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船舶共有者の一考察一中華民国・フィリピン一

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船舶共有者の一考察

一中華民国・フィリピン一

志  津  田 氏  治

 航海企業の大資本性と危険性とを克服するために工夫された船舶共有制度は,中世より 近世にかけての最も主要な企業形態であった。 しかし今日的には近代的な株式会社制度の 発展につれて次第にその姿を没し,ごく小規模な航海企業にのみ見られる現象となり,今 や殆ど「忘れられた法律上の芸術品」になっている実情である。それにもかかわらず海商        (註D

諸国家とりわけイギリスのような先進国においてすらも,依然船舶共有に関する若干の規 定を置いているのである。 (英商船5条,独商489条以下,仏商219条以下,日商693条以下)本稿 の研究対象国である中華民国においても10ケ条の定めをしているが(中商13条以下),これ は恐らく過去の遺物的な立法例を無批判的に踏襲したものであろう。ここでは海事法史研       (註2)

究の一里塚として中華民国の船舶共有制度を考察することにしてみたい。

(註1)竹井廉「海商法改正への雑考」 (京城帝国大学法文学会論集)215頁

(註2)ブィリピン商法典589条以下にも船舶共有制度に関して多少の規定を設けている。Arturo

   M.Tolentino, Commercia1:Laws of the PhilipPines, Vol.1.1952.P.84.

一 船舶共有の内部関係

 (1)規定上の特徴 船舶共有とは数人が一船舶を共有し,これを共同の利用に組織する 組合的な企業形態を指すものである。従って法的には民法の組合の規定が適用されるほかに

(堕民667条以下,中民667条以下),商法は特別の規定を置いている(日商693条以下,申商13条以下)。

       (註1)

しかし,これ等の内部規定の在り方は,任意規定であることを原則とするものであり,船 舶共有者の特約つまり定款をもって任意に定めることができると同時に,また変更をもな

し得るものと解すべきである (小町谷前掲書143頁,寺尾前掲123頁)。ゆえに船舶共有の内部 関係は定款自治を本則とするものといえよう。わが国なり中国の海商法ではこの点を明確 にする条文がないけれども,ドイツ海商法によると 「船舶共有者相互間の法律関係は,こ れ等の者の間に締結された契約によって先ず定められるものとする。合意で定められてい ない限り,次の諸規定を適用するものとする」(柱掛490条)旨を定めている。以上のよう に船舶共有体の内部関係の第一の基準を共有契約に置くことにより,その自治性を明自に 認めているのである。

(註1)合名会社の内部関係が補充的な性質を有する任意規定であるのと類似する(鳥賀陽然良「船舶

   共有の本質」商法研究3巻1頁以下)。

(2)

78

 (2)業務執行 船舶共有の業務執行については,各共有者の持分の価格に従い,その過 半数をもってこれを決することになっている (日商693条)。このことは中国海商法のみな

らずフィリピン商法にもみられる現象である。すなわち中国海商法の13条によると「共有 船舶の処分其の他共有者の共同の利益に関する事項は各共有者の持分の価格に従い其の過 半i数をもってこれを決することを要する」 (共有船舶之慮分及其他豊漁有人共同利益有關之事項 慮按身共有人慮有章々之領値以其過半数決之)と定め,フィリピン商法の589条でも同様のこと を明かにしている。このように船舶共有の運営は多数決主義によるものであるが,この多

       

数決たるや民法の組合のような頭数主義によるものではなくして,株式会社の株式多数と

   角 ● ご o ● ● o

同一じく持分の多数主義である点に著しい特色を示しているのである。ここにいわゆる資本 団体的な特徴が窺われるのであり,従って過半数持分の船舶共有者は,株式会社の大株主 め地位において,企業の指揮実権を把握することが可能であるわけである。ゆえにただ一 人の共有者でも,持分の価格が過半数に達するとぎは,単独にて業務の執行ができるごと になる(bである。しかし実際的には船舶共有者は,船舶管理人を選任し,業務の大部分は 船舶管理入が専行するものであることを注意しなげればならない。 1

      む   リ ゴ

 ととろで ここで先ず 「持分」の意義が問題となる。 ドイツではこの持分を船舶持分

(Schiffsparten)と称し,イギリスでは船舶の所有権が常に64のSharesに分たれるこ とを規定する(英商船5条)。 小町谷博士によると「持分とは船舶共有者の共有する総財

      (註1)

産に対する持分の意である」(要義上巻143頁)と解されている。ここでいう総財産には,そ の最も重要なる構成部分である船舶のほかに,店舗・航海業経営のために必要な総財産を 含めている。なお寺尾博士は,「船舶共有者の持分は各共有者が共有船舶の上に行うこと を得べき一般支配権の範囲限度なり。換言すれば各共有者に属する船舶所有権の分量を謂 う」(商法原理5巻海商濁21頁)ものとする。けれども持分そのものの本質については充分 検討されていない。すくなくとも合名会社の持分と同じく,一つは各共有者の船舶共有体 に対して有する地位を意味する場合と,二つは共有財産に対して各共有者の有する分け前 を示す計算上の数額を意味することがある(尤も持分を組合契約上の自益権を意味し,利益配当 請求権をその核心であるとする見解もある。松田二郎「会社法概論」359頁)。しかして,ここで 持分の価格と称するときは後者を指すものと解してよく,より具体的には共有財産に対す

る割合を意味するものである。しかも船舶その他の共有財産の価格は常に変動し場合によ っては持分の価格が零または負債超過の場合があることも考えられる。また船舶共有者が 持分の価格の過半数という多数決によりうるのは船舶の利用に関する事項(小町谷博士は「

船舶を商行為をなす目的を以て航海の用に供することに関する事項」に限るとされる。要義上144頁)

に限定されるものである(日商693条,仏商220条,早早491条,蘭商334条)。この点について中 国海商法の13条によると、「共有船舶の処分其の他共有者の共同の利益に関する事項:は各共 有者の持分の価格に従い其の過半数をもってこれを決することを要する」 (共有船舶之三分

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凹凹他与共有人共同利益有關之事項慮按各共有人台有部扮評価値以其過半数決之)旨を明示している。

本条は船舶共有体において,共同の利益に関する事項を決議する場合の決議方法を規定し 起ものに外ならない。ただ中国海商法で若干疑いを残しているのは,多数決で決定できる

      

事項どして「船舶の処分其の他共同の利益に関する事項」ど定めているために,船舶の処 分を如何に解釈するかであろう。概ね船舶の処分と称するときは船舶の売買その他の譲渡

行為を指すものである。従って船舶共有者の多数決をもって,船舶の譲渡等の決定をなし うるものであろうか。もしもなしうると解するなちば,船舶共有め目的である船舶の利用 以上に多数決を許すことともなり,多数決の不当な拡張ともいえ.るであろう。立法諭とし てはこの文字を削除することが妥当であろう (鈴木・石井「申華民国海商法」上8頂>6ぢと よりこの場合の決議の仕方であるが,わが国は二三諸外国でも明文を置いていない。従っ て別段に会議招集に関する規定も存在しないから持ち廻り決議の方法でもよいのである(西       (註2)

島前掲19頁)。以上のように持分多数主義は,・船舶共有の通常の業務事項に限るものであっ て,たとえば定款の漏出,定款の規定又は船舶共有の目的に反する事項,船舶の譲渡委付,

あるいは長期係船のような業務外の事項については多数決を強行することができない6わ が国を始め中国法ではこの点に関する明文はないけれども,共有者会員め決議の一致を必 要とするものと解されている(小町谷前掲割4偵,竹井前掲書98頁)。ドイツ海商法では船舶 共有体決議を,通常決議と特別決議とに分け, 後者については総共有者の同意決議を必要 とすることを明示している。(二二49條の2項では,社団法人の定款に相当する船舶共有契約の変 更,共有契約で定めた営業目的外の事項を特別決義事項どしている)。充分参考に値いするところ

である。

(註1)Temperley,s, Merchant ShipPing Acts,P.8.イギリスでは通常船舶共有者(Co・owners)

    の関係は明白な契約によって規整されている。船舶の管理は,持分(Part)を所有しない    Ship s husbandあるいはShip s managerに委託されている。もしもその間に契約がなけ

   れば,多数決の原理で運営される。尤もその場合には異議を有する少数者の利益も適切に保護     されうることを定めている。Abott, Merchant ShipPing,14th ed, Part I・℃hap・III;瓢a    clachlan, Merchant ShipPing,7七h ed., Ghap. III.

(註2)船舶の利用事項の決定については特別の方式を要求せず,各共有者は会議を開催して議決する     のが通常である。但し個別的に意思を問うでも差支えないと解する(松波博士は・この場合に    必ずしも全共有者の意思を問う必要はなく,過半数の意思が確定すると,他の共有者の意思を     問う必要はないとされる。)松波博士「日本海商法」167頁   1  、     、

 (3)持分買取請求権 既述のように船舶の利用に関する事項についてジ船舶共有者の議 決権は持分の価格を標準とするために,異議のある共有者は多額の持分を有する者の歳見 に従わなければならない。そこで株式会社における少数株主権の制度と同じような趣旨で,

少i数持分権者保護のために特別の場合に持分の買取請求権を認めている (日商695条)。こ

      

の持分買取請求権のこζを別名船舶共有者の持分強売権と称するζ=とるある (小町谷博士丁

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船舶共有者の持分競売権」研究1巻163頁以下)。ところで,この持分買取請求権の法的な性質 であるが,これは異議を主張する少数持分権者が他の共有者に対し相当の代価をもって自

・己の持分を買取るべきことを請求することのできる一種の形成権 (Gestaltungsrecht)

であって,相手方の承諾の如何にかかわらず少数者各自の一方的な意思表示をもって権利 を行使することのできるものである。いま中国の海商法を中心としながら諸国の立法例を 検討してみよう。

 ω 中国海商法ではその16条2項で「共有者が債務を発生せる管理行為に対して,かっ て同意を拒絶したる場合には其の債務については自己の持分を他の共有者に委棄して其の

責を免かれることができる」 (共有人封於登生債務之管理行為会経拒絶同意者關於此項債務得委棄

其磨有部扮於他共有人而免其責任」旨を定めている。本条の立法精神も,上述のように申国海 商法の13条が,共有者の共同利益に関する事項に関しては,持分の価額を標準として過半 数により決定できることを可能にした反面に,決議に敗れた少数持分権者を保護しようと したものであることには疑いがない。ところが本条が対外関係の条項であるか,それとも 対内関係の条項であるか異論のあるところであるが,有力な見解によると持分の委棄され

る相手方が債権者ではなく他の共有者であることを理由に,対内関係を捉えたものである と結論している (鈴木・石井「中華民国海商法」上94頁)。いまこれを日本法と比較対照して,

両者の相違点を指摘してみよう。先ず第一点に中国法は一般的に管理行為に関する決議に 同意しない共有者の保護を対象とするのに対して,日本法では新航海または船舶の大修繕 をなすべきことの決議に異議のある共有者の保護を対象とする。つぎに第二点として中国 法では管理行為の実行後に結果を判断して去就を決めることを要求するが,日本法ではそ の実行の決議後または決議の通知受領後(決議に参加しなかった場合),三日内に去就を決定 することを必要とされている。このことだけからすると,中国法の方が保護の範囲が広い        ことになろう。しかし第三点として中国法では債務を免れる場合に無償でその持分を委棄

しなければなら添いが,これに対して日本法の場合には肴三つまり相当の代価をもって買 取ることを請求することができるのである。尤も中国法のときにも,委棄によって持分が 当該共有者の手を離れて,他の共有者の所有に帰することは日本法の委付の場合と何等異 るところがないが,外の共有者がこの持分の上に持分の割合に応じて共有権を有するもの であるか,それともこの持分が他の共有者の割合に応じて分割されるものであるか明かで

はない。 (独商501条3項は「委付された船舶持分は,他の船舶共有者にその総持分に対する比例に応 じて帰属するものとする」として後者の点を明示する)。

 (ロ) ドイツ商法でも,その501条で船舶持分の委付について規定する。すなわち新航海,

航海終了後の船舶の修繕,船舶債権を弁済することの決議に異議のある船舶の共有者は,

自己の船舶持分を他の共有者に委付(持分の無償委付)して自己の責任を免れることができ ることを認めている。中国海商法のように異議権をもつ船舶共有者の保護の対象行為を,

ただ漠然と管理行為一般としないで,わが国の商法のごとく対象行為を限定する態度をと

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っていることは注目に値いするところである。また船舶共有者が持分委付の権利を行使す るときは法定の期間つまり決議のあった日から三日以内(決議に出席しなかったときは,決議 の通知俵3日以内)という要件があることも,中国法と異り日本法と同様である。ただ日本 法と相違するところは,ドイツ商法では裁判所手続又は公証人手続で権利行使の旨を宣言

していることであろう。蓋しこれは手続の慎重さを期待するためのものであろう。

 の イギリス法でも船舶の利用に関する事項は持分額の多数決によるべきものとされて いる。元来イギリスでも一個の親睦的な現象であるとみられ他国と多少特異な形熊をとっ ていることを注意しなければならない。とりわけここで問題となるのは航海の決議をなす にあたり,少数持分権者が船舶管理人あるいは担保提供の権限のある者に,異議の通知を なしたるときは外の共有者は少数持分権者の持分額に相当する担保を提供して航海をなす ことができる。またそれと同時に航海より生ずる損益は,全く少数持分権者の利害に効力 を生じないものと解されている。とくにイギリスでは異議者の権利に関しては海事裁判所

(Court of Admiralty)が大きな保護的な役割を果していることをみのがすことができ

ない。 (Temperley s,P.9.)

       (註1)

(註1)Chorley&Giles, ShiPPing Law,3ed,,P.6.なおフランスでは明文がなくとも,少数持分    権者が多数持分権者の決議により自己の有する権利を侵害されたならば,商事裁判所に対して    訴訟を提起することができる。また同時に損害賠償の請求をもなし得るものとされている(烏    賀陽然良「仏蘭西商法」皿海商70頁)。フィリピン商法592条参照。

 以上各国の持分買取請求権の在り方を素描してきたが,つぎにわが国商法の695条につい て多少考察を加えてみることにしよう。先ず少i数持分権者が自己の持分を他の持分権者に 買取請求(遅払)を行うためには(1)船舶共有者が新に航海をなし又は船舶の大修繕をなすべ きことを決議したること,(2)この決議に不服のある共有者が法定の期間内に他の共有者又 は船舶管理人に対し相当の代価をもって自己の持分を買取るべきの通知を発することが必 要である。いまこれを分嘉して検討を加えてみよう。e船舶共有者が新に航海をなレ,又 は船舶の大修繕をなすべきことを決議したることを要求されている。フィリピン商法592条 では発航港において船舶の修繕・礒装・食料についての決議(resolution)となされてい

る。 (申国法は管理行為・画商では新航海・航海終了後の船舶の修繕・船舶債権の弁済とする)。

 (a)決議があることを必要とする。船舶共有契約にもとずいて共有者間に別段の特約 あればこれに従うことを要するも,この特約がないときは商法693条の,いわゆる持分の 価格による過半数の規定によって,有効な決議がなされることを要求される。(小町谷前掲 論文166頁)。この点は中国海商法などにおいても同一に論ずることができる。(独商491条,

仏商220条2項)。フィリピン商法でも過半数(majority)の決議に少数者が拘束されるこ とを明かにレている(二三592条)9もしも有効な決議がないときは,そのなされた決議は

(6)

,82

当然に他の共有者を拘束する効力がなく,商法695条を適用する余地は殆どないといわざ

るをえない(同説小町谷前掲論文166頁)。

    (註1)

 (註DSc血aPs, Seefecht,§501,Anm.1a.

  (b)新に航海なすべき旨の決議があることを要する。航海の意議は商法典上諸種の意

       

味で捉えられている。森博士の見解によると一つは船舶の運航つまりnavigationの意味

       つ         

がこれである (商法684条1項)。二つは船舶を何港より何港に仕向くるかを表現すること で,いわゆるvoyageがこれにあたるであろう。商法典上の航海は多くこれを意味するも のといわれている(森清「海商法原論」25頁)。ところでここで称する新なる航海の意議であ

るが,先ず松波博士によると,新航海とは特別の航海である。従来の航海と性質もしくは 態様の異る航海である。同種の航海にして第一の航海をなした後第二の航海をなすような

ものは含まれないと解されている(日本海商法169頁)。つぎに小町谷博士によると,新なる 航海をなすとは,先になした決議に包含せられない航海をなすことをいうものであると解 釈されている(小町谷前掲論文166頁)。森博士もこの見解に傾かれている(森前掲書80頁)。

ゆえにただ一航海を終了して,さらに航海をすることは必ずしもこれを新航海とみること

、1よできない。、あるいは屡々みかけるところであ一るが,決議において一定の区域を一定の期 間航海することを議決したような場合,あるいはその決議で船長に一定の期間任意に運送

、契約を締結して,.航海をなすことができる権限をあたえるときに,たとえ船長が一航海を 終了して更に航海を継続するときと難も.このζとを新航海と称することはできない。同 様に一航海を終って再び航海をなすための新礒装を要するときでも,これを新航海とみる

ζ、と蝕できない(小町谷前掲論文167頁)。けれども・その航海が決議に含まれないも9)であ ると,たとえ先の航海の勢門をそのまま利用できる場合といえども平な航海であるという ζとができるであろう(市村博士「海商法論」128頁,片山博士「海商法通義」28頁)。どのよう な航海が前の決議に含まれたものと看徹しうるかば個別的な具体的判断によらぎるをえな

.鉛ρなお若干問題点として指摘されることは・共有船舶が最初の航海を行う場合に・その

、学海に関する決議に異議のある者は,商法690条の権利を行使できるものであろうかとい

.う轟であ5う。有力説はこれを肯定する(小町谷前掲論文168頁)。.     ・

、.(註1)Boyens, Seerecht, IS.262. Wagner, S今erecht,銭220.

  (c)船舶の大修繕をなすべき旨の決議があることを要する。わが国の海商法でも屡々 修繕とひう文字を使用し,大修繕く日商700条4号・695条1項),あるいは「修繕スルコト能

、ハサル小キ」 (日商717条・718条)もしくは.「修繕費」 (日商718条2号)等いろいろであるα

覇ね修織こは大修繕と通常修繕とがあり,大修繕は通常修繕と修繕不能との中間に位置づ

妨ら皐るものであるが,如何なる程度の修繕をもって大修繕とするかについては多少見解

      

が分かれ履。第づ説によると,修繕の費用と範囲によって決定すべきであるとする考え方

       て$¢hap§,§496 An埠.4)と,第:ゴ説では費用の程度だけをもって判断すべきであるとい

(7)

・う開方もある(小町谷前掲論文168頁)。この両説を比較するときに,究極的には修繕の範囲 の大小は,費用の多寡に帰着するものであるから,費用の外に修繕の範囲を要件として考 慮することは殆ど実益なきものと考えぎるをえない。なお第二説によるべきときでも,ど の程度の修繕費をもって大修繕と判断するかは実に容易なことではない。この点注目に値

       の  り   

する見解として,船価の価格と修繕費との関連から,これを把握しようとする学説がある。

(松波前掲書170頁)、。これによると修繕費が船価の四分の三であるときは修繕不能であると み,また修繕費が二分の一あるいは三分の一に及ぶときでも同じく修繕不能であるとして 捉えようqとするのである。しかも頻繁な修繕が必ずしも大修繕になると判断することはで

きないとされるのである。なお判例上も「商法中所謂大修繕ナル語ハ修繕申ノ大ナルモノ

ヲ謂フ」 (大判・明44年第213号民録18輯202頁)とし, もしくは「商法548条(現行商法695条)

大修繕ナルや否やハ其修繕ノ程慶二依リ決スヘキ事実問題ニシテ会テ同一程度ノ修繕を為 シタル;1トアルト否トハ之ヲ問ハサルモノト解スヘキモノトス」 (臨地判明43年第7140号新聞 8a2号26評論1巻商法24頂)る・有力学説もこの判例の見解を支持・し・大修繕であるかは事実 認定の問題に帰着するものと解している。(片山博士「海商法通義」29頁)。かくてまた,そ の修繕が大修繕であると判断できる限り,その修繕の原因なり費用填補の方法(た.とえば保 険金でその1部を填補する場合)の如何の問題は・何等持分買取請求権の行使に影響をあたえ

るものではない。

.(註1)ドイツでは大修繕としないで航海終了後の修繕とする(独商501条1項)フィリピン法でもつぎ    のように表現している。ART.592.一The resolution of頓e majority with regard to the    repair, equipment, apd provision of the vessel in the port of departure shall    billd the minority, unless the minority mernbers renounce their interests, which    must be aquired by the other co−owner, afte妻ajudicial appraisemellt of the    valure of・the portion or portions assigned.しかし単なる船舶の修繕としていることを注    治すべきであろう。フ軌ンスはこの点に触れていない。 \

 (d一)法定の期閻内に他の共有者又は船舶管理人に対して相当の代価をもって自己の持 分を買取るづき旨の通知を発したる一ことを必要とする一(日商695条2項)。決議に列席した者

      り      

は,その決議の日より三日内に通知を発することを要するものであり,いわゆる発信主議 を採用し到達主義をとるものではない(3日内に相手方に到達する必要はない。独商501条2項)。

この通知の解怠な権利喪失の理由とな『るものと解される (片山博士「海商法通義」795頁)。

従って後日異議を述べることができなくなる。ところで多少とも問題となるのはこの決議 に列席した者の範囲であるが,直接決議の場所に参加したものはもとより,聞接に代理人 を通してその決議に列席させたもの,あるいは書面もしくは暗黙の意思表示によって賛否 の意思を表示した者をも含めるものとされている(小町谷前掲論文170頁)。つぎにこの決議 に加わらなかった者は,その決議の通知を受けた日の翌日からから三日内に発信すること        ノ  タを要求されているが,ζこで問題となるのは,通知を受けたこζつまり受領の意味である9

(8)

84

明文はないが,当該決議の内容を表示することが必要である。(表示の程度は事実問題である)。

しかもその通知は船舶管理人又は他の共有者より発信されたものでなければならない(日商 695条2項,独商501条)。なお上述のように持分買取の通知は発信回議をとるものであるが,

通知の相手方は船舶管理人かまたは共有者の全員であることが要求されている。尤も後者        (註1)

の共有者は異議を述べない共有者で,もしもその中で代表者が選任されておれば,その者 に対して発信すれば足りるものと解される。持分買取の請求通知であるが,その形式は必 ずしも文書によることを必要としない。口頭でも差支えない。通知の内容も自己の持分を 買取るべき旨の意思表示があれば足り,相当の代価を表示することは要件ではないと解す

る説もある。 (小町谷前掲論文175頁)。

(註DAbbott, p.119片山博士前掲書30頁

 (e)つぎに持分の買取請求の効果を考察してみるに,第一に異義者が持分の買取請求 の通知を発したるときは,他の共有者は当然相当の代価(争のあるときは裁判所の判断による)

で,その持分を買取らなければならない。ゆえに持分移転の効力は,法律上当然に通知を 発したるときに生ずるものと解される (但し森教授は,買取請求権は形成権にして,買取請求の 通知の到達により他の共有者は当然買主となる。前掲書80頁)。そのことは同時に異議のある共有 者の持分を喪失する第二の効果を生ぜしめるのである。ところで若干問題となるのは,異 議者が通知を発した当時に,船舶が航海中である場合には,その航海より生ずる損益は他 の共有者に帰属すべきものであろうか。商法688条を根拠に他の共有者に帰属するものと 解釈したい(Schaps, Anm・11S・120)。最:後に第三者に対する効果としては,船舶登記

簿および船舶国籍証書に持分変更の登記をなした後でなければ,その移転を対抗すること ができないものと解する。(日商687条)。

       (註1)

       (註1)船舶所有権の移転は登記を経るに非ぎれば第三者に対抗することを得ず(船舶所有椹之移韓非    経登記不得対抗第三人)と唐国商法11条は明示する。フィリピン商法573条参照。

共有者船長は各共有者に対して持分の買取請求権をもつものである (共有者の買取義務の割 合は,507条により,その持分数の比例による)。尤もこの場合の持分買取請求の意思表示は,

船舶共有体(Reederei)に対するものではなく,各共有者に対するものでなければならな い。蓋しこれは船舶経営事項ではなく,各共有者間の内部関係であるからである (西島・

「独逸海商法」78頁)。つぎに申国法の特徴として指摘されなければならないことは,「前項 の資金の丁丁は当事者の協議に依りてこれを定め,協議成立しないときは裁判所において

これを裁判する(前項資金数額依当事人之一協議定之協議不成時由法院裁判之)としていることであ

ろう。わが下め商法によると,相当の代価と明示しているだけで,申国海商法17条2項の ように償還額の決定に関して規定を設けることを金銭で払戻す意味であると解釈されてい る(鈴木・石井「申華民国海商法」上98頁)。 この中国海商法の規定の仕方は,まさにフラン ス商法が「解任されたる船長が船舶の共有者であるζぎは共有権を放棄し?これに応ずる

(9)

出資の返還を請求できる」(29条1項)としているのと実に酷似しているものである。これ に対してわが国の商法では,他の船舶共有者に対して相当の代価をもって自己の持分を買 取るべきことを請求できる旨を明示しているのであり,ドイツ商法の態度を踏襲するもの

である(552条)。 ドイツ商法によると,共有者である船長の請求により,他の船舶共有者 は専門家の決定すべき評定価額を支払うて,その持分を譲受けなければならない。ゆえに これを裏返していえば,

 (f)船長の持分買取請求権 船舶所有者は何時でも船長を解任できるために(申商39条,

日商721条),船長が船舶共有者の一員である場合にも持分の価額を標準として,船舶共有 者の過半数の同意があれば解任できるのである。尤も正当の理由なくして解任きれた場合 には損害賠償を請求できることは至極当然のことであろう(海商39条2項,日商721条1項但書)。

      (註1)

さらにその外に船長である船舶共有者に対しては共有関係からの脱退も認めている。たと えば申国海商法の17条によれば「船舶共有者が船長なる場合において解任せられたるとき は共有関係を脱退し且つその持分の資金の返還を請求することができる」 (船舶共有人為船 長而被辞退時寸退出共有関係並請求返還野晒有部扮之資金)旨を定めている。ここでいう持分の 資金の返還とは,持分をしない。第三に「第一項に規定する共有関係を脱退する権利は解 任せられたる日より起算して一箇月を経るも行使せざるときは消減する」 (第1項所規定退 出共有關係早耳自被辞退之日起経1個月不行使而消滅)旨を定めている。従って中国海商法によ れば,共有関係から脱退する場合には解任の日より一ケ月内.にしなければならないことに なる。これに対してわが国の商法では,権利行使の期限を明示することなく,ただ遅滞な

       ●  ●  ●

くと表現しているにすぎない(独商552条も同趣旨である)。

(註1)イギリス法でも船長が同時に船舶共有者である場合にも解任が可能であり,また船長が予告な     しに解任されたときは損害賠償の請求もなしうるのである。小町谷博士によると,この場合に

   自己の持分を如何に処分できるかについては判例がない(小町谷前掲論文18頂)フィリピン

   商法606条ではつぎのように明示する If the caPtain should be a co・owner of the ves    se1, he may not be discharged unless the ship agent returns to him the amount    of his interest therein,……

 (9)持分の譲渡制限 わが国の商法の立場からすると,船舶共有者たる地位つまり持 分は,その船舶管理人である場合を除いて他の共有者の承諾を得ることなく,自由にその 持分の全部又は一部を他人に譲渡できる仕組をとっている (日商698条・独商503条)。この

ことは民法上の組合なり合名会社に比較して極めて濃厚な資本団体的な特徴を示すもので あるといえよう。これに対して中国海商の14条一項によると 「船舶共有者が其持分を売却 するときは其の他の共有者は同一価格をもって優先してこれを買取ることができる」(船舶 共有入出責其懸有部扮時其他共有人馴以同一旧格儘先趣旨)旨を定めている。本条はもとより船 舶共有者の持分売却の規定であり,各共有者も諸国の立法例と同じく自己の持分を単独で 譲渡するζとを一応有効と是認しているのである9しかし本条のもつ異色は,他の共有者

(10)

86

に優先して買取請求権をあたえていることであろう。まさにこの点では譲渡の自由が制限 されているものといえよう。ところが中国海商法の場合には他の共有者に何時優先して買 取請求権を行使させるか,またこの権利行使は単独で足りるものか,それとも共同たるこ

とを要するものであるか法解釈上の疑義を残している(鈴木・石井「中華民国海商法」上85頁)。

      や      り

また中国海商法ではその条文で売却という語を使用しているが,相続なり贈与のときには これに含まれないと解すべきであろう。さらに他の共有者が持分を優先一して買取る場合淀 無儂なのふ,それとも相当の代価を提供すべきであるのか必ずしも明らかではない。以上 のように本条は非常に不備な規定であると称することができようポなお,これと直近をも つのは持分譲渡の形式であるが,わが国商法は別段の定めを置いていないので口頭なり女

       

書で差支えない。しかし中国海商法によると書面の作成と官庁の証明を受けるこ一とを譲渡 の効力要件としている(中商10条,中民760条)ことで,わが国と異るものがある。1ナれどもそ の移転を第3者に対抗するには登記を要求している点ではわが国と同じである(中商11条)。

この点ドイツ商法でも,持分譲渡は船舶共有の変更をきたすために船舶登記簿(Schiffs士・

egister)に登記することを命じている(二二503条)。つぎに特筆すべきことは中国海商法 の14条2項で「船舶共有権の一部分の売却によりて該船舶が中国の国籍を喪失すべきとき は共有者全員の同意を得ることを要する」 (因船舶共有椹一部扮之出責致該船舶喪失三三國籍二 面止立有人全体之同意)どしていることであろう。この条文はまさにドイツ商法の503条の規       (註1)

定を承継したものであるといえよう。すなわちドイツでも船舶持分の譲渡によって,ドイ ツ国の国旗掲揚権を喪失することとなるときには,他の共有者全員の同意を必要とするも のであり,またそのことを譲渡契約成立の要件としているかちである。従って中国海商法 なりドイツ海商法の態度を貫けば,持分の売却によって船舶が国籍を喪失ずるとぎには,

兵有者全員の同意がない限り,その譲渡は無効となるのである。ところがわが国の場合に は}譲渡を有効視して,ただ他の共有者に持分買取請求権なりその競売請求権を認めてい る点で根本的な相違を示している(日商702条1項)。

      

(註1)中国海商法3条では中国人民所有のものは中国船舶とする(中堅3条2号〉。ゆえに共有者の     一人でも非申国人がおれば中国船舶たる国籍を失うものである(中商14条2項参照)。日本法     も同様である。ドイツでは1951年の船舶国旗権法で,船舶持分の過半数がドイツ国民の所有に     属し,かつ船舶管理人がドイツ国民であることを要し,かっこれ等の者の住所又は主たる事務

   所がドイツ基本法の領土内に存在することを要する(1章2条2項)。

 (h)船舶管理人の報告義務船舶管理人は船舶共有者のために業務を執行しかつ船舶共 有者のための代理人である。従って船舶管理人には一定の義務がかされでいる。すなわち 中国海商法の22条によると 「船舶管理人は毎航海の完成後において其の経過状況を共有者

に報告することを要する」 (船舶経理人日毎次航海完成後応将其経過情形報告準共有人) こ:とを

明示している。この条項はわが国の商法701条に相当するものであるが,その内容には顕       (註P

(11)

著な差異があることを注目すべきであろう。すなわち中国海商法の場合には単に航海の終 了後にゴその経過状況の報告をおこなえばよいのであるが,わが国の海商法によると船舶 管理人がとくに帳簿を備え,これに船舶の利用に関する一切の事項を記載すべきことを命

じているのである(日商70條↑項)。 そのうえに,わが国の場合には毎航海の終了後その 航海た関する計算をして,各船舶共有者の承認を求めることも要求しているのである(日商 70條2項)。尤も中国法による場合といえども,船舶共有者と船舶管理人との法律関係は 委任により結ばれているために実質的には大差はないと思う(平民528条以下)』

(註D中国海商法22条は中国民法540条の特則を形成する。ドイツでも船舶管理人に対して記帳の義    i務(二二498条),計算書提出の義務(独商499条)を命じている。このように船舶共有体の場    合に1航海単位に計算処理していくことは申世的な「船舶共有団体は各航海毎に更新されなけ    ればならない」(WUstend6rfer・Neuzeitliches Seehand61srecht,1950。 S.157)という思    想の流れをもつものであろう。詳細は西島前掲書28頁

  二 船舶共有の対外関係

 (1)船舶管理人,船舶共有体は業務執行機関として船舶管理人を置くことにしている。

中華民国海商法の19条でも 「船舶共有者は船舶管理人を選任して其の営業を管理せしめる ことを要する。若し管理人が共有者以外の者であるときは共有者全体の同意を得ることを

要する」1(船舶共有人鷹選任船舶経珪入経理町営業如経理人為共有人以外之一時慮丁丁有人全体之同意)

旨を定めている(独商492条1項・L蘭商327条,334条3項・日商699条)。同じくフィリピン商法594 条でも船舶の共有者は,船舶代理人の資格で代表する管理人を選任することを明らかにし ている。上述のように船舶管理人のことを中華民国では船舶経理人,フィリピンでは

  (註1)

managerとも称しているが,その選任はわが国と同様に強制的である。この点で船舶管 理人の選任を任意的とするオランダ・ドイツと著しい相違をみるのである (鈴木・石井「申              (註2)

華民国海商法」上102頁では・fギリス・ブランスもこれに属することを指摘されている)。このよ:うに

船舶管理人を強制した理由は,行政的な監督のほかに取引上の便宜を重視したものにほかな らない (石井照久「海商法」164頁)。一般に船舶管理人とは,船舶共有者の代理人として,

脚の糊醐する一切の裁判上また戯判外の行為を行う者である・すな栃それ聯 定代理人ではなく,共有者の選任による法定の権限を有する委任代理人として理解されて いる(寺尾元彦「商法原理」5巻海商法136頁)。従って委任に関する民法の∵般綿定の適用を

うけるものである (学説では船舶共有者と船舶管理人との関係を,委任準委任および雇傭または雇 傭類似の併合関係であると解することもある)。

とくに申華民国海商法の19条によると船舶管理人を営業の管理者として表現しでいるカメ・.

その選任は原則として持分の価格を標準とした多数決によって決定されるものである

(中商3条)。蓋し船舶共有者の共同の利益に関することであるからである。このことはわが 国を始め多数国の立法例が確認するところである(日商693条・独商492条・仏商220条)。フィリ

(12)

88

ピン商法の589条2項も同様のことを明示している。このように船舶管理人の選任は船舶       (註3)

共有体の過半数の決議によるものであるが, もしも共有者外から船舶管理人を選任すると きはどうであろうか。中国海商法の19条では共有者全体の同意を要する旨を定めている(日 商699条2項,独商492条1項)。蓋しその者の信頼性が船舶共有体全体の立場から問題とされる からであろう。いまこの理由を寺尾教授はつぎのように指摘されている。すなわち「重れ 共有管理人(Managing owner)は利害関係深きが故に忠実に管理を為すも共有者以外の 者は船舶の利用に対して利害の関係薄きが故に其選任は特に慎重なる手続を経る必要あり

と認めたるなり」 (寺尾前掲書136頁)とされている。なの中国法では船舶管理人の選任およ び代理権の消滅について,登記を要することを明示してはいないが,船舶登記法により船 舶管理人の氏名住所を登記することにしているために,結論的にはわが国と同じ態度をと       (註4)

るものであるといえよう(申国船舶登記法39条1項・43条日商699条3項・日本船舶登記規則26条)。

また中国法ではわが国と同様に船舶管理人の解任について何等の特別規定を有しない。従 って選任の場合と同一の方法によるべきものと解すべきであろう。この点ドイツ商法の49 2条の2項では過半数の決議で船舶管理人を何時でも解任することができる旨を定あてい

るが,この点で注意を要するのは船舶共有者以外の者が船舶管理人である場合の解任手続 である。このときは選任のときと異り多数決でも足るものと解釈すべきであろう(松波仁一一 郎「海商法」1了4頁,鈴木・石井「申華民国海商法」上10頂)。なお船舶管理人は解任のほかに つぎのような事由で終任することもある。まず第1に船舶の所有権乃至利用権の喪失(沈 没・捕獲・緊急売却・強制執行)。第2に船舶の共有関係が1人の所有となったことによる共 有関係の当然の解消,第3に航海中船舶不堪航の宣言をした場合(専門の検査人の検査の結 果による),第4に船舶共有体財産に対する破産宣告の確定,第5に決議による船舶の売 却(独商506条)が指摘されている (西島弥太郎「独逸商法皿」海商法35頁)。つぎにi業i務執行 機関としての船舶管理人はどの程度の権限を有するものであろうか。通常船舶管理人は対−

内的には業務執行権をもつと同時に,対外的には,代表権限を有するものである。しかも その権限の範囲は,特定の行為を除いて,船舶の利用に関する一切の裁判上または裁判外 の行為にまで及ぶものである (日商700条,独商493条,496条)。中国海商法の20条によると

「船舶管理人は船舶の計装及び利用に関し訴訟上又は訴訟外において共有者を代表する。」

(船舶経理人字面船舶之雨装及利用在訴訟上皇訴訟外代表共有人)ものとしている。この点で日本        む

の商法が単純に「船舶の利用に関する」と規定しているのに対して,蟻装のことを明示し ていることはめを惹くものがある。恐らくドイツ商法の影響をうけたものではなかろうか

       

(独商493条2項)。ところで,ここでいう船舶の利用に関する行為とは,船舶の用法に従

    

ってこれを利用する行為である。それは利用行為だけをいうものではなく,利用に関係す る行為をも含むものと解釈されている(市村博士「海商法論」135頁)。従って船舶の礒装,

       (註5)

食料品燃料の買入れ,船長の選任および解任,通常の修繕,発航の準備,運送契約の締結,

(13)

運送賃の保険,船長に対する指揮等を指すものである(青木博士「海商法論」96頁)。ドイツ 商法では規定のうえで,このことを明らかにしている(独商493条,船長は船舶管理人の指図の

みに従うべきであり,船舶共有者が単独で指図しても従うべきではない)。 これからみると礒装に

関する事項も,船舶の利用に関する事項も,さほどの重要な差異がないことがわかるので ある。フィリピン法でもその595条では,船舶管理人は取引を締結する能力があり,その

:地区の商人登記簿 (Merchant s registry)に登記することを要求されている。以上の       (註6)

ように船舶管理人は船舶の利用に関して実に広範な権限を有するものではあるが,但しそ の利用を前盛としない処分行為などは除かれている。すなわち中国海商法の21条では「船 舶管理人は共有者の書面による許可を得るのでなければ其の船舶を売却し又は抵当に供す ることができない」 (船舶経理人非経義有人之書面許可不得出費或抵押其船舶)ものとされてい る。わが国を始めドイツ商法はこの旨を明かにしている、(日商700条,独商493条)。ただわが 国の海商法が中国海商法と異るところは,船舶の売却,抵当を許可するにあたり,共有者

    の

の書面による許可方式を採用していることと,船舶の委付,賃貸,保険,新航海,大修繕,

借財などを具体的に掲げていない点であろう。いま少しくこの点について考察を進めてみ

      り     む  の

よう。第1に船舶の委付であるが,わが国商法では船主責任制限の一方式として委付主義 を採用しているために,これが問題となるも(フィリピン商法め587条でも委付主義をとり,同5

90条では船舶共有者が自巳の持分を委付して責任を免れうることを定めている).)船舶所有者の責任

      り     り      

制限について中国海商法は条約の線にそうて船価責任主義を採用しているところがら(中商 23条以下),まったくこの問題は起りえないものである。第2に船舶の賃貸であるが,これ

は他人をして船舶を賃借させ海上企業を営ませる行為であり,船舶の利用とはいい難い。

ゆえに船舶管理人の権限内とするのは不適当であるといえよう。第3に船舶の大修繕,新 航海,船舶の保険,借財の行為が,船舶管理人の権限内の行為として捉えられてよいかど       (註7)

うかの問題である。この点に関しては中国海商法は何等の明言をしていないので解釈上の 疑問を残しているが,とくに以上の事項につき代理権の付与がない限り船舶管理人の権限 外の行為と理解されるべきであうう (独商493条5項では・手形上の債務・借財・船舶の売却と担 保・船舶の保険は代理権の付与を必要とする)。蓋し何れの場合にも船舶の通常の利用の限界を こえているからである。ところでこれ等船舶管理人の権限は船舶管理人自身が行使すべき ものであるから,当然にその権限の委譲はできないものと考えられる(西島前掲書22頁参照)。

船舶管理人は船舶共有者の書面による許可さえあれば当該船舶を売却する権限があること を中国海商法の21条は明示しているが,勿論その譲渡には一定の方式つまり書面の作成と,

主官署の証明を受けるべきことを要求している。すなわちその10条によると「船舶の全部 又は一部門譲渡は書面を作成し且つ左の規定によるのでなければ効力を生じない」(船舶全 部或一部之譲与非作成書面並依左列之規定不生効力)ものとしつぎの2項を置いている。(1)中国 では譲渡地黒は船舶所在地の主管官署に申請して其の捺印証明を得ることを要する (一包

(14)

90

中国鷹呈経譲与地或船舶所在地主管官署蓋印証明)。(2)外国では中国領事館に申請して其の捺印 証明をうることを要する (二在外早月明経中国領事官署蓋印証明)。中国法のかかる規定の趣 旨は当事者の船舶譲渡の意思をできるだけ確定し」なお且つ確実な証拠によって譲渡に関 する紛争を未然に予防しようとするものに外ならない(鈴木・石井「申華民国海商法ユ上66頁)6 尤も船舶譲渡の方式には特別の方式を要求せず,当事者の合意だけで成立するものとする.

       り  の   

いわゆる意思主義と(四民176条),一定の書面による形式主義とを採る国があるが(仏供↑白5 条,英商船24条,ソ海42条),中国法は後者の立場に傾むくものであり,そあなかでも頗る厳 重な手続を要求していることを注目しなければならない。蓋し書面の作成のほかに官庁の        (註8)       ,

証明を要求しているからである。他方フィリピン商法も形式主義を採用するものであり」1農          [

船麟の取得(acquisition)には書面が必要であることを定めている(.比商573条)。しかも その書面には適法な記録がなければ第3者に対して何等の効力を有するものでぽない (R ubiso and Gelito v.Rivera,37 phil.72)。しかし中国法のように所轄官庁の証明を要す

・る訳ではない。

 さらに船舶管理人は共有者の書面による許可がありさえずれば,船舶を抵当 (温血・rn・

ortgage)に供することもできるのである。中国海商法によると「船舶抵当権の設定は書 面をもってこれをなすことを要する」且(船舶抵押椹之設定鷹以書面為之)旨を,その34条で明 示しているために当然その制限に服さなければならないことはいうまでもない。従って総 噸数20噸以上の船舶(中商2条・容量200担以上の船舶)は,不動産と同様に抵当権の設定が 認められているのであり,しかもその際には書面の作成が強制されている。もしも書面に

よらない抵当権設定の登記があるとぎはそれは無効であるといわざるをえない。勿論この 場合の書面には公正証書のみならず私署証書をも含めるものである。この点でわが国の商 法が,船舶抵当権の設定にあたり,何等の形式を要求しないで当事者間の意思表示だけで 足るものとする態度とは根本的に異るものである。このように船舶抵当権の設定を書面に よらしめた理由は, 「当事者をして抵当権設定意思の確実と其の内容の正確を期せしめん とする」(鈴木・石井「中華民国海商法」上178頁)ものに外ならない。書面の作成を要求する 国としては先進国であるイギリスを始め,オランダ・ベルギー・フランス等があることを 注目すべきである(英商船31条1項,白虹25条蘭商318条1,仏法2条)。ではフィリピンではど

       

うであろうか。先ず船舶は民法のもとでは動産であるとみられている。しかしながら船舶 の動産抵当(chattel mortgage)では,登録簿に登録される必要はなく 歩税関の収税官 の記録簿に登録されることを要求されていて,この点が他の動産の種類と異るものである

ことが指摘きれている (Arroyo v. Yu,54phil.511;PhilipPine Refining Co. v. Jar−

que,33αG1308,。)なお船舶管理人は法律がそ の設置を命じているけれども(中商19条,日 商699条1項),船舶共有者が選任するものであるから委任代理人である(小町谷博士「海商法 要義」上152頁)。ゆえに委任契約は自由であり,当事者は一層管理人の権限を制限する特

(15)

約を結んでも何等差支えないのである。しかし中国海商法では善意の第3者を保護するた

めに1

u船舶共有者が船舶管理人の権限に対して加えたる制限は善意の第3者に対抗するこ

とを得ず」1(船舶共有人封於船舶経理人擢限所加之限制不得対抗善意第三人)と定めていちのであ

る(日商700条2項,独商495条)。しかして既述のように船舶管理人の代理権の範囲が法的に 一定していること(申商20条),これに加えた制限が善意の第3者に対して対抗力のない点 で,支配人,取締役,船長と同じである。しかし,いま若干これ等の者との相違するとこ ろを指摘してみよう。第1に船舶管理人は商業使用人ではないこと,選任を強制されてい ること,その権限に法定の制限があることで支配人と異るものである (中商553条)。第2 に組合の受任者であること,その権限に法定の制限がある点で取締役と相違する。また使 用人でないこと,その権限が船籍港外における特定の船舶の特定の航海に関聯する事項に

限定されない点で船長と異る(小町谷前掲書152頁,竹井廉「海商法」100頁)。と,ζ.ろで船舶管

理人の対外的取引関係で最も重要なのは,船舶管理人の行為によって生じた債務について,

船舶共有者は自己の責任を制限することができるであろうか。・船舶管理人の過失は,船舶       (註11)

共有者の過失と同一視すべきものであるから,中国海商法の24条1号により (債務が船舶所 有者の行為又は過失によりて生じたるものであるとき), 船舶共有者は責任制限め利益を喪失す

ることになる。もしもわが国の場合であると委付権を失うことになろう。尤も申国海商法 あ場合には,船舶管理人の行為を船舶共有者の行為と同一視する明文ぶないために若干の 疑いがあるも,既にドイツ商法では「船舶共有体が船舶管窟人のなしたる法律行為により 義務を負う場合には,船舶共有者は自己が法律行為をした場合と同一の限度(486条プの責

を負う」(独商494条2項)べきものとしているために上述の結論が肯定されうるであろう。

      

蓋し実質的にも船舶管理人は船舶共有体の機関たるにほかならないからである(小町谷前掲 謝52頁)、。また船舶共有者は船舶管理人を選任することによって,船舶管理人の有する権 限の枠内で,船舶共有の業務執行権および代表権を奪われているからである。

(註:DART.594.一The co・owners shall elect the manager who is to represent them in    the caPacity ot ship agent.取締役又は船舶代理人の任命は各共有者の意思で取消される    (594条2項)。

(註2)独商492条1項,フランスでは船舶管理人の選任を,定款によると,多数決によるとを問わな    いものとされている(但し定款による選任の場合には共有者全員の一致がなければ解任し得な    い)ゐ

(註3)This partnership shall be governed by the resolutions of the majority of the

   members.

(註4)イギリスでも船舶管理人の名称の登録を要求している(M.S.A.§59)。Temperleys, Merchant    shipPing Acts,1954。P.47.

(註5)船舶の野冊とは,ただ私法上の関係の利用をいうものであり,公法上の関係においては船舶共

  1有者がつねに権利義務の主体である(たとえば船舶登録の義務は,船舶共有者がこれを負担す

(16)

92

   る)。Schaps, Das deutshe Seerecht,§510.Anm.7.船員との関係,運送,海損,救助,

   保険等の関係にも及ぶものである。長場正利「商法体系」 (海商編)柑頁利用行為の中には    船舶の譲渡,質権および抵当権の設定は含まれないものと解釈されている。小町谷博士前掲書

   157頁,長場前掲書111頁 なお船舶の利用事項の範囲を商事事項(運送賃請求権,船荷証券

   債務,船員の過失にもとずく運送品の滅失,殿損の責任)と航海事項 (衝突損害賠償請求権,

   救助料請求権,共同海損分担義務)に分ける考え方もある(竹井前掲書106頁)。

(註6)ART.595.一The ship agenちwhether he is at the same time the owner of the    vess1,0r a manager for an owner or for an association of co・owners, mus亡have    the capacity to trade and must be recorded in the merchant,s registry of the    provlnce.

(註了)借財とは金銭その他これに準ずべき物の消費権の意味に解されている(高窪喜八郎編「商法・

   海商編」法律学説判例総覧12巻209頁)。

(註8)書面は公正証書,私署証書であるとを問わない。ブランスでは通常売買証書には(1)船舶の名称    と表示,(2)国籍証書の日附,(3)船籍港,登録,唯数,同一性,建造および船令に関する前記証    書の謄本の全写本を記載しなければならないものとしている。以上の要件を欠くときは,収税    官吏は税関における権利転を拒否できるものとされている。

(註9)ART.5了3.一The acquisition of a vessel must apPear in a written instrument,

   which shall not produce any effect with respect to third persons if not    i且scribed in the registry of vessels.

(註10)Tβmperley s Merchant ShipPing Acts・P・452.オランダは船舶抵当権の設定にあたり債    務者・債権者・船舶・債権額・約定利率等を明瞭にする公的証書の作成を要求する(蘭商318    条一1項)。

(註11)ブィリピンでも海上運送人の積極的な不法行為に対しては責任制限の利益を受けるものではな    いと解されている (但し船舶管理人の場合には必ずしも明瞭ではない。)Ysmael&Co. v.

   Barreto&Co.,51Phil.90;Compagnie Franco。lndochinoise v. Deutsch Australishe

   etc.,36. Phi1.

 (2)船舶共有者の責任関係

 つぎに船舶共有者と第3者との対外的な責任関係で注目すべきことは,船舶共有者は船 舶の利用について生じた債務を,その持分の価格に応じて弁済しなければならないとして いることであろう(日商696条,襲爵507条)。とりわけ申国海商法の16条では「船舶共有者は 船舶の利用によりて生じた債務について其の持分の割合に応じて分担の責を負う」(船舶共 有人封於利用船舶所生之債務訓導包有部別負比例分担引責)ものと定めている。要するに本条に

よって船舶共有者の責任は分担責任ということになるが, しかし地回民法の681条のよう に,組合の財産が組合の債務を弁済するに足らぎるときは,各組合員は不足の額に対して 連帯して其の責任を負うものと解さるべきではなく,別段債務が共有船舶によって完済さ れないことは必要条件ではない (鈴木・石井「中華民国海商法」上93頁)。ところで船舶共有

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