著者 杉本 龍勇, 伊藤 マモル, 泉 重樹
出版者 法政大学スポーツ研究センター
雑誌名 法政大学スポーツ研究センター紀要
号 36
ページ 37‑49
発行年 2018‑03‑31
URL http://doi.org/10.15002/00014556
1.はじめに
我が国の大学スポーツは100年以上の歴史を有するが,近 年は大学のマーケティングツールとしての役割を担うように なってきている。学生募集や在校生の帰属意識醸成,あるい は大学自体のブランド価値向上に対する効果を期待され,体 育会の強化に取り組む大学を多く見受けられるようになって きている。こうした傾向はメディア化されてるスポーツや人 気のあるスポーツに多く見られる。
しかし,大学スポーツのマーケティングツールとしての効 果に関する研究はさほど多くなく,各大学が期待する機能を 果たすか否かについては立証されていない。
そこで本研究では,主として,在校生における大学体育会 の活動に対する認知度や体育会活動に対する関心など調査し,
在校生の大学への帰属意識と体育会活動の相関を把握するた めの基礎データを収集することを目的とする。
2.調査方法
調査対象は原則として,首都圏に所在する総合大学の在学 生で,基礎教育課程の体育関連科目(実技を中心とした演習)
を受講する一年生とした。そして,2017年度の春学期終盤な らびに秋学期初旬における体育関連科目内にて調査を実施し た。
調査項目は「性別」「入試経路」「スポーツ実施に対する関 心」「スポーツ観戦に対する関心」「スポーツ実施の状況」「入 学動機」に関する10項目,「体育会活動に対する意識」に関 する12項目とした。
サンプル数は6951,有効回答数は5581(80.3%)となった。
また,2016年度に行った同様の調査結果と比較を行った。
3.調査結果
調査の結果は以下のグラフで示している。
Cognition of activities of college sports club
杉 本 龍 勇
(
法政大学経済学部)
Tatsuo Sugimoto
伊 藤 マモル(
法政大学法学部) Mamoru Ito
泉 重 樹(
法政大学スポーツ健康学部) Shigeki Izumi
Abstract
This paper report research result of survey on cognition of activities of college sports club. The result suggest that many students have less interest to sports club and members of own university, and college sports club could have to change team-management to get more interest of students.
Key words : College sports, interest
62.7
37.3 57.6
42.4
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0
図1 : 性別
% 2017 2016
40.1 44.9
10.9
2.6 0.5 1.0
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0
18 19 20 21 22 23
図2 : 年齢
%
15.7
9.4 14.4
4.3 3.5 4.4 2.6 0.1
14.4 10.4
0.9 3.2
0.0 1.7 10.7
4.4
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0
図3 : 所属学部
%
68.1
15.4
11.9
2.9 1.0 0.6
69.8
12.9 11.9
3.4 0.5 1.6
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0
図4 : 入試経路
% 2017 2016
36.2 40.3
11.8
7.0 4.7
36.1 38.5
12.8
7.4 5.2
0.0 20.0 40.0 50.0
図5 : スポーツ実施に対する興味
% 2017 2016
34.9
39.5
10.7 9.2
5.8 33.1
38.9
11.9 9.5
6.6 0.0
10.0 20.0 30.0 40.0 50.0
図6 : スポーツ観戦に対する興味
% 2017 2016
23.1
14.0
12.3
18.6
31.9
7.0
12.2
30.0
20.0
30.9
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
5 3~4 1~2 1
図7 : 現在のスポーツ実施頻度 (体育の授業は除く)
% 2017 2016
14.8 13.0 13.3 17.2
41.7
12.6 10.4 14.0
19.1
43.8
0.0 20.0 40.0 60.0
図8 : 入試動機 (第一志望の大学として)
% 2017 2016
21.4 21.0
15.3 13.6
28.7
20.9 18.5
16.1 15.0
29.5
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図9 : 入学動機 (第一志望の学部がある)
% 2017 2016
2.8 5.2
16.7 19.2
56.1
3.0 5.7
15.3 20.3
55.7
0.0 20.0 40.0 60.0
図10 : 入学動機 (指導を受けたい教員が在籍している)
% 2017 2016
2.2 4.6
16.2 17.0
59.9
3.8 5.3
20.3 23.7
47.0
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0
図11 : 入学動機 (浪人してでも入りたい大学)
% 2017 2016
9.2
28.8 27.2
17.6 17.2
10.4
27.4 28.3
16.2 17.7
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図12 : 入学動機 (希望校では無いが、自分のレベルと適合)
% 2017 2016
11.9
37.2
24.5
12.7 13.7
12.3
33.7
25.9
12.7 15.4
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図13 : 入学動機 (希望校では無いが, 知名度があるため)
% 2017 2016
13.4
33.4
26.3
13.5 13.5
13.5
29.5
26.5
13.6 16.9
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図14 : 入学動機 (希望の大学では無いが, 自身にとって最低限の基準以上の大学だから)
% 2017 2016
5.6
16.6
28.1
19.1
30.6
5.9
15.4
27.8
19.5
31.4
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図15 : 入学動機 (希望校では無いが, 家族や知人の勧めによる影響)
% 2017 2016
3.3 7.5
15.6
12.6
61.0
4.3 8.0
16.2
13.2
58.3
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0
図16 : 入学動機 (周囲にいる当大学出身者からの勧めによる影響)
% 2017 2016
19.8
39.2
24.9
8.3 7.7
21.0
38.5
27.2
7.0 6.3
0.0 20.0 40.0 60.0
図17 : 大学入学に対する満足度
% 2017 2016
10.4
21.1
26.2
18.3
24.0
10.3
20.8
28.3
19.0 21.6
0.0 10.0 20.0 30.0
図18 : 体育会活動に対する興味
% 2017 2016
8.2
16.5
27.9
18.7
28.7
8.3
17.5
29.3
21.1 23.9
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図19 : 体育会に所属している選手に対する興味
% 2017 2016
7.6
16.9
32.0
18.3
25.3
8.3
17.9
33.6
18.5 21.7
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図20 : 体育会の活躍は当該大学入学に対する満足度を高めるか
% 2017 2016
7.0
16.2
33.1
18.0
25.8
8.4
17.8
34.1
17.9 21.8
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図21 : 体育会所属選手の活躍は当該大学入学に対する満足度を高めるか
% 2017 2016
9.4
22.4
30.5
15.4
22.3
9.4
22.0
34.0
16.2 18.4
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図22 : 体育会の活躍は周囲の人に自慢できる
% 2017 2016
9.2
21.1
31.7
15.8
22.1
9.4
21.5
34.7
15.8 18.7
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図23 : 体育会所属選手の活躍は周囲の人に自慢できる
% 2017 2016
10.9
22.5
33.0
14.5
19.0 10.7
21.9
35.9
15.2 16.3
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0
図24 : 体育会所属学生とのコミュニケーションを希望するか
% 2017 2016
12.7
48.3
24.6
5.8 8.6
13.3
43.3
27.6
6.4 9.3
0.0 20.0 40.0 60.0
1~3 4~6 7~9 10
図25 : 現在活躍していると思う体育会の数
% 2017 2016
21.4
27.9
19.8
7.4
23.5 19.3
27.1
22.6
8.6
22.5
0.0 10.0 20.0 30.0
1~3 4~6 7~9 10
図26 : 現在活躍していると思う体育会所属の選手の数
% 2017 2016
17.5
82.5
19.9
80.1
0.0 50.0 100.0
図27 : 体育会の試合観戦経験の有無
% 2017 2016
2.6 0.2
0.1 0.1 0.2
7.6 0.9
0.1 0.2 0.2 0.5 0.5 1.2 0.2
13.8 0.1
0.1 1.2
0.1 0.1 2.9
2.7 5.3 0.8
0.4 1.2 0.3 0.2 0.1 0.5 0.1 0.0 0.1 0.3 0.1 0.4
0.1 54.7
0.3 2.2 0
0.1 0.2 2.2 6.0 0.1 0.0 0.0 0.5 0.7 1.2
0.3
14.6 0.3
0.1 1.7
0.0 0.1 2.4
2.5 4.9 0.5 0.2 1.0 0.2 0.3 0.0 0.3 0.1 0.0 0.1 0.2 0.1
0.2 0.1
56.1
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0
%
2016 2017
図28 : 活躍を期待している体育会 (3つまで回答可:延べ)1.9 0.1
0.0 0.1 0.1
6.1 0.4
0.1 0.1 0.1 0.3 0.4 0.9
0.1 11.0
0.1 0.0 0.9 0.1 0.1
2.4 1.9
3.4 0.5
0.2 0.7 0.1
0.1 0.1 0.4 0.1 0.0 0.0 0.1 0.0 0.2
0.0 66.6
0.2 1.7 0.0 0.1 0.1
5.0 1.3 0.1
0.0 0.0
0.3 0.3 1.0 0.1
11.0 0.1
0.1 0.0 1.5 0.1
2.1 1.8
0.3 2.8 0.1 0.8 0.1 0.1
0.0 0.2 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 0.1 0.1
68.3
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 2016 2017
%
図29 : 観戦したい体育会の試合 (延べ : 3つまで回答可)
ほど高くないことが示された。体育会活動や体育会所属する 選手(学生)に対し,約30%程度の学生が興味や関心を示し ているに過ぎない。そして体育会(チーム及び選手)の活躍 と大学入学に対する満足度の相関についても20%を越える程 度に留まり,彼らの活躍を周囲の人に伝えるほどの大きな話 題として捉えている学生も30%程度となっている。また2016 年度の調査結果との比較において,各項目もそれほど大きな 変化は見られない。2016年度の調査と今回の調査の間には好 成績によってメディア露出が増えた部も存在するが,こうし た成績の向上が関心を高めるといった影響はほとんど見られ ないことが示された。
これらの結果を踏まえると,体育会が現在の活動スタイル を継続する場合,在学生の体育会に対する関心は高まらない ことが考えられる。それに伴い,大学のブランド価値向上と いったマーケティングツールとしての役割を果たすことも困 難であることも予想される。また競技成績によって興味や関 心が大きく高まることもないため,競技力向上が注目度を向 上させるとも限らないことも考えられる。したがって,体育 会が自身の活躍等に関心を集めたいのであれば,トレーニン グや試合以外での活動に着目することも必要ではないだろう か。こうしたことから,体育会がトレーニングや試合だけに 集中するのでは無く,授業への取り組みや在学生とのコミュ ニケーションなどのキャンパスライフ全般にも目を向け,そ れを改善することも重要だと思われる。つまり,競技力向上 を目的としたマネジメントを行うだけでなく,学生生活全般 をマネジメントすることも求められるであろう。また調査の 結果が示す様に,体育会活動に対する興味や関心,大学への 満足度と体育会活動の相関において「どちらとも言えない」
という学生が30%強いることから,前述のように体育会自身 はもちろんのこと,大学がこうsした浮動層に対して体育会 活動に関心を持たせるような機会を与える政策を実践するこ とや体育会自体が活動を改善させることにより,体育会活動 が大学のブランド価値向上に対して効果的なマーケティング ツールとなることも予想される。
今後はこのデータを基に更に分析を進め,大学への満足度 やブランド価値の向上に対する影響を解明し,これからの体 育会活動の可能性を高めることに貢献できるよう努めたい。
参考文献
杉本龍勇,伊藤マモル,泉重樹(2017)学生における体育会 活動に対する意識調査 法政大学スポーツ研究センター紀要 No.35 pp95-102