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Academic year: 2021

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(1)

雑誌名 東西南北

2013

ページ 260‑263

発行年 2013‑03‑19

URL http://id.nii.ac.jp/1073/00001990/

(2)

浅見克彦

『響きあう異界』

せりか書房/2012年発行/302頁/2,800円(税別)

ISBN978-4-7967-0311-6

サブタイトルが 3 つある。「始源の混沌、神の深淵、声の秘義」。

本書はまず熊野詣を「疑似の死」を体験するメディア、「異界 とつうじあう体験にほかならなかった」と歩き始める。旅は沖 縄の伊江島の洞窟へむかう。洞窟を異界の門として捉え、そこで行なわれる儀式 の「空間的の確かさ」をさまざまなテキストとフィールドに確かめて行くのが本 書のねらいのひとつだ。著者の道行きは文学、映画、哲学と幅広く、空海からウ ォーホルまで、デリダ、フッサールにふれた次には川上美映子が登場する。まさ に混沌と深淵に導かれていくのだ。本書のエピソードに、ウォーホルの《エンパ イア》を札幌から渋谷までわざわざみにきて、映画館の闇に動かない映画を確認 する著者がいる。そこに異界の闇が豊かな想像力をもって現れる瞬間に読者もま た立ち会うのだ。

井上輝子

『新・女性学への招待──変わる/変わらない 女の一生

有斐閣選書/2011年発行/280頁/1,800円(税別)

ISBN978-4-641-28124-0

社会学者の著者は1970年代初頭以来、第二波フェミニズムの 世界的な動きとともに歩みつつ、女性学という学問領域を開拓 し、かつ並行して実社会において行政の重い腰を後押しして諸 施策を押し進める実践活動に尽力してきた。初版『女性学への招待』は1992年 に刊行されたが、本書はその後20年間の社会変化を経た現在、最新データに基づ いて現状を批判的に分析し、解決への道を具体的に探る書として、全面的に書き あらためられたものである。標題に「招待」というとおり、幅広い読者にとって 考えるべき、ジェンダーをめぐるさまざまな問題の所在を明らかにしてくれる。

各章は、幼児期から学校生活、職業、性と恋愛、結婚、出産と育児、高齢期と、

ライフステージごとの章立てに沿って、女性が女性であるがゆえに向き合う諸問 題を取り上げ、大半の日本人の頭にこびりついている性別役割分業の観念とそこ から生じる具体的な性差別的制度や振る舞いを客観的に振り返る機会を与えてく れる。

(3)

髙坂康雅

『劣等感の青年心理学的研究』

風間書房/2012年発行/195頁/5,500円(税別)

ISBN978-4-7599-1900-4

劣等感は誰しもが経験する感情であろう。とくに青年期には劣 等感と無縁であったという人はほとんど皆無といえよう。劣等 感とは、他者あるいは自ら描く理想像と比較して自身の劣って いることを認知したときに持つ不快な感情ということができる。これは一見自明 であるようにも思われるが、だれと比較するか、なにを比較するか、自身をどの ように認知するか、その要因はたいへん主観的であって、それだけに劣等感を感 じる本人ばかりか、それを研究する研究者によってもそれぞれの劣等感観がある ようだ。

本書は中学生・高校生・大学生を対象とした質問紙法調査を統計的に分析する ことにより、青年たちが抱く劣等感の要因・反応行動・パーソナリティとの関 連・解決方法を実態に即して分析している。このような研究成果は青年たち自身 の自己理解にとって、また教師たちの指導にとっても資するところ大きいと思わ れる。

竹信三恵子

『ルポ賃金差別』

ちくま新書955/2012年発行/222頁/760円(税別)

ISBN978-4-480-06660-2

本書で扱われているのは、賃金〈格差〉ではなく賃金〈差別〉

である。90年代以降、グローバル化や規制緩和がもたらしたバ イト、パート、派遣、契約社員に降り掛かる労働条件の厳しさ は、今日あらゆる職場に当たり前になってしまった。「当たり前」の状況が孕む 危機を、著者は、訴訟の例などをあげつつ、さまざまな業態における差別の実態、

特に女性に関する差別の厳しさを報告している。ジャーナリストのフットワーク の良さが各例証に表れ、1985年の男女雇用機会均等法の基盤に帰ることも忘れ ない姿勢をみせる。現在の賃金格差には、コース別では「補助」、能力では「協 調性」、パートでは「家計補助」、その果てに「違う会社の人だから、ウチで一緒 に働いていても待遇が低くて当たり前」という「呪文」がまかりとおると指摘す る。当たり前のなかで進む、格差をささえる差別の構造は、やがて社会そのもの の疲弊をもたらすこと、その事実にせまるルポルタージュである。

(4)

小関和弘

『鉄道の文学誌』

日本経済評論社/2012年発行/376頁/3,400円(税別)

ISBN978-4-8188-2210-8

老川慶喜・小風秀雄監修「近代日本の社会と交通」全15巻の 内、第14巻にあたる。経済史や社会史からのアプローチが多 い本シーリズのなかでも異色な 1 冊といえよう。登場する作家 は、芥川龍之介、天沢退二郎、内田百閒、石川啄木、もちろん宮沢賢治や浅田次 郎、西村京太郎も登場する。文学に表れる駅や車窓、踏切、ときに汽笛、鉄道員、

轢死までさまざまなモチーフが交錯していく。やはり圧巻は『銀河鉄道の夜』に ふれている、第 7 章幻想/空想の中の鉄道だ。汽車は「記憶のつまった〈乗物〉」

として、著者はさらに賢治のイメージを引き受けた作品を辿っていく。そこに私 たちは「鉄道の車室の空間が、独特の光に満ち、さらにそれに対する独特の対応 や解釈をもたらす」イメージの織物を発見する、その楽しさを本書は伝えている。

余田真也

『アメリカ・インディアン・文学地図

──赤と白と黒の遠近法

彩流社/2012年発行/470頁/4,800円(税別)

ISBN978-4-7791-1776-3

アメリカは赤い人々、白い人々、黒い人々、(それから黄色い 人々も含めて)によってつくられてきた国である。にもかかわ らず、その歴史や文学の表舞台に立ってきたのはほとんどが白い人々、とくに

WASP

(White Anglo-Saxon Protestants)であり、アメリカ・インディアンと呼称され るこの大地の歴史の基底をつくってきた人々が作家として文学の舞台に登場する のは、1890年前後──それは白人による軍事的制圧が完了し、インディアンが 内政の対象となる時代──以降である。

合衆国政府による強力な文明化・同化政策のなかで、民族と文化のアイデンテ ィティを守りつつ、いっぽうでは近代文明を受容し生活様式を変貌させつつ、両 方向のベクトルのせめぎ合いのなかでアメリカ人としての存在と独自の文学を創 造してきた。

本書は20世紀初頭のウィリアム・カーロス・ウィリアムズから1990年代以後 のシャーマン・アレクシーにいたる北米文学の先住民表象に焦点をあてて、アメ リカ・インディアン文学の詳細かつ俯瞰的なマップを提示している。

(5)

いとうたけひこ 編著

『コミュニティ援助への展望』

角川学芸出版/2012年発行/234頁/1,900円(税別)  ISBN978-4-04-653254-1

本書は和光大学総合文化研究所のプロジェクト「コミュニティ 支援への理論的・実践的アプローチ」(2009〜2010)の研究成 果をまとめたものである。コミュニティ援助とは、人間発達へ の支援とくに不利な状況にある人への支援を、個人レベルだけでなく、コミュニ ティレベルで実現しようとするものであり、「孤立化し、分断された現代人の現 状を克服し、コミュニティ感覚にもとづいた人間関係の中での、一人一人への包 括的、共同性を重視した援助のあり方」が本研究において模索されている。本書 は、教育哲学、教育心理学、教育方法論、精神看護学、青年心理学等さまざまな 分野からのアプローチの統合をめざし、以下の各部は、現代日本の現実に実践的 に対応するという課題とともに、そこから一歩距離を置いて理論的なエビデンス を求めるという、両面からの検討が組み合わされている。

第 1 部「コミュニティ援助への展望」はいくつかの援助の事例とモデルの理論 的分析、第 2 部は精神障害者のコミュニティ「浦河べてるの家」における「当事 者が主人公」との考えにもとづいた実践の報告と当事者研究の創造力の分析、第 3 部は発達障害のある大学生にたいするコミュニティサポートの二つの事例とそ の評価、第 4 部は学校統廃合という困難の中で学校の共同体性をどうやって回復 するかという課題への取り組みが報告・分析されている。

参照

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