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童謡における音階構造の研究

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(1)

童謡における音階構造の研究

著者 柳沢 信芳, 笹瀬 奏子, 森角 敦

雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 人文・社会・自然科学

65

ページ 197‑212

発行年 2015‑03

出版者 静岡大学教育学部

URL http://doi.org/10.14945/00009204

(2)

静岡大学教育学部研究報告 (人 社会 自然科学篇)第65号 (20153)197〜212

童謡における音階構造の研究

A Study ofthe mュ sic structure in a children s song

      "

Nobuyoshi YANAGISAWA, Kanako SASASE, Atsushiヽ10RIKAKU

and A/1idori ISHIBASHI

(平26年 10月 2日受理)

は じめに

昨年 8月 に『童謡唱歌名曲全集』(全8巻と別冊お よび続編各1巻)が京文社 よ り再 び干J行 された。 もともと『童謡唱歌名曲全集』(全8巻)お よび『明治回顧 軍歌唱歌名曲集』 は昭 6年10月 よ り昭和7年10月 にかけて、やは り京文社 よ り刊行 された ものであった。それが平 成元年 に 『童謡唱歌名曲全集』(全9巻と別冊1)と して覆刻、刊行 された経緯 を経て、 この たび新装版 として再び刊行 された ものである。

わが国の音楽事情 を顧みると、明治維新以降、欧米の文化 を急 ビッチで取 り入れ、音楽にお いて も洋楽が盛 んにな り、音楽大学お よび教員養成課程 を持つ大学の音楽科のカリキユラムを 見て も欧米の音楽 を主体 として今 日に至 っている実情 は否めない。

そ ういったわが国の音楽の状況の中で、この 『童謡唱歌名曲全集』 を改めて手に した とき、

日本の歴史の古来か ら現代 に至るまでの文化の潮流が脈 々と受け継がれ、人々の心の底 に流れ ていることを思わずにはい られない。今 日に至 る日本の音楽事情の中で、初版か ら80余年の歳 月を経て再び再販 に至った 『童謡唱歌名曲全集』の刊行 された意義 を見つめなお し、そこに存 在す る日本における音楽の意味 を、主 として音階構造の面か ら見直 しなが ら、 日本人の音感覚

について問い直す機会 と捉 えて、今回の考察 を行 うこととした。

 考察に当たつて

明治の開国以前に日本 にあった音階は陽旋法、陰旋法 といつた ものであつた。これ らの旋法 は代 々歌い継がれて きた民謡やわらべ唄の音階を調べて くる中でわかって きたことの ようであ る。

「わらべ唄」の由来について、この全集にある別冊の総解説によると「『わらべ唄』 という称 呼は遠 く奈良時代 より江戸時代まで通用 していたと思われる言葉であって く童謡〉の漢字を宛 てられることが多かったようです。今 も昔 も子どもの文化においては 〈物語〉と く歌〉のふた つが大きな柱 となってお り、そのうちの 〈物語〉にはかつて 〈童話〉の漢字が宛てられ、く

つ教育学研究科音楽教育専修

"教育学研究科音楽教育専修 め教育学研究科音楽教育専修

(3)

沢 信 瀬 奏

らはべのものがた り〉と訓まれていましたが、それに倣うなら、〈童謡〉は 〈わらはべのうた〉

と言1まれていたはず。」 とあり、今 日の「わらべ唄」は 〈わらはべのうた〉から変化 したもの、

としている。ところで、「わらべ唄Jの採集、記録は近代以前には皆無であつたようである。

西洋の記譜法が入ってきた「明治、大正期」においても「わらべ唄」の採譜を行 う人はなく、

昭和前期になってようや く行われた、という経緯のようである。       '

明治時代の開国とともに西洋の音楽が入って くることになり、音階構造においてもそれまで 日本にあった旋法 と西洋音階 (本論では長音階および短音階を意味する標語とする)の 2つ 共存するようになった。ここで生まれたのが西洋の音階に日本旋法の特徴を盛 り込んでいった、

和洋折哀策ともいえる四七抜 き音階の登場である。譜例1)に示 したのは、「二長陽旋1」 日本旋法を西洋音階の「ハ長調」上に移すと「ハ長四七抜 き音階」が形作 られる例である。こ こで扱 う日本旋法の概念は小山清茂・中西覚著による「日本和声」によるものである。

譜例1)

陽旋法 (二長陽旋1) 長音階 (ハ長調)

四七抜 き音階 (ハ長四七抜 き音階 第四音、第七音 を括弧付 で表示)

本論では譜例1)の考 え方に沿って、 日本古来の「 わらべ唄」 を明治・大正時代の作 曲家が 和洋折衷策に努めなが らも、近代 日本社会の中に「童謡」 としていかに復活継承 してきたのか

の足跡 について、音階構造 を考察することで見てい きたい と思 う。

文中の譜例の表示 は、まず選曲 した楽譜 を載せて、次にその曲を日本旋法でみた場合の調性 を示 し、続いて西洋音階における調性 を示 し、そこにおいて第四音、第七音の扱いについて述 べ た。(文中では四、七で表記)曲が長い ものについては都合 によ り後半 を省略 した。

考察 に際 しては8巻という膨大な量の作品のため、今 回は第1巻、第5巻、第8巻を取 り上 げて、その中か ら調性の異なる作品を選択 して考察の対象 とした。第1巻を石橋翠、第5巻 笹瀬奏子、第8巻を森角敦が担当 して総括 を柳沢が行 つた。

198

(4)

 考察

(1)第1巻

『さくら』 歌/石原 和三郎

譜例2)    

侵美にr」 00】

譜例3)イ I13陽1

童謡 における音階構造の研究

/米国 風

199

1‑3奪

Ξ ][=藻 ト

譜例4)卜長調 四 は第15小節 で1回使用 七 は使用 な し

この楽曲は 卜長調でかかれているが、実際メロデイ上には5つの音 しか使われていない。 し かもハ音は3段目の5小節 目に出て くるだけである。唯一第四音のハ音が出て くる部分の歌詞 は「オボゼイ」→「大勢」となっている。「花の下で大勢遊ぶ」というように強調させるため に第四音が用いられていると考えられる。

「櫻』 歌/葛原 しげる /小松 耕輔

 

2

       

譜例7) へ長調  四七抜 き音階 譜例6)卜調陽旋1

石 原 和 三 郎 曖     

よ く見ると第四音、第七音が一曲を通 して使われていない。 これは典型的な四七抜 き音階で

(5)

瀬 奏      石 橋  

あり、また日本音階の 卜長陽旋 1で ある。全体的に跳躍進行 していない楽曲であるが、四度跳 躍 している部分では「櫻」「花」など大事な言葉が多 くみられる。サクラもハナも本来言葉の

もつイン トネーシ ョンに従って上行 している。

「さくら』 歌/西村 酔香 /室崎 琴月

譜例8)

譜例9)ハ調陽旋1

この楽 曲は変 口長調でかかれてい る。 しか し変 口長調 の第四音が省略 されてい るので、ハ長 陽旋1であることがわかる。第七音 は3段目の3小節 目に1度出て くるので五音音階で はない が、 このイ音 は順次進行 のための経過音 と考 える と、ハ長陽旋 1と い うことは間違いない。

譜例10)

亜 肇

オ ‐   '

変 口長調 七は第13小節で 1回 使用 四は使用 な し

帥とが鳴る』

譜例11) 5

員機に【」‑1041

3.→

=Ⅸ

三 三 藻 卜

譜例12)ホ調陽旋1 四七抜 き音階

(6)

童謡 にお ける音階構 造の研究

一見二長調でかかれているように感 じられるが、二長調の第四音の 卜音と第七音のハ音が使 われていないことに気づ く。これは五音音階のホ長陽旋1である。

音の並びに注 目すると3段4小節 目に4度の跳躍進行がみられる。歌詞は「靴が鳴るJの

部分である。楽曲の題名でもある言葉を唯‑4度跳躍することで強調を表 しているように感 じ られる。

F夕焼小焼』 歌/中村 雨紅 /草川 信

201

譜例14)

譜例15)二調陽旋1

B褻

,J̀

ハ長調  四七抜 き音階

この楽曲は調号が付いていな くハ長調でかかれているように見 える。 しか しハ長調の第四音 と第七音が省略 されているので、二長陽旋1であることが明 らかである。

特 に音の並びに共通性 は見当た らないようだが、楽曲中に4度の跳躍進行が2回見 られる。

いずれも歌詞の文末に施 されてお り、終止する様子 を表 しているように感 じられる。

『春 よ末い』

譜例17)

/相馬 御風 /弘田 龍太郎

* L dr: (l -..1

          

  , 4               ,

譜例16)

(7)

´

´ 沢 信 瀬 奏 ・ 森 角 石 橋   

譜例18)口調陽旋1 譜例19)イ 長調 四七抜 き音階

イ長調の第四、七音の二音 と卜音が省略されているので口長陽旋1であることがわかる。4 段 目の1小節で唯‑4度の跳躍をしている。歌詞はオンモヘ→外への部分であるため、外で遊

びたいという感情を強調させ、春を待ち遠 しく思う気持ちが伺える。

限 と小鳥』 歌/野口 雨惰 /本居 長世 W・

譜例20)

alt t: (J-ro.I

譜例21)ホ調陽旋 1 譜例22)変ホ長調 四は複数 回使用 七 は使用 な し

4イ節区切 りになっているこの楽曲は区切 りの最後はすべて「キ   ソ」 という歌詞であ る。音形 もどれ も似ているが、4段目は5度跳躍することで他 との違いを出 している。第四音 4回出て くるがすべて刺繍音 として出て きている。

(8)

童謡 における音階構造の研究

(2)第5巻

『春の 日』

譜例23)

/西條 八十 /草川 信

譜例24)二調陽旋 1 譜例25)ハ長調 四、七 の使用 な し

ハ長調の第四音及び第七音が1回も使われておらず、完全な陽旋法であると言える。音階の 中に半音音程が含まれないため、楽曲全体を通 して澄み切つた明るさが感 じられる。半音音程 を含まない陽旋法にはごつごつとした印象を受けがちだが、この曲では4拍子の中の第 1拍 と 3拍には人分音符での跳躍音程の使用が避けられている。そうすることで自然なレガー トを 生み、春の穏やかさを表現 しているのだろう。

『お守のお里』

譜例26)

/野口 雨情   /藤井 清水

譜例28)イ 短調  四、七の使用 な し

203

譜例27)ホ調陰旋2

イ短調の第四普及び第七音が 1回 も使われておらず、さらに第六音のF音も使われていない。

本来の陰旋法は半音音程が2つ含まれるため哀愁を帯びた雰囲気を感 じるが、この曲では第六 音を省 くことで半音音程が 1つ になり、どこか物寂 しいような不安定さを感 じる。第5小節 と 9小節は「ナノハナ」という同じ歌詞が使われているが、音型が対のような形になっている

ところに面白さを感 じる。

(9)

204 沢 信   瀬 奏   森 角

『赤 とん1劉

譜例29)

オ ´     t夕 ′ ― ´ ―  ァ ノ ー ● ― 

譜例30)卜調陽旋1 譜例31)へ長調 四、七の使用なし

へ長調の第四音及び第七音が1回も使 われてお らず、完全 な陽旋法であると言える。音階の 中に半音音程が含 まれないため、 この曲も楽 曲全体 を通 して澄み切 った明るさが感 じられる。

基本的に四分音符には長2度音程 を、人分音符 には跳躍音程 を当ててお り、心地の良い抑場が 生 まれている。中学校歌唱共通教材 で もあるこの曲が完全 な陽旋法の形 をとっているとい うこ

とは非常 に面白ぃ。

「七つの子』

譜例32)

/野口 雨情   /本居 長世

譜例33)イ調陽旋1 譜例34)卜 長調 四は3回使用 七 は使用 な し

卜長調のように聞こえるが、よく見ると第七音は1回 も使われていない。また、第5小節及 び第15小節に使われている第四音のC音は、いずれも順次進行 としての扱いである。仮にこの 部分 を第 1拍 のH音で伸ばしてしまっても、楽曲の流れに大 きな支障は来さないであろう。 し か し、第11小節には強拍にC音が現れる。さらに「からす」という歌詞の語頭で もある。この ようなポイントとなる部分にあえてC音を使つて印象を与えることで、西洋音階と日本音階の 融合 を試みたのであろう。

1 ‑31   め を ― し た  ぃ ― ― ―   =

(10)

童謡における音階構造の研究

/野口 雨情   /三宅 延齢

『二つ蝶 々』

譜例35)

譜例36)二調陰旋3 譜例37)卜短調 七の使用な し

譜例39)ホ調 陽旋 1

卜短調のように聞 こえるが、 よく見ると第七音 は 1回 も使われていない。二調陰旋3の場合、

上行の場合 はC音、下降の場合 はB音が使われるが、 この曲 も例外 な く次の音へ と上がるとき にはC音が使われ、次の音へ と下がるときにはB音が使われている。陰旋法の持つ2つの半音 音程が多用 され、哀愁 を帯びた雰囲気 を感 じる。

『つ くし』

譜例38)

/林 柳波   /宮原 禎次

譜例Ю)二長調 四、七の使用 なし

二長調の第四音及び第七音が 1回 も使われてお らず、完全な陽旋法であると言える。音階の 中に半音音程が含 まれないため、 この曲も楽曲全体 を通 して澄み切つた明るさが感 じられる。

2度音程 をあま り使わず長3度音程 を多用す ることで、人分音符の弾み も相 まって軽快 な雰 囲気が生 まれ、つ くしの可愛 らしさを表現 しているのだろう。

(11)

『子守唄』

譜例41)

譜例42)卜調 陰旋3

譜例43)ハ短調 七の使用 な し

/林 柳波   /深山 桂

ハ短調のように聞こえるが、よく見ると第七音は1回 も使われていない。 卜調陰旋3の場合、

上行の場合はF音、下降の場合はEs音が使われるが、この曲も例外なく次の音へ と上がると きにはF音が使われ、次の音へと下がるときにはEs音が使われている。陰旋法の持つ2つ 半音音程が多用され、哀愁を帯びた雰囲気を感 じる。

『鰐の子』

譜例44)

/員田 梅村 /佐々木 す ぐる

譜例45)口調陽旋1 譜例46)イ長調 四は1回 使用 七 は3回使用

イ長調の音階構成音が全て使われている。第四音のD音が 1回 、第七音のGis音3回 使われているため、イ長調のように聞こえる。 しか しよく見ると、第七音の扱いはいずれも経 過音的である。第14/1N節には強拍にD音が現れるが、歌詞の語頭ではなく、さらに経過音的な 扱いであるため、あまリウェイ トが置かれていないように感 じる。一方で、第7月節、第11月 節、第15小節、第19/」節に現れる印象的な跳躍音程は、いずれも陽旋法 らしさを感 じる。西洋 音階と日本音階の積極的な融合を見て取れる。

206

(12)

童謡 における音階構造の研究

『土筆 と山羊』

譜例47)

譜例48)変口調 陽旋1 四、七 の使用 な し

譜例51)嬰へ調陽旋1

変 イ長調の第四普及び第七音が 1回 も使 われてお らず、完全 な陽旋法であると言 える。音階 の中に半音音程が含 まれないため、 この曲も楽曲全体 を通 して澄み切 つた明るさが感 じられる。

2度音程 をあまり使わず跳躍音程 を多用す ることで、人分音符や十六分音符の弾み も相 まっ て軽快 な雰囲気が生 まれ、牧場での土筆 と山羊の楽 しげな様子 を表現 しているのだろう。

『肩たたき』

譜例50)

      '  ,'

〜後略

譜例52)ホ長調 四、七 の使用 な し

ホ長調の第四普及び第七音が 1回 も使われてお らず、完全 な陽旋法であると言 える。音階の 中に半音音程が含 まれないため、 この曲 も楽曲全体 を通 して澄み切つた明るさが感 じられる。

基本 的に四分音符 には跳躍音程 を、人分音符 には長2度音程 を当ててお り、ゆつた りとした様 子 と小刻みな様子が交互 に現れ、母 と子の肩たた きの穏やかな情景 を表現 しているのであろう。

,!illa

(13)

208 沢 信 芳   瀬 奏 子  

/小田島 樹人 1.  

:許.ち 実書 (3)第8巻

『ひよこ』  /島木 赤彦

譜例53)

『つみ草』

譜例56)

譜例57)二調陽旋1 譜例58)ハ長調 四は使用 な し 七は第11小節 で1回使用

タ レ   ピ ● ゛ ● ア   

譜例55)卜 長調 四は第3小節で 1回 使用 七は使用 な し '

冒頭のヒヨコという歌詞に3度の跳躍が使われてお り、実際に「ひよこ」 と発音する際のイ ントネーションと近 く感 じる。また、続 く歌詞にオマヘノのオ ーマに2度の進行が使われて いることで、この曲の中に唯―の第四音が出て くるが、これはヒヨコとオマヘという歌詞の違 いを出すためにこのような第四音が強調 した使われ方をしているのではないかと考える。

/深山 桂 /深山 桂 21. 

第四音は使われておらず、第七音が 1回 だけ使われている。曲全体 として跳躍進行が多用さ れているため、第11小節での第七音を含めた順次進行に安定感を感 じることができる。よっ てこの曲の中では滑 らかさを作るために第七音が大 きな役割を担っている。

(14)

童謡における音階構造の研究 209

『春の日』

譜例59)

/西條 八十 /成田 為三 π 春

譜例60)口調陰旋3 譜例61)ホ短調 四は第7、 9小節で5回使用 七 は使用な し

旋律 に第七音が使われていないが第四音は5回使われている。一般的には旋法の第1核音 ま たは第2核音か ら始 まるが、口調陰旋3の4音か ら始 まっている珍 しい例である。

『雲雀』  /林 信一 /草 

調 瑯 の       4.雲   

    ― 摯

":  僣 疇

メ ー   

譜例63)卜 調陽旋1 譜例64)へ長調 四は第1、 2小節で2回使用 七は第4小節で 1回 使用

第四音 は2回、第七音 は 1回 使われているが、いずれ も1拍の中で付点8分音符 に続 く16分 音符であ り、非常 に短い経過音 として使われている。そのことか ら、あ くまで も日本音階 を中 心 として西洋の音階をIFtり 入れ ようとした作 曲家の意志が推汲1できる。

冨彗A彗

=

   

やや●

̀、

f̲・やか に

Aldrlte

(15)

210

『水車』

譜例65)

『植林の歌』

譜例68)

沢 信   瀬 奏 ‐ 森 角

/原 まさる /小日嶋 樹 人 20.  ,しζ慇●゛

  ● ● 小 日嗜,入̀̀

譜例66)口調陽旋1 譜例67)イ長調 四は第11小節 で1回使用 七 は使用 な し

第七音 は使われてお らず、第四音 は第11小節 に 1回 だけ使われている。第9小節か ら第11小 節 にかけて同 じリズムが3回繰 り返 され、 この曲の中で一番盛 り上がる部分 に第四音が使われ ることによつて丸 く収め られて しまっているように感 じる。 この音 は二点ホ音 に した場合の方 が旋法的にも自然であるため、作 曲者の脱 日本的な意図があつたのではないか と考 えられる。

/三木 露風 /山田 耕作

24.横 林 の 欧

二長調 七 は第11小節で2回使用

四は第1、 5、 7、 10、 15/Jヽ節 で5回使用

第四音が5回、第七音が2回も使われ、二長調の ように見 えるが、いずれ も経過音的な性格 が強い。第11小節では「楽 しい」 とい う歌詞に第七音 を使 うことで豊か さを助長するような表 現 になっている8

譜例69)ホ調陽旋 1

(16)

童謡 における音階構造の研究

/中村 雨紅 /山本 正夫

34.坊 や の お 家

子 ● 嶽 風 に

『坊やのお家』

譜例71)

譜例72)ホ調陰旋2

譜例73)イ短調 四は第11小節で2回使用 七 は使用 な し

第四音 は2回使 われ、第七音 は使 われていない。第11小節 では第四音が使 われることに より 9小節 か ら第12小節 にかけて繊細 さが生 まれ、 曲の初 め と終 わ りに2回ずつ 出て くる最高音 へ のオクタープの跳躍 との対比が 出来上が り、全体 として急  急 の構成 をな している。

『ゆらんこゆらり』 歌/久保 田 宵二 /森 義八郎

譜例74)       40。 ゆ らん と ゆ ら い

す ら,ときれ い に

譜例75)ハ調 陽旋1 譜例76)変口長調 四は使用 な し 七 は使用 な し

第四音 と第七音が抜かれ、ハ調陽旋 1に あたる5音で構成 されている。第3小節 と第7小 を比較 した とき、音が上昇 している第3小節では2拍目の頭にラの歌詞が きているが、音が下 降 している第7小節では2拍目の裏拍 にラの歌詞が きてお り、同 じ歌詞で も音が上昇するか下 降す るかあ違いでアクセン トの位置が変わつで くることが読み取れる。

(17)

沢 信  

 考察のまとめ

今 回の考察では第1巻か ら7曲、第5巻か ら10曲、第8巻か ら8曲、計25曲が分析の対象 と なった。 ここでの音階の特徴 を挙げると、「第四音の使用 な し」の ものが2曲、「第七音の使用 な し」の ものが9曲「第四音および第七音の使用な し」の ものが11曲「第四音お よび第七音 の使用 あ り」の ものが3曲であった。

この結果か ら、 まず「第四音および第七音の使用 なし」の ものが多いことか ら、西洋音階上 に書かれていて も音階構造の点では日本旋法の性格 を保持 している作品が多いことが うかがえ る。

次に多いのは「第七音の使用 なしJである。第七音は西洋音階では導音 に当た り、音階の構 成上 この導音か らその上の主音の間隔が半音音程であることが重要 なこととなっている。 この 第七音がないことで導音の影響がな くな り、西洋音階の性格が薄 くなることか ら、 ここでは 日 本音階の性格 を保持することに努めているもの、 と思われる。

「第四音の使用な し」の ものは2曲あ り、譜例7)の Fさ くら』 と、譜例56)の Fつみ草』

が該当 している。 これ らの曲で第七音の使用頻度 をみるとそれぞれ 1回 である。加 えてその使 い方 をみると、経過音的性格が強いこと、及び8分音符 とい う短い音価で記 されていることか

ら、西洋音階を取 り入れなが らも、 日本音階の性格 を保持 しようとす る傾向が うかがえる。

最後 に「第四音お よび第七音の使用あ り」の ものが3曲あ り、譜例44)の「鰐の子』 と、譜 62)の 「雲雀』、および譜例68)の FItL林の歌』が該当する。『鰐 の子』では第四音 は 1回 使 用 し、第七音 は3回使用 しているが、いずれ も滑 らかな下降音形の中での経過音的使用である。

F雲雀』 では第四音 は2回使用、第七音 は 1回 使用 している。いずれ も16分音符 の短い音価 で 書かれて経過音の性格が強い。『植林の歌』では第四音は5回使用、第七音 は2回使用 している。

ここに再度譜例 を掲載するが、第

1、 5、 7、 15小節 にある第 四音 (G)は順次進行での経過音的 1生格 をもっている。それに対 して 10/1ヽ節 にある2つの第四普及び第 11小節 にあ る2つの第七 音 (Cis)

は拍頭 に位置 し、それぞれの音 を強 調するような使い方 をしている。 こ の第三段 は曲のさびの部分で もあ り、

そのような使い方が曲想 に一層の盛

り上が りをもたせて効果を挙げていると考えられる。

以上の考察を通して、童謡の音階において一見西洋音階のように見えても実は日本の伝統的 な旋法が中心的役割を果たしていることがみえて くる。この度、この曲集が年月を経て再販に 至ったことをみても、日本の風土の中に脈々と受け継がれてい く「 日本人の音感覚」を再認識 せずにはいられない。

近年、日本の文化がクローズアップしていく時代を迎えて、国際社会の中でいかに日本の音 楽を位置づけてい くのかが課題 となりそうである。

34.植 林 の 欧

参照

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