教員採用試験問題の分析と活用
一一学生の自主学習への試み一一 松 本 敬 子
A n a l y z i n g t h e e x a m i n a t i o n s f o r employment o f t e a c h e r s and p r a c t i c a l u s e .
一‑ t r i a l f o r i n d e p e n d e n t s t u d y by s t u d e n t s一一
Keiko
MATSUMOTO
( R e c e i v e d N ovember 13
,1 9 9 7 )
は じ め に
熊本大学において教職員採用に関して合格率の問 題が表面化したのは1
9 9 0
年以降であるが,養護教諭 の場合は,以前からの課題であった.まず1校に 1 人という採用者数の問題がある.そして採用状況には学校教育法の規定があり,その施行には各都道府 県,それぞれ異な.った事由による採用者数の消長が あり,不確定である.これに多様な養護教諭養成機 関や,養成数の関連が生じ,就職率に関しては常に 問題であった.
そこで先ずは,影響される学校教育法とその施行 に関して,次いで養護教諭養成についての
2
つの経 緯を述べてみたい.1 9 5 8
年,学校教育法による「…小学校(中学校)に…養護教諭を置かなくてはなら ないJは r小学校,中学校には,
2 8
条( 4 0
条)の規 定にもかかわらず当分の間,養護教諭は,これをお かないことができる」の附則10 3
条によってその配置 が猶予ないしは緩和がなされて来た.一方,同年に 国会審議がなされた「公立義務教育諸学校の学級編 制および教職員定数の標準による法律」所謂「標準 法Jは,養護教諭の定数配置にも適用をみている.しかしこの定数配置は,各都道府県に任せられてお り,附則1
0 3
条の養護教諭配置猶予は,当初,有資格 者不足からのものであったのが,各都道府県の財政 上の措置に転用され,養護教諭の配置率に各県,格 差が生じたと恩われる.この養護教諭の「標準法」による配置は,当初,小学校は児童1
5 0 0
人に1
人, 中学校では,2 0 0 0
人に1
人であったが,1 9 6 3
年と,1 9 6 9
年に,続いて19 7 4
年に5
ヶ年計画の大幅な改正 があった.現行の標準定数は,
1 9 8 0
年の改正であり,各都道府県の実情に沿って逐次,実施されたと思われる.
乙れによると小学校及び中学校では
4
学級以上に1
人(小・中校の合計数にーを乗じて得た数),3
学級 からは0. 7 5
人(小・中校の合計数に四分の三を乗じ て得た数),僻地校および特殊教育諸学校は各1人 (医療機関がない市町村,離島地域の小・中校および 公立盲・聾・養護学校の数の合計数にーを乗じて得 た数),公立高等学校においては,4
学級以上は,全 日制,定時制課程とも各l人(公立高校は全日・定 時制課程とも合計数にーを乗じて得た数),全日制3
学級からは0. 7 5
人(全日制課程の数に四分の三を乗じて得た数)となっている.
1 9 8 0
年から5
ヶ年計画 でこの定数法に従った配置が始まっても各県の進捗 状況が全く見えなかった.現行実施年から採用数が 急増した県もあり,出身学生が最も多い県が,1 9 8 3
年,1 9 8 4
年と採用減,1 9 8 8
年までー桁採用が続き,計画終了年に一挙に増加をみた例もあった.この措 置期間の各県の財政上の理由なども考えられるが,
従来の配置や採用状況とも関わっていて各県,一律 の増加ではなかった.この措置により,
1 9 9 6
年5
月1
日現在で公立小学校配置率94
.4%,中学9. 0 . 6 %
, 高校91.3%
となったが,全国的には未だ全校配置に は至っていない.乙れらの配置率や採用状況に関連 する養護教諭養成について次に振り返ってみたい.国立大学教育学部に,看護婦の免許所得者に対し,
養護教諭1級免許状授与を目的に指定養護教諭養成 課程が付置されたのは1
9 6 2
年である.熊本大学にお いてもこの翌年に設置され,翌19 6 4
年に九州各県の 養護教諭に採用されている.これらの人々が今,5 0
歳半ぼである.この課程は,1 9 7 5
年まで存続し,1 9 7 6
年には熊本大学直属の養護教諭特別別科として新た に発足し今日に至っているが,北海道,山形,新潟,‑93 ‑
金沢,神戸,岡山ともに7大学に設置がみられた.
一方, 1965年3月国立養護教諭養成所設置法が制定 され,翌年
4
月には,岡山大学,北海道教育大学に 養護教諭2
級免許状取得を目的として養護教諭養成 所が付設された.熊本大学では, 1965年設置され,1967年に九州各県を中心に養護教諭となっている.
この時,採用された人達が既に50歳を越えた.この 養成制度は, 1979年
3
月に廃止されたが熊本大学で は12回の卒業生を送り出している.1964年から1980 年まで熊本大学関連で養成された人々は現在, 40歳 から50歳の年齢層であり,九州各県の現場の中枢を 占めて活動している.1972年12月保健体育審議会の 答申において「児童・生徒の健康的な増進を目指す 今後の学校保健の要請に答え得るよう養成機関にお げる教育課程の改善方策を検討し,さらに将来は,四年生大学を中心として養護教諭を養成するよう検 討する必要がある」との提案があった.また養護教 諭養成所等の関係者から「国立養護教諭養成所を四 年制の大学の課程に」の強い要望の結果,国立養護 教諭養成所を逐次,当該大学の教育学部の四年制の 養護教諭養成課程へ1975年から発展的転換がはから れ,熊本大学も1977年に教育学部養護教諭養成課程 とし発足,すでに17回生を出している.また, 1976 年から教育学部特別看護科において1種免許が取得 でき,各県に養護教諭として採用されている.その 他,九州各県には私立短期大学など
2
種免許を出す 養成機関も多い.県によっては,また各県のその年 度によって2
種と1
種免許所有者の採用比率が異な る.私立短大養成機関の2種免許所有者には若年層 が多く,このことも九州各県,養護教諭の年齢層に 差を来している.教育学部養護教諭養成課程の学生 は,九州やその近接各県の出身者であり,各県の異 なった定数配置の在り方や,県によって異なる 1種 免,2
種免の合格比率を見て,採用状況に連動する 採用試験問題に関心をもち,各県の試験問題ω
レベ ル差について言及するようになる.当時,当学生の 受験県は,学んだ理論や,活動のプロセスを問う等 のレベルの出題が見られず,数値等の暗記や,心臓 の解剖図のみで能力を測られたくない思いがあった と見られる.このような学生の状況もあって広範囲に問題を把 握したいと試験終了後の学生に,出身各県の問題を 出してもらうことにした.
1990年,筆者は特別別科に移動し,入学
3
ヶ月で受 験に臨まねばならい更に厳しい状況の学生の養成に 当たるとととなる.幸い特別別科でも従来から試験問題収集が行われており,別科学生は更に広範囲の 都道府県から集まる傾向がある.そこでこれら各県 の過去の問題分析から始め,分析した過去の問題を 如何に活用するかを試行し,現在ゼミ形式を取り入 れた自主参加の自主学習として時間を確保している.
このような対策について当初は
1
年間養成という 特別事情があるにせよ学部内では公にすることが樺られた.迷いながらの経緯ではあったが,受験対策 が教育学部全体のものになった今,試行としてまと めてみることにした.
方 法
1 15年間の学生受験都道府県の過去試験問題(専 門科目)の分類による分析
(九州
8
県および北海道,新潟,鳥取,愛知,東京,兵庫,滋賀,京都,大阪,岡山,広島,
山口,徳島,愛媛の
2 2
県)2
学生自主運営による分類問題の活用の試み (受験県別グループによる分類問題1項目毎の検討と問題作成,全員ぜミ形式の運用) 結果と考察
寄県の過去試験問題の分析
20年間の各県別専門教科の集積からみると,以前 大きかった各県のレベル差や独自性が漸次,目立た なくなって来た.総体的に問題の画一化が進んでい ることは,問題が安定して来たことであり,このこ とは多くの県や,年度を総括し,見ることができる.
古いものを除き,過去15年間の各県試験問題専門科 目を「学校保健関連」と「医学・看護学関連Jの
2
領域に大別する.学校保健関連の出題は,保健管理が最も多く,これら管理関係は基本法である学校保 健法が中心である.健康診断,組織活動,学校保健・
安全計画,環境衛生,養護教諭の職務内容であり,
この領域のキーワードは「法」である.ここで重要 なのは近年に多い「法改正Jであり,審議会答申や これに続く法改正があった2‑‑4年間は,その問題 は頻出する.法施行と同時に出題する県もあり,首 都圏ほど早い.学校教育法は,保健学習・保健指導 などの保健教育と養護教諭の職務の関連で出題され る.職務内容の保健室個別対応に必要な心理学関連 と,教育学も 1部基礎が各県に出題されるようにな った.
医学・看護学関連は,解剖・生理,救急処置,眼 科,歯科,救急看護,伝染病,予防接種,健康問題 であり,食品・栄養問題も健康問題の関連でこれに
‑ 94‑
加わる.この領域のキーワードは「変イんである.
解剖・生理は殆どが一般的な基礎であるが,出題傾 向は身体機能面に重点がおかれ始めた印象がある.
歯科,伝染病,予防接種の状況や,その考え方,方 法も変化し,変化に伴う問題が多い.健康問題は,
その内容を問うだけの傾向から次第にこれをどう理 解し,教育的に取り扱うかに伸びてきている.新し く医学界で使われている疾病の略語や,学校関連ば かりでなく社会的健康問題の出題も多い.救急処置 は,近来の頻出問題の一つに救急法がある.まとめ られ明確な回答が出ている日赤救急基本からの出題 が自にっしこれも教育現場の事例をあげ,考えさ せる応用編の傾向を見せる.
各県の過去試験専門科目問題の分類と内容分析
「学校保健関連」と「医学・看護学関連J
2
領域に 大別ししたが,分類すると前者は「健康診断Jr組織 活動Jr
学校保健・安全計画Jr
環境衛生Jr
養護教諭 の職務Jr
保健学習・保健指導Jr
心理・教育Jr
健康 観察」である.そしてこれら学校保健活動に直接的,間接的に関連する「法規」をここに加え
9
項目とし た.後者を「解剖・生理Jr
眼科Jr
歯科Jr
救急処置」「伝染病J
r
疾病Jr
社会的健康問題Jr
食品・栄養」の
8
項目に分類できる この1 7
項目の内容を分析す る.学校保健関連
( 1 )
健康診断健康診断の出題内容は,健康診断の種類,各健康 診断の法的根拠,目標,意義,計画,項目,時期,
各項目における方法,留意事項,用具,事後措置に わたるがいずれも学校保健管理の基礎であり,学校 保健法に基づくものである.
健康診断は,児童・生徒・学生及び幼児の定期健 康診断と臨時健康診断,教職員健康診断,同じく臨 時健康診断,就学時健康診断の
5
種類があるが,各 県とも児童・生徒・学生及び幼児の定期健康診断に 関する出題が90%を占める.児童・生徒・学生及び 幼児の臨時健康診断も各県で見られるが,実施項目 を問う程度である.教職員健康診断に関しては,改 正があり,このところ出題が増えている.就学時健 康診断については極めて少ないが,過去には出題さ れている.健康診断の出題内容の注目点は,法改正 である.近年,結核・視力・聴力・色覚・脊柱・胸 廓・心臓の検査に実施学年や方法に幾つかの改正が あり,それらを問うなどのほか,付随する事柄,例 えばこれら検査によって発見される疾病名,実施後 の記録法などが見られる.健康診断の事後措置についても幅広く出題され,注目したい.聴力測定後,
どのような計算式でどのように公簿に記入するかな どの出題は各県ともに多い.計算式もエネルギー代 謝率,乳児死亡率など広がりを見せている.健康診 断については変化が続いたことから健康診断のテキ ストを作った県教育委員会も多いと見られ,これが 基本の見直しにつながり目標,意義,計画過程など の本質的な出題が近年の特徴になったと思われる.
(2) 組織活動
組織活動は,全体的に出題は至って少ない.しか し長い間,繰り返しいずれかの県に出るものに学校 保健委員会に関してがある.この設置については明 確な法的根拠はないが,学校保健法では学校保健・
安全計画の策定の場とされている.
4 7
年度保健体育 審議会答申に,目的,意義,構成,運営法などが示 され,これに基づいて各県で極力,設置の推進がな されているが,全国的にその設置は未だ60%前後と 言われる.学校保健委員会は,学校保健の基礎的要 項,そして今後の課題として出題されていると考え られ,この中での養護教諭の役割,運営の準備や留 意点を含めた問題が見られる.学校保健委員会のほ かに,法的根拠,職務準則が示されている学校保健 関係者の学校医,学校歯科医,学校薬剤師,特に学 校教育法の改正があった保健主事については全国的に出題傾向が見られる.
(3) 学校保健・安全計画
全体として数は少ないが,基礎として重要な内容 であり,従って同じ内容が繰り返し出題.される.学 校保健・安全計画の法的根拠,計画の内容,立案過 程,立案の方法(情報・資料,留意点など)と計画 に関する養護教諭の役割が問われている.計画の基 盤となる学校保健活動の構成,つまり保健教育,保 健管理,組織活動の位置づけも繰り返される出題で ある.
(4) 環境衛生
学校保健法に規定される学校環境衛生から多くが 出題されている.照度及び照明環境,騒音環境及び 騒音レベル,教室の空気,机・椅子,黒板,飲料水 に関すること,また手洗い,足洗い,便所,ゴミ処 理,鼠・コキプリの生息など施設基準や清潔管理関 連がある.学校給食の食品衛生,水泳プール管理の 諸条件,校地,校舎の条件とその内容は多い.教室 照度(黒板面・
OA
機器を含めた)の数値,教室の二 酸化炭素濃度,落下細菌数,飲料水や水泳プールの 水質基準など以前から数値の出題が多いが,平成4
年と8
年にその基準値の改訂があり以後数年,どの‑95‑
県もかなり増えてきている.また環境衛生の目的,
意義,それらが学校保健法の何条に,何が規定され ているかなど,改訂があると各県,基本を見直す傾 向の出題が見られる.社会問題化した
0‑157
や光化 学オキシデント関連も出始めている.検査の事後措 置,そして学校安全も多くはないが出ている.(5) 養護教諭の職務
昭和
4 7
年に保健体育審議会答申の養護教諭の職務 内容が継続的に出題されている.養護教諭の具体的 活動内容も多く見られ,保健室の機能・設備を含む 経営に関して,性教育などの保健教育関連などがあ り,また統計的知識も問われている.近来,心因性,いじめ,インフルエンザ,マラソン大会などの事例 に従った養護教諭の対応に問題が広がり,考え方や 力量が確かめられる論述形式に移りつつある.養護 教諭の保健主事登用でその関連も見られ始めている.
(6) 保健学習・保健指導
保健学習・保健指導の基盤に関しての学習指導要 領の総則と保健体育分野は最も多く出題されている.
保健学習の内容,また保健指導は,性,エイズ,い じめ,登校拒否などの対応に基本をおさえた自分自 身の対応を問う問題も多くなって来た.学校行事に おげる指導も見られ,健康診断事前指導,全校集会 時の保健指導,具体的な事例によるダイエットに関 する個別指導を問う問題も出て来ている.
(7) 健康観察
以前から出題の少ない項目である.健康観察の目 的・意義,方法(養護教諭・担任の観察観点)事後 措置のあり方,結果活用,事例を出して判断を問う
もので現在もとの範囲である.
(8) 心理・教育
心理は各県,毎年2'"'"'3聞は出題される.カウン セリング,ヘルスカウンセリングに関する知識と双 方の違いなどである.学校保健法11条の健康相談も 法に規定されている心身の健康に関する活動として 出される県が多い.心理関係の知識として用語や,
各知能・性格テストの意味,基礎的心理理論と研究 者名などがある.心因性,心身症の対応,そして近 来,いじめ,保健室登校の事例を出してその対応や 養護教諭の役割や意見を書かせる問題が目立つて来 た.出題は少ないが教育学の基礎論,それを唱えた 人々に関するととも見られる.
(9) 法規
前述の各項目に各々の法規は出ているが,条文内 容を問うものだけを中心にまとめた.憲法,教育基 本法の各条文が出されている.同和教育に関しては
審議会答申,目的,基本方針が出題され,日本体育 学校保健センター法,学校保健法についても条文語 句の穴埋めの形で公布・施行日も出題されている.
学校教育法,学習指導要領,国家・地方・教育公務 員法が広く浅く出題されている.
医学・看護学関連 (1) 解剖・生理
解剖は,心臓,血管,脳,消化器,内分泌器官,
骨格,筋肉,腎臓,眼,耳,歯であり,各県殆どが 解剖図に名称記入を問題としている.心臓,歯が中 心であったのが,血管,脳,揚管,内分泌器官と広 がり,近年,骨格系が最頻出問題となっている.
心臓,脳も相変わらず出題されているが,腎臓は,
専門的な細かい部位にまで及んで来た.生理学は解 剖に比べ近来,問題数も増え,呼吸数,脈拍数を問 うような暗記を中心にしたものから,血圧のメカニ ズム,交感神経,副交感神経の作用など,心身の本 質的機能の理解を必要とするものに変化している.
( 2 )
眼科多い項目ではないが,目の解剖図,近視・遠視の 略図,近視についての説明,視力測定については以 前からよく出題されていた.平成4年, 6年の改訂 を機に視力測定,色覚検査の方法や実施学年を問う ものやこの指導についてが出て来ている視力の動 向.そして眼疾患についても見られるようになった.
( 3 )
歯科歯の名称,断面図,う歯進行図の説明,乳歯,永 久歯の歯数・萌出年齢などの基礎や,一方には,う 歯発生原因ゃう歯発生のメカニズム,メカニズムに 従った指導過程が出題されている.近年各県,う歯 以外の歯周疾患とその指導,
DMF
,8 0 2 0
などの語句 説明,歯磨き方式を問うのが多くなった.歯科検査 法と歯科検診票記入の1部改正があり,事例を出し ての歯式の記入法や読み方,これに伴って検診の根 拠と検査内容に関しての問題が見られ,児童・生徒 のう歯の動向についての出題もある.(4) 救急処置
以前から脳貧血,日射病についての体位等の処置 法,症状による頭部打撲,出血時の判断,救命処置 など,多く事例や症状への対応や,人工呼吸法,心 肺蘇生法,止血法,包帯法が関われて来た.数年前 から日本赤十字の救急処置講習会の教本からの出題 されることが多くなった.また中学保健体育教科書 も視野に入れておいた方がよいようである.具体的 場面を設定し,その判断処置を継続的に出題する県
もある.
‑ 9 6
ー(5)伝染病
伝染病の法定,届出,指定,検疫,国際や学校伝 染病
1・2・ 3
類の分類,伝染病の原因,潜伏期,伝染経路,原因菌の型などがインフルエンザや風疹 からB型肝炎,エイズに至るまで伝染病が広い範囲 で例示され関われている
.B
型肝炎,エイズ,流行 性角結膜炎の出題が多くなり,風疹予防接種期が変 わったことから風疹についても出題が増えた.発生 時の出席停止や臨時休業などの法的根拠,出席停止 となる伝染病の種類や各々の出席停止期間などが見 られる.伝染病や食中毒の発生機序,事例を出して の判断,そして予防指導が多くなって来た.平成8
年「腸管出血性大腸菌感染症の学校保健法上の取り 扱い等についてJ文部省体育局長通達があり,今後,出題の可能性が高い.平成
6
年改正の予防接種法は 重要である.改正の要旨,接種項目や接種年齢ばか りでなく,当該疾病についても関われる.感染症サ ーベイランス事業についても知る必要がある.(6)疾病
学校に多い疾病とその数値や推移,学校保健法に おげる援助対象疾病,指定公害の病名が出題されて 来た.児童・生徒に多い疾病,問題疾病の原因,症 状を,便秘から不定愁訴,癒痢,心気症,虫垂炎や 突然死関連疾病と幅広い.アトピーなどのアレルギ ー疾患,呼び名が変化した習慣病についてが多くな って来た.疾病略語,垂直感染の語句説明もこのと ころ多い.事例をあげた対応や指導も目立つている.
(7)社会的健康問題
国民健康状態の変遷,年齢別疾病・死亡順位,平 均寿命などの動向,
WHO
関連は正式名称,歴史,活 動内容,宣言要旨など基本事項から,現在の社会的 関心事であるオゾン層破壊,光化学オキシダントと 健康の関係,麻薬,シンナー,ニコチン,アルコー ルの子供の健康に及ぽす影響を問うものも増えて来 ている.インフォームドコンセントなど語句説明,疾病の略語や略称の意味を求めるものも多い.
(8)食品・栄養
頻度は低い項目であるが,過去にも食品含有栄養 素の必要量や働き,欠乏症についての出題はあった.
最近は生活習慣病との関連で食品や栄養素が出てく る.着色料の問題,改正になった学校給食の所要栄 養量,朝食抜きの弊害,栄養状態の検査や計算法,
思春期やせ症との関連での出題も見られる.
グループ編成
とのグループは,性格上(分類した問題の1項目 の検討と模擬問題作成を課題とする),
1
グループ3
名編成が適当であり,学生は
4 0
名を1 3
グループ編成 する.分類した18
項目の問題は,問題検討順,担当 グループ順をきめる.出題頻度が低く,内容が少な い項目については2
つを1
つにするが,グループに よっては2
回担当する場合もある.各県の出題傾向 を話し合えるメリットもあり,学生を出身県別にグ ルーピングする.学生自主運営による問題の活用
毎回,講義終了後の一定時間に「クイズをしまし ょう」といって始めたことから「クイズJ という名 称で「与えられるJものであったが r全員ゼミ」と 名称と形が定着し,自主運営の方向性をもつものと なっている.この方法は
4
段階に区分できる.1.前年度各県問題を全員配布
前年度7月,各県の受験者は,受験後集まり問題 を書き留め,
9
月に提出する.翌年,資料化され,入学1ヶ月後の学生は,各県の問題をみておおよそ の傾向を把握する.
2 .分類問題の配布
当科学生は,看護を経ており,
1 8
項目の試験問題 の中から入りやすい解剖・生理などの看護・医学関 連を先に出し順次,講義の進路に従って学校保健関 連に移る.3 .
グループの責任体制グループメンバーは,分類した1項目の問題を担 当する.前年度の各県問題のうちから担当した関連 問題を選び出し,
1 5
年間の過去問題と併せて流れを つかみ,傾向を整理,検討する.担当問題につれて 傾向,問題の広がりを考えて予想模擬問題を作成する.
4 .
全員に広げる学級全員に広げる方法は各々のグループに任せる.
しかしグループメンバー全員が教壇に立‑ち,話す機 会は大切にしてきた.県によって採用試験の1つで ある
3
分スピーチ,模擬授業があり,それらへの対 応と,前期後半の学校実習も意識してのことである.実践結果 1.学生の反応
次年度の運営をより効果的にするために,全員ぜ ミを終えた学生の感想、レポートを参考にするととに している.そのうちの平均的な意見のl部をあげる.
一学生レポートー(ゼミを終えて)
「ぜミの最初の解剖生理や疾病までは,看護学校で学 んだものと重なる部分も多く,あまり抵抗感なくゼ ミに入っていけたように感じた.しかし疾病にして も養護教諭の採用試験であるだけに小児疾病など多
く,看護学よりも更に深い知識が求められると思っ た.各グループが各県全部の傾向をとらえて全員に 発表し,中にはプリントにまとめ,配布してくれる 仲間もいて,ゼミ時間は勿論,後の学習にも全問題 を見直すことができ,役立つている.各グループ,
よくメンバーで討論し,検討した上で出題されるの で,メカニズムなどの複雑な問題もあり,ゼミ時間 に解けないものは,後でよく調べて自分のものとす ることができ,頻出問題を機械的に学習するよりは るかに効果的だったと思う.ゼミ範囲は事前に予告 されているのでその主題を予習していればもっとゼ ミの効果が自分自身の中で上がったと反省している.
養護教諭の職務や伝染病・環境衛生等,法的根拠が あるものが多い.法の条文も早く知り,その上で自 分自身の考えを加えることも必要のようだ.近年,
法改正されたものとして環境衛生,健康診断,保健 主事などの項目が挙げられるが,環境衛生が改正さ れた翌年にかなり多く出されているのを見ると,今 年は保健主事の改正について出題される可能性が高 いと思われる.ゼミの中での教官の指導内容は,記 録する必要がある.また「学校保健Jr養護教諭の職 務Jの講義の中で「基礎・基本J,r永遠の問題」と それとなく付け加えられるものもぜミの模擬問題を 作る上で重要である.J
2 .
実践と採用試験との関連以前から「ゼミの模擬問題がそのまま出ていた」
r
1
昨年のA県の問題は,昨年は B県に今年は C県
に出ていた.採用試験問題が巡回するのではないか」といった声を聞く.これは各県,学校保健関連は基 礎からの出題が多いからであり,平成
4
年以降の改 正,変化に,出題者側も視点が集まるからである.また応用問題も養護教諭の執務から遠く離れること は少なく,従って保健室の個別指導の事例も似たよ うな出題になるようである.保健室の個別指導も心 因性のみの対応に偏る事なく,学校保健法1
1
条に規 定された健康相談もどこかで毎年,出題されている.また新聞を読むこと,この中の新しい社会問題,
教育や健康の関心事を,自らの感動や意見を含め,
短文にまとめておくことをすすめてきた.とのいず れかは,論文課題のいずれかに生かせ,対応できる
ことが多い.ゼミと採用試験との関連も学生全員に 確かめてきたが,この中の1つを無作為に取り上げ てみる.
一学生レポートー(採用試験を終えて)
「一般教養は,人文,社会,自然科学とも幅広く出題 されていた.特に高校を卒業して
5
年のプランクがある数学,物理,化学は,問題集を勉強しても理解 しきれずに試験に臨んでしまった.オゾンホーl,レ 福祉などの社会問題があった.そして入学と同時に 配布された別科先輩の合格体験記(毎年,合格した 学生は後輩に受験前の生活,学習に関しての体験を 詳細に書き残す)に見た県関連問題は, 1間程度で
はあるが出題されていた.
教職教養は,例年どおり教育法規について何題か 出題されていたが,条文とその法律名が一致せず問 題集で勉強した条文のかっこ埋め程度では限界があ ると感じた.同和教育,障害児教育も出題されてい たが,中央教育審議会答申,コンビューター教育,
生徒指導,教育相談等,これから強調される教育に ついても出始めている.ここにも問題になった伝染 病関連が,学校給食法を問う形で出ていた.問題集 学習ではカバーしきれなかった.
専門は,基本は確実に出題され,変化の項目も予 想どうりであった.健康診断の立案順序,伝染病関 連や学校環境衛生基準は法などの本来の問題と,と れらの広がりである学級閉鎖などの措置j養護教諭 の職務おげる対応,問題の
0‑157
ばかりではなく,小児伝染病の水痘,風疹,手足口病なども見られた.
ダイエットなどの心身の健康問題や救急処置事例を 挙げ,その対応と保健指導が関われ,養護教諭とし ての即戦力を求められているように感じた.保健主 事問題の学校教育法条文改正とその理由などについ ては予想したが出されなかった.医学用語はゼミで の範囲で対応できた.J
問題点
毎年受験を終えた学生は「専門科目の結果は自信 があるが,一般教養は手も足も出なかったJr専門科 目は殆ど出来たと思うが,理科や国語,特に数学の 公式が出て来ない」と,一般教養で足を引っ張られ る状況を残念がるが,実際,学生全員の自己評価を 総合しても一般教養
38%
,教職教養45%
,専門教科75%
の出来としている.入学から受験までの期間が 短く,実習体験もないまま試験に臨む上に,殊に一 般教養については看護志向で,早くから専門に学習 傾向が移っており,ハンディが大きい.文字,表現 力などの基礎学力についても,論述が多くなる傾向 の中で今後問題となってくると思われる.熊本以外 の九州全域1
市1
県の養護教諭採用人員が1
名,3
名,5
名と,これらの県の出身者が多いにも かかわらず,殆ど1桁に激減しており,この状況の 中で学生の意欲をどう引き出してい〈かが今後の課 題である.‑ 98‑
要 約
近年,教員採用の現状から教育学部全体で受験対 策が立てられるようになったが,養護教諭の場合は,
養成機関,養成数に比べ,採用の絶対数が少ないこ ともあって早くからの問題であった.殊に特別別科 においては入学後3ヶ月で受験に臨まねばならない.
そこでこのハンディに次の対策を試行して来た r各 県の過去試験専門科目問題分類と内容の分析
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受験 県単位によるグループ編成と学生自主運営による分 類問題の活用」である.1 5
年間の各県別専門教科の集積から,各県試験問題専門科目を「学校保健関連」
と「医学・看護学関連」の
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領域に大別し,キーワ ードが「法J と「変イLであることに気づく.更に,とれを1
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項目に分類すると各々の特徴が見える.共 通する分析結果は r基礎,基本」と「社会の移り変 わりに伴う変動」である.学生相互の協力体制を重 視しながら分析結果を生かしてきた.専門科目につ いてはこの試行によって,毎年成果をみてきたが,課題は一般教養への対策であり,各県の採用激減に 学生の意欲に関しての手だてである.