[巻頭言] 個人文庫の効用
著者 大庭 脩
雑誌名 関西大学図書館フォーラム = Kansai University Library forum
巻 2
発行年 1996‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10112/00022171
巻頭言
個人文庫の効用
大庭 脩
東西学術研究所所長
松尾芭蕉の「奥の細道」の自筆本が発見され、蕉翁の推敲のあとが確認されたのはビッグニ ュースである。
芭蕉はどのようなフ・ロセスで今の文章にまで作り上げていったのか。
特殊な機器を用いて原本を傷つけないでもとの筆蹟を呼み取ったことは、文章の研究にも科 学機器の援助が必要である時代相を示すし、震災が原因で再調査が始まったという話も、一般 に事があると文化財が動く実例でもあるようだ。 しかし、やはり作者の自筆本が持つ魅力がい かに大きいかを再認識できたことが、最も重要であろう。
内藤文庫、増田文庫、泊園文庫の蔵書に先生達の自筆ノートや書き入れを見るにつけ、先生 たちが何を考えなカゴら本を読んでいたかを探ることができ、彼等の論文や講演記録を片手に、
先達の蔵書を用いてその思考のう°ロセスをなぞるのは、誠に賛沢極まりない研究方法である。
本館に蔵する個人文庫を、 このような方法でも活用して貰いたいと切望する。
<おおばおさむ文学部教授>