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縫目強さに及ぼす縫目形状と縫目間隔の影響

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(1)

田中:縫目強さに及ぼす縫目形状と縫目間隔の影響

縫目強さに及ぼす縫目形状と縫目間隔の影響

田中由佳理

1.

緒言

平面的な布を用いて 、 動きを伴った自由曲面を持つ人体に適合する衣服を作るためには 、布 地をいくつかのパーツに裁断し、 それらを接合するという方法がとられている。 現在、衣服材 料としての布は 、 織物、 編物、 不織布 、 皮革類及び高分子膜などがあり 、これらを裁断して接 合する方法には 、縫合•接着•溶着などがある。 現衣服の縫製は縫合によるものが多く、

最も一般的な接合方法である。

衣服の縫目は布地と行動機能を共にするので、布地と同じように柔軟性 、 伸縮性 、 耐久性が 要求される 。また、立体的に構成される洋服の縫目は意図するシルエットを形づくるための構 造線、 接合線であり、デザイン効果を高めることもあるので 、その外観は美しくなくてはなら

ない。

衣服が着用中に破れたり 、ほころびたりする原因は縫目にいろいろな方向から外力がかかり 、 縫糸が切れたり、 布が破れたりするからである 。この外力は種々の方向からの引張り、 破裂、

引き裂き 、せん断など様々であり、これらの作用の他にも、身体の動きによって生じる圧縮、

曲げ、 摩擦などとも関連して複雑である。また 、 縫目強さに関係する要因には 、 布の種類 、縫 製条件などがあり 、 布や縫糸の強さだけでは判断することは難しい 。縫目が破壊する形態は 、 縫糸が破断を起こす場合と縫合布が破壊する場合 、また滑脱による破断に大別されるが、これ

らが組み合わさることもある。 縫糸が破断する場合は、主として縫糸の強さと針目数により定 まる 。 理想的な縫目強さは 、縫糸と布が同時に破損することだが 、 実用面からは 、布地が破れ ると補修しにくいので、一般的には縫糸が破断する場合が好ましいとされている1 また縫合 部が破壊する場合は、 縫糸の強さに対して、 布の強さが小さい埸合に起こり 、その時の強さは 対象布の物性により左右される。

例えば 、 縫糸が及ぼす影響の観点から 、 石毛ら 2 ) 3)は、 糸の性能 ( 縫糸の収縮、伸長及び強さ ) について実験的検討を行った。性能としては 、 ナイロン糸が優れているが、 熱処理に弱く 、針 の摩擦による溶融も考えられ 、 実用面での性能は期待できないと述べている。

山田ら 4> は、縫目スリップに及ぼす布の構造及び力学的性質の影響について検討を行った 。 縫目に直交する方向の糸密度及びカバーファクターが大きい程縫目スリップは小さく 、これは

—13 —

(2)

縫目角度にはほとんど依存しない 。また 、 縫目スリップは、 布の基本力学特性の中で 、せん断 特性との関連が強く、せん断剛性の大きいもの程スリップが小さく、同一せん断剛性レベルで

は、 平織より朱子織の方が大きく 、 斜文織はその中間に値すると報告している 。

複合試験片における縫目強さに関して、 石原5)6)7) は 、引張り方向に布目を一致させ 、 これに 対する布目方向の角度を変えた場合の縫目強さの変化について実験的検討を行った。その結果 、 角度によって縫目強さの限界が異なり、一般に

90°

の場合に最も低く 縫目を傾斜させる程、

縫目強さの限界を高めることが期待でき 、引張り強さが求められる紐、帯 、 その他の衣服にお いては、

45°

の方向に縫合するとかなりの効果が得られると報告している。 また 、 石原は、 布

目方向に対して種々の角度を持った引張り方向の縫目における強さについて実験的検討を行い 、

45°

以外の斜めの布を縫合する場合 、 布目を縫目に対して

2

枚の布を対称的に重ね合わせて縫 合する時のその縫目の限界は 、試験片の

1/2

の試長における縫目なしの布の強さとほぼ一致し 、 非対称的な布目とする場合は試験片の同じ試長における縫目なしの布の強さとほぼ一致すると 報告している。更に 、 藤井ら 8 ) 9)は

2

枚布の縫合強さにおけるバイアス方向の破断伸度に重点を 置き、 ノの字はぎとハの字はぎの伸度差を見い出した 。布地を限定した場合の縫糸の種類や縫 目間隔についても検討し、縫目強さと縫いつれの両面から適合するための結果を報告している 。

W. C. Tsu i

ら10) 11)は 、縫目強さ及び布地の強さ試験を行った。バイアス方向の強さに関して は 、

J. Amirbayat12\ F. F. Gardner

ら 13) が角度の影響を述べている 。

W. C. Tsui

らは、 つかみの 影響すなわち

G

がゲージ長さ

W

が試験片幅であるときの

G/W

の影響を踏まえて 縫目の破 壊形態 、 及び縫われていない布のバイアス角度の影響を検討した 。 一般にバイアス角度と強さ

との関係は

W

字型の曲線を示していると報告している 。

iW14)15)16)

は、引張り強さと縫目数の影響について以下のことを述べている 。 縫目強さは、

縫糸ループ強さに影響される他に 、 縫目数( ループ数 ) にも大きく影響される。すなわち、糸 の強さ( 糸の太さ ) 及び縫目数が増加するにつれ縫目強さは増大する 。しかし、 縫目強さは一 般に 、 糸のループ強さの平均値とループ数の積では正確に表せない。 このことは茅野⑺、三浦 ら18)も指摘しているように 、 全ループに均等に引張り力が働いた場合に最も低強力のループが 破断し、 縫目が破壊するとみられ 、 そのために平均ループ強さとループ数の積よりも小さくな

ると考えられているからである。 ここで島崎は縫糸が切断する場合の強さを与える理論式を導 き出した 。 この式は、 実験値より幾分高い値を示すが 、 縫目強さにおいては縫製時の縫糸の強 さの低下が影響しており 、縫目数( ループ数) 及び縫糸の物性値( ループ強さの平均値と標準 偏差) が縫目強さに与える影響について定量的に説明することができる 。

中嶋ら19>は、縫い方の種類と縫目強さとの関係について検討し、縫目が

1

本となる縫い方と

2

本以上となる縫い方を比較した 。 縫目が

2

本の縫い方は

1

本の縫い方より強くなり 、その程

度は

1.3-2.0

倍である また、 縫目

3

本の縫い方の場合はさらに強く 、その程度は

1

本の場合

2.3

3.0

倍 、

2

本の場合の

1.1-1.8

倍であると報告している。又 、森ら 20 >は縫目かたさに及

(3)

田中:縫目強さに及ぼす縫目形状と縫目間隔の影響

ぼす縫製条件の影響について接合方法によって布の力学特性が異なることを明らかにした 。

D. H. Brain21)

は、縫目強さの予測について検討を行った 。補正最小ループ強力を用いると 、 引張りあるいは平均ループ強力に比べて、 縫目強力をよりよく予測することができ 、 種々の糸 や布に適応が可能である 。補正最小ループ強力は平均ループ強力より 、正確な結果が期待でき るが 、 全ての糸や布に適した一般法則はないと述べている。

以上のように 、これまでに種々の縫目強さに関する研究が行われている 。しかし 、これらの 縫目強さの研究は 、縫目の方向を布のたて方向又はよこ方向と一致させ、 縫目に対して垂直方 向に荷重をかけた場合のものが大部分である。また 、 これらの研究は全て縫目線の形状が直線 の場合について調べたものである。実際の衣服の縫製においては 、 その立体的形態を形成する 上で、縫目線は曲線であるものが多い 。 また 、ある角度をもって折れ曲がっている場合もある 。

このような場合に上記の研究結果をそのまま適用することができず 、その破壊挙動については 不明のまま残されている 。

本研究の目的は 、 縫目強さと縫目形状との関係について、 縫目直線の角度及び縫目曲線の曲 率ならびに縫目間隔の影響を実験的に検討することである 。 実験は、布の破断に重点を置いて 計画し、各種縫目の破断強さを測定すると共に 、縫目が引張られる様子を写真等により観測す

る。

2.

実験試験片及び実験方法

本実験に用いた試験片は 、 衣服材料として一般に幅広く用いられている綿織物 、 優雅な光沢 を持つことから婦人衣料材料として用いられているアセテート織物の

2

種類で、 共に平織であ る。 綿織物試験片は 、たて、 よこ共に綿糸

60

番手

2

本撚り、織密度はたて

45

/cm

よこ

21

/cm

である 。アセテート織物試験片は、平組織でアセテートフィラメント糸たて

84dtex

、よこ

1lOdtex

、 織密度はたて

42

本/

cm

よこ

29

本/

cm

である

各織物において 、布の両耳から

10cm

は糸密度が不揃いであるという理由から裁ち除き、

10cm

平方の試験片 ( 第

1

図) と 、たて

10cm X

よこ

5cm

の試験片(第

2

図 )を引張り方向を織糸方 向と一致させて採取した 。 この試験片を

2

枚重ねて 、たて方向に

4cm

の縫い代をとる。

10cm

平方の試験片においては 、弓

I

張り方向を直角になるように直線状にミシンで本縫いする。たて

10cm X

よこ

5cm

の試験片においては 、たて方向にとった縫い代

4cm

の線に対し、

15

30

45

60 °

の角度をつけてミシンで本縫いする。また、縫い代

4 cm

の線に対し 、 半径

1.5

2.0

2.5

3.0cm

の半円をミシンで本縫いする 。 よって 、この曲線の曲率 (

cm'1)

はそれぞれ

0. 66

0.5

0.4

0.33

である 縫合部の形状はこれら

9

種類とする 。また、 これらの縫目間隔は、それぞ れ

2

3

4 mm

3

種類とした 。

縫製に使用したミシンは 、 シンガーニューミリア厶

2200

型で ミシン針はオルガン印

16

—15

(4)

ミシン糸はポリエステルフイラメント糸の

20

番である 本実験は 布の破断に重点を置いたこ とから試験片に対して太めのミシン糸を採用し 、 それに適合するミシン針を用いた 。第

3

図 、 第

4

図に示すように 縫目から

2.5cm

のつかみ部分には引張る際に試験片が滑らないように 、ま ナこ、 つかみ部分からの破断を避けるために 、 たて

2cm

よこ

6cm

の厚紙を取り付けた

10cm

平 方の複合試験片においては 、左右の両端からそれぞれ

2.5cm

の位置に対して切り込みを入れた 。 この複合試験片を、 島津製作所製オートグラフ

AG-D

型の引張り試験機に取り付け 、 つかみ 幅

5cm

つかみ間隔

5cm

[張り速度

2cm/min

の条件で織物または縫糸が破断するまでの荷重 -伸び曲線を測定した 。 また 、 縫合部に引張り荷重が加わった時、織物及び縫糸がどのように 変形し、 破断していくのかを明確にするために 、 引張り試験機中の縫合部の変形及び破断状態 を写真撮影により観察した。 複合試験片に使用した織物については、たて

10cm

、よこ

2cm

のも のを採取し 、 つかみ部分に厚紙をつけ 、 先の引張り試験機を用いて、 同じ条件により測定を行 った。 織糸と縫糸については、

10cm

の糸を採取し、 第

5

図に示すように厚紙を取り付け、こ れを

1

本ずつ切り離したものを試験片とし 、上記と同様に測定を行った 。

試験数はそれぞれ

12

回とした。

切り込み

< 第

1

図 > 縫糸を用いて縫合した複合試験片の形状

(10cm

平方)

ミシン縫い ミシン縫い

<第

2

図> 縫糸を用いて縫合した複合試験片の形状

(たて

10cm x

よこ

5cm)

(5)

<第

3

> 厚紙を取り付けた複合試験片の形状

(10cm

平方 )

< 第

4

図>厚紙を取り付けた複合試験片の形状 (たて

10cm x

よこ

5cm)

< 第

5

図>織物構成糸及び縫糸の試験片の形状

3.

実験結果及び考察

3-1

引張り変形特性について

3-1-1

織物の引張り変形特性

織物構成糸の荷重一伸び曲線を第

6

図にボす 。

綿織物の場合、 たて糸、よこ糸の全体的な形状はほぼ同じで、 織物構成糸が破断するまでの 曲線は

2

段階に分かれている。伸長の初期段階は織糸内の繊維のたるみや曲がりが引き伸ばさ れるため、ゆるやかなカーブを描き、その後 、 急激に立ち上がる。 破断強さは 、 たて糸が

466.OcN

よこ糸が

516.3cN

である。

アセテート織物において、たて糸の埸合、織物構成糸が破断するまでの曲線は

2

段階に分か れている 。伸長の初期段階では、 ゆるやかなカーブを描き、 その後 、 急激に立ち上がり、 そし

17

(6)

て破断する。 これは 、 綿織物構成糸とほぼ同じ形状で、降伏点がみられない 。また、よこ糸に おいては、織物構成糸が破断するまでの曲線は

3

段階に分かれている。伸長の初期段階ではゆ るやかなカーブを描き 、 その後、 急激に立ち上がり 、 次に再びゆるやかなカーブを描く。特に、

よこ糸は降伏点以後の伸度が非常に大きい糸である。 織物構成糸は細い繊維の集合体であるた め 、 数本の繊維が破断する度に急激に荷重が低下する 。破断強さは 、 たて糸が

308.3cN

、よこ 糸が

104.9cN

である 。

織物 (たて方向 ) の荷重一伸び曲線を第

7

図に示す 。

綿織物では、 伸長の初期段階では 、糸のクリンプのため糸よりもゆるやかな傾斜を示すが 、 その後は、急激に立ち上がり 、破断する。 これは、初期のごく 一部を除き綿織物構成糸の引張 り特性に大部分が支配されていることが分かる。 この織物の平均破断強さは

22.2N/cm

である

アセテート織物において 、伸長の初期段階では 、 綿織物と同じ理由からゆるやかなカーブを 描くが 、その後は、 織物構成糸の引張り特性とほぼ同じである 。アセテート織物の平均破断強

さは

3.5N/cm

で 、綿織物の約

1/7

倍である。

いずれの織物においても、その伸長初期領域において、織構造の影響が強く現れるが、 その 後はほぼ織物構成糸の引張り特性が織物の引張り特性を支配している 。

すなわち 、これらの織物構成糸の引張り特性は綿織物構成糸の破断伸度が小さく、初期引張 り抵抗度が大きいのに対し 、アセテート繊維は 、破断伸度が大きく 、初期引張り抵抗度が小さ いという繊維の引張り特性に織物の引張り特性が強く依存していることが分かる 。

3-1-2

縫糸の引張り変形特性

縫糸の荷重一伸び曲線を第

8

図に

75

す。

縫糸が破断するまでの曲線は、 ゆるやかな曲線部分がなく、 初期段階から急激に立ち上がり、

破断する。 降伏点がなく 、伸びにくく 、 初期引張り抵抗度が非常に大きい。 また、 破断強さも

2.7N

であり、 綿織物構成糸の約

5

倍と非常に大きい 。したがって縫合部の破壊においては、

縫糸の破断よりも織糸の破断が先行していくことが予想される 。

3-1-3

複合試験片の引張り変形特性

複合試験片の荷重一伸び曲線の形状は 、 織物の種類や縫目間隔、縫目線の形状により異なる。

縫目線の形状の違いにおける荷重一伸び曲線の形状の違いは明らかであるが、 縫目間隔に関し ては、 いずれの縫目間隔でも全体的な形状は同じ傾向を示す。代表例として 、 縫目間隔

2mm

アセテート複合試験片における破断に至るまでの荷重一伸び曲線を第

9

図、 第

10

図に示す 。

縫目線の屈曲角度を変えると、 第

9

図に示すように 直線縫い ( 屈曲角

0° )

と屈曲角

15°

の場合の荷重一伸び曲線は 、

2

段階に別れる 伸長の初期段階では 織糸のたるみや曲がり、

縫糸のゆるみが引き伸ばされるため、 ゆるやかなカーブを描く 。その後 、 急激に立ち上がり、

織糸と縫糸自身が伸長される 。織物の破断は、縫糸が

1

本または数本ずつ織糸を切断していく

ため 、 その瞬間毎に急激な荷重の低下が起こる 。

(7)

田中:縫目強さに及ぼす縫目形状と縫目間隔の影響

屈曲角

30°

における荷重一伸び曲線は、 屈曲角

15°

と同じような傾向を示すが、立ち 上がり曲線の勾配はゆるやかであり、最大荷重値を示した後、破断するまでの伸びが大きい。

屈曲角

45°

60°

と角度が大きくなると、荷重一伸び曲線は 、初期の立ち上がりはみられず、

傾斜がさらにゆるやかとなり 、 最大荷重値が小さく、ほぼ同じ低レベルで破断が進行する。

織物の荷重一伸び曲線と比較すると 、 綿織物複合試験片 、アセテート織物複合試験片共に 、 屈曲角

15°

の角度が小さい場合は 、 伸長の初期段階で織物の伸長特性が認められるが、

屈曲角

30°

45°

60°

では織物の伸長特性はほとんど現れない 。

縫目線を円弧状にしたときは 、その曲率の変化に対して、第

10

図のように 、最大荷重値に差 はあるものの荷重一伸び曲線は同じ変化傾向を示し、 第

9

図における屈曲角

15°

とほぼ 同じ形状である 。 しかし 、 曲率が小さい

0.4cm-1

0.33cm—1

の場合は最大荷重値を示した後、

急激に低下するが、 曲率の大きい

0.66cm-1

、 〇.

5cm-1

の場合はゆるやかに低下する。

さらに 、 綿織物複合試験片では 、 初期領域の傾斜はかなりゆるやかであり 、 伸びが大きい。

これは織物の伸びより縫目部分の伸び変形が大きく 、 それが荷重一伸び曲線の初期領域を支配 していることが分かる 。 これに対し、アセテート織物複合試験片の場合は 、曲率の小さい

0.33cm—1

における伸長の初期段階では、アセテート織物構成糸の伸びが大きいので、織物の特 性が現れるが、 曲率が大きくなると、 綿織物複合試験片の場合と同様に縫目部分の伸び変形の 方が大きな影響を持つようになることが分かる 。

<第

7

図>荷重-伸び曲線 (織物)

19

(8)

伸び(

cm)

<第

8

>荷重-伸び曲線( 縫糸 )

伸び(

cm)

< 第

9

>荷重-伸び曲線

(屈曲角による影響: アセテート織物複合試 験片-縫目間隔

2mm)

< 第

10

図>荷重-伸び曲線

( 曲率による影響 : アセテート織物複合試験片-縫目間隔

2mm)

3—2

破断荷重

上述の荷重一伸び曲線において得られた最大荷重値を縫目の破断荷重とみなした。測定値の 平均値を第1 表に示す 。この破断荷重について検討を加えた。

3-2-1

屈曲角の影響

破断荷重 (N)と縫目問隔及び縫目線の形状との関係を調べ、 その結果を綿織物複合試験片 については第

11

図に、 アセテート織物複合試験片については第

12

図に示す。 また図中にこれら のデータより計算した回帰曲線を合わせて示す 。

綿織物複合試験片では 、 第11 図に示すように、 縫目線の屈曲角が大きくなる程 、破断荷重は

小さくなる。また 、この破断荷重値の変化は縫目間隔によっても異なる 。回帰曲線の形状から

(9)

2mm

3mm A4mm

Angle (°)

<第

11

図> 破断荷重と縫目間隔及び屈曲角の 影響との関係(綿織物複合試験片)

Angle (°)

<第

12

図>破断荷重と縫目間隔及び屈曲角の 影響との関係(アセテート織物複 合試験片)

田中:縫目強さに及ぼす縫目形状と縫目間隔の影響

<第

1

表> 複合試験片の破断荷重値 縫目間隔 縫目形状 破断荷重 3]F 均値(N)

綿 アセテート

2mm

屈曲角

〇 0

54.2 13.2

15° 40.7 9.9

30° 23.0 4.2

45° 12.4 2.6

60° 9.9 2.1

曲率

〇.

33cm-1 33.5 8.5

〇. 4cm

—1 32.0 7.3

〇. 5cm

1 26.6 5.5

〇.

66cm -1 22.6 5.1

3mm

屈曲角

〇 0

46.8 11.9

15° 38.5 8.4

30° 34.0 4.8

45° 17.6 2.9

60° 10.9 2.3

曲率

〇. 33cm

—1 37.2 7.4

〇. 4cm~1

37.0 6.5

〇. 5cm

-1 27.9 5.5

〇.

66cm-1 25.3 5.1

4mm

屈曲角

〇 0

44.2 10.0

15° 29.7 8.3

30° 30.6 5.8

45° 21.9 3.5

60° 11.4 2.4

曲率

〇. 33cm

-1 25.5 7.7

〇. 4cm

-1 26.2 6.7

〇. 5cm

-1 21.3 6.0

〇. 66cm

-1 20.7 5.3

60 50

40

〇3

〇〇

2 1

(gPBOq (z)PBOq

21

(10)

分かるように、 縫目間隔

2mm

のときは、 角度

0

に対して破断荷重

F

はかなり

2

次曲線的変化 を示し、その回帰曲線の式は、 寄与率

=0.9533

で 、

F =0.0093

1.33580 0 +55.6280

である 。 縫目間隔

3mm, 4mm

と大きくなると 、曲線の曲がりは小さくなり 、ほぼ直線的な変化 となる 。これらの回帰曲線の式は縫目間隔

3mm

の場合 、寄与率

=0.9405

F = -0.0028 02-

〇,

45250 0 +46.8680

縫目間隔

4mm

の場合 、寄与率

=0.8230

F=-0.0005 62-0.46130

+42.0140

である。 いずれの場合も高い寄与率で回帰曲線が得られる。 これらの式の比較から分かるよう に 、 縫目間隔が大きくなるほど、

2

次の係数が小さくなり 直線的変化を示すようになる 。 ま た 、これらの破壊荷重について 、

t

検定を

5 %

有意水準で行った結果(第

2

表)、屈曲角

は、縫目間隔

2mm

3mm

との間、

2mm

4mm

との間に、 屈曲角

15°

では、

2mm

4mm

との 間 、

3mm

4mm

との間にそれぞれ有意差が認められた。 また 、 屈曲角

30'

45°

では、 縫目間

2mm

3mm

との間

2mm

4mm

との間

3mm

4mm

との間全てにおいて有意差が認められ た。屈曲角

60°

では 、縫目間隔

2mm

3mm

との間

2mm

4mm

との間に有意差が認められ た〇

<第

2

表 >

t

検定結果

t(18, 〇.05)=2.101 t(18,0.01)=2.878

綿織物 书

t合試験片

アセテート

gS

物複合試験片

縫目形状 比較縫目間隔

t

の値 有意差

(5%) tの値

有意差

(5%)

屈曲角 (')

角度〇

2mm —3mm 5.394

有り

8.087

有り

2mm —4mm 11.538

有り

13.882

有り

3mm —4mm 1.309

なし

7.289

有り

角度

15

2mm —3mm 0.747

なし

3.164

有り

2mm —4mm 5.464

有り

3.19

有り

3mm —4mm 5.565

k 有り

0.567

なし

角度

30

2mm —3mm 12.677

有り

0.561

なし

2mm —4mm 4.266

有り

3.087

有り

3mm —4mm 2.897

有り

3.409

有り

角度45

2mm —3mm 2.613

有り

0.117

なし

2mm —4mm 2.907

有り

2.762

有り

3mm —4mm 3.083

有り

2.831

有り

角度60

2mm —3mm 2.462

有り

1.933

なし

2mm —4mm 4.756

有り

1.055

なし

3mm —4mm 1.144

なし

1.066

なし

円弧

(cm -1)

曲率0.66

2mm —3mm 3.654

有り

2.049

なし

2mm —4mm 3.015

有り

1.124

なし

3mm —4mm 4.674

有り

0.435

なし

曲率

0.5

2mm —3mm 5.687

有り

1.027

なし

2mm —4mm 1.827

なし

1.555

なし

3mm —4mm 7.476

有り

0.338

なし

曲率0.4

2mm —3mm 1.879

なし

1.113

なし

2mm —4mm 3.166

有り

1.415

なし

3mm —4mm 4.229

有り

0.308

なし

曲率0.33

2mm —3mm 3.658

有り

2.076

なし

2mm —4mm 0.196

なし

4.151

有り

3mm —4mm 2.865

有り

0.071

なし

(11)

10

♦ 2 nun

■ 3 mm A 4 mm

-0.25 0.25 0.75

Curvature (cm-1)

<第

13

図> 破断荷重と縫目間隔及び曲率の影 響との関係

(綿織物複合試験片 )

-0.25 0.25 0.75

Curvature (cm-1)

< 第

14

図>破断荷重と縫目間隔及び曲率の影 響との関係

( アセテート織物複合試験片 ) 田中:縫目強さに及ぼす縫目形状と縫目間隔の影警

アセテート織物複合試験片では、 第

12

図に示すように 、綿織物複合試験片の場合と同様に屈 曲角が大きくなる程、破断荷重は小さくなり 、また破断荷重値の変化は縫目間隔によっても異 なる 。 回帰曲線の形状からも分かるように、 縫目間隔

2mm

3mm

のときは 、角度に対してかな

2

次曲線的な変化を示すが 、 縫目間隔

4mm

のときは、 ほぼ直線的な変化となる 。これらの回 帰曲線の式は、縫目間隔

2mm

の場合 寄与率

=0.9580

で、

F =0.0031

ゲー〇.

3841 6 +13.7030

縫目間隔

3mm

の場合 寄与率

=0.9826

で、

F =0.0024

ゲー〇.

3079 6 +12.0670

縫目間隔

4mm

の場合 寄与率

=0. 9526

で、

F =0.0005

2-

.1613

+10.2300

で表される。 縫目間隔

4mm

の場合は、

2

次の係数が非常に小さく、 ほぼ直線関係にあると考え てよい。 また、

t

検定の結果 ( 第

2

表 )、屈曲角〇'では、 縫目間隔

2mm

3mm

との間 、

2mm

4mm

との間、

3mm

4mm

との間全てにおいて有意差が認められた 。 屈曲角

15°

では、縫目 間隔

2mm

3mm

との間

2mm

4mm

との間に 、屈曲角

30°

45°

では 、縫目間隔

2mm

4 mm

との間、

3mm

4mm

との間にそれぞれ有意差が認められた 。 しかし 、 屈曲角が大きくなる

にしたがい 、 縫目間隔による強さの差は小さくなり 、 屈曲角

60°

では 、 どの縫目間隔の間でも 有意差は認められなかった。すなわち、屈曲角を大きくすると 、 その破断強さにおける縫目間 隔の差は少なくなると言える 。

3-2-2

曲率の影響

円弧状縫目線の曲率と破断強さとの関係を、 綿織物複合試験片については第

13

図に アセテー 卜織物複合試験片については第

14

図に示す。

---Hr- 14

g

1210

8 6 4 2 --- 9-

—23 —

(12)

13

図に示す綿織物複合試験片の場合 、曲率

k

が大きくなる程、 破断荷重

F

は小さくなる。

屈曲形状の場合と同様に 、 破断荷重値の変化は縫目間隔によっても異なる 。 これらの回帰曲線 の式は 、 縫目間隔

2mm

の場合 、 寄与率

=0.9442

で 、

F =37.0840k2-71.072Ok +53.4900

縫目間隔

3mm

の場合 、 寄与率

=0.8118

で、

F=-l

〇.

9580k2-26.4730k +47.0150

縫目間隔

4mm

の場合 寄与率

=0.8336

で、

F =52.6340k2-70.4020k +44.1460

で表される。 屈曲形状の場合と比較すると 、 縫目間隔

2mm

4mm

のときは、

2

次係数が大きぐ 曲率

k

に対して破断荷重は

2

次曲線的な変化を示すことが分かる。 縫目間隔

3mm

のときは、

2

次の係数が小さく、ほぼ直線的な関係となる。 また 、

t

検定の結果 ( 第

2

表)、 曲率

0.66cm-1

は、 全てにおいて有意差が認められた。曲率

0.5cm-1

0.33cm-1

では 、縫目間隔

2mm

3mm

との間 、

3mm

4mm

との間に、曲率

0.4cm-1

では、 縫目間隔

2mm

4mm

との間、

3mm

4mm

との間にそれぞれ有意差が認められ、縫目間隔が大きな影響を持つことが分かる 。

14

図に示すアセテート織物複合試験片においても 、綿織物複合試験片の場合と同様に曲率 が大きくなる程、 破断荷重値は小さくなる 。 これらの回帰曲線の式は、 縫目間隔

2mm

の場合、

寄与率

=0.9246

で 、

F =9.8170k2-19.2240k +13.3120

縫目間隔

3mm

の場合 寄与率

=0.9703

で、

F =11.7800k2—18.1620k +11.9240

縫目間隔

4mm

の場合 寄与率

=0.9019

で、

F =2.9841k2-9.2697k +10.0970

で表される。屈曲形状の場合及び綿織物複合試験片における円弧状の場合と比較すると、 縫目 間隔の違いにおける回帰曲線の形状にあまり差はみられない 。

t

検定の結果(

2

表) 曲率

0.66cm-1

0.5cm-1

0.4cm-1

では 全てにおいて有意差が認められなかった。 曲率

0.33cm-1

では、縫目間隔

2mm

4mm

との間にのみ有意差が認められた 。

以上のように 、 円弧状に縫合した場合、 綿織物複合試験片では 、縫目間隔の影響が大きいの に対し、アセテート織物複合試験片では、縫目間隔により破断荷重はあまり影響を受けていない 。 これは、 曲率が小さい場合は 、伸びの初期段階で織物の特性が現れ 、 曲率が大きい場合は 、縫 合部の伸び変形の方が大きくなり 、 破断部分における織糸の伸度の差によるものと考えられる。

3-3

構成繊維による差違

3-3-1

縫目線が屈曲角の場合

縫目間隔

2mm

の時の破断荷重を第

15

図に、 縫目間隔

3mm

にっいては第

16

図に、 縫目間隔

4mm

にっいては第

17

図に 、綿織物複合試験片とアセテート織物複合試験片それぞれの場合を比較し

(13)

田中:縫目強さに及ぼす縫目形状と縫目間隔の影響

て示す。

縫合部のない織物のみの強さは 、 綿織物

22.2N/cm

、アセテート織物

3.5N/cm

と綿織物はア セテート織物の約

6

倍の強さであった 。これが縫合することにより、 縫目間隔

2mm

の時 、屈曲 角

15°

の場合約

4

倍に 屈曲角

30°

60°

の場合は約

5

倍といくらか少なくなるが 、屈曲角

45'

の場合では約

6

倍と織物のみの場合の比とほぼ同じである。

縫目間隔

2mm

の場合 、 綿織物複合試験片とアセテート織物複合試験片とを比較すると 、破断 荷重値には大きな差がみられるが、回帰曲線の形状はほぼ同じであり 、 屈曲角

15°

30°

の間 で比較的大きな強さ低下が起こる(第

1

表 )。

縫目間隔

3mm

において 、綿織物複合試験片の場合は、第

1

表に示す値から分かるように 、 屈 曲角

30°

45°

の間で強さ低下が起こり 、アセテート織物複合試験片の場合は、 屈曲角

15°

30°

の間で強さ低下が起こるが、角度の変化に対して全体としてなめらかな低下傾向を示す。

縫目間隔

4mm

において、綿織物複合試験片の場合は、屈曲角〇"と

15°

の間で比較的大きな 強さ低下が起こり 、アセテート織物複合試験片の場合は屈曲角

15°

30°

の間で強さ低下が起

こる 。

なお、 これらの破断においては 、綿織物複合試験片の場合、縫目間隔が

3mm

4mm

のとき は、 織物部分の破壊ではなく 、 縫糸の破断がみられた 。 アセテート織物複合試験片の場合はい ずれも、織糸部分の破壊であった。強さ低下においては、 いずれの縫目間隔においても

15°

30°

の間であり、縫目間隔による差は認められなかった。このようにアセテート織物複合試験 片においては 、 縫目間隔による差は認められなかったが 、綿織物複合試験片とアセテート織物 複合試験片との間においては 、縫

S

間隔における破断荷重値の差が大きく ( 第

1

) 、綿織物 複合試験片の縫目間隔

3mm

では 、 いずれの角度においても 、強さが期待できると考えられる 。

3-3-2

縫目線が円弧状の場合

縫目間隔

2mm

の時の破断荷重を第

18

図に 、 縫目間隔

3mm

については第

19

図に、 縫目間隔

4mm

については第

20

図に 、綿織物複合試験片とアセテート織物複合試験片それぞれの場合を比較し て示す 。

曲率

0.66cm-1

0.5cm-1

の場合 、 綿織物複合試験片はアセテート織物複合試験片の約

4.5

倍、

〇.

4cm-1

の場合は約

5

曲率

0.33cm-1

の場合は約

4

倍になり 、縫合部のない織物の場合と比 較すると 、 綿織物複合試験片とアセテート織物複合試験片との強さ比は小さくなっている 。 こ れは、 綿織物複合試験片の方が曲率の増加に対し 、 強さの低下率が大きいことを意味する。

縫目間隔

2mm

において、綿織物複合試験片とアセテート織物複合試験片とを比較すると、 破 断荷重値には大きな差がみられるが 、 回帰曲線の形状すなわち曲率に対する破断縫目強さの変 化傾向はほぼ同じであり 、綿織物複合試験片、 アセテート織物複合試験片共に 、 曲率

0.5cm-1

0.4cm-1

の間で大きな強さ低下が起こる ( 第

1

表)

縫目間隔

3mm

において 、綿織物複合試験片の場合は、 曲率

0.5cm—1

0.4cm-1

の間で急激な

—25

(14)

60 50 40 30 20 10

-0.25 -e- 0.25 0.75

Curvature (cm-1) -0.25 0.25 0.75

Curvature (cm—1)

%

Angle (°)

< 第

17図

> 縫目間隔

4mm

における破断荷重 (屈曲角による影響)

-0.25 0.25 0.75

Curvature (cm-1)

< 第

18

> 縫目間隔

2mm

における破断荷重 ( 曲率による影響)

Angle (°)

< 第

16

図 >縫目間隔

3mmにおける破断荷重

( 屈曲角による影響 )

Angle (°)

< 第

15

図 >縫目間隔

2mmにおける破断荷重

( 屈曲角による影響 )

< 第

19図

> 縫目間隔3mmにおける破断荷重 ( 曲率による影響)

<第

20図

> 縫目間隔

4mm

における破断荷重 ( 曲率による影響)

強さ低下が起こるが 、アセテート織物複合試験片の場合は曲率が大きくなるにつれ破断荷重値 は小さくなるが、その低下率は小さく、大きな強さ低下は起こらない 。

縫目間隔

4mm

において、 綿織物複合試験片の場合もアセテート織物複合試験片の場合も 、曲 率が大きくなるにつれ破断荷重値は小さくなるものの 、大きな強さ低下はみられない 。

なお 、 円弧状に縫合した場合も縫目間隔が

3mm

4mm

では、綿織物複合試験片においては

♦アセテート

■綿

♦アセテート

■綿 70

♦アセテート

■綿

N

p OJ o q

2 ) P J

(N)PJ

(N)p

〇〇〇〇〇〇

6 5 4 3 2 1

(z)PBOl (N)P

J

(15)

田中:縫目強さに及ぼす縫

R

形状と縫目間隔の影響 縫糸の破断がみられた 。 屈曲角においてみられたような縫目間隔による構成繊維間の強さの差

はみらなかった。

このように 、 縫目線が円弧状の場合 、縫目形状において、構成繊維による差違はあまり表わ れていない 。

3-4

写真観測による考察

上述の結果を引張り変形中の縫合部の形状及び破断状態を写真観測により調べ 、検討した 。 なお、 写真は全て最大荷重値の時のものを示す。

3-4-1

縫目線が屈曲角の場合

綿織物複合試験片においては 、屈曲角が大きくなる程、織物の破壊が激しくなるものの破断 荷重やその傾向は角度によってあまり差違がみられない。しかし 、縫目間隔については 、次の

ように明確な差がみられる。 代表例として、屈曲角

30'

における縫目間隔

2mm

の写真を第

21

(A)

に、縫目間隔

3mm

のものを(

B)

に 、 縫目間隔

4mm

のものを (

C)

に示す 。

縫目間隔

2 mm

の場合、縫糸が一方の織物に片寄り、 もう一方の織物は比較的きれいに残る 。 すなわち 、 縫糸が存在しない方の織物が大きく破断する 。 破断の形態は

2

段階に分かれる。 ま ず、 縫糸に押されてよこ糸が破断し 、 次に中央部からたて糸が破断し始める 。破断部は菱形に 開き、 次いで縫糸に沿って織物が破断する。

縫目間隔

3mm

の場合、 破断形態は

3

段階に分かれる 。 まず、 中央部からよこ糸が破断し、 次 にたて糸が破断する。 このとき、縫目は中央部を中心に-目一目がリング状に広がっている。

その後、中央部から縫糸が破断する。破断状態は菱形であるが 、縫目間隔

2mm

の場合とは異な り 、

2

枚の織物が同じように破断する。 縫目間隔

2mm, 3mm

における織糸の破断は 、よこ糸が 先で、次いでたて糸である 。

縫目間隔が

4mm

と大きくなると 、破断形態は

2

段階に分かれるようになる。 まず、 中央部か らよこ糸が破断する。 縫糸はリング状に広がり 、 その後破断する。たて糸は縫目間隔

2mm, 3mm

の場合は破断したが、縫目間隔

4mm

の場合はほぼ完全に残る 。 これらから縫目問隔が大きくな ると、

1

縫目内の織糸数は縫目間隔に比例して大きくなるが 、 それが

1

つの束となって、 引張 り荷重を支えることが分かる。 したがって、 その縫目内にある織糸の束の強さが縫糸の強さよ り大きくなると、 縫糸での破断が生じるものと考えられる 。よって織糸

1

本の強さを

Ty

、 縫目 内の織糸数を

N

、縫糸の強さを

Tm

とし、

2Tm<Ty‘N

となると、 縫糸で破断が生じることに なる 。 綿織物の場合、

Ty =466. OcN, Tm =2. 7N

であるので 直線縫いの場合、

1

縫目内の糸

N^5.9

本以上 、縫目間隔に直すと、

2.6mm

以上では縫糸の破断が起こることになり 、 ほぼ 前述の実測結果と合致する 。 縫目線を角度

0

で屈曲させた場合を考えると、

1

縫目内に入る織 糸数

N

N = L X w X cos 0 + L X p X sin 6

L=

縫目間隔

w=

たて糸数/

cm p=

よこ糸数/

cm

—27 —

(16)

(A)

屈曲角30°- 縫目間隔

2mm

(綿織物複合試験片)

(B)屈曲角30°-

縫目間隔3mm (綿織物複合試験片)

(〇屈曲角

30°-

縫目間隔4

mm

(綿織物複合試験片)

(D)

屈曲角

45°-

縫目間隔2mm (アセテート織物複合試験片)

(E)

屈曲角

45°-

縫目問隔3mm (アセテート織物複合試験片)

(F)

屈曲角

45°-

縫目間隔4

mm

(アセテート織物複合試験片)

<第

21

図>破断荷重値における縫合部の破断形態

(17)

田中:縫目強さに及ぼす縫目形状と縫目間隔の影響

(G)

曲率

0.66cm'1—

縫目間隔

2mm

(綿織物複合試験片)

(H)

曲率

0.66cm'1-M

目間隔

3mm

(綿織物複合試験片)

(I)

曲率

0.66cm—1—

縫目間隔

4 mm

(綿織物複合試験片)

(J )

曲率

0.33cm-1

一縫目間隔

2 mm

(アセテート織物複合試験片)

(K)

曲率

0.33cm-1—

縫目間隔

3 mm

(アセテート織物複合試験片)

(L)

曲率

0.33cm-*1—

縫目間隔

4 mm

(アセテート織物複合試験片)

—29 —

(18)

となる。 角度沒と織糸数との関係を第

3

表に示す 。綿織物複合試験片は、よこ糸密度がたて 糸密度より小さいので、 沒が大きくなると、1縫目内の織糸数は、 屈曲角

30°から45°

で最大 値を示す 。 縫目間隔

2mm

0=60°

の場合を除き 、

1

縫目内の織糸強さの合計が縫糸強さ以上

となることが分かる。

<第

3

表 >

1

縫目内の織糸数 ( 屈曲角の場合 )

Lwcos 〇 + Lpsin = N

縫目間隔 縫目形状 綿条裴物複合試験片 アセテート織物複合試験片 角度( ° )

Lwcos 0 Lpsin 6 N Lwcos 0 Lpsin 0 N

2mm

〇 (0=0)

9

9 8.4

8.4

15 (¢=15) 8.69 1.09 9.78 8.11 1.5 9.61

30 (6 =30) 7.79 2.1 9.89 7.27 2.9 10.17

45 (6 =45) 6.36 2.97 9.33 5.94 4.1 10.04

60 ( 8 =60) 4.5 3.64 8.14 4.2 5.02 9.22

3mm

(¢=0) 13.5

13.5 12.6

12.6

15 (¢=15) 13.04 1.63 14.67 12.17 2.25 14.42

30 (6 =30) 11.69 3.15 14.84 10.91 4.35 15.26

45 ( d =45) 9.55 4.45 14 8.91 6.15 15.06

60 (6 =60) 6.75 5.46 12.21 6.3 7.53 13.83

4mm

〇 (0=0)

18

18 16.8

16.8

15 (¢=15) 17.39 2.17 19.56 16.23 3 19.23

30 (6 =30) 15.59 4.2 19.79 14.55 5.8 20.35

45 (〇 =45) 12.73 5.94 18.67 11.88 8.2 20.08

60 (e =60) 9 7.27 16.27 8.4 10.05 18.45

アセテート織物複合試験片においても、 綿織物複合試験片と同様に縫目間隔による差はみら れるが、 角度による影響はあまりみられない 。代表例として、屈曲角

45°

における縫目間隔

2mm

の写真を第

21図

(D

)

に、 縫目間隔

3mmのものを(E)に、縫目間隔4mm

のものを(

F)

に示 す。

縫目間隔2mmの場合、中央部から破断が始まる 。その際、 たて糸、 よこ糸はほぼ同時に破断 し 、 菱形に開く 。綿織物複合試験片の場合と同様に一方の織物に縫糸が片寄り、もう一方は比 較的きれいに残る。

縫目間隔

3mm

の場合、破断の形態は

2

段階に分かれる 。 まず 、中央部からよこ糸が破断し 、 次にたて糸が破断する 。 縫糸に沿って布が破断し 、菱形に開く。よこ糸が破断してから 、 たて 糸が破断するまでに 、 綿織物複合試験片においては 、縫目がリング状に広がったが、アセテー

卜織物複合試験片では広がらなかった。

縫目間隔

4mmの場合

、破断の形態は

3

段階に分かれる。 まず 、 中央部からよこ糸が破断する 。 縫糸がリング状に広がり 、その後中央部からたて糸が破断する。 アセテート織物複合試験片で

は 、織糸の強さTyは 、 たて糸は308.3cNであるが、 よこ糸は

104.9cN

と小さいので、 この場 合は常に織物での破壊が生じている。

アセテート織物複合試験片における織糸の破断は 、 縫目間隔2mmの場合たて糸 、 よこ糸はほ

ぽ同時であり、 縫目間隔

3mm,4mmの場合はよこ糸が先で

、次いでたて糸である。

(19)

田中:縫目強さに及ぼす縫目形状と縫目間隔の影響

3-4-2

縫目線が円弧状の場合

綿織物複合試験片の曲率による影響において 、屈曲角の場合と同様に縫目間隔による差は明 確である。曲率が大きくなる程、織物の破壊は激しくなるものの 、 写真観測からは大差はみら れない 。 代表例として、曲率

0.66cm-1

における縫目間隔

2mm

の写真を第

21

図(

G)

に、縫冃間 隔

3mm

のものを (

H)

に、 縫目間隔

4mm

のものを(

I)

に示す。

縫目間隔

2mm

の場合、破断の形態は

2

段階に分かれる。屈曲形状の場合とほぼ同じ傾向を示 し、まず縫糸に押されてよこ糸が破断し、 次にたて糸が破断し始める。 しかし 、屈曲形状の場 合とは異なり 、織物は

2

枚共破断する 。破断後の状態は、 屈曲形状の場合は

1

枚のみ大きく破 断したが、円弧状の埸合は、

2

枚共破断した 。

縫目間隔

3mm

の場合 破断の形態は

3

段階に分かれる。 まず、 縫糸に押されてよこ糸が破断 する。その際、 縫糸はリング状に広がる 。 次にたて糸が破断し始めると同時に縫糸が破断する。

破断の順序も形状も屈曲形状の場合と非常によく似ているが 、破断後の状態は円弧状の場合の 方がややきれいに残る 。また、 たて糸残量は屈曲形状の場合より多い 。

縫目間隔

4mm

の場合、破断の形態は

2

段階に分かれる。 まず、 縫糸に押されてよこ糸が破断 する。 その際、縫糸は屈曲形状の場合と比べ、 たて方向に長いリング状に広がる。 次に縫糸が 破断するが、たて糸は破断せずほぼ完全に残る。縫目間隔

3mm

の場合と同様に縫目間隔

4mm

においても屈曲形状のものと非常によく似ているが、 破断範囲は狭い。

アセテート織物複合試験片においても、屈曲形状の場合や円弧状の綿織物複合試験片の場合 と同様に縫目間隔による差は明確である 。曲率が大きくなる程 、布の破断が激しくなるものの 大差はみられない 。代表例として 、曲率

0.33cm-1

における縫目間隔

2mm

の写真を第

21

図⑴に 縫目間隔

3mm

のものを(

K)

に、縫目間隔

4mm

のものを(

L)

に示す。

縫目間隔

2mm

の場合、たて糸とよこ糸が同時に破断する。 この時 、 数本ではあるが 、 たて糸 は残っており、これは屈曲形状のアセテート織物複合試験片との差である 。 また、縫糸は一方 の布に片寄り、もう一方の布は比較的きれいに残る。 これは 、 屈曲形状の綿織物複合試験片、

アセテート織物複合試験片の縫目間隔

2mm

の場合と同じである。

縫目間隔

3mm

の場合 破断の形態は

2

段階に分かれる 。 まず、 縫糸に押されてよこ糸が破断 する 。 その際 、 縫糸はリング状に広がる 。 次にたて糸が破断する 。屈曲形状の場合、 一方の織 物が中心に破断したが、円弧状の場合は

2

枚共同じように破断する。

縫目間隔

4mm

の場合、 破断の形態は

2

段階に分かれる。 まず、 縫糸に押されてよこ糸が破断 する 。 その際、縫糸はリング状に広がる 。 次にたて糸が破断する 。 縫目間隔

3mm

の場合とよく 似た形態であるが、 たて糸の破断は縫目間隔

3mm

の方が激しい。

破断後の状態は 、 綿織物複合試験片においては、

3

つ共似ており アセテート織物複合試験 片では 、 縫目間隔

3mm

4mm

が似ている

また 、 屈曲形状の場合との大きな差は 、 屈曲形状においては、 縫糸が一方に片寄り 、

1

枚の

31

(20)

織物が大きく破断するのに対し、 円弧状では 、 ほぼ中央に縫糸が存在し 、

2

枚がほぼ均等に荷 重を支え、

2

枚が同じように破断する場合が多く認められた。

円弧状に縫合した場合は、 第

22

図に示すように 、縫目と織糸との角度は

1

縫目毎に変化して いる 。 屈曲の場合と同様に 、(

a)

のように、縫目の一端を頂点にもってくると、

1

縫目が円弧 の中心に対してなす角を

a

とし、第

1

縫目の水平方向をなす角をとすると、

6»i=«/2

であ

り、

a

は次式で与えられる 。

sin «/2 = L/2R

L:

縫目間隔

R:

曲率半径

n

番目の縫目では 、その角ぬは

— a /2 + (n —1)a

であり、また第

1

縫目が

(b)

のように よこ方向に水平である場合は、

0i=a 0n= n a

となる 。

(a) (b)

广織物構成糸

<第

22

図>縫目線の形状(円弧

4

犬の場合)

ここでは、 屈曲形状の場合と同様に 、

1

縫目内の織糸数を計算すると 、 第

4

表、第

5

表のよ うになり 、 曲率が大きくても 、 第

1

番目の縫目のなす角もは比較的小さく 、直線縫いの場合と あまり変わらない 。例えば、屈曲形状の場合と比較して、屈曲角

15°

となるのは 、 頂上の縫目 より 、 縫目間隔

2mm

曲率

0.33cm—1

の場合には、第

4

5

番目の縫目である。 したがって、 目線に角度をつけて折り曲げるより 、その部分に丸みをつけることにより、織糸の破断を少な くすることができ 、 また前述のように 、破断荷重の低下が少ないことも理解できる。

以上をまとめると 、ある角度をもって縫目線が折れ曲がっている場合には、 まずその屈曲部

の頂点に荷重が集中し、そこでいくらかの織糸が破断するが 、破断の進行に従って、引張り荷

重を支える織糸が増加し 、縫目を構成している縫糸に大きな荷重が集中するようになる 。 した

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