凶器注目効果における凶器の典型性の影響 [ PDF
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(2) 版 UWIST 気分チェックリスト JUMACL(白澤・石田・箱. を入れ, 写っていない項目についてはチャックを入れな. 田・原口, 1999)を実施した。さらに記憶実験で得られた. いイエス/ノー再認課題を用いた。 質問項目のうち実際に. 結果が文脈不一致度の影響と交絡することを避けるため. 画像中に写っていたのは凶器情報, 周辺情報いずれも質. に刺激中の凶器について文脈不一致度評定を求めた。. 問項目の半数であり, 残りの半数は実際には画像中には 写っていない項目であった。実際に写っていた項目とし. 方法 参加者 記憶実験には大学生及び大学院生 39 名が参 加した。. ては凶器情報では指輪や絆創膏などであり, 実際に写っ ていなかったのはブレスレットや包帯などである。周辺 情報についてはノートパソコンや携帯電話などが実際に. 刺激 12 枚 1 組で構成される一連のストーリーを描い たスライドが用いられた。刺激は一人の男性が女性のマ ンションを襲撃し, 女性を脅して金品を強奪する犯行シ. 写っていた項目であり, テレビや観葉植物などが実際に は写っていない質問項目として設定された。 文脈不一致度評定. 本実験で得られた結果が文脈不. ーンの内容が描かれた。10 枚目のスライドがターゲット. 一致度による影響を受けているかを確認するために質問. 画像であり, 男性が凶器を持って女性を脅迫する様子が. 紙により実施された。. 描かれている。ターゲット画像で男性が持っている凶器 の種類のみが条件間で異なり, 典型性高条件では包丁,. 結果. 典型性中条件ではレンチ, 典型性低条件では本がそれぞ. 覚醒度の評価 JUMACL の緊張覚醒尺度の平均評定. れ男性の手に持たれていた。 装置. 実験は全て同じ実験室で実施され刺激の呈示. 値を Fig, 1 に示す。典型性(典型性高条件, 中条件, 低条 件)×JUMACL 回答時期(刺激呈示前, 刺激呈示後)の 2. 中は暗室であった。刺激は MITUBISHI 社製のパーソナ. 要因分散分析を行った。その結果, 凶器の典型性及び. ルコンピュタを用いて 21 インチのディスプレイモニタ. JUMACL の回答時期に有意な差はみられなかった(F(2,. に映し出された。また刺激の呈示には Microsoft Power. 36)=1.99);(F(1, 36)=1.35)。この結果は本実験で参加者が. Point2010 が使用された。. 目撃した刺激には参加者の情動を喚起する効果はなかっ. 手続き 参加者はディスプレイモニタから約 60cm の. たことを示唆している。. 位置に着席し, JUMACL に回答した。その後, 刺激観察 後に画像に関する印象をお聞きしますと教示をし, 刺激 の呈示を開始した。刺激の観察を終えた参加者は再び JUMACL に回答した。その後, 本実験が記憶実験であっ たことを明かし, イエス/ノー再認課題を実施した。その 後, 質問紙調査により刺激中の凶器の文脈不一致度など に回答を求めた。 覚醒度の評価. 実験参加者の覚醒度を測定するため. に, 日本語版 UWIST 気分チェックリスト JUMACL(白 澤・石田・箱田・原口, 1999)を用いた。JUMACL は緊 張 覚 醒 (Tense Arousal) 及 び エ ネル ギ ー覚 醒 (Energetic Arousal)の二つの尺度から構成されており, 7 件法によ. Fig.1 JUMACL の平均評定値. る自己報告に基づいて感情状態を測定する。本実験では これらの尺度のうち暴力シーンなどを目撃することで上. 再認成績の比較 再認成績は凶器情報, 及び周辺情報. 昇するとされる(大上・箱田・大沼・守川, 2001)緊張覚. に分けて条件ごとに正再認率, 誤再認率及び d ´(ディ. 醒尺度を実験参加者の情動的覚醒度を測定するための指. ー・プライム)が算出された。. 標として用いた。 再認記憶課題. 正再認率 凶器情報及び周辺情報の正再認率をそれ 再認記憶課題は凶器を持った男性の. ぞれ Fig.2, Fig.3 に示す。凶器情報, 周辺情報それぞれで. 手元に関する質問(以下, 凶器情報と称する)が 6 問, 及. 典型性の 1 要因分散分析をしたところ有意差はみられな. び室内などの背景に関する質問(以下, 周辺情報と称す. かった(F(2, 36)=0.21; F(2, 36)=0.81)。. る)が 22 問で構成された。 ターゲットとなる 10 枚目の画 像に関して画像中に写っていた項目についてはチェック.
(3) d´(ディー・プライム) 正再認率及び誤再認率では 条件間の差はみられなかった。 しかしイエス/ノー再認課 題において正再認率と誤再認率のみで再認の正確性を測 定するのは不十分である。 イエス/ノー再認課題ではどの 程度の確信度でイエスと反応するかの判断基準は参加者 に委ねられている。低い確信度で積極的にイエスと反応 する参加者は正再認率, 誤再認率どちらも高い値となる し, 高い確信度でしか反応しない参加者は正再認率, 誤 再認率どちらも低い値となる。しかしd´(ディー・プラ Fig.2 凶器情報の正再認率. イム)を用いることでこのような参加者の反応バイアス を相殺して高い精度の再認成績を求めることが可能とな る。そこで正再認率及び誤再認率よりd´(ディー・プラ イム)を算出した(Fig.6, Fig.7) 。算出されたd´(ディー・ プライム)で 1 要因分散分析を行った。その結果, 凶器情 報では有意差はみられなかったが(F(2, 36)=0.09), 周辺条 件において典型性の単純主効果がみられた(F(2, 36)=3.62, p<.05)。そこで Ryan 法による多重比較を行ったところ典 型性高条件と典型性低条件の間に有意差がみられた。. Fig.3 周辺情報の正再認率. 誤再認率. 凶器情報及び周辺情報の誤再認率をそれ. ぞれ Fig.4, Fig.5 に示す。また誤再認率についても正再認 率と同様の方法で分散分析を行ったが, こちらも有意差 は み ら れ な か っ た (F(2, 36)=0.26; F(2, 36)=2.21) 。. Fig6. 凶器情報のd´(ディー・プライム). p<.05. Fig4. 凶器情報の誤再認率. Fig.7 周辺情報のd´(ディー・プライム). 文脈一致度の評価. 刺激の観察後の質問紙調査によっ. て得られた文脈一致度評定の結果について凶器の典型性 Fig.5 周辺情報の誤再認率. の 1 要因分散分析を行った。その結果, 単純主効果が有 意であった(F(2,36)=3.85, p<.05)。また Ryan 法による多.
(4) 重比較を行ったがそれぞれの条件の間に有意な差はみら. とから, 参加者が本を凶器として認識していなかったと. れなかった。. いう可能性は低い。また典型性中条件と典型性高条件, 及び典型性低条件の間に有意差がなかった点も問題にあ 考察. 典型性高条件と典型性低条件の再認成績の間に有意 差があったことから凶器の典型性が目撃者の記憶に影響. げられる。これは参加者の人数が少なかったために典型 性の差がもっとも顕著であった典型性高条件と典型性低 条件の間にのみ有意差がでたと考えられる。. を及ぼしている可能性が示唆された。本実験では全ての. これらの問題点を解決するために, 今後は統制条件を. 条件のターゲット画像に凶器が含まれていたことから目. 加えた実験デザインで, より多くの参加者を対象に実験. 撃された凶器の典型性によって目撃者の記憶成績に及ぼ. を行うことが必要である。また本研究の結果は凶器注目. す影響の程度は異なると考えられる。. 効果の生起に凶器の典型性が影響している可能性を示し. また JUMACL により測定された緊張覚醒が刺激呈示. たが, どのようなプロセスで目撃者の記憶成績が低下し. 前と刺激呈示後で変化していなかったことから, 本実験. ているのかについては明らかになっていない。凶器に対. でみられた記憶成績の差は先行研究(Johnson & Scott,. する注視回数や注視時間(Loftus et al, 1987), あるいは凶. 1976)で凶器注目効果を生起させるとされてきた情動喚. 器を目撃することによる有効視野の縮小(大上ら, 2001). 起によるものではないと考えられる。本実験では刺激観. といった視覚的プロセスによるものなのか, あるいは記. 察前後で JUMACL の結果に差がなかった。これは大上ら. 憶の段階に何らかの影響を及ぼしているのかは検討が必. (2001)と異なる結果である。その理由としては本実験で. 要である。. 使用した刺激が静止画であり音声などが含まれていなか ったこと, さらに出血シーンや直接的な暴力シーンが刺. 主要引用文献. 激中に含まれていなかったことから本実験で使用した刺. Easterbrook, J.A.(1959). The effect of emotion on cue. 激は参加者の情動を充分に喚起させるに到らなかったと. utilization. 考えられる。さらに文脈不一致度評定でも条件間で有意. Psychological Review, 66, 183-201.. and. the. organization. of. behavior.. 差がなかったことから本実験で得られた記憶成績の差は. Johnson, C., & Scott, B. (1976) Eyewitness testimony and. Pickel(1999)で主張された凶器の文脈不一致度の影響に. suspect identification as a function of arousal, sex of. よるものでもないと考えられる。. witness, and scheduling. また本実験では凶器情報の再認成績に有意差はみら れなかった。その理由としては凶器情報では周辺情報に 比べて質問項目の設定が困難であり, 項目数が 6 問と少. of interrogation. Paper presented at the meeting of the American Psychological Association meeting. Loftus, E.F., Loftus, G. R., & Meesso, J.. なく, 記憶項目も指輪や絆創膏といった細かな情報のみ. (1987). Some facts about weapon focus.. になってしまったため課題難易度が高くなりフロア効果. Low and Human Behavior,11, 55-62.. が生じた可能性が考えられる。 多くの先行研究は凶器に関する記憶成績と周辺情報 に関する記憶成績はトレードオフの関係にあると報告し. Lorraine Hope& Daniel Wright.(2006). Eyewitness Identification Simulating the Weapon Effect. Cognitive Psychology, 21, 951-961. てきたが, 本実験の結果は典型性の高い凶器を目撃した. 大上渉・箱田裕司・大沼夏子・守川伸一 (2001). 不快な. 参加者が, 典型性の低い凶器を目撃した参加者に比べて. 情動が目撃者の有効視野に及ぼす影響 心理学研究,. 周辺情報の記憶成績が低下するという結果のみを示した。. 72, 361-368.. また本実験には検討しなければならない問題点がい. Pickel, K. L. (1999). The influence of context on the weapon. くつかある。それは典型性低条件を観察した参加者が本. focus effect. Low and Human Behavior, 23, 299-311.. を凶器として認識していたのかという点である。典型性. 白澤早苗・石田多由美・箱田裕司・原口雅浩 (1999). 記. 低条件の参加者が本を凶器として認識していなかったな. 憶検索に及ぼすエネルギー覚醒の効果 基礎心理学. ら先行研究(Loftus et al, 1987)で得られた凶器が存在しな. 研究, 17. 93-99.. い条件において周辺情報の記憶成績が高くなるという結. Rosch, E.(1975). Cognitive representations of semantic. 果を再確認したに過ぎない。しかし本実験の参加者は再. categories. Journal of. 認記憶課題の後の質問紙調査に男性が手に持っていたオ. General,105,192-233.. ブジェクトを凶器として認識したうえで回答していたこ. Experimental Psychology :.
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