論 説
外国人の拘束に関する情報の開示をめぐる問題の憲法学的考察
〜二〇〇一年以降のアメリカ合衆国の動向〜
小 谷 順 子
目次 一 はじめに
二 外国人の身柄拘束を取り巻く憲法学上の諸問題
1 出入国管理行政における連邦政府の絶対的権限と外国人の権利
2 外国人の身柄拘束に関する情報の開示と政府の活動の透明性
三 外国人の身柄拘束に関する情報の開示をめぐる裁判例
1 ﹁特別な利益﹂に関わる案件のヒヤリングの公開
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情 報
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情 報
規 定
3 テロ関連の事由で拘束された外国人に関する情報の開示
4 連邦移民法の執行権限に関連する情報の開示
5 グアンタナモ基地に収容された外国人に関する情報の開示
ー 63 −
四
はじめに アメリカは︑二〇〇一年九月一一日の同時多発テロ以降︑愛国者法︵PatriOtAct︶ を始めとした多数のテロ対
策立法を行っている︒そのうち出入国管理分野においては︑アメリカ国内へのテロリストの流入阻止が重要である
ことから︑テロ関連の外国人の入国拒否事由を拡充し︑関連機関の法執行機関の権限を拡大するとともに︑外国人
情報のデータベースの統合を進めるなど︑出入国管理の全面的な厳格化を図っている︒その結果︑通常の出入国管
理行政の枠組みのなかで入国拒否及び国外追放に伴う退去強制手続に付される外国人が急増している︒また︑テロ
対策目的で法執行機関の拘束下に置かれる外国人も増えていると言われる︒さらに︑近年の特殊な傾向として︑ア
メリカ国外における米軍の軍事活動に伴って拘束され︑キューバのグアンタナモ米軍基地等に敵性戦闘員︵ene2y
CO∋bata主として収容されている外国人については︑メディアでも大きく取り上げられているところである︒
このような傾向と並行して近年のアメリカのテロ対策全般において政府の保有する情報が公表されない傾向が強
まっており︑政府の拘束下に置かれた外国人に関する情報についても︑国家の安全保障や法執行の潤滑な運用等を
理由として情報が非開示とされる傾向が見られる︒この傾向は︑外国人の退去強制手続に伴うヒヤリングが非公開
で実施されるという例もあれば︑そもそも外国人を拘束しているのか否か︑または何名を拘束しているのかといっ
た基本的な情報が非公開とされる例もある︒
このような状況を︑外国人の人権保障と政府活動の透明性との二点に着目して整理すると︑次のようになる︒ま
− 64 −
ず︑外国人は完全な人権享有主体性を有しないため︑外国人の拘束に際して政府に課される憲法上の制約も小さい︒
さらに︑そのような外国人の拘束に関する情報を開示する憲法上の要請も︑外国人の人権保障という観点からは︑
さほど大きくない︒一方︑政府活動の透明性という観点を取り入れると︑当該情報の開示の重要性は︑他の情報と
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っており︑この観点からはテロとの関連性を疑われる外国人の拘束の情報を秘匿することが正当化される可能性が
高 ま
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本稿では︑このような構図を念頭に置き︑テロ対策を目的とした外国人の身柄拘束に焦点を当てた上で︑当該身
柄拘束に関する情報の開示及び政府活動の透明性に関する二〇〇一年以降の判例を分析する︒以下︑まず︑外国人
の人権享有主体性及び権利の保障範囲に関する判例法を確認する︒そして︑外国人に関する情報の開示をめぐる憲
法学上の問題点を整理した上で︑外国人の拘束をめぐる情報の開示を求める裁判例を分析し︑若干の考察を試みる︒
ー 65 −
外国人の身柄拘束を取り巻く憲法学上の諸問題
1 出入国管理行政における連邦政府の絶対的権限と外国人の権利
外国人の身柄拘束をめぐる従来の憲法学上の議論では︑出入国管理行政の過程における身柄拘束に加え︑通常の
刑事司法過程における抑留・拘禁・拘置が想定されてきた︒そして︑外国人に固有の問題として︑とくに出入国管
理行政における外国人の人権享有主体性をめぐり︑その人権保障の有無及び範囲が論点とされてきたほか︑出入国
管理分野については︑以下に示すとおり︑連邦政府の権限の絶対性が繰り返し強調されてきた︒
まず第一に︑出入国管理は国家主権に内在する権限であって連邦議会のほぼ完全な自由裁量に委ねられることか
ら︑連邦最高裁は従来︑出入国管理の問題に関する司法審査を控えている︒また国際慣習法上︑外国人の入国の自
由は認められていないゆえに︑連邦最高裁は︑入国前の外国人に対する合衆国憲法上の権利の保障を否定し︑入国
に関して連邦議会が設定する条件はいかなるものでもデュープロセスであるという姿勢を採っている︒また︑既に
アメリカ国内に滞在する外国人の管理権限についても︑連邦最高裁は︑合衆国政府が外国人を国外に退去させる権
限を有することを認めており︑この権限は国際法上認められた主権国家の権限であり︑連邦議会の絶対的権限であ
ると述べている︒
このように︑外国人は連邦政府の絶対的な出入国管理の権限に服するがゆえに︑正式な入国許可を得て合法的に
滞在している外国人であっても︑デュープロセスの権利を限定的に保障されるにすぎない︒さらに︑正式な入国許
可を得ていない外国人については︑憲法上の権利保障を一切受けないものとされるため︑入国許可を得ずにアメリ
カ国内に滞在している外国人が高度の権利侵害と言い得る処遇を受けていようとも︑理論上は何らの憲法上の問題
も生じていないと評価され︑司法審査も否定されることになる︒この点に︑外国人の拘束をめぐる諸問題の特殊性
が凝縮されていると言えるのであり︑本稿においても︑出入国管理分野における連邦政府の権限の絶対性と外国人
の人権享有主体性の不完全性を念頭に置きつつ︑以下の考察を進めたい︒
ー 66 −
2 外国人の身柄拘束に関する情報の開示と政府の活動の透明性
十分な人権享有主体性を有しない外国人の身柄を拘束した上で︑国家の安全や潤滑な法執行の実現などを理由と
して︑当該拘束に関する情報を秘匿するという状況は︑どのように評価することができるか︒
拘束下に置かれた外国人のなかには︑拘束の不当性を主張し︑又はデュープロセスの権利の保障やヒヤリングの
公開などを求め︑訴訟を提起する者もいる︒しかし︑問題を外国人の人権保障という観点のみからとらえた場合︑
憲法上の人権享有主体性が不十分であるがゆえに︑たとえ重要な権利が大幅に制限されていようとも︑十分な法的
救済を得られない可能性が高い︒本稿の射程である情報の秘匿の問題に限定して考えても例外ではなく︑たとえば
外国人の退去強制に伴うヒヤリングを公開すべきか否かを論じるに際し︑外国人の不十分なデュープロセスの権利
と国家の安全に関わる重要な理由とを比較衡量した場合︑後者が優越すると判断される可能性が非常に高い︒
そこで重要となるのが︑政府の活動の透明性という視点である︒一九六六年に制定された連邦の情報公開法
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連邦最高裁も︑﹁十分な情報を得た市民集団を確保すること﹂は︑﹁民主主義社会の機能に不可欠であり︑かつ︑腐
敗を検知し︑統治者に被統治者に対する責任を負わせるために必要である﹂と述べているほか︑﹁政府の企図するこ
とを市民が知りうるようにすること﹂は︑﹁真の民主主義にとって構造上不可欠なものである﹂とも述べており︑政
府が市民に対して説明責任を果すことの重要性を繰り返し強調している︒
政府活動の透明性の確保という観点から外国人の拘束に関する手続や情報の公開を求めることで︑国家の安全上
の利益に対して比較衡量される権利の不完全性という難点が解消されうるのではないか︒そして政府活動の透明性
ー 67 −
を確保することで︑間接的に外国人の拘束をめぐる状況の適正化に寄与しうるのではないか︒このような問題意識
に立ち︑以下︑果たして政府の透明性の確保という利益が国家の安全に関わる利益の対抗利益としてどれほど効果
を持ちうるのかを確認するため︑政府の透明性の観点から提起された訴訟を分析する︒
なお︑一般市民は報道機関の報道を通して政府の活動を知る場合が多いが︑報道機関の報道の自由と︑報道によ
って充足される市民の知る権利の憲法上の根拠については︑議論の分かれるところであり︑連邦最高裁が報道機関
に対して明示的に認めているのは︑合衆国修正一条の下で刑事裁判を傍聴する権利が認められるという点にすぎな
︵1 9︶︵空 い︒その一方で︑報道の自由と知る権利とがともに修正一条によって保障されるという見解も有力であり︑また︑
情報公開法に基づく開示請求権は報道機関にも認められている︒そこで︑前述のとおり︑外国人の拘束に関する情
報についても報道機関等による開示請求が数多く提起されている︒
− 68 −
三 外国人の身柄拘束に関する情報の開示をめぐる裁判例
外国人の拘束に関連する手続の公開や情報の開示を求める訴訟は数多く提起されているが︑本稿ではまず︑退去
強制に伴うヒヤリングの非公開決定の合憲性が争われた二つの連邦控訴裁判所の判決を紹介した上で︑次に政麻の
拘束下に置かれた外国人に関する情報の開示を求めた諸事件を紹介する︒なお︑以下の判決は︑主に連邦地方裁判
所又は連邦控訴裁判所の判決である︒
1 ﹁特別な利益﹂に関わる案件のヒヤリングの公開
外国人の退去強制手続に伴うヒヤリングについては︑連邦規則で公開を原則とすることが規定されている︒しか
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の C r e p p y は ︑ 全 米 の 出 入 国 管 理 審 判 官 に 対 し て ﹁ C r e p p y M e m 且 と 称 さ れ る 指 示 を 発 し た ︒ 当 該 指 示 に よ る と
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案件については︑退去強制手続を報道機関及び公衆に対して非公開にすべきであるとされ攣なお︑当該指示には︑
非開示の必要性の根拠を示すことを求める規定等は設けられていなかった︒
二〇〇二年︑第三巡回区連邦控訴裁判所と第六巡回区連邦控訴裁判所は︑当該指示及びそれに基づくヒヤリング
の非公開決定の合憲性が争われた二事件において︑それぞれ司法判断を行った︒両事件は報道機関が中心となって
提起した訴訟であり︑主な争点は︑拘束自体の適法性やデュープロセスなどではなく︑報道機関の報道の自由及び
公衆の知る権利に基づくヒヤリングへのアクセスという点に置かれていた︒両裁判所は︑ともに刑事裁判の非公開
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機関と公衆が刑事裁判を傍聴する権利が黙示的に保障されると述べた上で︑手続の公開の必要性を判断する基準と
して︑第一に︑問題とされる手続が歴史的に公開されてきたものか否か︑第二に︑問題とされる手続に関して公開
︵ 2 6 ︶
性が重要であるか否かという二点を示していた︒
第 三
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− 69 −
MediaGrOup等が︑同時多発テロに関係したとされる複数の外国人に関する﹁特別の利益﹂による退去強制に伴う
ヒヤリングの公開を求めた事件である︒同事件において︑連邦地方裁判所は非公開を禁じた準第三巡回区連邦控
訴裁判所は︑出入国管理に伴うヒヤリングにもRicF⁝OndNewspaperS判決の審査基準が適用されることを確認した
上で︑次のように述べて非開示を認めた︒
第一に︑行政手続へのアクセスを認めるか否かは行政府の裁量に委ねられるものであり︑退去強制手続に伴うヒ
ヤリングについては連邦規則で公開原則が定められているものの︑連邦議会は公開原則を立法化しておらず︑当該
ヒヤリングは伝統的に公開されてきたものとは言えない︒第二に︑当該ヒヤリングを公開することにより︑テロリ
ストに対して我々の捜査の手法や限界︑出入国管理の運用方法等を知らしめることになるおそれがあり︑その結果︑
テロリストが策略を変更したり︑捜査を妨害したりする可能性があり︑公開によって公益が促進されるとは言えな
い︒なお︑憲法上の自由が問題となる場合に執行部門に過度に敬譲することは危険であり︑とくに国家の危機に際
しては自由への脅威が重大になりうるものだが︑米国が真に深淵かつ未知の脅威に直面している時期に︑﹁特別な利
益﹂に関するヒヤリングの公開が肯定的な役割を果たすと判断することはできない︒第三巡回区連邦控訴裁判所は
以上のように述べた︒
一 方
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対象とされた外国人Haddadのヒヤリングが﹁特別の利益﹂を理由として非公開とされたことを受け︑新聞社DetrOit
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− 70 −
ける外国人に対する政府の絶対的権限を認めつつも︑重要な憲法上の権利に関わる場合には連邦最高裁も同分野で司 法 審 査 を 行 っ て い る こ と を 確 認 し た 上 で
︑ R i c F ゴ O n d N e w s p a p e r s 判 決 の 基 準 を 用 い て
︑ 次 の よ う に 判 断 し た
︒
第一に︑国外追放に基づく退去強制に伴うヒヤリングは︑入国拒否に伴うヒヤリングの場合と異なり伝統的に公
開が原則とされている︒第二に︑ヒヤリングの公開は退去強制手続の質を高めることにつながるのであり︑また︑
二〇〇一年以降は退去強制手続の重要性が増していることからも︑公衆には退去強制手続が適正に運用されている
か否かを知る権利が存すると言える︒修正一条の下で当該ヒヤリングを傍聴する権利が認められるにも関わらず︑
﹁CreppyMe⁝且は当該権利を包括的に否定しており︑厳密に起草されていない︒民主主義は信頼の上に築かれるも
のであり︑自由と権利を追求するアメリカの民主主義の下において政府は人々に対する説明責任を有しており︑こ
の過程における報道機関の役割も重要である︒第六巡回区連邦控訴裁判所は以上のように述べて︑原告側の主張を
認めた地裁判決を確認した︒
H a d d a ︵ 事 件 に つ い て は ︑ 訴 訟 の 進 行 中 に H a d d a a 本 人 の 国 外 退 去 が 実 現 し た た め ︑ 第 六 巡 回 区 連 邦 控 訴 裁 判 所 に
おいてムートとなったが︑同事件の連邦地裁判決は︑同時多発テロ以降は特定の人種や宗教の者への偏見を生みや
すい国内風潮が存在することを指摘した上で︑偏見のない審判官による公開のヒヤリングの機会を与えられるとい
うデュープロセスの権利が認められると述べていた︒
上 記 の と お り
︑ 両 巡 回 区 の 連 邦 控 訴 裁 判 所 は
︑ と も に R i c h
∋ O n d N e w s p a p e r ∽ 判 決 の 基 準 を 適 用 し ︑ 同 時 多 発 テ ロ
以降のアメリカ社会の風潮及びテロ対策の意義について言及しながらも︑手続の公開性の是非に関しては︑第三巡
回区は非開示の利益を優先させ︑第六巡回区は公開の利益を優先させた︒第三巡回区の判断を批判する説も唱えら
− 71−
れるなか︑連邦最高裁の判断が注目されたが︑二〇〇三年︑連邦最高裁は非公開を認めた第三巡回区連邦控訴裁判 ︵挙
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同時多発テロ後の数回の法改正により︑退去強制に伴うヒヤリングが非公開とされるだけでなく︑政府の拘束下
にある外国人に関する各種情報が非開示とされる傾向が進み︑これに対し︑市民団体や報道機関が情報公開法
︵F蓼に基づき数多くの訴訟を提起してい璽
情報公開法は︑開示の対象とならない情報︵以下︑非開示情報と記す︶を九類型に分けて定義しているが︑それ
らのうち︑本稿で紹介する事件において政府が援用している主な規定は次のとおりである︒
非開示事由一刷は︑大統領命令によって設定された基準の下で国防又は外交上の利益のために秘密にすることが
特に認められた情報で︑かつ一個実際に当該大統領令に従い適切に機密扱いされた情報を非開示とする︒非開示事
由三は︑制定法によって明示的に開示が免除されて・いる情報を非開示とする︒非開示事由五は︑行政機関相互又は
一行政機関内のメモや手紙等のうち︑当該行政機関と共に訴訟に関わっている行政機関以外の当事者には開示しな
いことが法で決められているものを非開示とする︒判例によると︑非開示事由三は︑通常の民事の証拠開示手続に
おいて秘匿特権の認められる情報のみが該当するとき攣具体的には︑審議過程に関する情報︑弁護士業務に関す
る情報︑弁護士・依頼者間の秘匿特権などが該当する︒
このほか︑非開示事由六は︑個人及び医療ファイル及び他の同種のファイルで︑その開示が個人のプライバシー
ー 72 −
の不当な侵害になることが明らかなものを非開示とする︒また︑法執行目的で収集された記録又は情報のうち︑当
該法執行記録又は情報の開示が︑法執行過程に干渉することが合理的に予期されるもの七湖︑個人のプライバシー
の不当な侵害を構成することが合理的に予期されるもの七の︑個人の生命又は身体の安全を脅かすことが合理的に
予期されるもの七のも非開示とされる︒
以下に紹介する事件は︑各々多様な情報の開示を求めるものであり︑これに対する裁判所の判断も一様ではない︒
しかし︑すべての判決にある程度共通して見られる傾向として︑政府が非開示の理由としてテロ事件の捜査や国家
の安全に関わる理由を主張した場合に︑裁判所が敬譲を示している点が挙げられる︒また逆に︑政府がこれら以外
の理由を挙げて非開示を主張した場合には︑裁判所は綿密な検討を行った上で︑情報の開示を命じる傾向が見られ
る︒
ー 73 −
3 テロ関連の事由で拘束された外国人に関する情報の開示
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正一条に基づき司法省に対して提起した訴訟であり︑同時多発テロの捜査の一環として拘束された何百人もの人々
の氏名︑弁護士名︑逮捕及び釈放の日時︑逮捕及び拘束の場所︑拘束の理由等の開示が求められた︒連邦地方裁判
所は︑国家の危機的時期において執行部門には市民の安全を守る役割が課されると述べる一方で︑司法府には政府
の活動が法治主義及び立憲政治の枠組を超越することを防止する役割が課されると述べ︑裁判所命令によって開示
︵ 4 5 ︶
の禁じられている者を除くすべての者の氏名及びその弁護人の氏名を開示するよう命じた︒
一方︑DC巡回区連邦控訴裁判所は︑国家安全保障の分野における執行部門の判断に対する敬譲め必要性を繰り
返し強調しっつ︑原告側が開示を求めたすべての情報につき︑それらの開示が同時多発テロの捜査の進展状況をテ
ロリストに知らしめることになり︑その結果として捜査に支障をきたしうるとする政府側の主張を全面的に支持し︑
すべての情報が情報公開法の非開示事由七㈹︵法執執行過程に干渉する情報︶に該当することを認め︑その非開示
を正当化した︒また︑同裁判所は︑連邦最高裁のRicぎOndNewspaper判決の認めた修正一条に基づく情報開示請
求権は刑事裁判の公開を要請するものにすぎずテロの捜査及び対策に関する情報の開示を要請するものではないと
述べ︑修正一条に基づく本件情報へのアクセス権を否定した︒同事件につき︑二〇〇四年に連邦最高裁はcertiOrari
︵4 8︶ の受理を拒否した︒
二〇〇六年のPe旦eFOrtheトヨericanWayFO∈datiOnく・DO事件は︑市民団体PFAWが︑情報公開法に基づき︑
司法省に対し︑同時多発テロ以降の外国人の拘束に関連して秘密指定を受けた案件に関する一切の情報︵連邦裁判
所における移民行政手続の非公開決定に関連する政府の資料一切︶の開示を求めたのに対し︑司法省が非開示事由
七の︵法執行記録の開示がプライバシーの不当な侵害を構成する場合︶に該当すると判断したため︑PFAWが情
報開示を求めて提起した訴訟である︒本件で開示が求められたのは膨大な量の資料であり︑主な争点は個人情報該
当性よりも︑大量のデータの処理方法に置かれた︒
原告PFAWは︑請求の目的につき︑同時多発テロ以降の非拘束者に関する移民行政手続が非開示と決定された
頻度を示す統計データの取得が目的であると主張した︒これに対し︑司法省は︑当該データは統計化されておらず︑
データ提供のための資料の検索及び調査は非合理な負担をもたらすと主張庚︑以後︑調査方法及び費用等の負担等
− 74 −
をめぐる調停が続いたが︑最終的な合意が得られなかった︒DC連邦地方裁判所は︑妥協案として検索システムを
利用した該当データの抽出という手法を採用し︑当該手法は非合理な負担を課すものではないと判断し︑司法省に
︵5 2ニ 当該作業を実施して情報を開示するよう命じた︒
このように︑二〇〇二年の連邦控訴裁判所の事件では︑政府が国家安全保障上の理由による非公開を主張し︑こ
れを裁判所が認めたが︑二〇〇六年の連邦地方裁判所の事件では︑政府は国家安全保障上の理由を主張せず︑最終
的に裁判所は情報の開示を命じている︒
4連邦移民法の執行権限に関連する情報の開示
連邦移民法の執行権限は伝統的に連邦政府が排他的に有してきたものであり︑従来︑州及び地方自治体には連邦
移民法の行政目的規定︵査証の期間を超えた滞在等︶の執行は認められていなかった︒しかし︑同時多発テロ以降︑
連邦と州等との連携が強化され︑州及び地方自治体の法執行機関も行政規定違反の外国人の捜査や身柄拘束を行う
︵5 3︶ ようになったことが注目されていた︒
以下に紹介する三事件は︑いずれも外国人の拘束に関する情報そのものでなく︑連邦移民法の執行権限をめぐる
政策決定に関する情報の開示が求められた事件であり︑三判決すべてが出入国管理分野における連邦政府の権限の
絶対性を確認している︒なお︑二〇〇二年のNeWJerSey州裁判所の事件を除き︑政府側は政策審議過程に関する情
報としての非開示事由該当性を主張しており︑国家安全保障上の理由を主張していないことから︑裁判所もテロ対
策に関わる政治部門の決定に対する司法審査のあり方には言及せず︑争点の情報についてははすべての開示を認め
− 75 −
る判決を下している︒
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同 時
多 発
テ ロ
以 降
に 連
邦 移
民 帰
化 局
に よ
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拘 束
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民 団
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︑
刑務所等の収容者に関する情報の公開を定めた州法規定等に基づき︑両郡に対して当該拘束者に関する氏名その他
の情報の開示を求めて訴訟を提起したものである︒州の裁判所を舞台に移民法執行に関する連邦と州の関係が問わ
れた点が注目される︒
ACLUによる訴訟提起を受け︑連邦政府が国土安全保障上の懸念を理由に訴訟参加した準NewJersey州事実
審裁判所は情報の開示を命じた︒これに対し︑移民帰化局は急遽︑同局の拘束者の収容を請け負った機関に対して
当該拘束者に関する情報の開示を禁じる旨を定めた規則を制定した︒連邦政府及びACLUの双方による控訴を受
け︑NewJersey州控訴裁判所は︑ACLUが修正一条に基づく情報開示請求権や拘束者の代理人依頼権を主張して
︵57︶ ︵讐 いない点を指摘した上で︑外国人の出入国管理に関する連邦政府の権限の優越性及び絶対性を確認し︑連邦政府に
︵野 ︵60︶ よる規則制定の合法性及び連邦政府の訴訟参加の合法性等を認め︑原審を破棄し︑連邦政府の主張を認めた︒
二 〇
〇 四
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事 件
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複 数
の 市
民 団
体 が
司 法
省 に
対 し
︑ 州
及 び
地 方
自 治
体 の
法
執行機関が連邦移民法を執行することが認められるに至った経緯を記した司法省法務室の記録︵討議の覚え書き︑
複数の政策案を記した各種記録など︶を開示するよう求めた事件である︒連邦地方裁判所は︑一部の情報について
非開示事由五︵審議過程情報等︶ に該当すると判断したものの︑その他の情報については原告側への開示を認めた︒
これに対して司法省はすべての情報の非開示を主張して控訴したが︑二〇〇五年︑第二巡回区連邦控訴裁判所は︑
ー 76 −
地裁で開示の認められた法務室の覚え書きは審議過程の記録ではなく司法省が最終的に採用した政策の法的根拠を
︵撃 記すものであるがゆえに非開示事由に該当せず︑地裁の開示判断は適当であったとして控訴を棄却した︒
二 〇
〇 五 年 の B r O 呂 D e 訂 n d e r m 事 件 は ︑ 複 数 の 市 民 団 体 が
︑ 情 報 公 開 法 に 基 づ き
︑ 司 法 省 及 び 国 土 安 全 保 障 省 等 に
対 し
︑ 国
家 犯
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︶
に入力すべき移民情報の種類を検討した経緯を記す記録のうち︑司法省法務室から連邦捜査局に宛てたメモ及び移
民帰化局に宛てた電子メールの開示を求めた事件である︒政府側は︑当該情報は非開示事由五︵審議過程情報︶に
該当すると主張したが︑NY南部連邦地方裁判所はメモについては政府が最終的に採用した政策の根拠を示すもの
︵ 6 4 ︶
であるゆえに非開示事由に該当せず︑開示すべきであると述べた︒
このように︑連邦移民法の執行権限の配分に関する情報の開示を求める訴訟においても︑政府が非開示理由とし
て国家安全保障に関連する理由を主張しなかった二〇〇四年及び二〇〇五年の事件では︑連邦控訴裁判所及び連邦
地方裁判所は情報の開示を命じている︒
− 77 −
5.グアンタナモ基地に収容された外国人に関する情報の開示
近年の重要な論点として挙げられるのが︑アフガニスタンやイラクなどにおいて拘束されてキューバのグアンタ ナ モ 米 軍 基 地 に ﹁ 敵 性 戟 闘 貞 ︵ e n e m y C O m b a t a n E と し て 収 容 さ れ て い る 外 国 人 の 問 題 で あ る ︒ こ れ ら の 外 国 人 は
︑
従来型の出入国管理行政及び刑事司法過程又は国際法上の戦争捕虜として拘束されたのではなく︑﹁敵性戦闘員﹂と
いう概念に基づいて拘束されている︒彼らについては︑人権享有主体性及び人権保障をめぐる深刻な問題が注目さ
れている︵準本稿ではこれらの外国人に関する﹁情報﹂をめぐる問題に着目する︒
二 〇
〇 四 年 の 連 邦 最 高 裁 の R a s u 言 . B u s F 判 決 及 び H a m d i く
. R u ヨ S 迂 d 判 決 を 受 け
︑ グ ア ン タ ナ モ 基 地 に お い て は 国
防省が﹁戟闘貞身分審査法廷﹂ ︵以下︑審査法廷と記す︶を設置し︑個々の外国人が現実に敵性戟閣員に該当する
か否かの審査を実施した︒二〇〇五年に始まったAP通信事件は︑同基地に収容きれた外国人に関する情報の開示
を求めて︑報道機関のAP通信が情報公開法に基づく訴訟を連続的に提起しているものである︒
第一事件は︑AP通信が審査法廷のヒヤリングの記録等の開示を求めたのに対し︑国防省が対応を保留したこと
から︑AP通信が情報の開示を求めて連邦地方裁判所に提訴したものである︒これを受けて国防省は一部の記録を
開示したが︑個人の識別につながりうる情報については︑抑留者本人及び家族の安全を害しうるゆえに非開示事由
︵ 6 9 ︶
六︵個人ファイルの開示がプライバシーの不当な侵害を構成︶ に該当すると主張し︑開示を拒否した︒これに対し︑
連邦地方裁判所は︑国防省が国家安全保障上の理由を主張していない点に言及した上で︑プライバシー侵害を構成
︵ 7 0 ︶
するか否かは抑留者本人の判断に委ねられると述べ︑国防省に対して対象抑留者全員の意思を確認するよう命じた︒
その後に国防省が実施した調査では︑開示を希望しない旨を回答した抑留者がごく少数であったため︑連邦地方裁判
所はプライバシー侵害の懸念を証明するには不十分であると判断し︑国防省に対してすべての情報の開示を命じ
︵ 7 1 ︶
た︒
第二事件は︑AP通信が︑抑留者の処遇に関する情報の開示を求めた事件である︒AP通信は︑㈲国防省職員に
ょる不適切な処遇に関する文書︑及びその処遇を原因として行われた職員の処分に関する文書︑㈲抑留者同士の虐
待の訴えに関する文書︑回グアンタナモからの抑留者の釈放又は移送の決定に関する文書︑博グアンタナモにおけ
一 78 −
外国人の拘束に関する情報の開示をめぐる問題の憲法学的考察
る抑留者の不服審査の記録の開示を求めた︒これに対して国防省は大部分の情報を開示したが︑一部の情報につい
ては︑非開示事由三︵制定法により非開示︶︑同五︵審議過程情報︶︑同六︵個人ファイルの開示がプライバシーの
不当な侵害を構成︶︑又は七の︵法執行記録の開示がプライバシーの不当な侵害を構成︶に該当するとして︑開示を
拒否した︒なお︑非開示とされたのは︑何のうちの虐待を主張した抑留者の氏名等空六に該当︶︑桐のうちの抑留
者同士の虐待の訴えに関係した者の氏名等讐六に該当︶︑回のうちの釈放や移送等の対象者の氏名等笠︵五及び六に
該当︶︑曾うちの国際機関を通して抑留者に届けられた家族からの手紙等に記された家族の氏名等讐二及び六に該
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