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博士(公共経営)学位論文

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Academic year: 2021

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博士(公共経営)学位論文 概要書

中小ベンチャー企業の国際化過程と国際化成功因子の研究

-韓国ソフトウェア企業の経験を中心として-

A Study on the Process and Success Factors of Internationalization by Venture Companies:

The Case of Korean Software Firms

2011年7月

早稲田大学大学院 公共経営研究科

呉昶烈

Oh, Chang Yeol

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論文の概要

本論文は、中小ベンチャー企業の国際化過程と国際化成功因子の研究である。本研究では これに当たり既存の研究の中で中小ソフトウエア(SW)ベンチャー企業の国際化に関する研究 に適用可能な主要理論、すなわち段階理論、ネットワーク観点理論、国際新生ベンチャー理 論、資源基盤観点理論、そして全体論的観点理論を分析し、その結果に基づき研究のための モデルを構築した。国際化過程の研究部分では、国際化の段階、所要期間、所要費用、キャ ズム(chasm)段階などの探索的な現象分析のモデルを構築し、事例研究を行うことにより、

国際化過程における段階の特定を行った。また、国際化成功因子の研究部分では、その構造 分析を行い、4つの国際化因子変数と2つの国際化成果変数間の構造関係を明らかにした。更 に、調整変数と位置づけられる、製品別と国際化の段階別に、企業内部の四つの国際化因子 の保有程度、及び二つの国際化成果の達成程度の差についても分散分析で検定し、その間の 関係を明らかにした。研究対象企業は、韓国の中小SW輸出企業312社であり、全数調査で ある。国際化過程の研究部分では10社の事例研究を行い、国際化成功因子の研究部分では回 答企業106についてアンケート調査及びその統計分析を実施した。

本論文の主な内容を要約すると以下のとおりである。

第一は、国際化過程の事例研究である。ここではその結果を、国際化の段階区分、所要 期間及び費用、キャズム段階のありかについて略述する。まず、国際化の段階は6段階で、

典型的な順序は観察されないが、おしなべて(1)意思決定、(2)チャネル契約、(3)試験販売、

(4)拠点設立、(5)通常販売、(6)損益分岐点の順序で現れる。次に、所要期間及び費用特性 については、通常販売まで実際所要期間の平均値は34.7ヶ月で、同期間の所要費用の平均 値は12.8億ウォンである。これは、経営者が目標とした期間と費用を、それぞれ62.9%、

91.0%上回る水準である。その差異の分だけ企業は国際化に試行錯誤を経験し経営判断に ミスが生じたと判断できる。次に、キャズム段階については、第1のキャズムは、チャネル 発掘・信頼関係の構築、製品現地化の段階にあり、第2のキャズムは、輸出成果が一定水準以上 に成長せず、成熟期に移行しない段階に存することを確認した。

本研究で明らかになった国際化過程のすがたは、段階区分等多くの点で、段階理論それら と重要な点で異なる。製造業を中心対象とした段階理論においては、国際化の段階は、(1)非 定期的輸出、(2)代理店を通じた輸出、(3)販売子会社の設立、(4)現地生産と区分され、この 順で漸進的に発展していくものとされている。一方、本研究で明らかとなったSW産業の国 際化の段階は前述したようにこれとマイルストーンの所在、各段階区分の順序等で異なるも のである。市場選択の基準については、段階理論では心理的距離とマーケットサイズが進出

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国を決定する因子とされる。一方、本研究では市場機会の発掘、新技術の習得などが市場選 択の基準であることを確認した。そして、知識習得の過程については、段階理論では企業の 国際化発展段階に応じて必要な知識を獲得すれば十分であると説明している。一方、本研究 では対象分野であるSW産業は国際化が圧縮的に推進されるので現地化知識、市場知識、制 度的知識などを国際化の初期段階に取得する必要があることを明らかにした。その背景には SW産業の速い国際化速度、複合的に絡んで起きる国際化の段階などがある。

第二は、国際化成功因子の研究である。ここでは、国際化成功因子の特定、及びそれら 因子間の構造分析の結果についてのみ略述する。まず、国際化成功因子は、(1)経営者の国 際化意志及び力量、(2)企業の体系的な国際化推進、(3)政府の国際化支援、(4)企業資源の 四つの因子変数と(1)国際化成果、(2)国際化波及効果の二つの成果変数で構成されるという 結果となって現れた。次に、国際化成功因子間の構造分析の結果では、政府の国際化支援 が企業の体系的な国際化推進と企業資源には影響を与えるが、経営者の国際化意志及び力 量には影響を与えないことが示された。即ち、韓国政府の国際化支援政策は企業の体系的 な国際化推進及び企業資源の強化に効果があることが確認された。また、経営者の国際化 意志及び力量と企業の体系的な国際化推進は企業の国際化成果に影響を与えるが、企業資 源は国際化成果に影響を与えないことが示された。即ち、企業の国際化成果には経営者の 意志・力量と体系的な国際化推進が非常に重要であることが確認された。これにより、政 府の国際化支援政策が企業の体系的な国際化推進を通じて企業の国際化成果と波及効果に 影響を与えるという主要経路が確認された。

第三は、調整変数と位置づけられる製品及び国際化の段階に関する分析である。ここで は、政府・企業が国際化推進プログラムを行うにあたっての指針を導く観点から、製品別、

及び国際化の段階別の分散分析を行ったところである。回答者のアンケートから企業内部 の四つの国際化因子の保有程度、及び二つの国際化成果の達成程度を確認し、分散分析に より製品別・国際化の段階別の差を検定した。検定の結果、製品別では四つの国際化因子 の保有程度に差がなく、かつ、二つの国際化成果の達成程度にも差がないと検証された。

しかし、国際化の段階別では四つの国際化因子の保有程度に差があり、かつ、二つの国際 化成果の達成程度にも差があると検証された。

研究の意義を述べれば以下のとおりである。

第一に、国際化過程の研究結果からのものである。この結果に基づいて中小SWベンチ ャー企業の国際化過程を示し、国際化の最初段階から損益分岐点に到達するまでの国際化 の行程表を提示することができる。また、本研究では製造業の段階理論に示される国際化 過程との比較において、SW産業の国際化過程の特性を究明した。その結果段階理論で重 要なものとして扱われていた時間の経過と経験の蓄積による漸進的なものとされる国際化

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過程が、本研究の対象であるSW産業では時間と経験の圧縮を通じた圧縮的な国際化過程 として現れることが明らかになった。そして、その場合、国際化成功の定義についても、

財務的な国際化成功定義に加えて「通常販売段階まで到達すれば実際的に国際化に成功し た企業である」ということから、定性的な成功定義を定めることができた点も意義がある。

国際化過程に関する本研究結果は中小SW企業が国際化に成功するためには本研究で実証 した国際化マイルストーンを時間と費用の面で圧縮的に達成することが重要であることを 示す。それは国際化が、多様なベンチャー企業の特性を基に対内外環境を考慮し、体系的 に国際化を推進することで達成可能であることを示唆する。

第二に、国際化成功因子の研究結果からのものである。国際化成功因子に関し、先行研 究では企業資源が輸出成果に影響を与えると説明されている。しかし、本研究では国際化 成果に影響を与えるのは企業資源という変数ではなく、経営者の意志・力量、企業の体系 的国際化推進であることが実証された。Moore(1999)は、先端産業の成功因子は企業の力 量よりはマーケティングの体系化にあると主張し、先端産業の特性を反映したキャズムマ ーケティングの重要性を強調した。これを、本研究の観点で解釈すると、高い技術力を確 保している企業より、体系的に国際化を準備し、推進する企業が成功の可能性が高いと言 うことになる。また、進出製品と国際化の段階における四つの国際化因子の保有程度の差、

及び二つの国際化成果の達成程度の差についての分散分析の結果、製品別には差がないが、

国際化の段階別には差があると実証されたことも重要な意義を持つ。これは国際化の段階 別に最適化された国際化支援政策が必要であることを示唆する。

以上の研究成果に基づき、中小ベンチャー企業に関する国際化アプローチの在り方を 提 言すると以下のとおりである。第一に、先端産業の特性を考慮した国際化推進プログラムの 開発・適用が重要である。第二に、国際化成功のためにはキャズム段階の把握と克服が重 要である。第三に、経営者の国際化意志・力量を向上できる国際化推進プログラムの開 発が検討される必要がある。第四に、産業特性と海外市場に対する理解が必要である。

本研究はSW企業を中心とした中小ベンチャー企業の国際化に関する研究であることから、

この成果を大企業、他産業へ一般化するには限界がある。また、SW企業の国際化に関する先 行研究が尐なく、参考にすべき関連理論が十分に存在しない状況で、事例研究と統計分析研究 を実施したことから、論理性と妥当性、そして因果関係の究明における精緻性をさらに増強す べき余地がある。特に、企業の国際化は長期間に渡って動態的に起き、マクロ経済状況、経営 環境の変化などに大きな影響を受けるが、これらを組み入れて分析することはできなかった。

このような研究の限界を克服したより体系的な研究を遂行するためには、地域及び産業特性、

対内外環境などを総合的に考慮したモデルを構築し、実証分析を試みる必要がある。

参照

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