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国内における免疫グロブリン製剤の需要増加要因及び、日米

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平 成 3 1 年 度 ~ 令 和 2 年 度 厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金

( 医 薬 品 ・ 医 薬 機 器 等 レ ギ ュ ラ ト リ ー サ イ エ ン ス 政 策 研 究 事 業 ) 総 合 分 担 研 究 報 告 ( 6 )

国内における免疫グロブリン製剤の需要増加要因及び、日米 における原料血漿の確保状況と分画事業者の対応について

研究分担者 木村 洋一( 一般社団法人 日本血液製剤機構 )

研究要旨

免疫グロブリン製剤は国内における需要が増加傾向にあり、供給量はこの 10 年で1.5 倍程度まで増大した。需要増加の要因として、医療需要に伴う複数の効能が追加された ことが挙げられる。特に慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の維持療法においては 患者が継続的に免疫グロブリン製剤の投与を受ける治療法であり、患者数の増加と相乗 して近年の需要増加の大きな要因となっている可能性が推察される。活動期治療から維 持療法へ移行する患者の割合は増加していると考えられるが、この要因として高濃度の 静注用免疫グロブリン製剤の上市により投与終了までの時間が短縮可能となり、外来で の投与も可能となったことが挙げられる。また、2019年には皮下投与が可能な免疫グロ ブリン製剤や、新たな高濃度製剤が上市されたことから、この傾向は継続するものと推 察される。一方で今後維持療法中止の目安や対象となる患者が明確化されることで使用 の適正化が図られる可能性や、免疫グロブリン製剤の適応疾患における新規治療法、代 替薬の登場による需要減少の可能性もあり、動向について引き続き注視していく必要が ある。

米国においても免疫グロブリン製剤の需要は拡大を続けている。増加する需要に必要な 原料血漿を確保するため、海外の分画事業者は各社とも自らが運営する採漿センターを 増やすなどの対応を図っている。国内では採漿事業環境が米国と異なることから同様の 確保策により需要に対応することは難しく、日本赤十字社による原料血漿確保策と併せ て分画事業者による免疫グロブリン製剤の製造収率の向上が必要血漿量の抑制に貢献す ることが重要である。

また、血漿分画製剤の安定供給にかかるリスクを把握するため、日米における分画事業 者の収益性を含めた事業構造を調査した。一般医薬品に比して製造費用が高いこと等コ スト構造は日米で同様の傾向がみられたが、日本では継続的な薬価下落による収益性の 低下が危惧される。基礎的医薬品制度による薬価維持、免疫グロブリン製剤の収率向上 や国内需要を満たした製剤の海外輸出等による連産バランスの改善によって収益性を改 善することが、国産製剤の安定供給に向けた事業の継続には必要であろう。

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95 A. 研究目的

血 漿分 画 製 剤の 継 続 し た 安定 供 給 に向 け て 原料 血 漿 の安 定 確 保 体 制を 考 察 する に あ たり 、 主 要な 血 漿 分 画 製剤 の 一 つで あ り 、国 内 に おい て 需 要 が 増加 し て いる 免 疫 グロ ブ リ ン製 剤 の 需 要 動向 を 調 査し 、 そ の要 因 を 考察 し た 。 併 せて 主 に 米国 の 需 要動 向 と 分画 事 業 者 の 対応 状 況 につ い て 調査 を 行 い、 国 内 の 血 漿分 画 事 業に お ける課題を考察した。

B. 研究方法

公表論文や Web サイト等の各種公開情報 お よび 調 査 会社 か ら の 購 入資 料 を 基に 調 査した。

C. 研究結果

1 .免 疫 グ ロブ リ ン 製 剤 の国 内 需 要動 向 と必要原料血漿量

免 疫 グ ロ ブリ ン 製 剤 は 国 内 に お ける 需 要が増加傾向にあり、供給量はこの 10 年 で 1.5倍程度まで増大した(図 1)。国内 唯 一の 採 血 事業 者 で あ る 日本 赤 十 字社 で は 、製 剤 需 要に 応 じ て 増 加す る 原 料血 漿 必 要量 に 対 応す べ く 、 血 漿配 分 量 を増 大 させている(図 2)。しかしながら、特に 2018 年度、2019 年度にかけてはその製剤 需 要の 増 加 が著 し く 、 国 内血 漿 分 画事 業 者 によ る 免 疫グ ロ ブ リ ン 製剤 の 供 給可 能 量 を上 回 る 需要 が 発 生 し たこ と か ら、 安 定 供給 継 続 のた め に 令 和 元年 度 第 2回 血 液 事業 部 会 運営 委 員 会 に て海 外 製 品の 輸 入量を増やすことが決定した。その結果、

9 割を超えていた国内自給率は 8 割程度 まで低下する見込みである。

図 1 免 疫 グ ロ ブ リ ン の 供 給 量 と 自 給 率 推 移

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図 2 原 料 血 漿 配 分 量 の 推 移

各 分 画 事 業者 が 製 造 販 売 す る 免 疫グ ロ ブ リン 製 剤 は、 医 療 需 要 に伴 う 効 能追 加 に よっ て 適 応範 囲 が 拡 大 して い る 。特 に 体 重当 た り の投 与 量 が 多 い自 己 免 疫性 疾

患 に対 す る 複数 の 効 能 が 追加 さ れ たこ と が、この 10年間需要が増加し続けた大き な要因であろう(図 3)。

図 3 免 疫 グ ロ ブ リ ン 製 剤 の 効 能 追 加

2 .免 疫 グ ロ ブ リ ン 製 剤 の 需 要 増 加 要 因

前 述 の と おり 自 己 免 疫 性 疾 患 へ の複 数 の 効能 追 加 によ っ て 免 疫 グロ ブ リ ン製 剤 の 需要 が 拡 大し た と 推 察 され る が 、加 え

て 、対 象 疾 患に お け る 患 者数 の 増 加も そ の要因と考えられる。例えば 2011年に効 能 が追 加 さ れた 慢 性 炎 症 性脱 髄 性 多発 根

神経炎(CIDP)、重症筋無力症(MG)に

おいては患者数が増加傾向にある(図4)。

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97 患者 数 増加 の 要因 は 明 確で は ない も のの、

疾 患に 対 す る認 知 度 の 向 上、 診 断 精度 の

向上等が考えられる。

更に、2018年度、2019年度にかけて需 要 が 大 き く 増 加 し た 要 因 と し て 、CIDP

(多巣性運動ニューロパチー(MMN)を 含 む) に つ いて 継 続 的 に 免疫 グ ロ ブリ ン 製 剤を 投 与 する 治 療 法 が 浸透 し つ つあ る ことが挙げられる。CIDPに対する免疫グ ロ ブリ ン 製 剤の 効 能 は 活 動期 に お ける 筋 力低下の改善に加えて 2016 年には運動 機 能低 下 の 進行 抑 制 を 目 的と し た 維持 療 法が追加となった。維持療法の用法・用量 は「1,000 mg/kg 体重を 3 週間隔で点滴 静注」となっており、一人の患者が継続的 に 免疫 グ ロ ブリ ン 製 剤 の 投与 を 受 ける こ ととなる。更に、現在のところ維持療法の 中 止時 期 に つい て は 明 確 なエ ビ デ ンス が 示されていない状況である。

また、2018年には国内において既存の 5% 濃 度 の 静 注 用 免 疫 グ ロ ブ リ ン 製 剤

(5%製剤)より高濃度で、自己免疫疾患 に対する効能を有する 10%濃度の静注用 免疫グロブリン製剤(10%製剤)が上市さ

れた。10%製剤は濃度が高い分、同量の免

疫 グ ロ ブ リ ン を 含 有 す る 製 剤 の 液 量 は 5%製剤の半量となる。一方、承認されて いる投与速度は 5%製剤と 10%製剤で同 様 であ る こ とか ら 、 忍 容 性が あ る 場合 に は投 与 終了 ま での 時 間 が短 縮 可能 と なる。

特に頻回の来院・点滴治療が必要な CIDP 維持療法を行う 患者 に おいては、10% 製 剤 の使 用 に よる 投 与 時 間 の短 縮 に より 入 院 を要 せ ず 外来 治 療 も 可 能と な る こと か ら 、活 動 期 治療 か ら 維 持 療法 へ の 移行 が よ り進 ん だ 可能 性 が 考 え られ る 。 実際 に レセプトデータの解析では CIDP の治療 に おけ る 外 来受 診 の 割 合 は増 加 傾 向に あ る(図5)。2019年には海外メーカーの皮 下注用免疫グロブリン製剤が CIDP 維持 療 法の 効 能 を追 加 し 、 在 宅で の 投 与が 可 能 とな っ た 。さ ら に は 同 効能 を 有 する 新

たな 10%濃度の静注用製剤も承認された

こ とか ら 、 この 傾 向 は 今 後も 継 続 する も のと推察される。

図 4 C I D P、M G に お け る 患 者 数 の 推 移

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98 図5 CIDP治療における入院/外来受診数の割合

3.海外における需要動向

免 疫 グ ロ ブリ ン 製 剤 の 需 要 増 加 は国 内 だ けで は な く海 外 に お い ても 同 様 の傾 向 を示している。

豪 州 に お い て は 7~8 割 程 度 で あ っ た 免 疫グ ロ ブ リン 製 剤 の 国 内自 給 率 が、 国 内 需要 の 増 加に 献 血 を 主 体と し た 国内 製 品 のみ で は 対応 し き れ ず 年々 低 下 傾向 に ある(図6)。

世界の確保量の 7 割を占める米国では平

均 9%/年と日本より増加のペースが速く、

直近10年間で供給量が2倍程度に増加し ている(図7)。米国における使用疾患の 内訳では原発性免疫不全症(PID)が最も 多く、次いで自己免疫性疾患である CIDP、

MGが続いている(図8)。 米国におい て も日 本 と 同様 に 増 加 す る需 要 に 対し て

供給量が追い付かず、2019年8月には米 国食品薬品局(FDA)から「免疫グロブリ ン製品の不足に関する情報」(参考)が発 出され、FDA から医療従事者に対し、製 剤使用量の削減、治療の遅延、医学的ニー ズ に基 づ く 優先 順 位 付 け 、及 び 代 替療 法 の検討が勧告されている。また、血漿分画 事 業者 に 対 して は 供 給 不 足の 緩 和 に向 け た 増産 や 収 率改 善 に 向 け たサ ポ ー ト に つ いての提示がなされている。

(参考)

https://www.fda.gov/vaccines-blood- biologics/safety-availability-

biologics/information-about-immune- globulin-human-product-shortage

(2019年8月16日付情報)

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図 6 豪 州 : 免 疫 グ ロ ブ リ ン 製 剤 使 用 量 の 推 移

図 7 米 国 : 静 注 用 免 疫 グ ロ ブ リ ン 製 剤 市 場 数 量 推 移

図 8 米 国 疾 患 別 I V I G / S C I G 使 用 状 況

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100 4 .米 国 に おけ る 血 漿 分 画製 剤 用 原料 血 漿の採漿及び確保状況

米 国 に お いて も 免 疫 グ ロ ブ リ ン 製剤 の 需 要の 増 加 に比 例 し て 原 料血 漿 確 保量 が 増大しており、採漿量は年 10%程度の伸 長となっている(図9)。

米国 に お ける 原 料 血 漿 の確 保 は 主に 血 液提供者(ドナー)への対価の支払いを伴 う有償の血漿成分採血(Source Plasma)

により行われている。また、全血採血は輸 血 用血 液 製 剤の 供 給 を 目 的と し て 献血 を 中 心 に 確 保 さ れ 、 そ の 一 部 が 原 料 血 漿

(Recovered Plasma)として利用されて いる(図 10)。Recovered Plasmaは輸血 用 血液 製 剤 の需 要 に 応 じ てそ の 確 保量 が 決 定さ れ る こと も あ り 、 現状 で 減 少傾 向 にある。一方、Source Plasma の確保量は 増加の一途をたどっている。

なお、近年、献血を中心とした輸血用血 液 製剤 の 採 血事 業 者 に お いて も 輸 血用 血 液 製剤 の 需 要減 少 傾 向 を 受け て 保 有施 設 の 一部 を 原 料血 漿 の 採 漿 を目 的 と した 専 用 施設 と す る事 業 者 も 増 加し て お り、 採 血事業の形態が変化しつつある。

図 9 米 国 原 料 血 漿 採 漿 量 の 推 移

図 1 0 米 国 : 採 漿 者 別 原 料 血 漿 採 漿 量 ( 2 0 1 9 )

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101 米 国 に お ける 原 料 血 漿 の 採 漿 事 業は 確 保量の 9 割以上が血漿分画製剤事業者に よって確保されており(図 10)、自社内で 確 保し た 原 料血 漿 を 用 い て分 画 製 剤の 製 造 を行 っ て いる 。 増 加 す る需 要 に 必要 な 原 料血 漿 を 確保 す る た め 、分 画 事 業者 は 各 社と も 傘 下の 採 漿 業 者 が運 営 す る採 漿 施 設を 増 や すな ど の 対 応 を図 っ て おり 、

(図 11)、施設の増設によって増加する原

料 血漿 必 要 量に 対 応 し て いる 状 況 とな っ ている。

な お 、 米 国国 内 で 確 保 さ れ る 原 料血 漿 は世界の確保量の 7 割を占めており、一 部 は製 品 と して 米 国 に 再 輸入 さ れ るも の の 、半 量 以 上の 採 漿 血 漿 が国 外 に 輸出 さ れている。

図 11 米 国 に お け る 原 料 血 漿 (S o u r c e P l a s m a) 採 漿 施 設 数 の 推 移

5.米国における原料血漿価格

原 料 血 漿 価格 は 厚 生 労 働 省 作 成 の資 料

(図12)によると、ここ数年は日米とも に 上昇 傾 向 にあ る が 、 日 米に お け る価 格 推 移の 背 景 は異 な る も の と推 察 さ れる 。 米国においては分画事業者による Source

Plasma の採漿は有償が中心である。原料

血 漿必 要 量 の増 加 を 背 景 に採 漿 施 設の 増 設 に加 え て 積極 的 な ド ナ ーリ ク ル ート 活 動 が展 開 さ れて お り 、 ド ナー へ の 報酬 額 に つい て も 上昇 傾 向 に あ るこ と が 採漿 業 者の WEBサイトから見て取れる。必要量

確 保に 向 け た採 漿 施 設 の 増設 に 伴 う設 備 投 資費 用 、 及び ド ナ ー へ の報 酬 の 上昇 が 原 料血 漿 コ スト に 影 響 し てい る 可 能性 が ある。

ま た 、 米 国に お け る 血 漿 価 格 に つい て は 前述 の 通 り採 漿 事 業 者 の多 く が 血漿 分 画 事業 者 で 占め ら れ て お り、 公 開 され る 価 格情 報 は スポ ッ ト と 呼 ばれ る 異 なる 事 業 者間 で の 取引 に 限 ら れ てい る 。 その た め 、採 漿 コ スト に 利 益 を 上乗 せ し た価 格 となっていると考えられる。

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図 12 原 料 血 漿 価 格 ( 日 米 ) の 推 移

6 .日 本 に おけ る 血 漿 分 画製 剤 用 原料 血 漿の採漿及び確保状況

日 本 国 内 では 原 料 血 漿 の 確 保 を 含む 採 血 事業 を 日 本赤 十 字 社 が 単独 で 担 って お り 、全 血 又 は成 分 採 血 に よっ て 得 られ る 献 血血 液 の うち 、 輸 血 用 血液 製 剤 とし て 使 用さ れ な い血 漿 が 分 画 製剤 用 原 料血 漿 と して 主 に 用い ら れ て き た。 し か し近 年 日 本国 内 に おけ る 免 疫 グ ロブ リ ン 製剤 の 需 要増 加 に 伴っ て 必 要 原 料血 漿 量 が増 加 し たこ と か ら、 こ こ 数 年 で急 速 に 原料 血

漿 の確 保 を 目的 と し た 血 漿成 分 採 血比 率 が上昇している(図13)。原料血漿確保に 伴 うコ ス ト は全 血 採 血 や 血小 板 成 分採 血 と 比較 し て 血漿 成 分 採 血 で は 大 幅 に上 昇 する(図13下表)。これは全血採血ある い は血 小 板 成分 採 血 に お いて 、 人 件費 や 検 査費 用 等 、か か る コ ス トの 一 部 を併 せ て 製剤 化 さ れる 輸 血 用 血 液製 剤 に 転嫁 可 能 であ る の に対 し 、 血 漿 成分 採 血 では コ ス トの 大 部 分が 原 料 血 漿 製造 費 用 とし て 積算されるためである。

図 13 原料血漿確保量と血漿成分採血比率

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103 血 漿 分 画 製剤 は 人 血 漿 中 の 有 用 成分 を 分離・抽出、精製することで製造され、単 一 原料 か ら 複数 の 製 剤 が 連続 的 に 製造 さ れることから「連産品」と称されている。

同 様に 輸 血 用血 液 製 剤 に つい て も 採血 血 液 から 原 料 血漿 を 含 む 複 数の 製 剤 が製 造

され て おり 、 連産 構 造 にあ る (図 1 4)。

連 産と な ら ない 血 漿 成 分 採血 比 率 の増 大 は コス ト の 上昇 に つ な が り、 そ の 費用 負 担 は日 本 赤 十字 社 の 血 液 事業 運 営 に影 響 を与えることとなる。

図 1 4 血 液 事 業 に お け る 二 つ の 連 産 構 造

7 .米 国 と 日本 に お け る 血漿 分 画 事業 の コスト構造及び収益傾向

米 国 と 日 本に お け る 血 漿 分 画 事 業の コ ス ト構 造 に は大 き な 違 い はな い と 考え ら れる(図15、図16)。血漿分画事業に お いて は コ スト の 多 く が 製造 コ ス トで 占 め られ て お り、 相 対 的 に 一般 の 医 薬品 に 比べ販売管理費、研究開発費、そして営業 利益が抑制されている。

製 造 コ ス トに つ い て は 大 規 模 設 備を 要 す るこ と か ら設 備 投 資 額 が大 き く 相対 的 に 減価 償 却 費の 割 合 が 高 いこ と に 加え 、 主 要原 料 で ある 血 漿 費 用 がそ の 多 くを 占 め てお り 、 原料 血 漿 価 格 の上 昇 が 事業 性 に 極め て 大 きな 影 響 を 与 える こ と が見 て とれる。

図 1 5 一 般 医 薬 品 と の コ ス ト 構 造 比 較 ( 米 国 市 場 )

図 1 6 一 般 医 薬 品 と の コ ス

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104 ト 構 造 比 較 ( 日 本 市 場 )

米 国 と 日 本に お け る 分 画 事 業 者 の収 益 傾 向を 確 認 する た め 、 原 料血 漿 価 格及 び 原 料血 漿 1 L当 た り の 主 要製 剤 の 製品 価 格 を試 算 し 、そ の 推 移 を 比較 し た (図 1 7)。日米ともに原料血漿にかかる費用は 増 加傾 向 に ある が 、 米 国 にお け る 製品 価 格は 2013年から 2018年で原料血漿価格 推移 と 同様 の 傾向 を 示 して い るの に 対し、

日 本に お け る製 品 価 格 は 低下 傾 向 を示 し て いる 。 米 国に お け る 製 品価 格 と 原料 血 漿 価格 の 相 関性 は 明 確 で はな い が 、日 本 国 内の 製 品 価格 は 薬 価 制 度に よ り 市場 実 勢 価格 に 基 づく 薬 価 改 定 が行 わ れ るこ と で 低下 を 続 けて い る 。 薬 価下 落 に よっ て 国 内分 画 事 業者 の 収 益 性 が低 下 傾 向に あ る 中、 血 漿 価格 上 昇 に 伴 うコ ス ト 増が 事 業者に与える影響は大きい。

薬価制度に関しては2016年度(平成28 年度)に不採算品再算定、最低薬価になる 前 の薬 価 を 下支 え す る 制 度と し て 、改 定

時 に薬 価 が 維持 さ れ る 基 礎的 医 薬 品制 度 が 導入 さ れ た。 基 礎 的 医 薬品 と し て認 定 さ れる た め には 、 下 記 の 要件 を 満 たす 必 要 があ る が 、代 替 治 療 が 限ら れ て いて 医 療に必須であり、且つ薬価収載から 25年 以 上供 給 し てい る 製 剤 が 多い 血 漿 分画 製 剤 は基 礎 的 医薬 品 制 度 の 主旨 に 合 致し た 医 薬品 で あ ると い え よ う 。血 漿 分 画製 剤 の 安定 供 給 責任 を 担 う 分 画事 業 者 は、 事 業 継続 に 向 けた 収 益 力 確 保の た め にも 基 礎 的医 薬 品 に認 定 さ れ る よう 単 品 単価 に よ る取 引 、 並び に 価 値 に 見合 っ た 適正 な 価格での取引に尽力すべきである。

<基礎的医薬品の要件>

1.広く臨床現場で使用されている 2.薬価収載から 25 年以上経過している 3 .当 該 医 薬品 及 び 当 該 医薬 品 を 含む 同 一の類似薬の平均乖離率(市場実勢価格)

が 全薬 価 収 載品 目 の 平 均 乖離 率 を 超え な い

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図 17 日 本/米 国 の 原 料 血 漿 と 分 画 製 剤 の 試 算 価 格 推 移

8.日本における連産バランス

前 述 の よ うに 分 画 製 剤 は 唯 一 の 主要 原 料 であ る 血 漿か ら 複 数 の 製剤 が 連 続的 に 製 造さ れ る 連産 品 で あ る が、 血 漿 中に 含 まれる各製剤の有効成分(血漿タンパク)

の量は成分ごとに異なっている。また、供 給 量は 製 剤 毎の 国 内 需 要 や分 画 事 業者 の 製 造能 力 に 依存 し て い る 。原 料 血 漿必 要 量 は各 製 剤 のう ち 需 要 に 基づ く 製 造量 と 製 造収 率 か ら最 も 血 漿 を 必要 と す る製 剤 に 依存 し 、 製剤 需 要 動 向 によ り 経 時的 に 変 化す る 。 過去 に は 世 界 で供 給 さ れる 量 の 1/3 が日本で使用されたとされるアル ブ ミン 製 剤 が原 料 血 漿 を 最も 多 く 必要 と す る製 剤 で あっ た が 、 免 疫グ ロ ブ リン 製 剤 需要 の 増 加に 伴 い 近 年 では 当 該 製剤 が 最 も原 料 血 漿を 必 要 と す る製 剤 と なっ た

(図 18)。この傾向は欧米主要国におい

て も同 様 で あり 、 日 本 に おい て も この 傾 向は当面継続するものと推察される。

また、2019年度に配分された原料血漿 と 当該 年 度 に供 給 さ れ た 製品 及 び 想定 製 造 収率 か ら 、各 製 剤 の 供 給に 伴 う 原料 血 漿の利用状況を試算した(図19)。免疫 グ ロブ リ ン 製剤 見 合 い で 確保 さ れ た原 料 血 漿に つ い て、 ア ル ブ ミ ン製 剤 や その 他 の 製剤 で は 当該 製 剤 の 有 効成 分 を 含む 原 料 が全 て 使 用さ れ て い る わけ で は ない こ と が見 て と れる 。 前 述 の とお り 供 給量 は 国 内需 要 と 分画 事 業 者 の 製造 能 力 に依 存 し てい る た め、 単 に 免 疫 グロ ブ リ ン製 剤 以 外の 国 内 供給 量 の 増 加 を目 指 す こと は 現 実的 で は ない が 、 一 方 で原 料 血 漿か ら 複 数の 製 剤 をバ ラ ン ス よ く供 給 す るこ と が 出来 れ ば 分画 事 業 者 の 収益 性 は 大き く 向 上す る 。 連産 バ ラ ン ス の改 善 に あた っ て は、 免 疫 グロ ブ リ ン 製 剤の 収 率 向上 に よ って 当 該 製剤 見 合 い の 原料 血 漿 必要 量 を 減少 さ せ るこ と も 極 め て有 効 な 手段 で ある。

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図 18 免 疫 グ ロ ブ リ ン 製 剤 、 ア ル ブ ミ ン 製 剤 に お け る 原 料 血 漿 換 算 量 の 推 移

図 19 供 給 実 績 か ら み た 製 剤 別 原 料 血 漿 換 算 量

欧 米 で は 免疫 グ ロ ブ リ ン 製 剤 の 供給 量 増 加と と も にア ル ブ ミ ン 製剤 の 供 給量 も 増加傾向にある(図20)。海外の分画事 業 者ら も 、 医薬 品 的 価 値 のあ る 新 たな 血 漿 タン パ ク 成分 の 研 究 開 発に 取 り 組む と と もに 、 グ ロー バ ル な 供 給も 含 め て血 漿 か ら生 み 出 され る 分 画 製 剤の 連 産 バラ ン ス を整 え 、 収益 性 を 確 保 して い る もの と 考えられる。

日 本 に お いて は 輸 入 製 品 に 依 存 して い る 製剤 に つ いて 国 内 自 給 率の 向 上 に努 め ることはもちろんだが、2019年(令和元

年)に改正された「血液製剤の安全性の向 上 及び 安 定 供給 の 確 保 を 図る た め の基 本 的な方針」により、国内の血液製剤の国内 自 給と 安 定 供給 の 確 保 に 支障 が 生 じな い 範 囲に お い て血 漿 分 画 製 剤の 輸 出 が可 能 となった。今後は海外、特に当該製剤の需 要 があ り 、 自国 で の 血 漿 確保 や 分 画製 剤 の 製造 体 制 を構 築 で き て いな い 国 等に 対 し て、 血 漿 分画 製 剤 を 輸 出す る こ とも 収 益 性確 保 に 向け た 連 産 バ ラン ス 改 善の 選 択肢となりえる。

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図 2 0 諸 外 国 に お け る ア ル ブ ミ ン 製 剤 使 用 量 の 推 移

D. 考察

免疫 グ ロ ブリ ン 製 剤 の 需要 は 上 述の と おり、適応疾患患者数の上昇、CIDP患者 の 維持 療 法 への 移 行 、 さ らに は 新 たな 効 能 追加 等 に より 、 今 後 も 一定 程 度 の増 加 を 続け る も のと 推 察 さ れ る。 一 方 で維 持 療 法中 止 の 目安 や 対 象 と なる 患 者 が明 確 化 され る こ とで 、 使 用 の 適正 化 が 図ら れ る 可能 性 や 、今 後 免 疫 グ ロブ リ ン 製剤 の 適 応疾 患 に おけ る 新 規 治 療法 、 代 替薬 の 登 場に よ る 需要 減 少 の 可 能性 も あ る。 加 え て、 昨 今 の新 型 コ ロ ナ ウイ ル ス 感染 症 の 拡大 に よ って 変 化 し た 生活 態 様 や行 動 様 式が 免 疫 グロ ブ リ ン の 適応 疾 患 に影 響 を 与え る 可 能性 も あ り 、 需要 動 向 につ い ては引き続き注視していく必要がある。

免 疫グ ロ ブ リン 製 剤 の 需 要増 に 伴 い増 加 す る原 料 血 漿必 要 量 に 対 し、 米 国 では 分 画 事業 者 が 採漿 セ ン タ ー を増 設 し 、有 償 採 漿ド ナ ー を確 保 す る こ とで 対 応 を図 っ ている。一方、国内では唯一の採血事業者 で ある 日 本 赤十 字 社 が 無 償の 献 血 によ る 確保 を 原則 と して そ の 責務 を 担っ て いる。

「 安全 な 血 液製 剤 の 安 定 供給 の 確 保等 に 関する法律」(血液法)では献血血液によ る 国内 自 給 の確 保 を 基 本 とす る と とも に 安 定供 給 に 努め る 旨 が 定 めら れ て おり 、

免 疫グ ロ ブ リン 製 剤 の 需 要増 加 に 対応 し た 日本 赤 十 字社 に よ る 原 料血 漿 必 要量 の 確 保や 、 確 保に 伴 う コ ス トの 低 減 化 施 策 が期待される。また、分画事業者は国内自 給 率向 上 並 びに 安 定 供 給 に向 け た 献血 由 来 製剤 の 生 産体 制 の 確 保 とと も に 、免 疫 グ ロブ リ ン 製剤 の 製 造 収 率を 向 上 させ 、 限 られ た 原 料血 漿 か ら よ り多 く の 免疫 グ ロ ブリ ン 製 剤が 供 給 可 能 とな る よ う な 取 り組みが必要とされている。

日米 に お ける 分 画 事 業 のコ ス ト 構造 は 同 様の 傾 向 が見 ら れ 、 原 料血 漿 価 格の 上 昇 がコ ス ト 増大 ひ い て は 収益 力 の 低下 に 大 きく 影 響 する こ と が 明 らか と な った 。 加 えて 日 本 にお い て は 実 勢価 改 定 に伴 う 薬 価下 落 に より 製 品 単 価 当た り の 収益 性 は 低下 し 続 けて お り 、 国 産製 剤 の 安定 供 給 に向 け た 事業 の 継 続 に 向け 、 薬 価が 維 持 され る 基 礎的 医 薬 品 の 認定 並 び に免 疫 グ ロブ リ ン 製剤 の 収 率 向 上や 国 内 需要 を 満 たし た 製 剤の 海 外 輸 出 等連 産 バ ラン ス の 早期 改 善 によ る 収 益 力 の向 上 が 求め ら れている。

E. 結論

血 漿 分 画 製剤 の 継 続 し た 安 定 供 給に 向

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108 け て原 料 血 漿の 安 定 確 保 体制 を 考 察す る に あた り 、 主要 な 血 漿 分 画製 剤 の 一つ で あ り、 国 内 にお い て 需 要 が増 加 し てい る 免疫 グ ロブ リ ン製 剤 の 需要 動 向を 調 査し、

そ の要 因 を 考察 し た 。 併 せて 米 国 の需 要 動 向と 日 米 にお け る 原 料 血漿 確 保 策、 分 画事 業 者の 対 応状 況 に つい て 調査 を 行い、

国 内の 血 漿 分画 事 業 に お ける 課 題 を考 察 した。

国 内 の 免 疫グ ロ ブ リ ン 製 剤 の 需 要増 加 は 医療 需 要 に伴 う 効 能 追 加が 大 き な要 因 の 一つ で あ ると 推 察 さ れ る。 効 能 追加 に よ って 対 象 とな る 疾 患 そ のも の が 増加 す る こと に 加 え、 対 象 疾 患 の患 者 数 も一 部 に おい て 増 加傾 向 に あ る 。こ の 背 景に は 国 内に お け る年 齢 構 成 の 変化 、 疾 患に 対 す る診 断 精 度や 認 知 度 の 向上 な ど が貢 献 しているものと推察される。さらに、近年 の 免疫 グ ロ ブリ ン 製 剤 の 大幅 な 需 要増 加 要因として CIDP の維持療法の浸透が挙 げられる。CIDPにおいては活動期におけ る 免疫 グ ロ ブリ ン 製 剤 の 使用 に 加 えて 、 運 動機 能 低 下の 進 行 抑 制 を目 的 と した 維 持 療法 が 浸 透し つ つ あ り 、高 濃 度 静注 用 製 剤や 皮 下 注用 製 剤 の 登 場に よ り 外来 投 与、在宅投与が可能となったことで、活動 期 治療 か ら 維持 療 法 へ の 移行 が 今 後も 進 む可能性がある。

維 持 療 法 では 継 続 的 に 免 疫 グ ロ ブリ ン 製 剤を 投 与 する こ と か ら 、患 者 数 の増 加 と 相乗 し て 需要 の 増 加 傾 向は 継 続 する も の と推 察 さ れる 。 一 方 で 維持 療 法 中止 の 目 安や 対 象 とな る 患 者 が 明確 化 さ れる こ とで、使用の適正化が図られる可能性や、

今 後免 疫 グ ロブ リ ン 製 剤 の適 応 疾 患に お け る新 規 治 療法 、 代 替 薬 の登 場 に よる 需 要 減少 の 可 能性 も あ り 、 需要 動 向 につ い

ては引き続き注視していく必要がある。

米 国 に お いて も 免 疫 グ ロ ブ リ ン 製剤 の 需 要は 拡 大 を続 け て い る 。増 加 す る需 要 に 必要 な 原 料血 漿 を 確 保 する た め 、海 外 の 分画 事 業 者は 各 社 と も 自ら が 運 営す る 採 漿セ ン タ ーを 増 や す な どの 対 応 を図 っ て いる 。 国 内で は 採 漿 事 業環 境 が 米国 と 異 なる こ と から 同 様 の 確 保策 に よ り需 要 に 対応 す る こと は 難 し く 、日 本 赤 十字 社 に よる 原 料 血漿 確 保 策 と 併せ て 、 分画 事 業 者に よ る 免疫 グ ロ ブ リ ン製 剤 の 製造 収 率 の向 上 が 必要 血 漿 量 の 抑制 に 貢 献す る ことが重要である。

また、分画事業者の収益性については、

一 般医 薬 品 に比 し て 製 造 費用 が 高 いこ と 等 コス ト 構 造は 日 米 で 同 様の 傾 向 がみ ら れ たが 、 日 本で は 継 続 的 な薬 価 下 落に よ る 収益 性 の 低下 が 危 惧 さ れる 。 基 礎的 医 薬 品制 度 に よる 薬 価 維 持 、免 疫 グ ロブ リ ン 製剤 の 収 率向 上 や 国 内 需要 を 満 たし た 製 剤の 海 外 輸出 等 に よ る 連産 バ ラ ンス の 改 善に よ っ て収 益 性 を 改 善 す る こ とが 、 国 産製 剤 の 安定 供 給 に 向 けた 事 業 の継 続 には必要であろう。

F. 健康危険情報 該当なし

G. 研究発表 未定

H. 知的財産権の出願・取得状況 該当なし

図 7 米 国 : 静 注 用 免 疫 グ ロ ブ リ ン 製 剤 市 場 数 量 推 移

参照

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