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4 上福岡市における福祉コミュニティの形成

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Academic year: 2021

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はじめに

今回の共同研究においては, 研究代表者である稲葉一洋教授の指導・統括の下に調査研究を 進めてきたが, 稲葉一洋は福祉コミュニティについて以下のように述べている。 ここでは福 祉コミュニティを, 仮に 「福祉システムが内在され, 要援助者の需要や支援が適切に行われる 状態にあるコミュニティ」 として捉え, と定義している1)。 つまり, 筆者なりに解釈すれば, 1つに要援護者の需要や支援が適切に行われるような福祉システムが内在されていること, 2 つにその福祉システムが適切に機能するということが福祉コミュニティの要件といえる。 した がって, この2つの要件をコミュニティに定着・発展させることが福祉コミュニティの形成に とって不可欠な視点である。

本章では, 上福岡市の福祉コミュニティを支える人々の意識や活動について取り上げてきた が, 本節では上福岡市の福祉コミュニティの担い手の現状と課題などについて考察していきた い。

1. 福祉コミュニティの担い手

上福岡市の福祉コミュニティの担い手についてみるとき, 同市の主な地域福祉活動の1つに 一人暮らし老人への支援活動がある。 これは 「見守りチーム活動」 と 「一人暮らし老人の会」

が中心となって展開されているものである。 「見守りチーム活動」 とは, 活動の援助対象とな る一人暮らし老人への見守り活動を実施するというものである。 援助対象者1名に対し3名程 度の協力員が日常的に見守り活動を実施するものであり, 平成12年度の実績は市内17支部にお いて援助対象となる一人暮らし老人160名に対して459名の協力者が活動に参加している。

この見守りチーム活動の発足当時 (昭和62年) に資料によれば, ①緊急時の連絡 (民生委員 や消防署へ), ②防災ベルの点検 (電池), ③ニードの発見 (いつもと違う状況等の発見と連絡),

④ 「福寿草」 (老人新聞) の配布 (月1回, 市社協発行) の4つの役割を期待している。

さらに, 「地区一人暮らし老人の会」 とは, 一人暮らし老人の自助組織であり, 会のメンバー は見守り活動の援助対象となる者, 協力者として活動する者も参加している。 地区とは市内17

4 上福岡市における福祉コミュニティの形成

須 賀 和 彦**

*Formation of Welfare Community in Kamifukuoka-shi

**Kazuhiko SUGA (東京国際大学人間社会学部)

キーワード:見守りチーム活動, 一人暮らし老人の会, 住民参加型在宅福祉サービス

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支部を10地区に統合したものであり, 平成12年度の実績では市内7地区で活動が実施されてい る。 この 「一人暮らし老人の会」 は, 昭和51年に 「一人暮らし老人交流会」 の開催にその前史 を遡ることができるという。 昭和57年に 「一人暮らし老人の会」 づくりを地域ごとに進める合 意がなされ今日に至る。 「福寿草第5号」 (昭和62年) には 「一人暮らし老人の会」 の性格につ いて, ①相互扶助団体:助け合い, ②問題提示団体:問題のありかを示し, ③協働 (共同) 団 体:問題解決の一端を他とともに担う, と明確にしている。

上福岡市においては, 社協に団体登録している22のボランティア団体 (会員数472人) に加 え, 10団体程度で上福岡市ボランティア連絡協議会を組織している。 また, 住民参加型在宅福 祉サービスである 「ふれあいサービス事業」 を実施している。 平成12年度の実績で延べ派遣回 数703回, 利用時間は1,586時間であり, 協力員の登録者は35名である。

さらに, 上福岡市社会福祉協議会支部役員27名, 市内3地区に民生委員児童委員98名が活躍 している。 これらの福祉コミュニティを支える人々によって, 現在の上福岡市の福祉コミュニ ティは支えられている。

2. 担い手からみた地域福祉の現状

本研究では, 福祉コミュニティを支える担い手として, 支部社協役員, 見守りチーム活動の 協力者, 一人暮らし老人の会会員, ボランティア団体会員, 住民参加型在宅福祉サービス協力 員および民生委員の協力を得てヒアリング調査を実施した。 ヒアリング調査結果をふまえて担 い手の立場から現状をどのように把握しているかみておきたい。

支部社協役員

*長年の支部社協役員活動の中で, 地域の人々の関わりが密になった。 高齢化が進むことによ り, 取り組みの中で手を貸してあげなければならない部分が増え, 援助内容が濃くなってき た。

*一人暮らしの会や見守り活動についても, 安否確認・緊急時の対応・身内への連絡・行政や 民生委員につなげることも増えてきた。 援助の緊急度が高くなり, 活動の必要性が増してき ている。

*高齢者が増え, 命に関わる問題もあるので, 高齢者の体の具合や顔色を気にかけながら暮ら している。

見守りチーム活動協力員

*見守り活動をしていく時, そこには常にプライバシー (の保持) 問題があるが, もう少し住 民の生活の中に入ることができればと思っている。 地域が大きく変化しようとしていること から, 「私たちは変わらず活動を続けたいと思っている。 だからみんな心配しないで, 大丈 夫だよ」 ということを伝えたいし, できるだけ変わらない活動をしていきたいと思う。

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*見守りチームのできていない人の方が心配である。 対人関係に臆病になっている方には, チー ムができていない。 ご近所の方にそれとなく見守ってもらうようにお願いしている。 また, チームのあることに負担を感じている人もおり, 今年度は遠慮した人もいる。 その方には, 新聞を届けながら会話や見守りをしている。 チームがなくて気になる方には, 毎月訪問する ように心がけている。

*役員もだんだん高齢になっているので, 50代の人にもっと参加してもらいたいと思っている が, 仕事をもっている人が多く難しい。 活動を活発にするためにも, 引き継いでいく時のこ とを考えても, ぜひ若手の人に活動に参加してもらいたい。

一人暮らし老人の会会員

*会員が高齢になっている。 10年ぐらい前には, 会員が買い物など定例会の準備をしていたが, やる気はあるのだが体に自信がないという感じでだんだん頼られるようになってきた。

*会に参加するために, 来ることを頑張っているという感じの人が多く, 楽しみにしていて, ほとんどが参加はしている。 できそうなことは手を出さないでやってもらうようにしている が, 無理をさせないように気を遣っている。 しかし, 全体的にはお手伝いすることが増えて いる。

*役員が 「一人暮らしの人たちが孤独に悩むことなく, お互いが助け合い励まし合って問題を 解決することを目的とする」 という会の目的を地域のお年寄りに話し, 参加の誘いかけをし た。 5年ぐらい前から, 20名を超えるようになってきた。

ボランティア団体会員

*発足当時は, 障害を持つ者4〜5名, ボランティア15〜20名ぐらいだった。 現在は33名と約 200名となり, 15年間の間に10倍近くに拡大してきた。 活動内容も共同作業所, 店舗の販売, 生活ホーム, デイケア事業と拡大してきた。 今年度活動分野の一部が, NPO法人として独 立した。 市や社会福祉協議会等の地域の行事にも参加し, 地域の人にもだいぶ知られるよう になってきた。 今後は, 障害者のニーズの把握, やりたいことをできるように環境を整えて いきたい。

*町並みチェックなどを通し, 地域の現状把握を行って行政へのアクションを起こしたい。

施設と市民とのパイプ役となり, 施設へ外の風邪を吹き込ませたい。

広く市民に対して, 啓蒙・啓発活動を行っていきたい。

住民参加型在宅福祉サービス協力員

*介護保険の実施などもあってサービス利用は減ってきている。 ふれあいヘルパーはボランティ ア的活動で, 収入を期待する人は辞めていった。

*産後のサービス利用が, 5年ぐらい前から無くなった。 食事はレトルト食品, 紙おむつの使

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用, 住宅事情が良くなり, 人の手を煩わせなくても生活できるようになってきている。

*精神疾患の人の家事援助が出てきている。 家事の援助だけでなく, 話し相手などの精神的支 援も必要になってきている。

*家庭奉仕員として活動を始めたころからと比べれば子育て援助が減るなど変わっている。 ふ れあいサービスに変わってからは, チケット制になるなど制度は変わった。 以前うかがって いた家に, 介護保険のホームヘルパーがくるようになったため, 行かなくなった事もある。

仕事はだんだんと減ってきたようには思う。

3. 福祉コミュニティの抱える課題

福祉を支える人々から上福岡市の現状の一端をみたが, 同市の抱える課題について触れてお きたい。

先に同市の主な地域福祉活動である一人暮らし老人への支援活動をみた。 この支援活動に関 わる課題と何か。 1つは, 駅周辺に立地する団地の建て替え問題である。 地域住民サイドに内 在する問題ではないが, 生活基盤の住宅問題は外的要因として同市の福祉コミュニティ形成に 少なからず影響を及ぼすことが予想される。 住民同士のネットワーク関係の変化をともなう可 能性がある。 この点について, 担い手の一人は 上野台団地はこれから建て替えが始まるので, 支部活動がどう変わっていくのか不安がある。 現在行っている活動を, できるだけ継続してい けるようにしたい。 80%近くは戻り入居といわれているが, 現在核になっている人も変わって いく可能性もある。 と述べている。 住民同士の支援ネットワークの復旧, 再構築が課題とな るであろう。

上福岡市は東京への通勤圏内にあるため, 住民人口の社会移動は避けられない地理的環境に 立地している。 他地域からの転入者をどのように地域活動に取り込むかということも検討すべ き課題である。 担い手によれば, 転入してきた人が町内会に入らないことがある。 互助的な 活動が成立しにくい部分もあるように思う 地域としては新興住宅街で, 昔からの人が少な いところ。 一戸建て, 大きなマンションはよいが, 小さいところは難しい。 また, 子どものい る世帯は地域に入りやすいが, 単身, 高齢者のみ, 夫婦のみなどは難しい。 などの指摘があ る。 地域の住民組織である町内会・自治会への加入が少ない現象は, 都市部地域に共通する傾 向であり, 上福岡市においても対応が求められる。

代表的な支援活動の1つである見守り活動も発足後17年余りが経過し, 新たな課題を指摘す ることができるかもしれない。 容易に活動に取り込めない支援困難な住民への対応はその1つ である。 担い手の意見には, 見守り活動のあり方を検討する必要があるように思う。 見守り 活動は, 開放的で心を開く人にはすんなり受け入れられるが, 近所づきあいが苦手な人には難 しい。 本人の同意に関わりなく見守りの必要な人もいるし, チーム編成しづらい人, 近所の協 力が難しい人もいる。 あるいは, 地区の中で, 同居していても孤独な高齢者など, 一人暮し に限らず近所づきあいのない高齢者への働きかけがしたい。 とくに男性が, 近所づきあいもな

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く, 生きがいを持てていないのではないかと感じているので男性への活動を考えたい。 など がある。

地域の抱える課題には, 地域住民自身による主体的参加活動などが不可欠ではあるが, ここ で取り上げたいくつかの課題をふまえて今後の展望をしておきたい。 本研究では, 上福岡市の 福祉コミュニティの担い手を中心にヒアリング調査やアンケート調査を実施させていただき貴 重な意見をいただいた。 そこで, 上福岡市の民生委員, ボランティア, 福祉委員に回答しても らったアンケート調査結果を再度取り上げてみたい。 調査項目の1つにそれぞれの活動に必要 な支援策について調査したが, 共通して 「活動のための情報提供」 と 「研修・学習体制の充実」

の2つの支援策が要望されていた。

それぞれの担い手が 「活動のための情報提供」 や 「研修・学習体制」 を要望する実態をふま えて, それぞれの活動に必要な情報提供や研修を適切に提供する体制は今後さらに充実する必 要があろう。 活動のための情報, 研修・学習が具体的にどのような内容であるのか, 支部や地 区単位での定例会などを活用して, 担い手の率直な意見を的確に把握し実施していくことが求 められる。 稲葉一洋が そもそもコミュニティは住民によってしか創られないことを, 改めて 確認しておく必要がある。 2)という。 多くの担い手, すなわち住民の要望にこたえていくこと が, 今後の上福岡市における福祉コミュニティ形成の要件の1つといえよう。

1) 稲葉一洋 「秩父市における福祉コミュニティの形成」 p.36, 立正大学社会福祉研究所プロジェクト研 究報告書1, 立正大学社会福祉研究所発行, 2001年3月

2) 稲葉一洋 「地域福祉の視点」 p.103, 高文堂出版, 平成12年10月

参考文献

栗原義男 「人々の中で人々と共に」, 栗原義男発行, 1990年

参照

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