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遺伝子検査法との比較によるノロウイルス抗原検出キット

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Academic year: 2021

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道衛研所報Rep, Hokkaido Inst. Pub. Hea正th,56,83−85(2006)

遺伝子検査法との比較によるノロウイルス抗原検出キット        SRSV(II)一AD「生研」の有用性評価

Evaluation of Usefulness of Norovirus Antigen Detection Kit SRSV(II)一AD Seiken :Comparison with Gene Detection Assay

三好 正浩   吉澄 志磨   佐藤 千秋     石田勢津子   奥井 登代

Masahiro MIYosHI, Shirna YosHlzuMI, Chiaki SATo,

     Setsuko IsHIDA and Toyo OKuI

Key words:norovirus(ノロウイルス);antigen detection(抗原検出);enzyme immunoassay(酵素      抗体法);reverse transcriptase−polymerase chain reaction(逆転写酵素ポリメラーゼ連      鎖反応法)

 北海道では,ウイルス性集団胃腸炎が疑われた事例にお ける原因ウイルスの検出を,主に逆転写酵素ポリメラーゼ 連鎖反応法(reverse transcriptase−polymerase chain reaction:RT−PCR)に基づく遺伝子検査によって実施し

ている.遺伝子検査には専用の機器・設備が必要なことか ら,各保健所で採取された検体は当所に送付され,検査が なされている.ウイルス感染の拡大が予測される事例では,

感染者の増加を防ぐため迅速で適切な行政対応が求められ ることから,発生初期における原因ウイルスの特定が必須 である.国内では,ウイルス性胃腸炎の主要な原因である ノロウイルスに対する抗原検:出キットが市販されている.

この検出キットは酵素抗体法を応用したものであり,一連 の作業が4時間程度で済むため遺伝子検査よりも迅速に結 果を得ることができ,汎用性にも優れており,複数検体の 同時処理も可能なことが特微である.そこで本研究では,

この検出キットについてウイルス性胃腸炎事例における迅 速な検査手法としての有用性を遺伝子検査との比較によっ て検討した.

材料及び方法

1.試 料

 平成16年9月から平成17年5月の問にウイルス性急性 胃腸炎の集団発生が疑われ採取された胃腸炎患者の便273 検体及び集団胃腸炎事例に関係した調理従事者など非発症 者の便92検体の計365検体を本検討に用いた.

2.抗原検出キットによるノロウイルス抗原の検出  抗原検出キット(以下,キット)にはデンカ生研㈱から 発売されたSRSV(II)一AD「生研」を用いた.検査は添付

文書の手順に沿って実施した.すなわち,採取した便に添 付の緩衝液及び2.5w/v%VEAL INFUSION BROTHを 加え良く撹生した後,4℃にて!7,000×g,10分間遠心

した.その上清を200μL採取し,検体抽出液を200μL 加えて撹搾後希釈検:体とした.希釈検体を抗SRSV−GI及 び抗SRSV−GII抗体固相プレートにそれぞれ100μLずつ 加え,さらに陽性コントロール液GI及びGIIをそれぞれ 100μL,陰性コントロールとして緩衝液をそれぞれに100 μL加えて室温(15〜25℃)に1時間静置した.静置後,

各ウェルの反応液を吸引除去し,洗浄液を200μL加えて マイクロプレートミキサーで数秒間際絆した後,再び液を 吸引除去した.この洗浄操作をさらに2回繰り返し行った.

残液は,抗体固相プレートを清潔なペーパータオルの上で 逆さにして叩くことによって可能な限り取り除いた.続い て抗SRSV−GI抗体固相プレートに100μしの酵素標識抗 体液GIを,抗SRSV−GII抗体固相プレートに100μしの 酵素標識抗体液GIIを加え,室温(15〜25℃)に1時間 静置した.静置後,前述の洗浄操作を5回繰り返し,残液 を除去後,各ウェルに基質液を100μL加え,遮光して室 温に30分間静置した.静置後,各ウェルに反応停止液を 100μL加え,30分以内にマイクロプレートリーダー(波 長450nm/630 mn)にて吸光度を測定した.キットに添 付されている説明書に従って結果を求め,GI及びGIIの いずれかもしくは両方が陽性と判定された検体を陽性とし た.従って,GI及びGIIの両方とも陰性の検体を陰性と

した.

3.遺伝子検査によるノロウイルス遺伝子の検出  遺伝子検査は,以下の方法によって行った.すなわち,

一83一

(2)

採取した糞便0.5gに滅菌蒸留水を4.5mL加えよく撹絆 した後4QCにて1,700×g,20分問遠心した.その上清 300μLを1.5mしのマイクロチューブに採取し,4℃に て9,000×g,10分間遠心して,その上清140μLをRNA 抽出に用いた.RNA抽出及びRT−PCRは,平成15年

11月5日付食詰監発第1105001号「ノロウイルスの検査   キット 法について」1)に従って行った.すなわち,QIAamp Viral

RNA Mini Kit(QIAGEN)によってRNAを抽出した後,   計 DNase処理を行い,ランダムプライマーを用いた42℃,

30分間のRT反応によってcDNAを合成した. PCRは, 表2 キャプシドタンパクコード領域に位置するCOGIF/G1−

SKR及びCOG2F/G2−SKRプライマーと,ポリメラー ゼタンパクコード領域に位置するP1/P3及びNV82・

SM82/NV81プライマーを使用して行った.得られた増

幅産物について塩基配列を解読し,ノロウイルス遺伝子が   キット 確認された検体を陽性と判定した.

表1ウイルス性胃腸炎患者便における抗原検出キットと   遺伝子検査によるノロウイルス検出の比較

遺伝子検査

陽性数 陰性数

陽性数 陰性数

106 105

12 50

118 155

211 62 273

調理従事者など非発症者便における抗原検出キット と遺伝子検査によるノロウイルス検出の比較

遺伝子検査

陽性数 陰性数

陽性数 陰性数

0

1

9

82

9

83

1 91 92

結果及び考察

 本キット及び遺伝子検査における検討結果の比較を表1,

2及び3に示した.胃腸炎患者の便273検体において,ノ ロウイルス遺伝子陽性は2!1検体,陰性は62検体であっ た.これらの便におけるキットの検討結果は,陽性が118 検体,陰性が155検体であった.両検査法ともに陽性で あった検体は106検体,陰性であった検体は50検体で あった.胃腸炎患者の便を用いた検討の結果,遺伝子検査 との陽性一致率,陰性一致率及び全体の一致率は,それぞ れ502%,80.6%及び57,1%であった.次に,調理従事 者など非発症者の便92検体を検討したところ,ノ白ウイ ルス遺伝子陽性の便は1検体,陰性の便は91検体であっ た.これらの便におけるキットの検討結果は,陽性が9検 体,陰性が83検体であった.キットにて陽性となった9 検体は,遺伝子検査ではすべて陰性であった.一方,陰性 となった83検体における遺伝子検査の結果は,陽性が1 検体,陰性が82検体であった.調理従事者など非発症者

の便を用いた検討の結果,遺伝子検査及びキットの陽性一 致率,陰性一致率及び全体の一致率は,それぞれ0%,

90,1%及び89.1%であった.以上のことから,計365検 体における両検査法の陽性一致率,陰性一致率及び全体の 一致率は,それぞれ50.0%,86.3%及び65.2%であった.

キットの検出感度は,RT−PCR法の約300分の1とされ ており2),今回の検討における陽性一致率は検出感度を反 映した結果であると考えられた.使用に際しては,あらか じめキットの検出感度を考慮に入れる必要があると思われ た.また,キットのみで陽性になった検体については,偽 陽性の可能性があることから電子顕微鏡法なども試みる必 要があると思われた.

 発症者が排泄するノロウイルスの量(抗原量)は,発症 後早期に採取された便において多く,回復と共に減少する と考えられる3).そこで,各検体の採取日について発症日 から第9病日までの各日と第10今日以降の陽性一致率を

表3全検体における抗原検出キットと遺伝子検査による   ノロウイルス検出の比較

遺伝子検査

陽性数 陰性数

     陽性数 キット    陰性数

106 106

21 132

127 238

212 153 365

検 60      100陽

籔,。      8譲

       率   40       (%)

      60一←

  30

遺      40 季・・

馨1。      2・

ロ 

ロ十 〇 『   .㎏   「    ・.  [   〉 セ 0

   012345678910<

         発症後採取日数

図1抗原検出キットと遺伝子検査の陽性一致率に及ぼす   .発症後採取日数の影響

それぞれ求め比較を試みた.その結果,第4病日までは全 患者検体における陽性一致率(50.0%)よりも良好な結果 が得られたが,第5三日以降は下回り,加えて漸減傾向が 認められた(図!).従って,キットを用いて患者便を検 査する場合には第4三日までの検体を用いることが適当で あると考えられた.今後,行政検査に導入して迅速に原因 ウイルスを特定する目的で使用する場合には,これらの結

一84一

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果を考慮する必要があるものと思われた.

 本検討の結果,ノロウイルスの抗原検出キットは,検出 率が遺伝子検査の約5割であり,検体となる糞便は第4病

日以内に採取されたものが望ましいことが使用上の留意点 として挙げられた.今後,これらの点を改良し感度の向上 を図ることが,迅速かつ確実性が求められる行政検査への 導入に必要であると思われた.

1)厚生労働省医薬食品局食品保健部監視安全課長通知食安監  発第1105001号「ノロウイルスの検査法について」,平成

 15年11月5日

2)山上隆也,浅川洋美,大石陽子:臨床微生物迅速診断研究  会誌,13,15(2002)

3)Gary GW, Anderson LJ, Keswick BH, Johnson PC,

 DuPont HL, Stine SE, Bartlett AV:J. Clin. Microbio1.,

 25,2001 (1987)

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参照

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