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視神経脊髄炎病巣における炎症極性の解析

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Academic year: 2021

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所属: 1)新潟大学脳研究所神経内科

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視神経脊髄炎病巣における炎症極性の解析

班      員 河内泉1)

共同研究者 柳村文寛1), 佐治越爾1), 若杉尚宏1), 穂苅万李子1), 柳川香織1), 小野寺理1)

研究要旨

  視神経脊髄炎 (neuromyelitis optica spectrum disorders; NMOSD) は, アクアポリン4 (AQP4) 発 現消失とアストロサイト細胞死に加え, 顆粒球と補体の沈着を特徴とする中枢神経系自己免疫 炎症性疾患である. 中枢神経に炎症性脱髄を引き起こす多発性硬化症 (multiple sclerosis; MS) と は異なる独自の病理像を呈する. 本研究では NMOSD の炎症極性の特徴を明らかにするために, melanoma cell adhesion molecule (MCAM) の免疫染色を行い, MCAM陽性Tリンパ球を解析した.

NMOSDのinitial lesions (IL) / early active lesion (EA) には好中球と好酸球を主体とする顆粒球, マ クロファージ, 活性化したミクログリア, 血管周囲性補体沈着に加え, MCAM陽性Tリンパ球を 認めた. 総Tリンパ球に占めるMCAM陽性Tリンパ球の頻度はlate active lesions (LA) とinactive lesions (IA) に比してIL/EAで有意に高かった. 三次元解析で, IL/EAにはMCAM陽性Tリンパ 球がMCAM陽性血管と近接する像を認めた. MCAM陽性Tリンパ球はinterleukin (IL)-17を産生 すると考えられているため, NMOSD病巣はIL-17を主体とする炎症極性を有し, IL-17が顆粒球 を誘導する可能性が考えられた. 以上からNMOSD病巣はTH17/TC17に偏位した炎症極性を持つ ことが特異な病理像を生む一因であると考えられた.

研究目的

MSと NMOSDは代表的な中枢神経系自己

免疫疾患である. MSでは髄鞘・オリゴデンド ロサイトが障害されるが, 自己抗原は未同定

である. NMOSDではAQP4水チャネルに対す

る自己抗体が産生され, 活性化補体を介して アストロサイトが障害される. MSとNMOSD における「炎症」と「神経変性」の機序が異な

ること, MS でみられる進行性の臨床経過が

NMOSD では稀であることから, 両者の病態

を比較することは重要である1-4

ヘ ル パ ーT 細 胞 に は イ ン タ ー フ ェ ロ ン (interferon; IFN)-を 産 生 す る TH1 細 胞, IL (interleukin; IL)-4 を産生する TH2 細胞, IL-17 を産生するTH17 細胞, IL-10 を産生する制御 性 T 細胞といった異なるサブセットがあり,

それらを誘導するサイトカインのバランスに よって炎症極性が生じる. MSではTH1細胞に よる炎症が主体といわれてきたが, 近年は TH17 細胞の関与も報告されている 5. MCAM は免疫グロブリンスーパーファミリーの膜貫 通糖タンパクで, IL-17を産生するT細胞と血 管内皮細胞に発現し, T細胞と血管内皮細胞の 細胞−細胞接着に働く. MSの再発時の脳脊髄 液と活動性病変では MCAM 陽性T細胞が増

加し, MS の動物モデルでは TH17 細胞が

MCAMを介して中枢神経に浸潤する6.

NMOSD の再発時の脳脊髄液では IL-17 が

上昇し, 末梢血にAQP4特異的TH17細胞が存 在 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 7. し か し,

NMOSDの病巣においてT細胞の極性を解析

した報告はない. そこで, MCAMとT細胞マ

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- 99 - ーカーの免疫染色を用いてNMOSDの炎症極 性を明らかにすることを本研究の目的とした. 研究方法

  NMOSD と臨床病理学的に診断された剖検

例7 例の脊髄組織を用いた. 正常対照として, 非中枢神経疾患剖検例5例の脊髄組織を用い た. AQP4, GFAP, CNPase, MBP, NF, C9neo, Iba- 1, CD3, CD4, CD8, CD20, MCAMの免疫組織化 学を行った. 既報に基づいて, NMOSDの脊髄 病変をIL, EA, LA, IAに分類した.

研究結果

  NMOSD 病変では, 全例で pattern-specific loss of AQP4 immunoreactivityを認めた. C9neo の免疫組織化学ではIL/EA において血管周囲 の活性化補体沈着を認め, HE染色で血管壁の 肥厚とヒアリン化を認めた. NMOSDのIL/EA には著しい炎症細胞浸潤があり, 好中球を主 体とする顆粒球, マクロファージ, 活性化し たミクログリアを認めた. リンパ球の表面マ ーカーの免疫組織化学ではMCAM 陽性T 細 胞を認めた. MCAM を高度に発現する血管の

割合は,IL/EAにおいてLAとIAよりも有意

に高かった (P < 0.001). IL/EAに浸潤するT細 胞におけるMCAM 陽性T 細胞が占める割合 はLAとIAよりも有意に高かった (P < 0.001).

IL/EAではMCAM陽性T細胞がMCAM陽性 血管の外へ遊走する像を認めた.

考  察

  NMOSD の剖検病理組織を用いて, 脊髄病

変の早期では血管壁の MCAM 発現が高く, MCAM 陽性 T 細胞が有意に多く浸潤するこ とを示した. NMOSD の病巣にある T 細胞は MCAMを介して実質に浸潤し, IL-17を産生す ることで好中球を誘導する可能性が示唆され

た. ANCA 関連血管炎では過剰な好中球の活

性化シグナルが病変形成に大きな役割を果た すことが知られている8. NMOSDにおいても

IL-17/好中球によりもたらされるシグナルが

中枢神経の病変形成への関与する詳細な機構 を明らかにする必要がある. ヒト NMOSD の 中枢神経病変は, AQP4抗体と活性化補体によ る液性免疫に加え, IL-17に特化した炎症極性 をもつことが特徴と考えられた.

結  論

  NMOSDの早期脊髄病変にはMCAM陽性T

細胞が浸潤する. NMOSD病巣はTH17/TC17に 偏位した炎症極性を持つ.

文  献

1. Kawachi I, Lassmann H. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2017;88:137-145.

2. Hokari M, Yokoseki A, Arakawa M, et al. Ann Neurol 2016;79:605-624.

3. Saji E, Arakawa M, Yanagawa K, et al. Ann Neurol 2013;73:65-76.

4. Yanagawa K, Kawachi I, Toyoshima Y, et al.

Neurology 2009;73:1628-1637.

5. Kebir H, Ifergan I, Alvarez JI, et al. Ann Neurol 2009;66:390-402.

6. Larochelle C, Cayrol R, Kebir H, et al. Brain 2012;135:2906-2924.

7. Varrin-Doyer M, Spencer CM, Schulze- Topphoff U, et al. Ann Neurol 2012;72:53-64.

8. Yokoseki A, Saji E, Arakawa M, et al. Brain 2014;137:520-536.

健康危険情報   なし

知的財産権の出願・登録状況   特許取得:なし

  実用新案登録:なし

参照

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