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上 昇 変 形 に 関 す る覚 え書 き

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Academic year: 2021

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(1)

Bull.Fac.Educ.llirosakiUniv. Se

上 昇 変 形 に 関 す る覚 え書 き

(SomeNotesonRAISING)

奥 野 忠 徳*

TadanoriOkuno

RAISING(上昇変形)とい う統語変形については,変形文法の枠組みの中で多 くの議論が な され て きた。

その議論の中には,その変形 自体の存在の有無に関わ るもの も含 まれ るが,本稿ではその問題に直接関 らず, む しろその意味的な面に焦点を当て, この現象 の一端を明 らかに したい。

1.

Postal(1974)は,(1,a)と (1.b)について,(1.a)は,̀Ⅰ'Caeserに対す る何 らかの知覚的経験 を持 ち,その経験に基づいて判断を下す場合に用 い られ るのに対 して,(1.b)はその ような含意がない, と い う主張を した。

1.A. IfoundJuliusCaeser(totx)boring.

b. Ifound (that)JuliusCaeserwasboring.

この主張は,Riddle(1975),Steever(1977),fbrkin(1974)等に よって,多少の変更はあ るものの,補強 ・ 増強 され て きた。Riddle(上掲書)紘,(2)について,(a)は彼女が頭がいい とい う旨の Janeの個人的意見に す ぎず,必ず しもその女性が頭がいい とは限 らない, とい う観察を行なってい る。

2.a. Janeknowshertobeintelligent. b. Janeknowsthatsheisintelligent.

それに対 して,(b)では,その女性の頭脳明噺 さが証拠に よって実証 され ていることを合意す る, と言 う。

b rkin(上掲書) も同様の観察を行なっているo 3. WhenIlookedinthefiles,

Iba..,IIf::unnd。thhaet,St:ekWaLe;ie:lc.an')

(3)で,ShewasMexicanは,その真偽が客観的基準に よ り決定で きる性質の命題であ るか ら,(b)の ように, 個人的 ・主観的内容の表現に向いてい る不定詞構文 とは うま くな じまない。逆に,(4)の ように ,個人的意見 が浮 き出るコンテクス トでは,不定詞構文の方が向いてい る。

4・ (:.I

71findthatHarrylSamuSlng IfindHarrytotx amuslng )

,althougheveryoneelsethinkshe'sabore.

この ように,少 くとも知覚や思考を表す動詞では,that節は客観的命題,不定詞節は主観的 ・個人的命題を 表す と考え られ る。

また,良)rkinその他の研究に よ り,TO・BE DELETION (totx 削除変形)が適用 された構文は,そ うで ない構文 よ りも主観的であることが示 されてい る。(5)を考えてみ よう0

5.a. IjustfindoutthatSallyisn'trelatedtomeatall,anditsurprisesmetxcauseIalways considered

herb tOQk 〉mysister.

b. Ialwaysconsideredhim partofmyfurniture.

事DepartmentofEnglishLanguageandLiterature,Faculty3fEducation,HirosakiUniversity,Japan

(2)

(5.a)では,Sallyismysisterとい う命題 の真偽が問題にな る度合いが大 きいので, どち らか と言えば TO‑BE DELETIONが適用 されない文が適 してい るOそれに対 して,(5.b)では heispartofmyfurni tureは,その真偽が問題にな るとは考えに くく,つ ま り,主観的 ・個人的見解であ る度合いが大 き く,それ ゆえ tot光 が削除 された構造が適 してい る。

この ような観察か ら,少 くとも知覚,認知.思考動詞の場合,that節,不定詞節,tot光 が削除 された構 造 は, この順で,客観的 (真偽が問題になる度合いが大 きい)か ら主観的個人的な命題を表す と考え られ よ

う。

上 の観察は,埋め込み文の述部叙述が名詞や形容詞の場合であ ったが,ではそれが進行形や完了形につい ては ど うであろ うか。 もしこれ らが何の制限 もな く容認可能であるとすれば,上で述べた観察は幾分修正 さ れ る必要がでて くるであ ろ う。 なぜな ら,進行形や完了形は,それの主語名詞句を主観的に特徴づけている

とは考えに くいか らであ る。そ こで,文献に現れ ている文法性の判断を見てみ ることに しよう。

Abbot(1973)は,次の ような文法性の判断を下 している。

6.A. Iblievehim tot光 Writingatm k.

b. Itxlievehimtohavewrittenabook.

また Carlson (1979)で も同 じような判断が見 られ る。

7.i. Johnt光1ievesBilltot光 buildingacabin.

tI. Johnt光1ievesBilltohaveeatenagrape .

そ してSt∝kwelletal.(1973)で も同 じであ る。

8.A. Itxlievehim tot光 WOrkingveryhard.

b. Itxlievehim tohaveworkedveryhard.

C. Itxtlievehim tohaveworkedyesterday.

この ような例では,補文が どうい う意味で主観的 ・個人的命題を表 しているのか明 らかではない。 もしこ の ような文が非の打ち所な く容認可能であれば,次の Abbotの観察が正 しいのか もしれない。

Hsemantically,theinfinitivecomplementstoepistemicverbsexpressstates:presentstateswithpredi catenounsandadjectivesandtheprogressivetenses;resultantstateswiththeperfecttenses;andgeneric stateswiththeplainpresenttense."(Abbot,同掲書,p.59)

しか しこの観察では,上記のPostal政)rkinな どのかな り微妙な差が全 く説明できないO さらに,別の 文法性判断を下す母国語話者 も存在す る。Steever(同掲書)は,次の ような文法性の判断を下 している。

9.A. Maryt光IievesJohntohavetm nhonestwithher. b.?辛Maryt光IievesJohntohaveplayedjaialaiatdawn.

Steever(9)について,その文法性の差 の原因については何 も述べていないが,おそ ら く主観性(a)と客観 (b)が役割を演 じていると思われ る。

また,あ るイソフ ォ‑マ ン トは (18の ような文は非常に不 自然であ るとい う判断を下 した0 10.?*Itxlievehim tot光 reading thattm k.

さらに,政)linger(1977)で も次の ような例文お よび判断が与え られている。

ll.77Itxlievethewordtohavealreadycome.

以上の ように,判断は人に よって揺れがあ るように見受け られ る。 これが方言差であ るのか,個人語の差 であ るのか,それ とも全 く容認可能であ るとした人が果 して十分織細にその判断を下 しているのか, とい う ことは今後の研究に得たねばな らないが,少 くとも(9)か ら 佃 の ような判断を下す話者が存在す ることか ら, 不定詞節は,進行形,完了形の場合に も主観的,個人的陳述を表現す るのに好 まれ るとい う説は支持 され る と思われ る。

次に補文の述語が txt動詞以外の場合に 目を転 じてみたい。次 のAbbotの例を考えてみ よう0 12.Hegoestothed00r.Heopensitandwhatdoeshefindbutababyinabasket.Sothen

(::

(Itxli

e v e

that)heyellsfor hiswife.

**Itxlieve him toyellforhiswife.

(3)

ここではheyellsforhiswifeとい う文が一回切 りの行為を表すために用い られている。 この場合は,不定 詞補文を持つ文は全 く容認で きない。

1

それでは,いわゆ る習慣的行為を表す場合は どうであろ うか。個 を考えてみ ようa

13.A.?Webelieve

(:1芸miesitoeatants. b.?Ibelievehim towriteinteresting books.

C.?辛Wetxlievehim togotoschool

に 。::tiay.) d.?*Webelievehim togotoJapanonceayear,

(a)(b)(C)(d)に比べて容認可能性が高い。 (1分と 個 か らどうい うことが推論で きるであろ うか。8分の yell forhiswifeは一回切 りの行為であ った。 これは主語heについての主観的陳述 とは考え られない。客観性 ・ 主観性を一つのスケール と考え るな らば,その述語はおそ ら く客観性の側の極に置 くことがで きよ う。それ に対 して,(13.a.b)eatantSやwriteinlerestingb00ksと,(13.C.d)のgOtO∝h00lonf00t/every day,gotoJapanonceayearは ど うであろ うか。 この二つの グループ間の容認可能性の差は,(a.b)の 述語がその (意味上の)主語の特性 と呼んで よい くらいの (常習的)行為を表 しているのに対 して, (C.d) の述語は単な る習慣的行為を表 しているにす ぎないことに帰国す るよ うに思われ る。 前者を characterizing

2

habitual(特徴づけをす る習慣述語),後者 を simplehabitualと呼ぶ とすれば,characterizing habitualの 方は (どち らか といえば)その特徴づけを され ている名詞句に対す る,主語 の主観的判断にな りやす いのに 対 し,simplehabitualの方は主語の主観を離れた事実 として認識 されやす い とい うことか ら説 明され よ う。

次に,いわゆ る状態動詞を考えてみたい。

(14)a. ?Ibelievehim toliveinTokyo.

b. ?Ibelievehim tolikeicecream.

(14はいずれ も̀unusual'unnatural'と判断 されたが,(13.C.d)よ りほ容認可能性が高い とい うことであ るO

最後に 個 の よ うな例を考えてみ よ う。

15.A. Iconsidertheseclassificationstomoreproperlyap♪Zytosentencesthantoverbsorverbphrases. b.Itwillalsobenecessarytoconsiderthe basecompnenttopermitfreelyextendedgeneration

of‥.

個 は両方 とも言語学論文か ら採 った ものであ る。 ここで(a)apply,(b)permitは状態 とは言えないで あろ う。 しか し,(13.C.d)と全 く同 じ意味での行為 とも言えない よ うに思われ る。 これ らの動詞は抽象 的な意味で使われ てお り,その意味上の主語 の性格,特徴づけを行 っていると考え られ よ う。

以上の議論 よ り,知覚,認知動詞の不定詞補文に生 じ うる一般動詞を,容認可能な ものか ら順に並べ ると 次の よ うになろ う。

16.8.特徴を表す形容詞句,名詞句 (honest.anhonesttx)yな ど) 抽象的意味でのapply.permi tな ど b.状態動詞

(live,likeな ど)

特徴を表す行為詞句 (‑ characterizing habitual) (eatantsな ど)

C.単純習慣動詞句 (‑ simplehabitual) (gotoJapanonceayearな ど) d.一回切 りの動作を表す動詞句

(4)

2.

この節では,(17)の よ うに主節動詞が受動態にな っている文を考察 してみたい。

17. Johnist光Iievedtot光 honest.

能動態の構文が第一節で述べ られた よ うな制限を受け るので受動態 の文 も同様の制限を受け るのではない か と思われがちだが.事実はそ うではない。0月を考えてみ よ うo

18.7*We

(:ilTekve)him togotoschoolonfoot.

この文は 個 の制限に よ り容認可能性が低いが,それに対応す る受動文は完全に容認可能であ る.

19.Heis

(:;iue:ehiitogotoschoolonfoot. 同様のことが 銅 と 餌 について も言える。

20.A.?We

(:iliekVei b.Pigmies are

Pigmiestoeatants,

i::uevgeh:)toeatants. 21.a.?Wet光Iievethejudgetoacceptbrit光S.

b.Thejudgeist光Iievedtoacceptbrit光S.

この よ うに,主節が受動態の場合,その不定詞補文は 且句の (d)を除 く全ての述語を容認す るよ うに思われ る.

この事実は どの よ うに説明で きるであろ うかO筆者は ここで問題 の受動文に対 して,幾分暫定的に,次の よ うな派生に よる説明を与 えたい と思 う。

22.A.Weblievethathegoestoschoolonfoot. lPASSIVE

b.Thathegoestosch00lonf00tist光Iieved (byus).

1

EXTRAPOSITION

C.Itist光Iievedthathegoestoschoolonfoot.

1

A‑VERB RAISINGな ど

d.Heist光Iievedtogoto監hoolonfoot.

派生の段階でA‑VERBRAISINGを使用す ることで,(d)の構造が受け る制約は ,(同 じ くA・VERBRAISING の適用を受け る)seemappearに対す る制約 と同様 のもの とな ることが予測 され, これは経験的に正 しい と思われ る.すなわち,seem appearも 0月の述語を ((d)を除 き)全て許容す る。

23.8.Heseemstot

Iahnon:S.tnestmani・

tI.Thisruleseemstoapplytothisstructure. C.Heseemstolikeicecream.

d.Pigmiesseem toeatants.

C.MaryseemstogotoJapanonceayear.

さらに この分析は,次の よく知 られている現象に説明を与えることができるよ うに思われ る。すなわち, sayとい う動詞は,能動文では不定詞節を伴 う構造に現れ ることがで きないに もかかわ らず,受動文ではそ れが可能であ る。

24.A.*TheysayJohntot光 aCrook.

b.Johnissaidtol光 aCrook.

これ も,(24.b)のす ぐ前の構造が (24.a)の ような ものではな く,実は 餌 の ような ものであ った と考え ることで納得がい く。

25.1tissaidthatJohnisacrook.

同様のことが rumorについて もあては まる。

(5)

26.a.*TheyrumoredJohntot光 aCrook.

b.Johnisrumoredtot光 aCrook.

C.ItisrumoredthatJohnisacrook.

派生に よるこの ような説明が正 しいか どうかは, もっと精密な検証を必要 とす るが,現在 のところ有望な仮 3

説の よ うに思われ る。

1.文献か ら関連あるものを引用す ると次 の通 りであ る。

(i)?It光lievehim towriteb00ks.(Abbt,1973,p.58) (ii) Johnt光lievesBilltobuildcabins.(Carlson.1979,p.42) (iii)*H xlievehim toworkveryhard.(St∝kwelletal.1973.p.570)

ここで もまた判断が人に よってまちまちであ り, この/ミラつ きを どう解釈す るかは今後の研究に待た ねばな らない。

2. どの述語が characterizingで, どの述 語がそ うでないかは,多分に語用論 の問題であろ う。

3.同 じような派生に よる説明がKuno(1975)で 日本語について与え られ ている。

REFERENCES

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参照

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