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池田寿昭池田一美杉正俊 中村浩彰1)若杉和倫1)一色 淳2)

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一 727 一

徹医大誌 53(5):727〜730,1995

SLEに合併したARDSでパルス療法が有効であった1症例

A Case of SLE Complicated with ARDS Treated Successfully     by Pulse Therapy with Methylprednisolone

    東京医科大学八王子医療センター麻酔科

    1)東京医科大学八王子医療センター免疫血液内科     2)東京医科大学麻酔科学教室

池田寿昭池田一美杉正俊

中村浩彰1)若杉和倫1)一色 淳2)

はじめに

 SLEに伴う肺病変は様々で,胸膜炎,胸水貯留,

ループス肺臓炎,禰漫性間質性肺炎さらに肺胞出

血,細気管支炎や肺容量の減少を伴う横隔膜の機能

不全等の報告1)2)がある.また,症例によっては,急 速な経過をとり不幸な転帰をとる場合もある.今回,

全身性エリテマトーデス(SLE)の経過中, ARDSを 合併し,早期よりメチルプレドニゾロンによるパル ス療法を施行し救命しえた症例を経験したので報告

する.

患者=41歳,女性.

主訴:呼吸困難,発熱.

現病歴:1991年10月

より38℃代の発熱と全 身の関節痛が出現し,軽快しないため近医受診した.

投薬を受けるも改善傾向を認めないため当センター

内科へ紹介され入院となる.

一回目入院時雨症:体格良,意識清明,顔面に蝶形紅 斑を認めた.眼瞼結膜は黄染を認めなかった.胸部 は心音,呼吸音とも異常を認めなかった.腹部も理 学的に異常所見は見られなかった.両手指はソーセ

ージ様に腫脹していた.

一回目入院時検査所見:WBC 3200/μ1, RBC 282×

104/μ1,Hb 7.6g/d1, Plt 7.8×104/μ1,尿蛋白(+),

TP 6.2g/dl, Alb 2.3g/dl, BUN 20.8mg/dl,

Cre O.6 mg/dl, CRP O.78 mg/dl, lgG 3127 mg/

dl, lgA 430 mg/dl, lgM 430 mg/dl, CH50 12 mg/

dl以下, C3c 10.7mg/dl以下, C410.9rng/dl,抗

核抗体1280倍(Homogenous),抗SS−DNAIgG 1850U/ml,抗ENA抗体(RNAse抵抗性抗体)160

倍.

一回目入院後経過:アメリカリウマチ協会の改訂 SLE分類基準3)に基づきSLEと診断した.臓器症

状として軽度の蛋白尿を認め,プレドニゾロン30 mg/dayの投与を開始し,以後,自覚症状の改善を認 めたため,プレドニゾロンを漸減し15mg/dayにて 同年12月10日退院とした.退院後は著変なく経過 していたが,1992年1月4日38度の発熱,呼吸困難 および一過性の意識消失発作があり,救急外来を受

診し緊急入院となった.

入院時現症:身長156cm,体重59 kgやや肥満型で 両側下腿に浮腫も見られた.来院時は,意識清明,

血圧98/57mmHg,脈拍数126/分,呼吸数28/分,

体温39.7℃で軽度な呼吸困難を認めた.動脈血ガス

分析は,ベンチエリーマスク8L/分(40%酸素濃度)

にて,pH 7.45, PaO244.7mmHg, PaCO222.6

1995年1月17日受付,1995年6月8日受理

(別刷請求先:〒193八王子市館町1163 東京医科大学八王子医療センター麻酔科 池田寿昭)

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(2)

一 728 一 東京医科大学雑誌 第53巻第5号

tu

来院時

謡1

・ 避  雰z・・

ICU入室時  写真1

■順哩【ド型r加島

i

退院時

写真2 心エコー図(第2病日)

FIO2 LO

@    O.5

呼吸管理 へ「

iFIO,=0.4〜0.5)PEEP 4 c酬20 塔̀ュリーマスク PEEP 6cmH20   pEEp 4 cmH20 ベンチュリーマスク(FIO2胃0.4〜0.55)

メチル・プレドニゾロン1000㎎/day

プレドニン30 da

γ一グロブリン5.09/day CE:T 4g day

PIPC 49/day

500

S00

R00

Q00

P00

ICU入室

@ ↓

R.工輯        1.84       0.69       1.50 ps/Qゼ2     35        16        26

      ICU退室

@       ↓

@       PaO。/FエO、

z呼・循環動態

mean−PAP 36 24 25

mean−PCWP 14 13 10

mean−RAP 10 9 10

CI 6.1 5.3 4.8

SVR 727 1277 1748

PVR 286 166 247

※1Respirat。ry ind ヲ2シャント率 病日

1    2     3    4     5     6     7

図11CU入室後経過

mmHg, HCO3−15.4 mmo l/1, BE−8.0の代謝性ア

シドーシスと強度の低酸素血症を呈していた.聴診

にて,両側の下肺野を中心にベルクロラ音を聴取し,

胸部レントゲン写真では,心陰影の拡大,間質性病

変(写真1)を呈し,入院後2日目より,臨床症状

及び血液ガス所見の急激な悪化の為,呼吸管理を中 心とした全身管理を目的にICUへ入室となった.

ICU入室後経過(図1):胸部レントゲン写真でも心 拡大および両側の淵調性陰影が増強し,入室後直ち

に気管内挿管を行ない,人工呼吸管理が開始された.

呼吸設定は,Fio2(吸入気酸素濃度)o.8, PEEP 4

cmH20で,血液ガス所見はpH 7.20, PaO282.4 mmHg, PaCO255.9mmHg, HCO3一 21,2mmo l/

1,BE−7.1, SaO292.4%と酸素化の改善は認めら

れなかった.更に,心エコーでは,全周性の心嚢液 の貯留が認められ(写真2),ループス心膜炎が疑わ

れた.同日より,SLEに合併したPetty4)らの

ARDSの診断のもとに,メチルプレドニゾロンによ

るパルス療法を開始した.また,ICU入室第2病日 曝より,呼吸,循環動態を評価するため,右内頚静

脈より7.5FSwan−Ganzカテーテルが挿入され

た.尚,人工呼吸管理中の鎮静化のためにフェンタ

(2)

(3)

1995年9月

池田他5名:SLEに合併したARDSでパルス療法が有効であった1症例

一 729 一

ネスト100〜200μg/kg/hourの持続投与及びジア ゼパムの間欠的投与が行われ,筋弛緩薬として,ベ

クロニウムブロマイド3mg/hourの投与が行われ た.パルス療法開始2日目の血液ガス所見はFiO2 0.45,PEEP 6 cmH20で,血液ガス所見はpH 7.43,

PaO2104 mmHg, PaCO236 mmHg, HCO3−23.9

mmo l/1, BE−0.4, SaO297.6%となり,明らか

な酸素化の改善が認められた.Swan Ganzカテーテ

ルより得られた情報からも,肺動脈圧が35mmHg より24mmHgへ,肺動脈襖入圧は14 mmHgから

10mmHgへと減少し,肺血管抵抗,肺シャント率も 減少傾向にありパルス療法の効果が示唆された.

ICU入室後4日目には,レスピレーターよりの離脱

ができ,翌日には最南を行ない第7病二目には一般

病棟へ転訂することができた.

考 察

 ARDSの概念は, Ashbaughらの報告5)が知られ ており,その意外性の因子として,敗血症,ショッ ク(出血,エキドトキシン等),DIC等で,肺内診と して胃液誤嚥,刺激性吸入ガス,自己免疫疾患等が あげられており,これらの原因を引き金として呼吸 困難や肺コンプライアンスの低下を来たし,胸部レ ントゲン所見では,禰漫性浸潤陰影が認められる急 性呼吸不全とされているが,その解釈には未だ統一

されていない部分もあるように思われる.本症例は,

PettyのARDSの診断基準にあるように,慢性閉塞 性肺疾患や左心不全といった状態は否定(PCWP〈

18mmHg)され,頻呼吸(>20回/分)を伴った呼 吸騰,肺酸素化能の障害(PaO2〈50㎜Hg with FiO2>o.6),肺シャント率の増加(35%)等の条件を 全て満たしている.また,急激な発熱,腎機能障害,

間質性肺炎などにより,SLEの増悪も誘因となり急 性の呼吸不全状態に陥ったものと考える.SLEに伴 う急性呼吸不全の機序として,経過中に増加した免

疫複合体の作用による肺障害やインタ・一・nイキンの

活性不全等が考えられている.ステロイドはその抗

炎症作用および強力な免疫抑制作用によりSLEの

活動性を抑制し臓器障害への進行を押えるというこ

ともよく知られており,実際,臨床においてもステ ロイドの大量投与後に於ける,免疫グロブリン値の 低下や,抗DNA抗体価の低下が認められている.今 回の症例においても,これらの免疫学的パラメータ

ーの改善およびARDSの特徴の一つである肺内シ

ャント率の改善も見られ,更にR・index(A−aDO2/

FiO2)も改善した.(図1)ステロイドの作用機序に 関しては,従来より肺胞毛細血管膜の安定化,食細 胞のライソゾーム膜の安定化,血小板や顎粒球凝集 抑制,貯蔵界面活性物質の遊離,phospholipase A2 活性阻害による抗炎症作用および膠原繊維の産生抑

制等6)が知られている.また,パルス療法の作用機序

については,細胞性免疫の抑制や抗体産生の抑制,

更にグルココルチコイド自身のもつ抗炎症作用等が 考えられている.いずれにしても,SLEの多彩な症 状にステロイド療法は現時点では,必要不可欠なも のと考えられるが,ステロイド自身の多彩な副作用

(感染症,糖尿病,消化管出血,高血圧,骨粗品症,

精神症状など)にも十分な注意を払う必要がある.

また,膠原病患者での末梢血リンパ球のレセプター 数を測定した研究では,その数は症例によって異な り,各症例の値は平均値の50%近い幅をもって広く 分布し,繰り返し測定しても,最初に測定したレセ

プターの数と余り大差がない事から7),今後,臨床の

場でも,各症例の糖質コルチコイドレセプターを測 定し,各症例のステロイド感受性を調べたその後に その投与量が決定される必要性が出てくるかもしれ

ない.しかし,本症例のようなSLEに伴ったARDS には,呼吸,循環および代謝系の厳重な管理の下に,

時期を逸することなく,早期のメチルプレドニゾロ ンによるパルス療法を行った事で救命できたと考え

られる.

ま と め

 SLEに伴ったARDSを合併した症例を経験し,

その治療には,早期により人工呼吸管理のほかに,

循環,代謝系の管理を同時に行い,感染症の有無に 厳重な注意を払い,時期を逸する事なく,メチルプ レドニゾロンによるパルス療法を行った事で,急性 呼吸不全の改善をみて救命し得た.しかし,その投 与量については更に検討する必要性を感じた.

文 献

1) Hunninghake GW, Fauci AS:Pulmonary involve−

 ment in collagen vascular diseases. Am Rew  Respir Dis.119:471 一503. 1979

2) Eagen JW, Memoli VA, Roberts JL et al:Pulmo−

 nary hemorrhage in systemic lupus eryth−

 ematosus. Medicine. 57:545 v567, 1978

(3)

(4)

一 730 一 東京医科大学雑誌 第53巻第5号

3) Tan EM, Cohen AS, Fries JF et al:The 1982   revised criteria for the clasification of systemic   lupus erythematosus. Arthritis Rheum 25:1271,

  1982

4) Petty TL:Adult respirtory distress syndorome:

  difinition anf historical prespective. Clin Chest   Med 3:3 一7, 1982

5) Ashbaugh DG, Bigelow DB, Petty TL et al:

  Acute respiratory distress in adults. Lancet. 2:

  319一一323, 1967

6)木村郁郎,多田慎也:特発性間質性肺炎.呼吸と循環.

  36:941, 1988

7) Doe RP, Wires JJ, Li SA et al:Characterization   of cytoplasmic glucocorticoid receptor in circu−

  lating human mononuclear cells. Life Science 27:

  687, 1980

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参照

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