審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 鈴木 森香 審査論文
題 名:全身麻酔薬プロポフォールによるミトコンドリア断片化抑制作用 (Propofol prevents mitochondrial fragmentation.)
著 者:鈴木森香 内野博之 加藤大樹
掲載誌:東京医科大学雑誌(2015年掲載予定)
【背景と目的】
プロポフォールは短時間作用型の鎮静薬として、手術時の導入と維持のみならず、集中治 療室や外来検査においても頻繁に使用される静脈麻酔薬である。本剤は麻酔作用に加え、脳 虚血時に低酸素ストレスが誘導するミトコンドリアを介したアポトーシスを抑制する作用を 持つことが報告されているものの、未だその分子機構は不明である。近年、アポトーシス誘 導の初期段階において、ミトコンドリアの断片化が起こることが知られていることから 、プ ロポフォールがミトコンドリアの断片化に与える影響を検討した。
【対象と方法】
ヒ ト 神 経 芽 腫 細 胞 由 来 SH-SY5Y 細 胞 に 、 脱 共 役 剤 CCCP (carbonyl cyanide m-chlorophenyl hydrazine) を添加し、ミトコンドリアの膜電位低下による断片化を誘導した 条件下で、プロポフォールの効果を検討した。ミトコンドリアの形態変化はDelta Vision RT を用いたライブセルイメージングを用いて観察した。また、ミトコンドリア断片化の指標と して、ミトコンドリア融合因子である OPA1 をウエスタンブロット法により検出し Quantity Oneを用いて解析した。
【結果】
CCCP 処理によりミトコンドリアは断片化したが、さらにプロポフォールを添加し培養を 継続すると、ミトコンドリアが断片化していない細胞が観察された。また、プロポフォール を前処理した後に、CCCP を添加した場合も断片化していないミトコンドリアを有する細胞 が観察された。さらに、それぞれのミトコンドリアの長さを測定した結果、プロポフォール 処理でミトコンドリアの断片化が抑制されていることが明らかになった。次に、OPA1を検出 したところ、プロポフォール処理によりミトコンドリアの断片化で検出される L-OPA1 から
S-OPA1への移行が抑制されることが観察された。
【結論・考察】
プロポフォールによりミトコンドリアの断片化が抑制された。本剤は OPA1 をはじめとす るミトコンドリア形態因子に作用することで、ミトコンドリアダイナミクスを正常に保ち、
低酸素ストレス時の神経細胞のアポトーシスを抑制しているのではないかと考えられる。
東 京 医 科 大 学