男 女 平 等 と 女 子 保 護 立 法
(二)
高橋保
男女 平等 と女 子保護 立法(二)
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目次まえがき
一︑男女平等と女子保護立法の動向1国際連合
21LO・EC3諸外国
二︑男女平等と女子保護立法の現状1男女平等と女子保護立法の現行法制
2男女平等の現状と問題3女子保護立法の現状と問題
(以上第十巻二・三合併号)三︑労基研報告書の批判的検討
1労基研報告書の特徴と背景
2労基研報告書と実態把握3労基研報告書の具体的内容
e基本的考え方口男女平等の法制化
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国一般女子保護の解消
四母性保護の充実
四︑男女平等法案の検討
1体系と目的
2差別禁止の内容
3救済機関
(以上本号)
五︑男女平等と女子保護立法の論議
1保護ぬき平等論
e過保護論⁝の台頭
口男女平等阻害論の展開
2平等優先︑保護充実・拡大論
3私見‑条件整備論への展望i
あとがき1今後の課題1
(以上次号)
三︑労基研報告書の批判的検討
1労基研報圧口書の特徴と背景
一︑一九七入年十一月二〇目︑労働大臣宛に提出された﹁婦人労働法制の課題と方向﹂についての︑労働基準法研究
会の報告書(以下報告書という)は︑1女子労働の実態︑H現行法制︑皿諸外国の動向︑W現行規定の問題及び方向︑
等の構成からなっている︒しかしその内容については︑慎重な文章上の書き方も手伝ってか︑複雑かつ多様的で理
解︑把握についてきわめて至難なものとなっている︒そこで︑まず報告書全体の位置づけを理解するために︑その特
徴と背景について検討してみたい︒
男女 平等 と女 子保護 立法(二)
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報告書の第一の特徴は︑男女平等の推進と女子の保護立法(産前産後の休暇︑育児時間を除く)の解消である︒すなわ
ち︑報告書は︑雇用における男女平等法の制定を全面に押し出すかわりに︑それとひきかえに時間外︑休日︑深夜︑
危険有害業務︑坑内労働︑生理休暇などの女子の保護立法を基本的に解消していくとしている︒
第二は︑母性保護の縮少である︒すなわち︑従来から労基法が規定する時間外︑休日︑深夜︑危険有害業務︑坑内
労働︑産前産後の休暇︑育児時間︑生理休暇等については︑一般にいわゆる母性保護の規定として理解されてきた︒
ところが︑報告書はこのうち産前産後の休暇︑育児時間のみを﹁母性保護﹂とし︑その他のものはこれから分離して
﹁一般女子の保護﹂としている︒そして︑このなかに生理休暇を含めていることがとくに注目されるのである︒
第三の特徴は︑女子労働者をめぐる諸条件の変化をことさら強調していることである︒すなわち︑報告書は女子労
働者をめぐって︑生活様式や労働態様︑作業環境などが︑労基法の制定当時と比較して向上︑変化してきたことを強
調している︒
第四は︑実態把握についての特徴である︒すなわち︑報告書は国連︑ILO︑諸外国の動向について比較的詳細に
検討し︑さらにおおくの資料を駆使してわが国の実態把握に努めている︒しかし︑後者については官公庁の統計資料
に依拠している点がとくに目立ち︑そのためか︑これまで一般に指摘されてきた女子労働者をめぐる実態およびその
問題点とははるかに遊離したものとなっている︒
第五の報告の特徴は︑男女平等確保のための視角の欠落についてである︒すなわち︑報告書は女子の保護立法につ
いての存廃論のみに終始し男女平等の確保の見地から︑それらの保護立法のうち可能なものを男子にも拡大すること
によって男女の労働条件を引き上げていくことの視角が欠落している︒
以上︑報告書における主な基本的な特徴についてのみ指摘してきた︒しかし︑報告書それ自体は多角的な見地から
とりくまれており︑このほかにもおおくの特徴を指摘されうるのであろう︒
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二︑つぎに︑以上のような内容の報告書が提出されるようになった背景について検討してみよう︒
まず︑報告書の北且凧として︑国際的な動きを無視することができない︒一つは︑一九七五年の国際婦人年世界会議
の採択した︑雇用における男女平等に関する﹁メキシコ宣言﹂およびそのための﹁世界行動計画﹂があげられる︑と
くに後者の世界行動計画は︑一九七五年から八五年までの一〇年間にわたる国内行動計画の指針として︑つぎのよう
に宣言している︒﹁政府は︑婦人労働者に対する機会と待遇の平等︑同一労働同一賃金の権利を保証することを明示的
な目標とした政策及び行動計画を策定すべきである︒﹂これにより︑日本政府としても雇用における男女平等に関す
る国内政策を急がなければならなくなった︒同報告書は︑この国内政策の指針として提言にされたものといえよう︒
さらに︑報告書の背景をなすものとして重要なのは︑同じ一九七五年のILO第六〇回総会があげられよう︒同総
会は︑﹁婦人労働者の機会及び待遇の平等に関する宣言﹂およびこれを促進するための﹁行動計画﹂を採択している︒
わけてもここでとくに注目されるのは︑女子労働者をめぐる保護か平等かの国際的論争を背景に︑ILOとしてはじ
めて労働時間︑深夜などの女子の保護立法について再検討すべきである︑とする考えをうちだしていることである︒
この考え方は︑報告書の作成にあたって重要な影響を与えたものと思われる︒
さらにまた︑雇用における男女平等をめぐる諸外国の動きも︑報告書に重要な影響を与えたものといえよう︒とく
に︑最近のアメリカやイギリスでは︑この分野について比較的積極的なとり組みを示している︒アメリカでは︑早く
も一九六三年に﹁男女同一賃金法﹂を制定し︑翌六四年には﹁公民権法第七篇﹂およびそれを改正した一九七二年の
コ雇用機会平等法﹂を制定している︒またイギリスは︑一九七〇年に﹁男女同一賃金法﹂︑そして︑一九七五年には
﹁性差別禁止法﹂などを相ついで制定している︒報告書は︑こうした諸外国の動きに歩調を合せようとしたものとい
える︒
こうした国連︑ILO・諸外国などの国際的な動きのなかで︑報告書はそれらを十分ににらみあわせながら︑しか
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もわが国の情勢をふまえて提出されたものといえよう︒
つぎに︑報告書の背景として考えられるものは︑女子労働者をめぐる国内的な動きである︒これについては︑一九
(王)六〇年代からの政府︑独占資本による女子労働力政策が強く影響を与えたものといえるであろう︒
一九六〇年代になると︑わが国の経済は︑戦後の出生率の低下︑高学歴化による若年労働力不足をかかえこみなが
ら︑高度成長に突入し︑大幅な技術革新の促進と単純︑不熟練労働の需要を高めていった︒その結果︑これにかわる
ものとして︑政府.独占資本により女子労働力の積極的活用が考え出されてきた︒かくて︑ここに女子労働力政策が
登揚してくるのである︒
まず池田内閣は︑その﹁所得倍増計画﹂のなかの﹁労働力流動化政策﹂について︑若年労働力不足などの代替とし
て︑全般的な女子労働力の活用の考え方をうちだすにいたった︒続いて一九六三年の﹁経済審議会﹂は︑﹁人口の半
分を占める婦人の能力を経済社会のすべての分野において活用することは︑人的能力政策の重要な課題である﹂とす
る立場から︑経済秩序における婦人労働力の再評価︑婦人の就職問題︑パートタイム制度の活用を含む﹁婦人の能力
開発﹂政策をうちだした︒さらに一九六九年になると︑経済審議会労働力委員会は︑その報告﹁労働力需給の展望と
政策の方向﹂のなかで︑若年労働力不足の補充として中高年家庭婦人のパート・タイマーについての大量雇用政策を
うちだした︒
また︑同じ一九六九年には︑東京商工会議所が︑急激な女子労働者の職場進出を背景に﹁明年度の労働力政策に関
する要望﹂として︑はじめて労基法の﹁全面的な洗い直し﹂を提起するにいたった︒これをうけて労働省は︑最速同
年九月に﹁労働基準法研究会﹂を設置して︑女子労働問題を含む労基法の全般的な検討を指示している︒
一九七〇年になると︑東京商工会議所は︑﹁労働基準法に関する意見﹂書を発表し︑そのなかで︑ωパートタイマー
の労働基準の明確化︑②女子の時間外労働の制限緩和︑㈲女子の危険物有害業務の就業制限緩和︑鰯生理休暇規定の
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削除︑㈲女子深夜業の禁止緩和︑などについて提起し︑このうちωから個を早急の検討事項とし︑㈲から㈲を長期の
検討事項とした︒
やがて一九七四年になると︑労基研は﹁医学的︑専門的立揚からみた女子の特質﹂と題する報告書を第二委員会専
門委員報告として提出した︒その主な内容は︑ω母性保護と一般女子の保護とを区別し︑とくに出産保護を強調して
いること︑②生理︑つわりなど個人差の大きいものを一律にとり扱うことの再考︑㈹労働時間︑深夜業をめぐる女子
のおかれた社会的環境の重視︑等であった︒そして︑第二小委員会の委員長︑有泉教授はこれらの専門委員会の報告
書の内容は︑実態調査や研究をふまえたものであって︑労基研報告書をつくるときに大いに参考になったといわれて馳・
他方︑一九七四年=一月になって︑男女平等をめぐる論議が活発になってきた国内外の情勢を反映して︑労働省に
男女四人の研究委員からなる﹁就業における男女平等問題研究会議﹂が組織された︒この会議の目的は︑わが国の就
業における男女平等問題についての実情及び問題並びに必要な対策の基本的方向についての調査研究をすることにあ
(3)った︒その後︑同会議は二年後の一九七六年一〇月に︑その調査結果の報告書を提出している︒それによると︑ω実
情については︑採用︑職場配置︑教育訓練︑昇進・昇格︑賃金︑定年・退職などにわたって︑女子差別が存在すると
している︒②またその背景については︑﹁男は外︑女は家庭﹂という社会通念や職場の終身雇用︑年功賃金制が行わ
れていること︑さらに時間外︑休日︑深夜等の労基法上の女子の法護法制が合理的理由がなく存在していること︑な
どについて指摘している︒個さらに︑そのような女子の差別待遇に対する対策の基本的方向として︑社会通念の是
正︑行政指導の強化︑職業指導︑訓練の充実︑社会環境の整備などと並んで︑女子保護の必要範囲の明確化をあげて
いる︒ここでは︑とくに時間外︑休日︑深夜など女子の保護立法が合理的理由がなくなっているとしていることが注
目される︒