では慎重な運転とプラント監 視が求められる. 4.1.3 再熱蒸気タービンプラントの安定性 再熱蒸気タービン(RHT)は,従来型蒸気タービン (CST)と比較して運用や操作面での違いは感じられ ず,従来通りの取扱いで問題ない. また,再熱蒸気タービンプラントでは設計限界が高 く設定されており,プラント全体に渡って余裕が感じ られ,国内製の信頼性が高い機器が選定・採用されて いることにより,操作者として不安を感じることはな く,むしろ取扱い易いと云える. 4.1.4 再熱蒸気タービンプラントのメンテナンス 従来型蒸気タービンプラントと比べ,蒸気条件が高 く設計されることで,よりシビアな管理とメンテナン スが不可欠となっている.効率が徹底的に追及された 結果,熱回収用Heater やプラント関連設備の増加, 錯雑する蒸気配管,シビアなボイラ水管理等が求めら れる.これら全てが良好な状態に保たれてはじめて再 熱蒸気タービンプラントの最適運航が可能となる. 特筆すべきは,高圧設計された再熱ボイラ水の水質 管理である.ボイラ水質管理は,タービンプラントの 生命線でもあり,日々のボイラ水ブローと缶水分析, 水質コントロールは欠かすことが出来ない. また再熱ボイラで使用される缶水は海水から造水さ れた後,純水装置でろ過されてプラントに供給される が,これら関連装置の新設,保守管理に掛るランニン グコストも予め運航費として見込んでおく必要がある. 4.2 従来型 CST と RH タービンプラントとの相違 従来型タービンプラントの経験をもとに,ユーザー の立場で取扱い上の相違点や留意点など再熱蒸気ター ビンプラントの評価を表2 に示す. 表2 再熱タービンプラント評価 5. 新推進プラントの出現 昨今環境規制が厳しくなり,NOx および SOx の排 出規制のみならず,CO2排出量規制や,船舶エネルギ ー効率設計指標(EEDI)など,もはや避けて通れない ところにまで規制が及んでいる.排出規制をクリアす るために,LNG 燃料船と呼ばれる LNG を船舶燃料と した舶用機関が,一般商船への適用に向け検討が進ん でいる. 現在LNG 船に採用されている蒸気タービン以外の 推進プラントとしては,冒頭で触れたDFD(2 元予混 合4 サイクルエンジン)機関 + 電気推進との組合せ方 式や,低速ガス焚き2 サイクルディーゼル機関 (ME-GI) ,低速ガス予混合 2 サイクルディーゼル機 関(X-DF)の他,実績のある再熱蒸気タービンと DFD 電気推進機関とを組み合わせ,高い冗長性とより低燃 費化を実現可能とするハイブリッド型新推進プラント まで出現し,玉石混淆の様相を呈してきている. 今後採用が決定している新推進プラントの概要につ いて,以下解説する.
5.1 DFD (Dual Fuel Diesel)電気推進機関
2 元予混合ガス焚き 4 サイクルディーゼル機関を発 電機として装備(4 機)し,発電した電力により推進モ ーター(2 機)を駆動し,減速機と組み合わせ推進力を 得る構成が一般的である.建造実績は増加しつつ,運 航実績も積み重ねられてきているが,タービンプラン トほどの信頼性までには至らない.当社でも現在2 隻 のDFD 電気推進船を運航中で,今後も建造が見込ま れている. <プラントの特徴> -ガスと着火用燃料1%によるオットーサイクル -幅広い領域での高い燃費効率 -電気推進プラント(但し伝達ロスは約7-9%) -ガス供給圧力は5.5 bar -高い冗長性と共にメンテナンスコストは大 -国内外造船所での建造実績あり 図7 DFD 電気推進プラント機関概要図
5.2 低速ガス焚きディーゼル機関 (ME-GI) ガスを300bar の高圧に圧縮し,低速ガス焚きディ ーゼル機関のシリンダ内に重油に替えて,ガスを直接 噴射する内燃機関であり,プロペラ直結方式である. 今後,LNG 船新推進プラントの一翼を担う. <プラントの特徴> -低速2 サイクルガス焚きディーゼルエンジン -拡散燃焼方式(メタンスリップ, ノッキング無し) -高圧ガス供給システム(300 bar)
-HFO パイロット燃料(abt. 3% of FOC)
-高効率プラント(ディーゼルサイクル,伝達ロス無) -重油焚き機関と同等の保守性 -混焼が可能 -2016 年 8 月に当社管理の 1 番船が就航予定 図8 ME-GI 概要図 5.3 低速ガス予混合エンジン(X-DF) 低速ガス焚きディーゼル機関 (ME-GI)が開発され, 今後実用レベルから新規プロジェクトに採用が広まり つつある中,同じく2 ストローク低圧ガス噴射式 DF エンジン(X-DF)も出現する.ME-GI とは異なり,ガ スと空気の予混合・希薄燃焼方式(オットーサイクル) が特徴で,供給ガス圧が16-17bar 程度と低くでき, ガス供給システムがシンプルになる. <プラントの特徴> -低速2 ストロークガス焚き DF エンジン -シンプルな低圧ガス供給システム(16-17 bar) -MGO パイロット燃料(abt. 1% of FOC)
-高効率プラント(オットーサイクル,伝達ロス無し) -重油焚き機関と同等の保守性 -4 ストローク DF 機関に比べ希薄燃焼により ノッキングが起こり難い -2018 年 2Q に 1 番船が就航予定 図9 X-DF 概要図 5.4 STaGE (Steam Turbine & Gas Engine)
実績と信頼性を兼ね備えた蒸気タービンプラントと, DFD 電気推進プラントを組み合わせたハイブリッド 2 軸推進方式.DFD エンジンの排熱をタービンプラン トで活用することで,大幅にプラント効率の改善を図 ったもの. <プラントの特徴> -タービンプラントと電気推進プラントの組合せ -ガス供給圧力は6.5 bar -電気推進系統の伝達ロスが7-9%発生 -システム構成が極めて煩雑 -2018 年 1Q に 1 番船就航予定 図10 STaGE 構成図 6. 燃費性能比較 現在,当社の運航管理LNG 船は,先にも述べた従来 型タービンプラント船が大半を占めるが,4 隻の再熱 蒸気タービン船に加え, DFD 電気推進機関を採用し た2 隻の LNG 船の運航管理も行っている.
管理船の最適運航のためには,運航データを収集・ 分析し,常に状況を把握することが至要となっている. そこで,実運航ベースでの性能解析図を図11 に示す. 図11 の実運航データには,当社が運航管理を行う従 来型蒸気タービン(CST) ,KHI 製再熱蒸気タービン (RHT) ,MHI 製再熱蒸気タービン(RHT) ,DFD 電気推進(DFD)船をそれぞれ選び,推進プラント毎の 燃費性能比較には,船型やサイズに依らないBHP(出 力)-FOC(燃料消費)パワーカーブを使用した. 船底汚損の影響を出来るだけ排除,または最小限と するため,出渠後1 年間のデータのみを抽出し,更に 条件を満足するデータに絞り込んで比較検証したとこ ろ,いずれも収集されたデータからは,近年低負荷域 で運航されている傾向が多いことが窺える. 検証の結果,CST の燃料消費(FOC)を 1.00 とした 場合,RHT-A は 0.93,RHT-B が 0.91,DFD は 0.81 であった.実運航データであるのでカタログ値とは異 なるが,2 社の再熱蒸気タービン(RHT)間では,燃費 差はほぼ認められず,いずれも従来型タービン比で7 ~9%の改善がみられる. 一方DFD だが,従来型タービンと比べると 19%と 明らかに燃費率に優位性が認められ,大きく水をあけ た形である. しかしながら,カーゴタンクから発生するBoil Off Gas(BOG)処理と消費,オペレーションコスト,船価 も含めた一隻の運航に掛る総コストで評価すると,推 進システムの燃費率が優れるだけでは,必ずしも優位 性があるとは限らない.ここは船主により好みが分か れるところであり,つまりは,運航実績,プラントの 信頼性,それを取扱う乗組員の技量,船舶のライフサ イクルをも考慮した慎重な選択が求められてくる. 7. おわりに 冒頭や前項でも触れたように,今後のLNG ビジネ スには柔軟性が求められることになり,LNG 船主, 運航者はこのような客先要望に応えることが必要であ る.これまで極めて保守的であると思われてきたLNG 船関係者にも,今まで以上の改革の波が押し寄せ,運 航費,燃料費等の経済性の追求のみならず,即時に対 応できる船としての高い性能が不可欠である. 筆者は長らくLNG ビジネスに携わり,また蒸気タ ービン船乗りでもあるので,蒸気タービンが信頼性の 高いプラントであることに論を俟たない.しかし時代 の潮流は,想像を遥かに超え,予想以上の速度で変化 をもたらし,移り変わっている.長期安定,定期トレ ードから脱却するこれからのLNG ビジネスでは,ス ポットカーゴの割合が増し,長期バラスト航海や減速 航海の要求に対しても,燃費率悪化の比較的小さいプ ラントが有利であるため,多様性に満ちた新推進プラ ントの経済性とリスクを緻密に評価し,新造船に盛り 込んでいかなければならないであろう. また同時に,船舶を取り巻く環境規制,とりわけ NOx や SOx 排出規制が今後一層の厳しさを増す中, 環境規制をクリアする一つの解と成り得る新推進プラ ントの動向を見守りながら,その発展に少しでもかか わり続けていければと考えている. 著者紹介 鬼頭 弘治 1970 年生. 日本郵船株式会社 (NYK LNG シップマネージメント(株) 出向中) 国立鳥羽商船高等専門学校 機関科卒 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 0 50 100 150 200 250 300 350