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虐待児童に対する社会的養護の概況と児童への継続的な対応

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(1)

虐待児童に対する社会的養護の概況と児童への継続的な対応

神奈川県社会福祉協議会 小野 智明

はじめに

現代社会 においては権利 を保有 しながらも、その権利が侵害される事例は後 を絶たない。

通常、権利の問題は、社会の制度 との関係 において保障 されているか否かが問われるもの であるが、児童の分野ではどうなのだろうか。

この 「 権利」 について子 どもたちにかかわるところで述べれば、「 児童の権利 に関する条 約」が

1989

1

1月、国連総会第

44

会期 において採択 され、日本 も

1994

5

月の国会 に おいて

194

番 目の締約国として批准の手続 きを終えている。この条約では 「 子 どもに対 し て特別な保護 を与える必要性」があるとされ、 また 「 極めて困難 な条件の下で生活 してい る児童が世界のすべての国に存在する」 としているが、 このことは日本国内において も例 外ではな く、残念なが らすべての子 どもの権利が守 られているとは言いがたい状況がある。

そのひとつに児童虐待がある。 これは、平成

12

年に 「 児童虐待の防止等 に関する法律」

が制定 された前後か ら児童相談所 に寄せ られる虐待 ケースが増加 していること、新 聞等 に 掲載 される虐待事件 について枚挙 に暇がないことなど、言 うまで もな く、喫緊に対応すべ き問題 といえる。このことか らも、「 極めて困難な条件の下で生活 している児童」が存在 し ていることが明 らかである。

この家庭内の児童虐待の問題 に対応するため、平成

12

年 に児童虐待の防止等 に関する法 律が制定 され、 さらに平成

19

年 に法改正が行 われ、 より介入等の権限や児童相談所の権限 が強化 されたことなどが主な社会的対応 として挙げられる。

だが、一方で、虐待事件は家庭 内に限 られていない。驚 くべ きことに、本来児童 を養護 すべ く児童養護施設等 における職員等 による虐待事件が顕在化 していることも事実である。

平成

21

年 に法改正が予定 されている 「 児童福祉法等の一部 を改正する法律案」の中には 「 施 設内虐待の防止」の条文 を制定す ることが検討 されている。このことか らも、施設内虐待

に対する社会的な対応 も早急に求められていると言 えよう。

本稿では、社会的養護が必要 となる背景要因の大 きなひとつである、虐待の問題 を取 り 上げるO前段 として、社会的養護の場である児童福祉施設や、現在検討 されている施策の 今後の方向性などを概観 した上で、家庭内 ・施設内双方の虐待の現状や課題 を述べ 、被虐 待児 に対する処遇のあ り方について考察 したい。

1

児童福祉施策の概要 と基本的視点

現在、児童福祉施策における社会的養護の体系 は、図表 1の とお り、大 きくは施設養護 と家庭的養護 にわかれ、一方の施設養護 には、乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治 療施設、児童 自立支援施設、地域小規模児童養護施設があ り、 もう一方の家庭的養護のサ

‑76

(2)

‑ビスは里親制度 と養子縁組 ・特別養子縁組制度 とい う枠組みになっている。

図表

1

社会的養護の体系図

I

! i I f

‡ I

I i

④l 児童自署 乳 〜 . " 一 . .

, i̲i=

三 瀬 ̲ ̲ 7 3 享 碍

穣異 革革驚…登至.

社会的養護の体系 と現状

厚生労働省

、2007より

この体系 に基づ くサービス利用の現状 をみると、平成

17

年 には、児童養護施設は

558

箇 所 となってお り、そこには約

3万 3

千人の児童が養護 されている ( 図表

3)

。 これに加えて 乳児院や児童 自立支援施設な どを合 わせ ると、施設で養護 されている子 どもは約

42

千 人 となっている。一方の家庭的養護 については、委託児童数

3,293

人 とみ られ、施設養護

に比べて 1割 にも満たないことがわかる。

この ように家庭的養護の受け皿が限 られている中、施設養護が担 う役割は大 きいが、こ の社会的養護 における問題点 として、相女は 「 社会的養護のための施設は、現在 は年齢や 子 どもの行動 によって分断 されている1 」 と述べている。年齢によって分断されることは地 域の さまざまな人々とのふれあいやそこか ら得 られる知恵、異世代か らの学びを得 られる 機会が奪 われることにつながるのである。そ して子 どもにとって必要な支援 を機能別に提 供 してい く体系 に転換 してい くことが大切であるとも述べている。

これ らの課題 をふまえ、今後 においては、厚生労働省の 「 今後の目指すべ き児童の社会 的養護体制 に関す る構想検討会 『中間とりまとめ

」に児童の養護への基本的な視点が端的 に記述 されている。それは、「 子 どもの養育 とは、この権利 を実現するため、子 どもが安全 で安心 して暮 らす ことので きる環境の中で、親 を中心 とす る大人 との愛着関係の形成 を基 本 とし、年齢 に応 じて子 どもの自己決定 を尊重 しつつ、個々の子 どもの状態 に配慮 しなが

ら、生活支援 ・自立支援 を行 ってい くもの」だ とい う。

(3)

この ような基本視点 を目指 して、児童養護施設ではさまざまな取 り組みが行 われている。

例 を挙げれば、保護者が入院や通院、冠婚葬祭 な どで一時的に子育てがで きな くなった場 合 に、児童養護施設 な どに預 け られる トワイライ トステイや子育 て支援 の一環で施設 を地 域に開放すること、あるいはケアの単位の小規模化 などである。

一方で、実際の児童養護施設では、子 どもをケア しつつ、育んでい くことの難 しさもあ るようだ。例 えば現場で施設長や児童相談所長 な どを長年つ とめた人たちの声 をつづ った 書 に、『 子 どもたち と歩 んだ 日々‑ かながわ ・児童福祉事業の奇跡‑』があるが、 この中で 語 られている一節 を紹介 したいo

「 職員教育の大切 さを痛感 しています。人間 を良 くす るには人間以外 にはいないのです よ

「 職員体制 を管理的に して、良い意味での 「 遊び」の部分がな くなって しまうとひずみ が出て くるのではないか と思 うのです

「 管理体制が整 えば整 うほ ど養護の質が落 ちてい

くように思えてな りません

2

これは一つ に児童福祉法や最低基準 に規定 された内容 を形式的 に実施 してい くだけでは、

社会的養護 を必要 とす る子 どもたちのケアが困難であることを言 い表 してい ると考 え られ る。家庭 に近い環境の中で愛着 関係 を形成 してい くことを基本 とす る考 えな らば、職員配 置の限界 や職員が児童 と関わ りをもつ時間が限 られている現状の中で複雑で多様化 したニ ーズ をもつ児童 に対す るケアを行 った り、その専 門性 をもった職員 を育成 しきれていない ジレンマ を抱 えざるを得 ないのではないか。

図表

2

里親制度の概要

里親制度 保護者のない児童または保護者に看護させ 養育を都道府県が里親に委託する制度 ることが不適当であると認められる児童の 登録里親数 委託里親数 委託児童数

(資料)福祉行政報告書 (平成17年度末現在) よ り

また、前述 の とお り、 よ り家庭 に近い環境 を目指すのであれば、当然、施設養護か ら家 庭的養護 とい うことになるが、 この家庭的養護の体制 にスムーズ に移行で きるのか とい う と、 これにも課題がある。実際 にその受け皿だけをみて も登録里親数

7,737

人 とい う数字 か ら、養護施設利用児童の

1

割程度の人数 しか受 け入れることがで きない とい う実態が浮 かび上が って くる ( 図表

2)

。今後 においては家庭的養護のサービス供給量 を増や してい く 一方で、施設養護型の施設 において家庭 に近い環境 をつ くりあげ られるような取 り組み を 拡充 し、両者 ともに家庭 に近い環境 を目指 してい くことが必要だ と思 われる。 また、 これ らの取 り組みにあたっては、「 里親、里親型 グループホーム等 の小規模 ケアを促進す るため、

施設がそのバ ックアップ機能 を果たす方向性 を もっ こと

3

」 も両者の機能 を融合 し、活用す る意味で有効 な方策であると考 えられる。

7 8‑

(4)

図表

3

児童 関連施設 の概 要

乳児院 児童養護施設 情 緒 障 害 児 短期治療施設 児 童 自立 支 援施設 自立 援 助 ホ ー 対象児童 乳児 (保健上、 保 護 者 の い な 軽 度 の情 緒 障 不 良行 為 を な 義 務 教 育 を終 安 定 した生 活 い児童、虐待 さ 害 を有 す る児 し、またはなす 了 した 児 童 で 環 境 の 確 保 そ れ て い る児 童 お そ れ の あ る あって、児童養 の他 の 理 由 に そ の 他 環 境 上 児 童 お よび 家 護 施 設 等 を対 よ り特 に必 要 擁 護 を要 す る 庭 環 境 そ の 他 処 した児童等 の あ る場 合 に 児童 (安定 した の 理 由 に よ り

は 、 幼 児 を含 生 活 環 境 の確 生 活 指 導 等 を

施設数 117カ所 558カ所 (55 27カ所 (11カ 58カ所 (56 35カ所

(公立 .私立) カ所)(16カ所.101 .503カ所) 釈 .16カ所) .2カ所)

児童定員 3,669

33,676

1,323

4,227

263

児童現員 3,077

30,830

1,030

1,828

163

資料 :社会福祉施設等調査報告 (平成171

0月

1日現在)、 自立援助ホームは家庭福祉局調べ (平成18 2

1日現在) より

小規模 グループケア

286

カ所

資料 :小規模グループケア、地域小規模児童養護施設は家庭福祉局調べ (平成17年度) より

2

社会的養護体制の見直 しの方向性

社 会保 障審議会児童部会社会養護専 門委員会で は社会的養護 の見直 しの方 向性 と具体的 論点 として、以下の点 を指摘 している。

1.子 どもの状態 に応 じた支援体制の見直 し

(1)

家庭的養護 の拡充

‑ ① 里親制度の拡充

② 小規模 ケア形態 の推進

また、「 今後 目指すべ き社会的養護体制に関す る構想検討会の中間 とりまとめ」では、 ラ イフス タイルの変化 な どによる子 どもを取 り巻 く情報 の変化 とそれ に対応す る施策 の未整 備 、抜本的 な見直 しと本格的資源 の投入の必要性 を説 き、現在 の社会的養護 の課題 を整理 し、今後 目指すべ き社会的養護のあ り方 と具体方策 について検討 を開始 した。その 中軸 と なる考 え方 は

2

通 りであ り、①子 どもの育 ちを保 障す るための養育機能 、②適切 な養育が 提供 されなかったこと等 によ り、受 けた傷 を回復 する心理的ケア等 としてい る。

そ して子 どもの状態 を①親子分離 に伴 う不安等個 々の子 ども状態 に配慮 しなが ら、生活

支援 ・自立支援 の提供 を基本 として対応が必要 な子 ども、②精神 的不安 が落 ち着 くまでの

(5)

一定期 間ケアが必要な子 ども、③高度 な治療的 ・ 専 門的な対応が必要な子 どもと

3

分類 し、

それぞれの支援体制 を① は、家庭的な形態の住居 ・施設での生活 、② は一定 の専 門的なケ アを受 けることがで きる施設での生活 を加 え、③ は専 門施設 において心理療法等 の高度 な 治療的 ・専 門的ケアを集中的に受ける もの と した。 これ らは心理 的ケア等のニーズの多 き にあわせて よりサービスを高度化、集 中化 していこうとす るねらいがある と考 えられる

4。

さらに、現行 の社会的養護体制の充実 に向けた対応 については、社会的養護の質の向上 に向けた具体的施策 として①家庭的養護の拡充、②地域資源の役割分担 と機 能強化お よび 地域ネ ッ トワークの拡充、③施設機能の見直 し、④年長児童 の自立支援、⑤社会的養護 を 担 う人材の確保 と資質の向上、⑥科学的根拠 に基づ くケアの方法論の構築 を明示 した。そ して児童の権利擁護の強化 とケアの質の確保 に向けた具体的施策、社会的養護 を必要 とす る子 どもの増加 に対応 した社会的養護体制の拡充方策 を加 えて提言 した。

特 に 「 ( ∋家庭的養護の拡充」 については重視 されてお り、その具体策 としては里親制度 の拡充 と 「 里親 ファミリーホーム5 」な どの小規模 なグループ形態でのサー ビスのあ り方 を 意識 した もの となっているといえる。東京都 の ファミリーホーム制度実施要綱では、その 指定基準 に 「 養育家庭 として二年以上登録 し、同時期 に二人以上 の児童 を受託 し養育 した 経験が一年以上あること」 など実務経験 を重視 した内容 となってお り、里親 ファミリーホ ームを促進 してい くための基準 としては、その養育内容 に高い専 門性 を求めていることが 推察 される。 しか しなが ら、指定基準 を高 く設定すれば実際的には里親 ファミリーホーム の設置数は伸 び悩む とい う課題 も生 じて くる。

3

児童虐待の実態

これまで児童福祉施設 を中心 として社会的養護 の現状 を概観 して きたが、 これ ら社会的 養護が求め られる背景 として児童虐待の問題がある。その実態 としては、東京都の調査 に 詳 しい

6。

図表

4

を見ると、平成

1

1年度以降に急激 に虐待 に関す る相談受理件数が増加 している。

これは、平成

12

年に施行 された 「 児童虐待の防止等 に関す る法律」の影響 による ものが多 い と見てよいであろう。もともと潜在化 していた虐待案件が法律 の施行 により、顕在化 し、

社会化 されて きたことの現れ と考 えられる。

‑80‑

(6)

図表4 過去10

年間の相談受理件数 の推移

00 00 00

00 000

将落首;

・モミ

;藩 ..∴+戟++ 十 rll.r

平成3 平成4 平成5 平成6 平成

7

平成8 平成9 平成

10

平成

11

平成

12

年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 ̲ 年度 年度 年度 ( 件)

126 160 195 217 428 489 582 714 1315 1940

東京都福祉局

r児童虐待の実態 Ⅱ一輝かせ よう子 どもの未来、育てよう地域のネッ トワーク」p5より

この報告書で特 に興味深いのは、「 虐待者の心身の状況」である。 この調査か ら見 えて き た状況 とは、アルコール依存や神経症 な ど精神 に問題 を抱 えている人の件数が増加傾向 に ある とい う実態である。精神保健 の分野では うつ病や神経症が増加傾向にあるとい うこと と、その対策が整 っていない状況の なかで、今後 アル コール依存症者やギャンブルなどの 他の依存症や神経症な ど病気への不安 を抱 える人への対策 は本人のケア とい うことのみな らず、子 どもの健全育成の視点か らも早急な対策が必要であるとい うことを強調 したいo

この ようなことを裏付 けるもの として、同報告書 「 虐待 につなが る家庭の状況」 の中に

一人親家庭

(31.8%)

、経済的困難

(30.8%)

、孤立

(23.6%)

とあ り、 この上位

3

つの問

題 は、一人親家庭の増大や親の仕事 をやめたい理 由に収入が よ くない とい う理由が トップ

に挙 げ られてい ることな どであ り、 これ らは親の生活上の問題が、子 どもに対 して強 く影

響 を及ぼす ことをあ らわ しているといえる

7

(7)

図表

5

虐待者の心身の状況

30% E]同萱 32.7

口 前 E]iR] 25.十汁 .5.:

210%0%0% .普 19.6 ‑

0,5

譜" L

fB

rl1 5

F.1 l

f= f= Ei

o)

Ll

東京都福祉局 r児童虐待の実態 Ⅲ一輝かせ よう子 どもの未来、育てよう地域のネットワーク」p43よ り

図表

6

虐待 につなが ると思われる家庭の状況

遍得にうながると思われる家庭の状況

.あわせ

て見られ る蝕め状

涙上位 3

1 ひとり親家庭

460 (31.8%) 1)経済的困難

2) 孤立

3)

就労の不安定 2

経済的困難̀ 446

(30.8%)

1)ひとり親家庭 ≡ 2) 孤立 3)就労の不安定 3

. 孤立 34

1件

(23.L6%)

1

)経済的困難

.2) ひとり親家庭 3) 就労の不安定 4

夫婦間不和 29

5件

(20.4%)

1

)経済的困難

2 ) 孤立 3)育児疲れ

東京都福祉局 r児童虐待の実態 Ⅱ‑輝かせよう子 どもの未来、育てよう地域のネッ トワーク」p.44より

児童虐待 に関 しては、平成

12

年 に 「 児童虐待 の防止等 に関す る法律」が施行 され

、2

回 の改正 を踏 まえて平成

19

年 に児童虐待防止法及び児童福祉法の一部 を改正す る法律 にて見 直 しが された。その骨子 としては

、1

、児童の安全確認等のための立ち入 り調査等の強化、

2、保護者 に対する面会 ・通信等 の制限の強化、 3、保護者 に対す る指導 に従 わない場合 の措置の明確化

、 4

、その他 とされている。 この改正 の趣 旨は、 より児童虐待防止 とその

8 2

(8)

後のケアに焦点 をあてた もの となっている。特 に保護者 との関係 については児童相談所職 員がその関係性 の構築 に苦慮 していた ところであ り、児童相談所長が保護者 に対 して面 会 ・通信 を制限で きることや、児童虐待 のおそれのある保護者 に対 して知事 による出頭要 求 を制度化で きることとしたこと、市町村 において も、立ち入 り調査 や一時保護の必要性 があると判断 した場合 に児童相談所 との密なる連携 を求めた ものであ り、児童相談所の権 限 と機能 を強化 し、合 わせ て児華虐待事例 の分析 やそのための地域協議会の設置 など児童 虐待 についての体系的、客観的な体制構築を示唆 した ものである。

4

児童養護施設 における虐待 の背景 と実態

児童虐待の防止等 に関す る法律の対象 として第

2

条 に 「この法律 において 「 児童虐待」

とは、保護者 ( 親権 を行 うもの、未成年後見人その他の者で、児童 を現 に監護す るものを い う)がその監護する児童 ( 十八歳 に満たない者) 」 としている。つま りこの法律 は家庭 に おける虐待 を意識 した法律であるといえる。

一方、今 日の社会 において課題 となっていることに児童福祉施設における虐待がある。

家庭で虐待 を受 けるのみな らず、 さらに保護 された児童養護施設 内で も虐待 され るとい う 事件が後 をたたない。児童養護施設 において施設内虐待事件 として平成

7

年か ら、平成

19

3

月 まで新聞に掲載 された主な ものだけで計

7

2件 にのぼる

7

。その内容は体罰や暴行、

暴言、 ネグ レク ト、宗教行事 な どの強要 に加 え、強制労働や労働搾取、淫行 わいせつ事件 など多岐 にわたっている。

これ らの虐待への背景 に、市川 は 「 サービス を提供する側 の怠慢 も否定で きないが、い わば社会資源、あるいは人的資源の質的、量的欠如 に因る ところが大 きく、責任 の帰す る 所が不明確である。( 中略) これを認可 し、次々 と利用者 を措置 し、形骸的監査 の結果、長 期 にわたって虐待 を見逃 して きた ことをサー ビスの誤用、 さらにネグ レク ト ( 放置) とし

て指摘す ることがで きる 9 」 としている。 この指摘 は、施設内の虐待 は施設内だけの問題、

つ ま り職員 の質、施設長や理事 の管理体制の甘 さだけでな く、それを見逃 して きた管理監 督庁である都道府県行政へ の責任 を も追及す るべ きものであると考え られる。行政の不作 為が問われる時代 である。

児童養護施設 において、家庭 内外 の問題が複雑化 し、 より緊密 なケアを必要 とする子 ど もを援助す るためには、 これまで以上の職員の確保が必要であ り、また、スキルの高い職 員 を育成す るための人材育成 システムな ども担保 された ものでな くてはな らない。それに 加 えて、児童養護施設の仕組みその もの、あるいはそれに対する監査 や第三者‑ の仕組み な ど、相互牽制の仕組みがスムーズ に機能す ることなど、全体の仕組みが相乗的 に補完 し あ うことにより施設内虐待の防止が図 られるであろう。

一方虐待が起 こって しまった場合 は どうか。児童養護施設内では、小舎制 などを取 り入 れている施設 も多 く、指導月や保育士 と児童が密接かつ密室での生活が営 まれていること、

児童 は望 む と望 まざる とにかかわ らず、措置 されての入所 となるため、その生活 を児童福

(9)

祉施設に委ねざるを得ないこと、自らの虐待 を訴 えることで後々の生活‑の不安が生 じる ことなどか ら児童 自らが訴えてい くことには多 くの困難 さがあることが容易 に推測 される。

また、児童 らがその勇気 をもって訴 えた として も実際、虐待が露見 されるまで数年かかる ケース も多いようである。

新開記事 によれば、事件が発覚 した きっかけは、入所児童が集団で逃げ出 して体罰 を訴 える

10

。児童相談所 に匿名の女性か らの電話 1 1 、当該児童養護施設職員 より全国福祉保育 労働組合 を通 じて子 ども権利擁護委貞会‑の通告 1 2 、匿名 により県の運営適正化委員会へ の訴え

13

、入所者の父親から弁護士会への相談

14

、などがある

150

これ らを概観す る中では、児童本人や退職 した職員、父親な どか ら直接施設に訴えがあ った場合、 この訴 えに対 して施設内での問題解決への糸口を見出す ことがで きず、弁護士 や労働組合、県などの第三者的な機関を通 じて問題が表面化 していることが見 え隠れ して いる。 これは施設内での苦情処理の窓口を設置 しているに もかかわ らず、機能 しに くい状 態であるということが推測で きる。

次 に施設内での虐待が露見 した場合、 どの ような指導が図られているかについて、県か らの処遇改善勧告や命令、通知か ら検討する。

図表

7

児童福祉施設 における処遇改善勧告内容

処 遇 改 善 勧 告内容 千葉県 A施設 茨城県

B

施設 大阪府

C

施設 茨城県 D施設 福 島県

E

施設 埼玉県 F 施設

経営 につ い

て 改善計画書の作 成 適正 な経営へ の直接 的な指 導

第三者機関 第 置

3

者機関の設 外 部委 員 を主 体 とす る再建 委員会の設置 体 罰 防 止 の た め の検 討組織 参画にて設置 を外 部 委員 の

理事会 児童の権利擁護 理 事 会 の責任 理事会への走 理事会への報 に精通 した理事 の明確化、理事 期 的な報告 と 告 と対応策の

の委嘱 会の刷新 . 評価、管理機 能の強化 検討、理事長 化、理事会に おける再発防 止策の検討、 理事の見直 し の責任の明確

施設長 施設長の解任 施 設長 の処 分 方針の明確化 責 任 の所 在 の 明確化 施設長の解雇 施 設長 の解任 改善 と施 設 の運営 施 設運営 に 当該職員の懲戒 当 該職員 の処 関係者 の適切 当該職月の処 当該職月 に対

ついて 分 方 法 の 明確 化 な対応 分 対応 しての適切 な

組織体制 処遇基準の仕組 みづ くり 今後の問題発 見時の対応方 法の明確化、 組織体別の見 直 し

保護者 児童や保護者の 意見徴収の場の 設置 児童や保護者 入れ る仕組み の確立 の意見 を取 り

職 員 の資 質 職員の研修 磯 貝 の資 質 向 上 の た め の研 修 を計 画 的 に 職員 の継続的 . な研修 .職員 の定着化、職 適正 を有する 職員採用、新 人職員の研倦

ー84‑

(10)

図表

7

、 6

つの施 設‑ の行 政か らな された改善勧告 な どを要約 ・整理 した ものである が、改善計画 にお ける重要 な事項 と して、経営改善 と施設運営へ の改善があ り、経営改善 では第三者機関の設置 や理事会 の刷 新、施設長 な どの責任者 の責任 の明確化が主 に示 され ている。 また、運営改 善 については、虐待 に関与 した当該職員の処分 や、児童 に対す る処 遇方針 の見直 し、児童 の意見徴収 の場 の設置、職月 の資質向上 や職場環境 の改善、学校 や 児童相談所 との連携 な どが示 されている。ちなみにこの ような勧告 は児童福祉法第

46

条第

3

項 の規定 に基づ き改善 を勧告す る もの となっている。

児童虐待 に関す る課題 を改めて整 理す ると、虐待児童 を出 さないシステム として、理事 会 な どの役割 の再確認 と機 能強化、管理体制の構築が必要 とされ、 さ らに施設内処遇 の評 価体制 を確立 し、問題 や利 用者 か らの意見 を受 け止 め られ る第三者の関与や運営適正化委 員会 な どの重層 的 な体 制 を確立す る ことが必要 となる。 また、職員の資質の向上ための研 修体系 をつ くり、職場 内や職場外 で も研修 に参加 して も職場 内のケアの質が落 ちない よう

な環境整備 が必要 とな る。 さらに虐待事案が発生 して もす ぐに対応で きる ようなシステム や職場 内での問題共有 がで きる ような風通 しの よい環境 を整 え、訴 えた職員が職務 を継続 で きるような保護体制 を作 ってお くことが求 め られる。

さらに施設 内で子 ども生 活 を どの ように育 むか、子 どもや保護者、職員や地域住民 に理 解 と協力 を仰 げる ような ミッシ ョンをつ くりあげることが まず もって必要 となるだろ う。

特 に職員 の資質向上 と職場環境の改善 については、早急 な改善が必要 となる。社会的養 護が必要 な児童 はその処遇 について、サ ービスメニューが明確 に規定 されているわけでは な く、ケアす る職員のパ ー ソナ リテ ィーに依存 しやすい環境 にあ る。 さまざまな家庭環境 を もつ児童 を預 か る職 員 はマニュアルだけに依存 しない人格 的なつ きあいが必要 となるた め、そのスキル については より一層 の体系的 な研修が必要であろ うし、職員が定着す るキ うな賃金体系 や勤務体系 を再検討す る必要があ る。問題 を施設や職員 だけの問題 にす りか えるこ とは望 ま しくない。虐待 を生 み出 さない児童養護の新 たなシステムづ くりが必要 と なるのである。

5

児童福祉施設 と虐待防止法 の関連性 について

児童養護施設 におけ る虐待 の問題 について、今後改正が予定 されている 「 児童福祉法等 の一部 を改正す る法律 ( 莱) 」では、社会的養護関連部 門の改正内容 として 「 施設内虐待 ( 被 措置児児童等 の虐待 の)の防止」 と して以下 の ような内容 の改正が予定 されている。

施設長、遍 設 職員、一時保護所 の職員∴小規模住居方養育事業 ( 仮称 ) を行 うも

の及 び里親等 が行 う暴力 、わいせつ な行為、 ネグレク ト及び心理 的外傷 を与 える

(11)

被措置児童等虐待 を発見 した者に通告義務 を課す こと、被措置児童等虐待 を受け た子 どもが届出で きること、通告や届 出先 に都道府県等のほか都道府県児童福祉 審議会を定める。

都道府県等の職員は、都道府県等 に通告 した者及 び届出 した子 どもを特定 させる 事項 を漏 らしてはならないこととする。

通告、届出があった場合の事実確認や保護、施設の立入調査、質問、勧告、業務 停止等の都道府県や都道府県児童福祉審議会が講ずべ き措置等 を明確化する。

国は、被措置児童等虐待 に関する検証 ・調査研究 を実施 し、都道府県 は被措置児 童等虐待の状況等 について公表する。

30回社会保障審議会児童部会

資料

2児童福祉法等の一部 を改正する法律案 【社会 的養護関連部分】

の主 な内容 よ り抜粋

この改正の趣 旨は、施設内での虐待内容 を位置づけるとい うべ きものだが、 このことは 施設内において虐待が露見 しに くい状況 を如実 に表 した内容 とも言 えるのではないだろう か。問題意識のある施設職員が施設内での虐待 を発見 して も、施設長の意思や職員 とい う 共同性の中でその事実 を訴 えることは、職場内での立場な どを考 えれば勇気がいることで ある。 これまで顕在化 している虐待事件 を振 り返 って も、施設 を退職 した職員 などか らの 訴えな どの現状か らみると、内部事情 に精通 した職員が辞職後、あるいは身分 を知 られず に訴えようとした ものであるとも考えられる。 これ らのことか ら改革案の中では、通告が 職場内で 「 密告」 と受け とめ られないよう、職員が不利益 を受けない ようにす るための通 告 を受けた都道府県の義務を盛 り込んだもの となっている。

6

虐待児童への継続的な対応のために

児童虐待 は緊急的 ・即応的に対応 しなければならない ものであるが、それ と同時 に虐待 を受けた児童 については継続的なケアが必要 とされる ものである。 しか し、児童虐待の防 止等 に関す る法律 は防止 に焦点 をあてている ものであるため、虐待 を受けた後のケアのた めのサービスは規定 されていない。児童福祉法 については、虐待児童のケアを重点的に と

らえながらも

18

歳 までの保護内容を示 した ものである。つまり

18

歳以降には基本的には サービスが提供 されない。だが実際、 虐待 を受けた子 どもは

18

歳以降 も苦 しむことが多 く、

神経症や適応障害、アダル トチル ドレンや P T S D の後遺症、 うつ病圏、解離性障害な どの症 状 として出現す ることが多い

8

。このように虐待 を背景 として親子関係が しっか りと形成で きなかった子 どもが、大人になった時に、 さまざまな精神的な不安や身体的不調 を生 じた 場合、援助職は どのような関わ りが もてるのであろうか。

この ヒン トとなる活動 を紹介 したい。例 えば J US T9 では虐待 を受 けた児童 は乳児か ら幼児 は 「 母 と子の部屋」、小 中学生は 「 学習室」、高校生は 「テ ィーンズルーム」 と分けて集団 治療 とともに、居場所 として も提供 している。 また、児童養護施設で育 った人が仲 間を募

‑86‑

(12)

りサ ロンをひらいてい る

10

。そ して児童養護の問題 に当事者の主体的な参加 を促進するた めの啓発活動 を行 っている。

児童虐待 は成人 になって もさまざまな影響 を及ぼす とい うことを考 えれば、成人 になっ てか らも精神的な援助 をす る体制 を整備す ることが肝要であることはい うまで もない。援 助職が担 うだけのケア を考 えるのではな く、問題 を抱 えた本人が主体的に回復 を目指せ る ような援助体系 も必要 となるであろ う。 さらには制度上の施策だけでな く、本人 自らエ ン パ ワメン 下してい くこ とがで きるような当事者本人の活動 を支援 してい くことも重要 にな

って くる。

この ような当事者本 人の活動 としてセルフヘルプグループがある。セルフヘルプグルー プは共通の悩み を持つ人が集 ま り、分かち合いな どの ミーテ ィングを通 して自らの回復 を 目指す活動であるが、 この ように当事者が集い、 自らの問題 を主体的 に考 え、社会 に発信

してい くことは、援助職か らのケア とは異 なる ものであ り、 自らの問題 を自らの もの とし て捉 え、その間題 を社会 に発信す ることで、自己尊厳がはか られ、回復 の一助 ともなるも のであると考 えられる。それは児童虐待 をうけ、 自己の尊厳 を傷つけ られた本人にとって も有効 な ものであると考 える。 また共通の悩み を持つ人 とい うだけで分か り合 え、援助職 とは異 なる緊密 な関係 をつ くることも可能である。 さらに、援助や治療 を受 けるという受 身な関係か ら、 自らが 回復 に向かお うとい う主体性 をは ぐくむことも期待 で きる。現在、

地域 におい、 てアダル トチル ドレンや共依存、アル コール依存 などの本人や家族の会が多 く 立ち上がっている。

この ような活動 は今 の ところ社会福祉サービスの法制度上の体系ではないイ ンフォーマ ルな動 きであるが、援助職以外 の自助 自立的な活動への支援やセルフヘルプグループへの 支援 をお こなえるような仕組みや援助体系の構築は、社会福祉のあ り方 を問いなおす もの であ り、児童福祉分野 において も今後 さらに研究 をすすめるべ きテーマにな りうるのでは ないだろうか。

1里親 ファミリーホーム全 国連絡会 rこれか らの児童養護 里親 ファミリーホームの実践

2007

、生活書院

2

かながわの児童福祉事業史編纂委貞会 r 子 どもたち と歩んだ 日々‑ かながわ ・児童福祉 事業の軌跡

』2006

、神奈川県社会福祉協議会

p.284‑286

3

福祉士養成講座編集委員会監修 r 児童福祉論

』1999

、中央法規

p.229

4

今後 目指すべ き児童 の社会的養護体制 に関する構想検討会 r中間とりまとめ』厚生労働 省

、2007

5

前掲書

1

) に詳 しく掲載 されているので参照 されたい

6

東京都福祉保健局 町巳童虐待の実態 Ⅱ一輝かせ よう子 どもの未来、育て よう地域のネッ トワーク」平成

17

7

厚生労働省 「 平成

18

年度全国母子世帯調査」の母の就業状況なども参照 されたい。

(13)

8 Stop

施設内虐待

http://gyakn tai.yogoshisetsu.info/gyakutai̲data/data200703.htm

より

16 JUSTr

家族 と トラウマ もう一度愛 したい』

2003、p.94

17

トラウマサバ イバーズユニオン (さまざまな心の傷 (トラウマ :心的外傷)か ら生 き延 びて きた人達 ( サバ イバー) 自身に よって運営 されている、ボランテ ィアの非営利 団体)

18

例 えば 「日向ぼっこ

」2006

3

月に発足 した、児童福祉施設 を退所 した人たちの孤立 防止や児童養護 の当事者参加の実現、 ネッ トワーク創 りを目指 して集 まった児童養護の 当事者 グループ

‑88

図表 3 児童 関連施設 の概 要 乳児院 児童養護施設 情 緒 障 害 児 短期治療施設 児 童 自立 支 援施設 自立 援 助 ホ ーム 対象児童 乳児 ( 保健上、 保 護 者 の い な 軽 度 の情 緒 障 不 良行 為 を な 義 務 教 育 を終 安 定 した生 活 い児童、虐待 さ 害 を有 す る児 し、またはなす 了 した 児 童 で 環 境 の 確 保 そ れ て い る児 童 童 お そ れ の あ る あって、児童養 の他 の 理 由 に そ の 他 環 境 上 児 童 お よび
図表 4 過去 1 0 年間の相談受理件数 の推移 000000 0 0000 将落 首;・モミ;藩..∴+戟++十rll.r 平成3 平成4 平成5 平成6 平成 7 平成8 平成9 平成 1 0 平成 1 1 平成 1 2 年度 年度 年度 年度 年度 年度 年度 ̲ 年度 年度 年度 ( 件) 1 2 6 1 6 0 1 9 5 2 1 7 4 2 8 4 8 9 5 8 2 71 4 1 3 1 5 1 9 4 0 東京都福祉局 r 児童虐待の実態 Ⅱ一輝かせ よう子 どもの未来、育てよう地域のネッ
図表 5 虐待者の心身の状況 3 0% 今 E] ≡ 同萱 32 . 7 口 前 E ] i R ] 萱 25. 十汁 .5.: 2 1 0% 0%0% .普 1 9. 6 ‑ さ ≡ ウ0,5譜"※「Lま 他 人 桔 相 身 ア 知 美 持 不 枯 粗 相 f B 体 ル 的 物 明 の 持 病 症 的 コ 陣 放 r l ‑ 1 5 領 土 ま ま F
図表 7 は 、 6 つの施 設‑ の行 政か らな された改善勧告 な どを要約 ・整理 した ものである が、改善計画 にお ける重要 な事項 と して、経営改善 と施設運営へ の改善があ り、経営改善 では第三者機関の設置 や理事会 の刷 新、施設長 な どの責任者 の責任 の明確化が主 に示 され ている。 また、運営改 善 については、虐待 に関与 した当該職員の処分 や、児童 に対す る処 遇方針 の見直 し、児童 の意見徴収 の場 の設置、職月 の資質向上 や職場環境 の改善、学校 や 児童相

参照

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