1 トピック 1. フィリピン:税制改革の行方 ~ドゥテルテ政権発足後、初めての税制改革は、フィリピンにとっては 20 年ぶりとなるもので、法案は今年 5 月に 下院を通過し、現在、上院にて審議が行われています。~ 2. マレーシア:ハラル認証申請管理アプリ(QuikHALAL:クイックハラル) ~マレーシア工科大学によって開発された、ハラル認証プロセスをアプリで一括管理するという仕組みについて紹介 しています。~ 3. マレーシア:移転価格規則のアップデート ~7 月 15 日付で運用が開始された、移転価格ガイドラインのアップデートについて、概略を説明しています。~ 4. [連載②]ASEAN における地域統括会社(RHQ)の有効活用(シンガポール、マレーシア、タイ、フィ リピン) ~ASEAN における地域統括会社(RHQ)の設立・運営について、今回はシンガポールについて説明します。~ 5. 国際税務の基礎知識:「Q:日本と海外に拠点がある場合、どの国で法人税が発生しますか?」 6. ニュース(M&A/ビジネスマッチング案件など) 1. フィリピン:税制改革の行方
前号では、ドゥテルテ政権発足後、初めての投資優先計画(Investments Priorities Plan:IPP)2017 年 版について記載しました。今回は、同時に行われている税制改革についてその概略を説明します。 20 年ぶりとなる税制改革法案は、今年 5 月に下院を通過し、現在、上院にて審議が行われていますが、 政府は、この税制改革の前提となる、国の目指すビジョンとして下記を挙げています。
① 貧困の根絶:2022 年までに現在の貧困率 21.6%から 14%にまで減少させ、2040 年には貧困を 完全になくす。
② 国民総所得(GNI)の増加:2022 年までに現在の 3,500USD から 4,100USD に増加させ、2040 年には 12,000USD を目標とする。
これを実現するためには、大規模なインフラ整備をはじめとする、下記の分野への投資が必要としてお り、この投資額を賄うためのひとつの手段としての税制改革という位置づけです。
(現在の投資額と将来にわたっての必要財源額:フィリピン財務省ウェブサイトより入手)
MIRAI Consulting ASEAN News Letter
第 6 号 October ,20172 税制改正の主なものは下記のとおりです。 (増税方向) No. 税目 内容 増税額 1 付加価値税 (VAT) 住居リースなど、一部の免税対象を縮小 6,509 億ペソ (≒1 兆4千億円) 2 物品税 ・ 燃料にかかる物品税引き上げなど:ディーゼル油(新設)、灯油、 LPG、バンカー油、ガソリン、潤滑油、グリース(増税) ・ 自動車にかかる物品税引き上げ:自動車の価額に応じ 5 段階税 率 ・ 砂糖入り飲料にかかる物品税の創設 6,581 億ペソ (≒1 兆4千億円) 1,165 億ペソ(≒2.5 千億円) 2,596 億ペソ(≒5.7 千億円) 3 徴税体制の改善 3,542 億ペソ(≒7.7 千億円) (減税方向) No. 税目 内容 減税額(△) 1 個人所得税 6 段階の累進税率(0~35%)のうち、最高税率を除いたそれぞれの 税率を下方修正(第フェース 2019 年まで、第 2 フェース 2020 年以 降) 5 年間で△9,449 億ペソ (≒1 兆円) 2 不動産税・ 贈与税 年間 10 万ペソを超える贈与に対し、6%の定率を適用 5 年間で△169 億ペソ (≒370 億円) 3 法人税 現行 30%から 25%に引き下げ - 財務省は、ビジョン達成のためこの税制改革に加えて、安定的な借入(国債の発行など)、予算改革、 規制の簡素化などをあわせて行っていくとしています。 現在、法案は上院にて審議され、税制改革第1弾の法案(上院法案第 1592 号)が議会に提出されまし た。この上院法案では、税務行政において懸案事項であった、付加価値税(VAT)還付を迅速化するため の規定も新たに盛り込まれています。一方で、これを条件に、フィリピン経済区(PEZA)認定企業に適 用される VAT 税率ゼロの規定を見直し、還付方式への変更を打ち出しており、業界団体からの反発も上 がっています。 税制改革法案は年内に可決を予定しており、2018 年 1 月からの施行を目指しています。
(Somera Penano & Associates・フィリピン・ジャパンデスク)
2. マ レ ー シ ア : ハ ラ ル 認 証 申 請 管 理 ア プ リ (QuikHALAL:クイックハラル) マレーシアハラル認証は、世界で唯一、国内統 一基準に基づき、政府機関による認証審査を行っ ており、認証制度の成文化および審査基準と過程 の透明性が保たれていることで知られています (本ニュースレター第 2 号参照)。 しかしながら、ハラル認証の取得手続きに関す る認知度はまだまだ低く、プロセスは複雑です。 それゆえに、現状としてはハラルコンサルタント の活用などが必要で、コスト高になることもあり、 多くの中小企業は認証申請を躊躇している現状で
3 あると言われています。 このような中で、マレーシア工科大学・ホリス ティクス・ラブでは、ハラル認証申請の管理アプ リ「QuikHALAL」を開発しました (www.holisticslab.my)。 通常、ハラルの申請は、7つの認証スキーム(食 品・飲料、化粧品、薬品、ロジスティクス、食品施 設、食肉処理場、消費財)に分かれており、それぞ れ異なる手順・条件を満たす必要があります。 このアプリの活用により、各申請者が準備すべ きチェックリストをアプリ上で把握することがで き、実地監査時の現場写真や動画も保存、監査レ ポートまで作成・保存可能になります。 (クイックハラルデモ版より抜粋) また、このアプリ上で監査人とも情報を共有、 監査の工程を管理することができます。将来的に は、認証機関であるイスラム開発庁 (JAKIM)と も繋がり、認証取得までをアプリで一括管理する ことを計画中とのことです。 アプリは今年 3 月に開始、日系企業を含む数社 が試験運用を行っています。アプリ使用料は月 99 マレーシアリンギット~(外国企業の場合、月 99US ドル~)となっており、大手ファーストフー ドチェーンなども活用を検討しているとのことで す。また、中東や中国などのハラル認証機関から、 現地語へのカスタマイズ依頼も来ているようです。 ハラル認証は、膨大な情報から必要な部分だけ を整理するだけでもひと苦労という印象ですが、 デモ版を体験してみると、確かに非常に分かりや すく、コンパクトにまとまっています。アプリの 活用により、すぐにハラルコンサルタントが必要 なくなるわけでもないとは思いますが、ハラル認 証は取得後も監査や更新手続きなどが続いていき ますので、長期的なハラルでのビジネスを考えて いる企業には一定の効果をもたらすのではないか と思います。 3. マレーシア:移転価格規則のアップデート マレーシア内国歳入庁(IRB)は、移転価格ガイ ドラインのアップデートを行い、7 月 15 日付でそ の運用を開始しました。主な改訂は下記のとおり です。 独立企業間価格(Arm’s-length principle)(注1) の明確化(改訂) 契 約 に 関 連 す る 実 質 優 先 ( substance over conduct)の原則を採用し、機能、使用する資産及 び想定されるリスクについて、より詳細な分析を 求めています。仮に、取引が契約書の条件に従っ ていない場合、取引は事実に基づく実態に応じて 取り扱われることになります。 また、リスク分析のためのフレームワークが導 入され、リスクとそれに対応する報酬の関連性に ついてより着目したものとなっています。 無形資産(改訂) 無形資産の識別とカテゴリーに関する詳細ガイ ダンスが改訂されました。また、OECD の指針に 基づき、無形資産の法的な所有者権と、経済的な
4 所有権のミスマッチが起こらないように、無形資 産の所有及び「開発、改良、維持、保護及び活用」 (DEMPE)に基づいて検討された、貢献度に対す る報酬額とその受益者の特定について検討すべき としています。 商品取引(新規) ガイドラインは、納税者が独立価格比準(CUP) 方式を適用するために、国内もしくは国際商品取 引から入手した相場価格を使用することを求めて います。 文書について(改訂) マレーシア国外の親会社が、自国で国別報告書 の作成義務がある場合、その子会社である納税者 においても、マスターファイルの作成および保存 が義務付けられること になりました。マスターフ ァイルは、IRB の要求があった場合に、ローカル ファイルと共に提出する必要があります。 (注1)国外関連取引について、同様の状況のもとで、独立第三者 間において同種の取引が行われた場合に成立すると認められる価 格。 4. [ 連 載 ② ]ASEAN に おけ る地 域統 括会 社 (RHQ)の有効活用(シンガポール、マレー シア、タイ、フィリピン) シンガポールでは、2010 年以降、アジアを対象 とする地域統括機能の設置が急増しました。背景 のひとつには、2009 年に日本で外国子会社配当益 金不算入制度(注2)が導入されたこと、また、2010 年には統括会社がタックスヘイブン対策税制の適 用除外(注3)となったことがあります。 ジェトロが行った調査(注 4)では、シンガポール の地域統括会社は約 7 割が域内株式を所有、一方 で、マレーシアは約 7 割が所有せずとなっており、 税制面でのメリットを享受する目的が高いことが うかがえます。 域内の配当を集め、まとめて日本に配当する、 または地域統括会社の運営、域内での新規投資な どに活用する場合もありますし、将来的にグルー プ企業の株式を譲渡する場合にも、キャピタルゲ イン課税がないため有利になります。 シンガポールには地域統括会社に対する下記の ような優遇税制があります。ただ、これらの優遇 措置を適用している日系企業はそれほど多くない ようです。RHQ については、認定要件が高いわり に、仮に認定を受けた場合も、与えられる優遇税 率は 15%と、通常税率の 17%とあまり変わらず、 得られるメリットが小さいことが理由のひとつと も言われています。 (地域統括会社に対する優遇措置) また、日系企業の特徴として、地域統括会社の 収益の多くが、「親会社からもしくは域内グループ 会社からの域内管理に係る業務委託料」を収益の 柱としていることも挙げられます。このように地 域統括会社が「コストセンター(=そもそも利益 を生まない事業)」として位置づけられる場合、こ れら優遇措置の利用は考慮外ということになるか もしれません。 シンガポール統括会社の機能は、「営業・マーケ ティング」、「金融・財務・為替・経理」などが最も
5 多くなっています。「人事・労務管理・ 人材育成」 については、地域統括会社の機能として期待した ものの、あまり効果を生まなかったケースが多い ようです。ASEAN は多種多様な民族・宗教の集ま りであり、国間の較差も大きい中で、共通の人事 評価システムなど、労務管理が思いのほか難しい ということもあるようです。 また、シンガポールの人件費やオフィス賃料含 む「コストの上昇」、「駐在員のビザ取得の厳格化」 は地域統括会社を維持するうえで、懸念事項とな っています。バックオフィス業務やマーケティン グ業務などは、一部、他の国に移管するなどの対 応に迫られている企業もあります。 最後に、日本ではタックスヘイブン税制が 2018 年以降、改正となる予定ですが、この改正により 「受動的所得(注 5)」の範囲が拡大することになり ます。統括会社が、現行法により同税制の適用除 外を満たしている場合でも、新制度の下で合算課 税される「受動的所得」があるかどうかの検討を する必要が出てくる企業もあるかもしれません。 (注 2)条件を満たした外国子会社から受け取る配当額の 95% 相当額を益金不算入にできる制度 (注 3)タックスヘイブン対策税制において、実態を持ってシン ガポールで事業を行っているという同税制の適用除外要件を満た した場合は、日本での合算課税を免除されるという制度の導入。 (注 4)ジェトロ「アジア大洋州地域における日系企業の地域統 括機能調査報告書」 (注 5)自ら活動せずとも得ることが可能な所得、例として、株 式保有割合が 25%未満の配当、通常業務で生じるもの以外の利子、 有価証券の貸付など。 5. 国際税務の基礎知識 日本と海外に拠点がある場合、どの国で 法人税が発生しますか? ① 日本の「内国法人」である場合、世 界全体で得た所得に対して、日本で 課税されます。加えて、海外での所 得については、海外で課税されます (二重課税)。 ② 二重課税をさけるため、「外国税額 控除」等の制度が認められていま す。 内国法人とは 日本の「内国法人」か「外国法人」で、税務上の 取り扱いが異なります。日本における「内国法人」 と「外国法人」は、以下の基準により区分されま す。 項目 内容 内国法人 日本の本土内に、本社・本店を登記 している企業 外国法人 上記以外の企業 内国法人への課税 内国法人に対しては、日本だけでなく、「世界中 で稼いだ所得を合わせて日本で課税」されます。 また、日本の内国法人が海外に支店を持ってい る場合、海外支店の所得については、海外でも課 税されます。 日本からは、日本に守られている以上どこで稼 ごうと税金を払ってほしいという視点、海外から は、場所を提供したので場所代は負担して欲しい、 という見方です。 内国法人の課税範囲をまとめると、以下のとお りです。色付きの部分が、二重課税となります。 日本の法人税 海外の法人税 日本での所得 課税 非課税
6 海外での所得 課税 課税 たとえば、以下のように日本・海外での二重課税 が発生するケースがあります。 次号では、「配当金」に関する二重課税の防止 制度からご説明していきます。 (税理士法人みらいコンサルティング) 6. ニュース 下記事項へのお問い合わせは、大久保〈 [email protected]〉までお知らせください。 案件情報 【BM 案件 マレーシア No.19】
事業内容:けい砂(Washed Silica Sand)の販売先 を探している。
コメント:50,000~100,000MT(Metric Ton)ごと
の発注。マレーシア産。 (内容若しくは ASEAN に関するお問合せ) Mirai Consulting Malaysia SDN BHD [email protected] 本ニュースレターは 2017 年9月末現在の 情報に基づいて作成されたものであり、情 報提供のみを目的としています。一般的に 信頼できると思われる情報に基づき作成し ておりますが、その信憑性・正確性を保証 するものではありません。本資料の全部又 は一部を引用、複写、転送されることはご 遠慮いただきますようお願い申し上げます。 日本 海外 日本本社 所得 100 100+50=150 日本で課税 海外支店 所得 50 50 海外で課税 海外の所得 50 が 二重課税 みらいコンサルティングの ASEAN ネットワーク
≪シンガポール・ジャパンデスク≫ Reanda Adept PAC 内 ≪インドネシア・ジャパンデスク≫ Reanda Bernardi 内
≪ベトナム・ジャパンデスク≫ Leadco Legal Counsel(Leadco)内 ≪フィリピン・ジャパンデスク≫ Somera Penano & Associates 内 ≪ミャンマー・ジャパンデスク≫ U Min Sein Law Business 内
≪カンボジア・ジャパンデスク≫ REANDA LLKG(Cambodia) Co., Ltd 内 ≪マレーシア現地法人≫ Mirai Consulting Malaysia SDN BHD 中国その他の海外ネットワーク(https://www.miraic.jp/overseas/) 内容若しくは ASEAN に関するお問合せ([email protected])