心的特性及び身体的特徴の起源に関する素朴因果モデルの発達的変化 [ PDF
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(2) 生み(1要因). まれ,もう一方の夫婦に育てられた赤ん坊の物語を聞か. 育て(1要因). 両方(2要因). どちらでもない. 100. せた.その後,その赤ん坊の特性が①生んだ夫婦にだけ. 選 択 頻 度 の 割 合. 似る(生み1要因モデル) ,②育てた夫婦にだけ似る(育 て1要因モデル) , ③両方の夫婦に似る (2要因モデル) , ④どちらの夫婦にも似ない,といった4つの因果モデル の絵を提示し, 最も適切であると思うものを選択させた. 1.3結果と考察. 80 60 40 20 0 1年生. 説明要因の内容,数に注目し,それぞれ学年間でモデ. 2年生. 3年生. 5・6年生 大学生. Fig 3 身体的特徴における各年齢群のモデル選択頻度の割合. ル選択にどのような違いがあるかを心的特性・身体的特. 本研究により,3年生頃までは特性・特徴についての. 徴で調べた結果(直接確率計算法) ,以下のことが明らか になった.. 原因を1つの変数に焦点化し,原因・結果の1対1対応. ① 説明要因の内容の発達的変化. で理解しているのに対し,5・6年生以降では複数の原. 1.心的特性(Fig1,2)では1,2年生は生みを説明要. 因を並列に用いてその相互作用で現象を理解するように. 因とする傾向が強いが,3年生以降は育てを説明要. なることが新たに明らかになった.ただしこの結果から. 因とするようになる.. は,完全に1つの変数しか考慮できない状態から複数の. 2.身体的特徴(Fig3)では2年生以降一貫して生みを. 変数を考慮できるようになるといった考慮できる変数の 数の発達的変化なのか,それとも生みと育て両方を考慮. 説明要因とする傾向が強い. Heyman ら(2000)の結果とほぼ同様に,低学年の. した上で,特性・特徴に対する影響力が大きい方のみを. 多くは心身の区別なく,特性・特徴が遺伝によって決ま. 原因とみなす考え方から,影響力があると考える変数全. ると考えるが,3年生頃から心的特性は環境,身体的特. てを原因とみなす考え方へという判断プロセスの発達的. 徴は遺伝という心身で異なる原因を考えるようになる. 変化なのかについては明確に答えを出すことは難しい.. ことが示された.. したがってこの点に関しては研究2で明らかにする.. ② 説明要因数の発達的変化. 2. 研究2. 1.心的特性(Fig1,2)では,3年生までは特性を1. 2.1 問題と目的. 要因で説明する傾向が強く,5・6年生以降から2. 研究1で示された1要因か2要因への因果モデルの. 要因(生みと育ての相互作用)で説明する傾向が増. 変化は考慮できる変数の数の発達的変化によるものなの. 大する.. か,判断プロセスの発達的変化によるものなのかを明ら かにする.そのため,研究2ではそれぞれの説明要因に. 2.身体的特徴(Fig3)では学年を通じて1要因で説. ついて被験者に特性・特徴に対する影響力を評定させる.. 明する傾向が一貫している. 生み(1要因). 育て(1要因). 両方(2要因). もし完全に1つの要因しか考慮していないのであれば,. どちらでもない. その要因以外の要因については影響力を認識していない. 100. 選 択 頻 度 の 割 合. はずである.. 80 60. また研究1では特性・特徴の説明要因として遺伝,環. 40. 境といった受動的要因のみが設定されていた.しかし,. 20. 特に知的特性では自分自身の努力が重要であるというよ. 0 1年生. 2年生. 3年生. 5・6年生. うに能動的要因の重要性が大きく認識されていたかもし. 大学生. れない.したがって研究2では自分自身の要因も含め,. Fig 1 性格的特性における各年齢群のモデル選択頻度の割合. 生み,育て,自分自身の影響力がどのくらいであると認 生み(1要因). 育て(1要因). 両方(2要因). どちらでもない. 識されてるのかを調べる.. 100. 選 択 頻 度 の 割 合. 80. 2.2 方法. 60. ,3年生(M=9 被験者:小学2年生(M=8 歳 3 ヶ月). 40. ,5年生(M=11 歳 3 ヶ月) ,4年生(M=10 歳 4 ヶ月). 20. .各24名.計 歳 3 ヶ月) ,6年生(M=12 歳 2 ヶ月). 0 1年生. 2年生. 3年生. 5・6年生. 120 名.. 大学生. 実験に用いた特性:心的特性は性格的特性(優しさ,積. Fig 2 知的特性における各年齢群のモデル選択頻度の割合. 2.
(3) 極さ)と知的特性(賢さ,勤勉さ) ,身体的特徴は足の大 生みの親. きさであった.. 育ての親. 自分自身. 3.5. 手続き(乳児入れ替わり課題):基本的に研究1で用い た乳児入れ替わり課題と同じであったが,被験者は因果. 3.0. モデルを選択するのではなく.当該の特性・特徴に対す. 評 2.5 定 値 2.0. る生みの親,育て親,自分自身の要因の影響力を5段階 (0∼4)で評定するようにした.. 1.5. 3.3結果と考察. 1.0. 性格的特性(Fig 4) ,知的特性(Fig 5) ,身体的特徴(Fig. 2年生. 6)それぞれで各説明要因の影響力ついての評定値が発. 3年生. 4年生. 5年生. 6年生. Fig 6 身体的特徴に対する各説明要因の平均評定値. 達にともないどのように変化するのかを調べるために3 研究2の結果から,2年生でも促されれば自分自身を. (要因)×5(学年)の分散分析を行った. 説明要因の影響力についての認識の発達的変化. 含め複数の要因を特性・特徴の規定因として認識してい. 1.性格的特性(Fig 4) ,知的特性(Fig 5) ,身体的特. ることが明らかになった.それにもかかわらず,3年生. 徴(Fig 6)において,全ての学年で3つの要因にい. 以前では各要因間の影響力の差がかなり小さくても自発. くらかの影響力を認識している.. 的には1つの要因(おそらく最も影響力の大きい要因). 2.Fig 4,5より,性格・知的特性に対する生みの影響. のみで特性・特徴を説明するという判断プロセスを持っ. 力の強さは2年生から6年生までに小さく認識され. ていることが考えられる.そして5・6年生以降は特性・. るように変化するが,育ての影響力は4年生になる. 特徴を説明するためにある程度影響力がある全ての要因. 頃までに大きく認識されるように変化する.自分自. を自発的に用いるようになるという判断プロセスの発達. 身要因については学年を通じて大きな変化は見られ. 的変化があることが明らかになった.また因果モデルの. なかった.. 変化は説明要因間でその影響力の相対的な強さが変化す. 3.身体的特徴(Fig 6)では生みが他の要因よりも影響. ることによって生じるという可能性が示唆された. ではなぜ3年生頃に心的特性では育て,身体的特徴で. 力が強く認識されていた.. は生みというように異なる特性・特徴で異なる原因を考 生みの親. 育ての親. 自分自身. えられるようになるのだろうか.これは彼らの判断を支. 3.5. えているであろう特性形成についての信念の変化が大き. 3.0. く影響している可能性が考えられる.研究3ではこの点. 評 2.5 定 値 2.0. について検討する. 3. 研究3 3.1 問題と目的. 1.5. 研究3では1∼3年生を対象とし,乳児入れ替わり 1.0 2年生. 3年生. 4年生. 5年生. 課題での選択の背後に特性形成に関するどのような信念. 6年生. があったのか,従来の研究で暗黙の前提となっていた選. Fig 4 性格的特性に対する各説明要因の平均評定値. 択の背後にある信念の解釈の是非について検討する.こ こでは特に,①身体的特徴において生みの親を選択した 生みの親. 育ての親. 自分自身. 時,子どもが‘特徴が環境の影響によって形成されず,. 3.5. 生まれながら親の特徴を受け継ぐ’といった認識に相当. 3.0. する信念を持っていたのか,②心的特性について育ての. 評 2.5 定 値 2.0. 親を選択した時, ‘特性が後天的に環境の影響によって形 成される’といった認識に相当する信念を持っていたか について検討する.方法としては①を検討するために子. 1.5. どもが少なくとも後天的に親の特徴が変化しても子の特 1.0 2年生. 3年生. 4年生. 5年生. 徴はその影響を受けない(特性不変の原理)という信念. 6年生. を持っていたかを調べる.②については後天的な親の特. Fig 5 知的特性に対する各説明要因の平均評定値 3.
(4) 性の変化によって子の特性も影響を受け変化する(特性. をもっておらず,そのような信念に基づいて乳児入れ替. 可変の原理)という信念を持っていたかを調べる.. わり課題で反応するのは3年生以降であることが示唆さ. 3.2 方法. れた.1・2年生はまったく異なる信念に基づいて反応. ,2年生(M=7 被験者:小学1年生(M=7 歳 1 ヶ月). していたと考えられる.3年生になるころに異なる特. .各 20 名.計 歳 10 ヶ月) ,3年生(M=8 歳 11 ヶ月). 性・特徴で異なる原因を考えられるようになるのは,子. 60 名.. どもが特性の可変性に注目し,1・2 年生までに持ってい. 実験に用いた特性:心的特性は性格的特性(優しさ)と. る特性形成に関する信念が可変性の観点から再構造化さ. 知的特性(賢さ) ,身体的特徴は足の大きさであった.. れることによるのかもしれない.. 手続き(乳児入れ替わり課題,特性判断課題):研究1. Table1 乳児入れ替わり課題において二人の赤ちゃんに対して一貫した選択を 行わなかった被験者の人数. と同じ乳児入れ替わり課題と新たに被験者の特性形成に. 性格的特性. 知的特性. 身体的特徴. 関する信念を調べるために特性判断課題を用いた.特性. 1年生 2年生 3年生. 1年生 2年生 3年生. 1年生 2年生 3年生. 乳児入れ替わり課題 不一致回答. 判断課題では被験者の信念が特性不変の原理なのか,特 性可変の原理なのか,あるいはそのどちらでもない(親. 10. 10. 6. 7. 7. 4. 12. 10. 4. Table2 乳児入れ替わり課題で生みの親を選択した被験者において特性不変原理の 信念及びそれ以外の信念を持っていた者の人数. 子類似の原理)のかが調べられた.そして乳児入れ替わ り課題の選択と特性判断課題で明らかになった被験者の. 性格的特性. 知的特性. 身体的特徴. 1年生 2年生 3年生. 1年生 2年生 3年生. 1年生 2年生 3年生. 特性形成に関する信念の対応を調べた.. 親子類似の原理 不一致混乱. 2. 4. 2. 1. 3. 3. 2. 2. 2. 3.3結果と考察. 特性不変の原理. 3. 1. 1. 6. 3. 1. 4. 3. 10. 乳児入れ替わり課題で物語に登場する二人の赤ちゃ. Table3 乳児入れ替わり課題で育ての親を選択した被験者において特性可変原理の 信念及びそれ以外の信念を持っていた者の人数 性格的特性 知的特性 身体的特徴. んに対して一貫して同じ選択を行わなかった被験者の人 数を学年ごとに示したのが Table1 である. ここに示され. 1年生 2年生 3年生. 1年生 2年生 3年生. 1年生 2年生 3年生. 親子類似の原理 不一致混乱. 3. 3. 3. 3. 5. 5. 0. 3. 1. ある程度安定した信念をもっていないことを意味する.. 特性可変の原理. 2. 2. 8. 3. 2. 7. 2. 2. 3. この結果から,そもそも1・2年生では特性・特徴が生. 4. 総合考察. る被験者は特性形成に関して生みもしくは育てといった. みや育てによって規定されるといった信念を明確に持っ. 本研究では心的特性及び身体的特徴の起源に関す. ていない被験者が半数近くいることわかった.そういっ. る認識の発達について,因果モデルの変化のみでなく,. た信念がある程度安定して獲得されるのは3年生頃から. 説明要因の選択・判断プロセス,それらの背後にある信. であるといえる. 乳児入れ替わり課題において生みの親,育ての親を選. 念の変化も含んで検討してきた.その結果,従来の知見. 択した時に特性不変または特性可変の信念を持っていた. に加え,低学年から高学年にかけて説明要因数が1つか. 被験者の人数を各特性・特徴ごとに学年ごとに示したの. ら複数へと変化するが,その背後には3年生ころまでは. が Table2,3である.ここからは以下のことが明らか. 完全に1つの要因しか考慮しないのではなく,複数の要. になった.. 因を自発的に説明に用いることができないといった判断. 1. Table2から,身体的特徴では乳児入れ替わり課題 で生みの親を選択していても,何人かの被験者は特. プロセスがあることが明らかになった.それが高学年に. 性不変の信念を持っていなかった.特性不変の信念. なるころには自発的に複数の要因を用いた説明が可能に. を持った被験者が増えるのは3年生頃であること. なるように変化する.またそれと並行して3年生頃に特. が明らかになった.. 性形成に関する信念が特性の可変性の観点から大きく変. 2. Table3から性格的・知的特性で育ての親を選択し. 化している可能性が示唆された.今後本研究で見られた. た被験者も1・2年生では半数以上が特性可変の信 念を持っておらず,特性可変の信念を持った被験者. ような認識の発達的変化がどの程度領域一般のものであ. は3年生で多くなることが明らかになった.. ったのかについて検討することが望まれる.. 以上のことより,従来の研究において乳児入れ替わり. 引用文献. 課題の選択から解釈されていた子どもの特性形成に関す. Heyman, G.D., & Gelman, S.A.. 2000. Beliefs. る信念は必ずしも妥当であったとは言えないことが考え. about the origins of human psychological traits.. られる.特に1・2年生では特性不変や特性可変の信念. Developmental Psychology, 36, 663−678. 4.
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