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論文の目的
日系エレクトロニクス企業の現状として,「国内市場における変化」,「新興国市場へのシフト」,
「海外企業との競争激化」が挙げられる。このような環境の中,日系エレクトロニクス企業が,
新興国を中心とした市場で,コンシューマー製品において「競争優位を得られるのか」,またそ れによって「どのような戦略を実行しているのか」という視点から,研究する。
理論的フレームワーク
国際戦略論,イノベーションとアーキテクチャ論,ボトム・オブ・ザ・ピラミッド(BOP)
を扱う。
国際戦略論では,企業が海外進出する際にどのように戦略を策定し,実行するべきかについて,
様々な研究者が議論している。どの研究も共通して母国と進出国の差異に注目し,「グローバル 統合・ローカル適応」という概念に関して議論がなされている。
イノベーション論は,イノベーションの概念,またはイノベーションと企業の競争優位獲得の 関係性について議論している。また,製品アーキテクチャ論は,製品の設計に関する考え方のこ とである。製品を「構成要素」と「構成要素間の関係性」で捉え,「インテグラル型」と「モ ジュラー型」の大きく
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つに分類する。インテグラル型は,擦り合わせ型とも言われ,複数の部 品が相互に調整され,最適に設計される必要があるアーキテクチャの状態である。一方,モジュ ラー型は,組み合わせ型とも言われ,各機能が各構成要素で実現され,構成要素間の相互関係が ほとんどない状態である。組み合わせによって,多様な製品を設計することができる。新興国と共通する部分があるとし,BOPに着目する。「多国籍企業を含む大規模な民間企業か らまったく,または不十分にしか顧客として扱われていない
40
~50
億の人々に目を向けさせ る」という考えのもとに示した概念であり,BOPには様々な特性が挙げられる。仮 説
現状の要因として,① 日系企業の市場におけるポジションとイノベーションのリスク,② 外 部環境の変化
︱ ︱
モジュール化とコモディティ化,③ 海外進出への障壁と新興国市場の特性,の
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つが挙げられる。これまでの議論では,日系エレクトロニクス企業は,インテグラル型製品 に強みを持っていると言われてきた。しかし,モジュラー型の製品アーキテクチャへの移行が進 み,新興国市場の存在感が増している。これらの背景をふまえ,以下2
つの仮説を立て,関連す る事例を元に検証する。仮説
1:日系エレクトロニクス企業は,モジュラー型の製品では,競争優位が得られない。
仮説
2:日系エレクトロニクス企業は,インテグラル型の製品で,競争優位を得られる。
仮 説 検 証
仮説
1
では,2
つの事例から検証を行った。「パソコン市場と台湾企業」の事例から,モジュー日系エレクトロニクス企業の競争優位
──新興国における製品戦略を中心として──
井 上 真 大 修士論文 アブストラクト
井上真大:日系エレクトロニクス企業の競争優位
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立教ビジネスレビュー 第 5 号(2012) 58-59 ル化が進んだことで,競争優位を持つ企業が変わり,開発や生産活動などに特化した事業を行う 海外企業,完成品メーカーにおいては流通に特化した海外企業などが優位を得ていることが分 かった。また,「インド市場におけるエレクトロニクス企業の戦略」事例から言えることは2
点 あり,1点目は,日系エレクトロニクス企業が,ローカル適応を主軸とした国際戦略をとってい ること,2点目は,製品以外のバリューチェーンの活動を強化していることである。しかし,製 品レベルでの差別化が困難である上,他のバリューチェーンの活動における差別化に活路を見い だしても,海外企業も似たような戦略をとるため,新興国市場を中心に考えなければいけない日 系エレクトロニクス企業にとって,極めて競争優位を得ることが難しい環境であると言える。よって,仮説
1
が立証できる。そして仮説
1
の検証の結果から更に考えられたのが仮説1-1,1-2
である。このような状況へ の対応として,仮説1-1「日系エレクトロニクス企業は,部品に集中したビジネスを行うことで
競争優位を得られる。」,仮説1-2「日系エレクトロニクス企業は,オープン・イノベーションを
行うことで競争優位を得られる。」を立てた。それぞれ事例をもとに検証することができ,日系エレクトロニクス企業は,部品ビジネス及び オープン・イノベーションの強化を行い,競争優位の獲得を試みていることが分かった。しかし,
部品ビジネスにおいても海外企業との競争が激化しており,容易に競争優位を獲得できるとは考 えにくい。オープン・イノベーションに関しても事例があるものの,それによる競争優位の獲得 については立証ができなかった。
一方,仮説
2
では,デジタルカメラの事例をもとに検証を行い,立証することができた。結 論
日系エレクトロニクス企業は,インテグラル型に競争優位を持っている。しかし,現状として コンシューマー製品の多くがモジュラー型アーキテクチャを主とし,新興国への適応も求められ るため,他のバリューチェーンの活動で差別化を図り,競争優位を得ようとしていることが分 かった。しかし,バリューチェーンの活動での差別化は,インテグラル型の製品レベルにおける 差別化とは異なり,容易に模倣できるため,競争優位を得られない。日系エレクトロニクス企業 は,オープン・イノベーションを中心とし,イノベーションを活性化させることで,持続的競争 優位を獲得するべきである。