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日射遮蔽制御を行う自律型ファサードシステムに関する研究
鉛直面照度による日照有無の判別方法と日射制御方法
古賀 友子
1.はじめに 近年、建築のファサードにはガラスを多用した透過性の 高いデザインが多くなっている。そのような建築において、 室内の視環境や熱環境を良好にするために、高性能な窓・ ファサードシステムが開発されてきた。良好な室内環境を 実現するために、直射日光の制御は必要不可欠である。固 定式や手動式の日射遮蔽装置では、正確に太陽に追従でき ない場合や手動操作されずに放置されやすい場合 1)があ る。これらの問題を解決するために、ブラインド自動制御 システムの研究が多く行われている。これは、太陽位置や 外界・天空状態の条件に合わせて、ブラインドの開閉状態 を自動で制御するシステムである。直射日光の影響が認め られる場合、太陽位置から計算された角度にブラインドの スラットを調整し、日射遮蔽を行う。直射日光の影響がな い曇天時には、スラットを水平に開放して眺望を確保し、 室内へ天空光を導入することが望ましいとされている 2)。 一般的なブラインド自動制御システムでは、屋上に設置 した装置で直射日光量を計測し、設定された閾値をもとに ブラインドの制御を行う3)。LED 天井照明の自動制御と組 合せることによって室全体で約 5%の消費電力の削減が 可能との報告がある4)。しかしながら、1つのセンサーで 全ての窓に対応することは困難であり、直射日光量を計測 するためには高価で大型の太陽追尾装置3)が必要となる。 また、自動制御には待機電力が必要であり、室全体におけ る消費電力の削減効果は大きくない現状である。 以上をふまえ、本研究では太陽電池を用いた自律型ファ サードシステムを提案する。太陽電池が発電を行うと同時 に個々の窓面で天空状態を判断するセンサーとして機能 し、それぞれのブラインド・ルーバー等を個別に制御する システムを目標としている。 その嚆矢として、室内環境にとって直射日光の影響が特 に大きい南面から西面において、日照の有無を鉛直面グロ ーバル照度によって簡易的に判別する方法を検討した。窓 面外向きにセンサーを取り付け、測定した鉛直面グローバ ル照度が本研究で求めた閾値より下回る場合、ブラインド のスラットを開く制御とすることを想定している。さらに、 太陽のプロファイル角を考慮した、方位および季節毎の日 射制御方法について検討した。 2.南鉛直面照度による日照有無の判別閾値の推定 昼光と日射の実測データを用いて、南鉛直面グローバル 照度による日照の有無の判別方法を検討した。比嘉らは南 鉛直面グローバル照度の月毎の変動を太陽高度との関数 として報告した5)。これより、日照有無の判別閾値は月毎 に太陽高度の関数式として提案できると考えた。閾値の決 定にあたって十分なデータ数を確保するため、フランス・ リヨンの昼光・日射測定所(IDMP、東経 5 度・北緯 46 度) の実測データ6)を譲り受けた。IDMP 測定所では、昼光と 日射の測定を 24 時間行っている。本研究では、2012 年 1 月~2013 年 12 月の 2 年分の実測データを整理し、このう ち日の出から日の入りまでの 1 分毎のデータを用いた。 本研究では、法線面直達日射量によって南鉛直面グロー バル照度のデータを仕分けることで、天空状態を 2 種類に 分類した。法線面直達日射量 120W/m2以上7)に対応する照 度データを「日照あり」、120W/m2未満に対応する照度デー タを「日照なし」として仕分け、それぞれ月毎に散布図を 作成した。図 1 に散布図の例を示す。重なる部分はあるが、 南鉛直面グローバル照度のデータは「日照あり」と「日照 なし」におよそ分かれ、直線的な境界を確認できた。 次に、南鉛直面グローバル照度の散布図より、日照有無 の判別の閾値を検討した。まず、太陽高度 5 度以上の南鉛 直面グローバル照度のデータを太陽高度 10 度毎に分類し た。「日照あり」では南鉛直面グローバル照度の高い方か らの累積頻度 90%下限値、「日照なし」では南鉛直面グロ ーバル照度の低い方からの累積頻度 90%上限値を求め、 それぞれの回帰直線を導いた。これを月毎に求めた。図 2 に「日照あり」「日照なし」の回帰直線の例を示す。 「日照あり」と「日照なし」の 2 つの回帰直線の間にあ るデータは、雲の状態によると考える。本研究ではブライ ンドが正確に直射日光を遮蔽できることを優先し、より低 い値となった「日照なし」の累積頻度 90%上限値を日照 有無の判別の閾値として暫定的に決定した。直線の傾きは 夏季では比較的小さく、冬季で大きくなる傾向となった。 3.西鉛直面照度による日照有無の判別閾値の推定 南面の検討と同様に、リヨンの IDMP 測定所の実測デー タを用いて、西鉛直面グローバル照度による日照の有無の 判別方法を検討した。法線面直達日射量 120W/m2以上に対34-2
応する西鉛直面グローバル照度のデータを「日照あり」、 120W/m2未満に対応する照度データを「日照なし」として 仕分け、それぞれ月毎に散布図を作成した。図 3 に散布図 の例を示す。重なる部分はあるが、西鉛直面グローバル照 度のデータは「日照あり」と「日照なし」におよそ分かれ た。南鉛直面グローバル照度の散布図と異なり、曲線的な 境界を確認できた。また、東鉛直面グローバル照度の場合、 時間変動は対照的だが、同様の傾向となることを確認した。 次に、西鉛直面グローバル照度の散布図より、日照有無 の判別の閾値を検討した。南の検討と同様に、「日照なし」 の累積頻度 90%上限値を日照有無の判別の閾値とした。 「日照なし」に該当する太陽高度 5 度以上の西鉛直面 グローバル照度のデータを太陽高度 10 度毎に分類した。 西鉛直面グローバル照度の低い方からの累積頻度 90%上 限値を求め、回帰曲線を導いた。図 4 に「日照なし」の回 帰曲線を示す。 4.プロファイル角を考慮した日射制御方法 直射日光の入射方向と窓面の法線方向のなす角度を太 陽のプロファイル角という。窓からの直射日光の入射量は プロファイル角によって変化する。そこで、プロファイル 角の変動を調べ、その特性をふまえて南面から西面におけ る日射制御方法の使い分けについて検討した。 図 5 では、真南、南南西、南西、西南西、真西に面した 窓に対する太陽のプロファイル角の変動を季節毎に示す。 真西のようにプロファイル角が 1 日をかけて約 90 度変化 する場合(以下、タイプⅠ)と、真南のようにプロファイ ル角の変化が小さい場合(以下、タイプⅡ)があることが 確認できた。 タイプⅠには、春季・秋季では西から南南西、夏季・冬 季では西から南西が当てはまる。この場合、プロファイル 角の変化が大きく、窓へ入射する直射日光量の変化も大き いと考える。したがって、タイプⅠの場合では、プロファ イル角をもとにした制御の閾値を用いることを提案する。 タイプⅠにおける日照有無を判別するための閾値を求 めるにあたり、前述の検討と同様に、IDMP 測定所の西鉛 直面グローバル照度の実測データを用いた。「日照あり」 「日照なし」の仕分け方法は同様であるが、ここでは「日 照なし」のデータをプロファイル角 10 度毎に分類し、累 積頻度 90%上限値を求めた。図 6 に散布図の例、図 7 に プロファイル角をもとにした日照有無を判別するための (a) 6 月(リヨン,2012 年~2013 年) (a) 6 月(リヨン,2012 年~2013 年) (a) 6 月(リヨン,2012 年~2013 年) (b) 9 月(リヨン,2012 年~2013 年) 図 1 南鉛直面グローバル照度 (b) 9 月(リヨン,2012 年~2013 年) 図 2 南鉛直面グローバル照度の回帰直線 (b) 9 月(リヨン,2012 年~2013 年) 図 3 西鉛直面グローバル照度 (c) 12 月(リヨン,2012 年~2013 年) (c) 12 月(リヨン,2012 年~2013 年) (c) 12 月(リヨン,2012 年~2013 年) 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 南鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 日照あり 日照なし 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 南鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 日照あり 日照なし 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 西鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 日照あり 日照なし 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 南鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 日照あり 日照なし 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 南鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 日照あり 日照なし 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 西鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 日照あり 日照なし 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 南鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 日照あり 日照なし 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 南鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 日照あり 日照なし 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 西鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 日照あり 日照なし34-3
閾値を示す。また、タイプⅠでは西向きになるほどプロフ ァイル角の時間毎の変化が大きくなる。例えば、西面に対 するプロファイル角は 10 分の間に平均で約 2.5 度変動す る。この場合では、正確な日射遮蔽を行うために、スラッ ト角の制御時間間隔を特に短めに設定するほうが良いと 言える。 タイプⅡには、春季・秋季では南、夏季・冬季では南か ら南南東が当てはまる。この場合、殆どの時間帯において プロファイル角の変化は小さい。しかし、前述の南面の検 討結果から分かるように、南鉛直面グローバル照度は太陽 高度によって刻々と変化し、相関性が見られる。そのため、 タイプⅡでは、太陽高度による制御の閾値、すなわち、前 述の南鉛直面グローバル照度による日照有無の判別閾値 (図 8)を用いた制御が有効であると考える。また、夏季 ではプロファイル角が大きく、冬季では小さくなる傾向が 見られた。したがって、特に夏季において、南向きの窓で は晴天時でもブラインドをほぼ水平に開くことができ、長 時間眺望を確保しやすいことが分かる。 5.日照有無の判別方法の精度確認 リヨンの実測データを使用して、提案する日照有無の判 別方法の妥当性を調べた。図 9 に 2013 年 6 月 10 日の法 線面直達日射量と西鉛直面グローバル照度の時間変動を 示す。この日は終日不安定な天空状態であった。図 9 の上 図の赤線は法線面直達日射量 120W/m2、下図の赤線は本研 究で決定した「タイプⅠ」の 6 月の閾値を示す。 図 9 の上図と下図を比較すると、提案するタイプⅠの日 照有無の判別閾値を超える時間帯と法線面直達日射量 120W/m2 を 超 え る 時 間 帯 は ほ ぼ 一 致 し た (12:52 ~ 13:27,15:05~15:14,17:22~17:36)。これより、タイプⅠ の場合では、提案する閾値によって、ほぼ正確に日照有無 を判別することが可能であると考える。 図 10 に 2013 年 6 月 10 日の法線面直達日射量と南鉛直 面グローバル照度の時間変動を示す。図 10 の上図の赤線 は法線面直達日射量 120W/m2、下図の赤線は本研究で決定 した「タイプⅡ」の 6 月の閾値を示す。 図 10 の上図と下図を比較すると、提案するタイプⅡの 日照有無の判別閾値を超える時間帯と法線面直達日射量 120W/m2 を 超 え る 時 間 帯 は ほ ぼ 一 致 し た (11:10 ~ 11:41,12:29~13:24,15:05~15:14)。これより、タイプⅡ の場合でも、提案する閾値によって、ほぼ正確に日照有無 を判別することが可能であると考える。また、太陽位置と 窓面の方位の関係より、南に面する窓に直射日光が入らな い時間帯が朝(7:00~8:17)と夕方(17:02~19:00)にある。 この時間帯では、提案する日照有無の判別閾値が南鉛直面 グローバル照度の実測値を常に上回っている。したがって、 図 4 西鉛直面グローバル照度「日照なし」の回帰曲線 (a) 南 (b) 南南西 (c) 南西 (d) 西南西 (e) 西 図 5 方角・季節毎のプロファイル角の変動 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 西鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 3月 6月 9月 12月 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 5:00 7:00 9:00 11:00 13:00 15:00 17:00 19:00 プ ロフ ァイ ル角 [d e g re e ] 時刻 2月5日 3月15日 3月25日 5月5日 6月21日 8月5日 9月15日 9月25日 11月5日 12月21日 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 5:00 7:00 9:00 11:00 13:00 15:00 17:00 19:00 プ ロフ ァイ ル角 [d e g re e ] 時刻 2月5日 3月15日 3月25日 5月5日 6月21日 8月5日 9月15日 9月25日 11月5日 12月21日 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 5:00 7:00 9:00 11:00 13:00 15:00 17:00 19:00 プ ロフ ァイ ル角 [d e g re e ] 時刻 2月5日 3月15日 3月25日 5月5日 6月21日 8月5日 9月15日 9月25日 11月5日 12月21日 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 5:00 7:00 9:00 11:00 13:00 15:00 17:00 19:00 プ ロフ ァイ ル角 [d e g re e ] 時刻 2月5日 3月15日 3月25日 5月5日 6月21日 8月5日 9月15日 9月25日 11月5日 12月21日 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 5:00 7:00 9:00 11:00 13:00 15:00 17:00 19:00 プ ロフ ァイ ル角 [d e g re e ] 時刻 2月5日 3月15日 3月25日 5月5日 6月21日 8月5日 9月15日 9月25日 11月5日 12月21日34-4
(a) 6 月(リヨン,2012 年~2013 年) (b) 9 月(リヨン,2012 年~2013 年) 図 6 西鉛直面グローバル照度 (c) 12 月(リヨン,2012 年~2013 年) 図 7 提案する日照有無の判別閾値(タイプⅠ) 図 8 提案する日照有無の判別閾値(タイプⅡ) 提案する閾値によって、直射日光の影響のない場合を正確 に判断できることを確認した。 6.まとめ 本研究では、直射日光の影響が特に大きい南から西に面 する窓における、鉛直面グローバル照度による日照有無の 判別方法を検討した。さらに、方位および季節毎の日射制 御方法を提案した。従来の太陽追尾装置等による計測方法 よりも簡便で、常に一定の閾値を使用するよりも正確に、 個々の窓に対応できる自律型ファサードシステムの開発 につながると期待する。 謝辞 本研究は、フランス・リヨンの国立公共土木大学校(ENTPE)の D.Dumortier 教授より提供いただいたデータを用いた。本研究は、 科学研究費補助金の基盤研究(B)(課題番号 24360237)によった。 記して感謝の意を表する。 図 9 日照有無の判別方法の比較(タイプⅠ) 図 10 日照有無の判別方法の比較(タイプⅡ) 参考文献1) 望月, 小池: Field survey on actual conditions of light environment in office buildings of middle-scale in Japan, Journal of Light and Visual Environment, Vol.34, pp.157-164, 2010 2) 日本建築学会: ガラス建築 意匠と機能の知識, 学芸出版社, p132, 2009 3) 一ノ瀬, 井上ら: 気象の変動に追従するブラインドの制御 手法, 日本建築学会環境系論文集, 第 646 号, 第 74 巻, pp.1339-1345, 2009 4) 本間: 昼光利用の新しい建築(4), 照明学会誌, 第 88 号, 第 10 巻, pp.815-820, 2004 5) 大島, 比嘉: 昼光と日射に関する実験的研究, 平成 10 年度 照明学会全国大会講演論文集, p.126, 1998
6) CIE 108-1994 Guide to Recommended Practice of Daylight Measurement, CIE, 1994 7) 気象庁, 地上気象観測指針, p.95, 1993 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 西鉛直面照度 [lx ] プロファイル角[degree] 日照あり 日照なし 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 西鉛直面照度 [lx ] プロファイル角[degree] 日照あり 日照なし 0 30000 60000 90000 120000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 西鉛直面照度 [lx ] プロファイル角[degree] 日照あり 日照なし 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 西鉛直面照度 [lx ] プロファイル角[degree] 3月 6月 9月 12月 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 南鉛直面照度 [lx ] 太陽高度[degree] 3月 6月 9月 12月 0 500 1000 直達日射 量 [W /㎡ ] 法線面直達日射量 日照有無の閾値(120W/㎡) 0 20000 40000 60000 80000 西鉛直面照度 [lx ] 時刻 西鉛直面照度 タイプⅠの閾値(6月) 0 500 1000 直達日射 量 [W /㎡ ] 法線面直達日射量 日照有無の閾値(120W/㎡) 0 20000 40000 60000 80000 南鉛直面照度 [lx ] 時刻 南鉛直面照度 タイプⅡの閾値(6月)