• 検索結果がありません。

南極の国際法的体制と環境保護

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "南極の国際法的体制と環境保護"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

李    永 鎭

目  次       いるといわれている。度重なる旅行や探険,科学 一.序       的研究活動,油槽船の難破,世界各国の南極基地 二.南極の自然環境と既存の條約体制       運営による各種の廃棄物の放出等が地球環境の最 1.南極自然條件と環境概要      後の塗塁である南極大陸の自然環境を脅威してい 2.南極條約      る。そこで南極環境の保護措置を強化し,制度的 3.南極あざらし保護協約      にそれを後押しする国際的な安全装置の必要性が 4.南極海洋生物資源保護協約         提起されるわけである。勿論,人間の活動には常 5.南極鑛物資源活動規制協約         にある程度の危険が伴うものであり,どの水準で 6.南極條約体制に封する評債         の危険が人類に対する現実的な脅威であるのかを 決定することは科学的に検証しがたい。しかし,

三.新たな南極制度と環境保護      現状態で南極の環境問題に適切に対処するために 1.南極に封する既存の環境保護措置      は,単純に汚染物質の排出規制による環境汚染の 2.環境保護iに關するMadrid議定書体制    防止のみならず,環境破壊をあらかじめ回避する

(1)成立背景       ような対策が必要であり,不可避である場合であっ

(2)Madrid議定書体制の主要内容      てもその破壊の程度が最少限にする方法を選ばせ 3.主要國の動向       る制度的な方案が設けられなければならない(注1)。

四.結 び       このような要求から始まり漸次法的な規制の領 域を広めてきたのが,今日の南極条約体制である。

一序      現在,南極条約体制は,広い意味で,1959年に締 今日,南極は全体の国際共同体の利害と密接な  結され1961年に発効した南極条約を母法とし,

関わりを持ち,法的な側面のみならず政治的,経   1961年以来形成されてきた南極条約協議会議の勧 済的,かつ環境的な側面からの考察を同時に必要  告と1972年南極あざらし保護協約,1980年の南 とする国際的戦略要衝地でもある。特に資源開発  極海洋生物資源保存協約および1991年spainの の進展により破壊しやすい独特な生態系を持って  madridで採択された環境保護に関する南極条約 いる南極は人間が招来したいかなる変化によって  議定書等で構成されている。これらの南極に関す も,その環境への殿損をもたらすことが明白であ  る法的体制は国際紛争をあらかじめ防止し,過去 り,また南極地域の環境破壊は地球自体の環境や  30余年にわたってこの地域での平和の維持に大い 生態系に不可分の影響を及ぼすものである。した  に寄与してきたと評価され,引いては南極に関す がって,現時点で南極環境に悪影響をおよぼす人   る科学的な研究の自由とそのための諸国間の協力 間の活動を規制しなければならない必要性が日々  の手がかりを提供することによって各種の科学的 大きくなっているのである。実際にも近頃南極地  な調査と研究において括目すべき成果を収めてき 域での人間活動の領域および頻度が大幅増加しつ  たことも否定できない事実である(注2)。

つあるにつれ漸次南極の環境が深刻に汚染されて    しかし,既存の南極条約体制も管理主体の面や

(2)

立法的な不備等の問題点を抱えており,今日まで  などの微生物が生息している(注7}。

国際社会も実際に大きな変化を歩んできた。本研   他方南大洋(the Southern Ocean)には生物 究ではこのような諸問題等に着目し現在の南極条  資源が豊富であり,今までの生物学的研究によれ 約を始めとする法的体制の問題点を探り,特に環  ば栄養分の多い植物性plankton,珪藻類一オキ 境保護に効果的ではないという指摘によって締結  アミ(krill)一、魚類一あざらし,鯨等の植物連

されたマドリド議定書(madrid protoco1)の内  鎖を作っていると言われている(注8)。このような 容と実施上の問題等を分析し,その解決方案を摸   南極に対し世界の多くの国家が関心を注いでいる 索していきたい。       理由は大抵大陸自体およびその周辺海域の持つ科 学的重要性と莫大な天然資源のためであると指摘 二南極の自然環境と既存の条約体制       されている。まず,科学的な側面から見ると,南

1.南極の自然条件と環境概要      極は地理的な遠距離性と特異な自然環境によって 南極は地球上で純粋な野生地域として残ってい   大気科学,地球科学,地質,海洋学等のすべての る唯一の地域である。南極の面積は米国とメキシ  観測科学分野の新鮮な研究対象であるのみならず コを合わせたものと同規模で,約1400万平方キロ  天然の科学実験場でもある。また,万年氷として に及び,表面の98%が平均厚さ1.6〜2キロメター  蓄積された南極の氷塊は多くの科学者たちによっ の万年氷で覆われている「白色の第7大陸」と言  て地球変化の神秘を解明してくれる「冷凍された われている。このような南極に最も近い南アメリ  タイムカプセル(time capsule)」と言われている。

カからは1000キロ,ニュージーランドから3000キ   1957年〜58年にかけて国際地球観測年(IGY)

ロ,南アフリカから4000キロ以上も離れているう  が設けられ,南極に対する本格的な国際科学探査 え(注3),膨大な量の氷とその他の厳しい自然条件   が実施されて以来,科学的な重要性は持続的に強 のために周年わたる人間の活動や定住を容易には  調されている。一方,資源に関してみると,南極 許さない辺境である(注4)。南極はまたこの地球上  は大陸自体にのみならずその周辺海域及び大陸棚 で最も寒く風が強い地域であり,北極よりももっ  に豊富な生物ならびに鉱物資源が存在していると と苛酷な環境を保っている。南極の年間平均気温  評価されている。今まで知られた南極の賦存資源 は位置及び高度によって大きな差異を見せている  は大体i)オキアミ(krill;euphausia superba)

が,大体海岸地域は平均気温マイナス10度程度で  で代表される南大洋水産資源,ii)石油およびガ あり,内陸の最も寒い地域はマイナス55度以下に  ス,iii)金属鉱物, iv)水資源として利用可能な

も下がる。特に東南極の氷原地帯の気温は最も低  氷山,v)観光資源,そしてvi)非常植物貯蔵所 く,1983年にはニュージーランドのヴァンダ基地   として利用可能である点など多様な用途で活用し ではマイナス89.6度の最低気温が観測されたこと  得るものを含んでいる。したがって,このような

もある(注5)。南極の氷は地球上の全体淡水の7割を  重要性のため各国の利害が尖鋭に対立している同 占めてはいるものの,内陸の降雨量がとても少な  地域に対する国際的な政策決定の適法な枠を提供 いため大陸は乾いた砂漠のようであって生命体が  しているのがいわゆる南極条約体制(Antarctic 生き残りにくい。そのため,南極では脊椎動物と  Treaty Regime)である。

樹木が生息しない(注6)。このような南極の自然の   2.南極条約

故,大陸性の原生動植物相はこのような環境に適   南極をめぐって有機的に結ばれた一連の国際的

応できる種に限られている。例えば,植物につい  協定の根幹になるのが南極条約である。これは本

ては夏の間水を得られるごく限られた場所にしか  来,国際科学連合理事会(Intematioal Council

生育せず,藍藻,地衣類,苔類が主である。また,  of Scientific Union:ICSU)が制定した国際地球

苔群落にはトビムシのような小虫,ダニ・シラミ  観測年(IGY,1957〜1958年)期間の国際共同南

(3)

極科学活動が成功的に遂行されることによって,  際協力増進を強調しており,第3条は各締約当事 特に米国,旧ソ連等の領有権主張留保国らは持続   国に科学調査を通して得た情報および知識の相互 的に南極活動の保障を得るために南極を管理する  交換を義務づけている。

国際機構が必要であるという認識下に1959年に米   第三に,同条約は各締約当事国の利害が相衝す 国の提議によってその活動に参加した国々を中心   る領有権問題に関しては,一旦その解決を留保し とする12か国によって締結されたのである(注9)。   ている。すなわち,条約第4条は条約発効期間中 同条約は1961年6月に発効されおよそ半世紀以  に南極に対する領有権主張を凍結し,新しい主張 上にわたって南極の領有権をめぐる争点を「凍結」  や既存の領有権主張の拡大を禁止しており,特に するなどいくつかの主要な原則を定立することに  平和的な利用条項と共に南極条約の中心的な内容

よって,その間の議論に対し一応の決着をつけた  をなしていると言えよう(注15)。

と評価することができる(注1°)。全部で14ケ条で構   3.南極あざらし条約

成された南極条約は南極大陸の平和的な利用と科   南極条約は前に見てきたように南極大陸の平和 学探査の自由の保障を主な目的に明示している傍  的な利用と科学探査の自由の保障等を明示しては ら,南緯60度以南と規定した南極地域に対する国  いるものの,資源開発活動に関しては直接的な条 家的な競争,特に軍事的な競争を抑制し領有権に  文をおいていない。特に19世紀以来,継続された 対する問題解決を猶予することにより,南極大陸  南極海域での濫獲によってこの地域であざらした が 国際的な不和の舞台 になることを防いでい  ちが枯渇状態にいたり,資源活動と関連して南極 る(削)。      条約の原則と目的を実現しうる附随的な協定の制 このような目的のため,南極条約はまず第一に,  定の必要性が提起された。1972年に締結された南 南極を非軍事化地域,つまり平和地域として設定  極あざらし保存協約は,南極地域に生息する,特

している。南極条約第1条は南極が平和的目的だ  にあざらし類の保存と合理的な利用を目的とした,

けに利用されなければならないことを明記してお   この方面での最初の国際条約である(注16)。この間 り,軍事基地の設置や兵器実験のように本質的に  題は本来1968年にBelgimで開催された第3次南極 軍事的な性格を帯っているすべての措置を禁止す  条約協議会議で堤起され,南極の自然生態系が破 る一方,南極でのいかなる核爆発と放射線の処分  壊されないように自発的に自国民のあざらし捕獲 も禁止している(注12)。特に,この規定によって南  を規制することを合意した。つづいて1966年の第 極大陸は世界最初の非核地帯(nuclear−free zone)  4次協議会議で,南極あざらし捕獲の自発的規制

と看倣している(注13)。他方,条約7条はこのような  のための暫定指針が勧告文の形式で採択され,こ 禁止措置の確認のため,各締約当事国に南極内の  れを根幹として1972年イギリスのロンドンで協約 他国基地に設置された装備および施設構造物に対   が締結された。同協約の適用対象地域は南緯60度 する査察の権利を与えている。勿論,ここでいう  以南海域であり,6種類のあざらしに対し捕獲許

「平和的」と言うのは用語自体が多義的なので論  容限度,時期,地域,捕獲方法等を規制すること 議の余地があるが,第1条2項の規定を見てもまた,  を目的としている。南極でのあざらし捕獲があろ 南極において各国の活動には軍事員や装備の協力   うという予想下に同協力が成立したものの,それ が不可欠である点を考慮すれば「完全な非武装化」  の発効以来,南極地域ではこれといった商業的な と限定して解釈することは現実的に困難があるの  あざらし捕獲がなくなったため,この協約はむし ではないかと考えられる(注14)。      ろ未来の商業的な捕獲にその焦点をおいた予防的

第二に,南極条約は科学探査の自由保障とその  な機能を持っていると言える(注 7)。

分野の国際協力に関する広範囲な条項を含んでい   4.南極海洋生物資源保存協約

る。第2条は科学的調査の自由とそれに関する国   南極大陸および周邊海域に豊富であり,重要な

(4)

蛋白質の供給源として浮かび上がっているオキア   護協約や生物資源保護協約は南極条約の持つこの ミ(kril1)漁業が日本,旧ソ聯などにより開始され  ような脆弱点を部分的ではあるが反映している。

たことに伴い,そのため南極海洋生態系全体が破   つまり南極条約はこれらの各個別条約の有機的な 壊される心配が増大してきた(注18)。このような状  集合体であり南極管理に関する一定の法的な枠組 況から生物学的に世界で最も豊かなところとして  みを提供しているものである。

知られた南極海においての本格的かつ商業的な開    南極には苛酷な自然条件にもかかわらず莫大な 発が行われる前に,または,将来起りうる漁業権  量の天然資源が存在しているという研究調査結果 に関する紛争が登生する前に海洋生物資源にかん  が知られたのは随分前の話であるが,70年代始め する保存措置を採必要が生じた。これにより海洋   から南極条約協議国等を中心として鉱物資源の開 生物資源の保存と生態系の維持のために制度的な  発と規制の問題が本格的に論議され始め,特に鉱 装置を作るための努力が,1975年の第8次南極條   物資源開発のような事案は各国の複雑な利害関係 約會議で行われ,1980年キャンベラでの外交會議  の対立を引き起こすということは自明な事実であっ で「海洋生物資源保存協約」が採澤され,1982年  た。このような事情で、南極の鉱物資源開発の問 に登敷するに至った。(注19)。       題に対しては南極も,国家管轄権外にある深海底 この協約は南極大陸およびその周邊海域で生息   と同様人類の共同遺産であるという宣言を要求す しているすべての生物資源の保存および合理的な  る国家が多数登場してきた(欄。

利用を主目的としており,その適用封象地域は南   1972年の第7次協議会で一部国家の極地開発技 極條約やあざらし保存に關する協約とは異なって  術が相当な水準まで到達していることをふまえ,

廣範園であり南緯60度以南の地域はもちろん南極   開発問題を正式案件として論議して以来,協議国 牧束線(Antarctic Convergence Line)まで振   らは南極条約に明示された原則と目的にしたがっ 大されている(注2D>。つづいて同協約の最も大きな  て,鉱物資源問題に接近することに合意し,適切 特徴は南極生物資源を合理的に利用し適切に保存   な関連協定が締結されるまで南極地域に対する商 する資源管理政策において傳統的に採用してきた  業的な探査,開発活動を猶予するように決議して 特定資源に關する個別的な原則出はない,條約の   た(遡。1982年6月からは鉱物資源の規制のため 適用海域の全燈においての生物を封象とする包括   に南極条約特別会議の形式で本格的な協約案の作 的な,いわゆる「生態系接近方式(Ecosystem  成作業が進行され,1988年6月ニュージーランド approach)」を採揮している鮎である(注21)。この  のウェリントンで南極鉱物活動規制協約が採択さ

ような「生態系アプローチ」は多くの專門家たち  れた。総67ケ条文と1ケ付属書で構成された同協 によって劃期的で進一歩した方式であり,資源管  約は当時,会議に参加した16ケ協議国の批准を受 理において重要な道標であるとして肯定的な評債  ければ効力を発生するようになっていた(閥。し を得ている(遡。      かし南極鉱物資源の開発に関しては締約国間,つ 同接近方式によると,南極生物資源問の相互保   まり領有権主張国と非主張国,そして開発途上国 存關係を正確に把握しており,商業的に捕獲しえ   と先進国間の相互利害が相衝しており,特にあい る資源とそのほかの生物資源の生態學的な均衡關  にくにも同協約の採択の翌年発生した補給船Bahia 係が破壊されないように強調されている。     Paradiso号の南極海での油流出事故は世界で最

5.南極の鑛物資源活動の規制協約         も厳格な環境規制も人間の過失や規制メカニズム 前に述べたように南極条約そのものは南極の平  の失敗に対して,どんなに無力であるのかを見せ 和的な利用のために,いくつかの主要原則を確立   てくれた事件であった(注%)。その際,地球的な関 してはいるものの,資源活動の規制のための別の  心事として浮かんだ地球環境問題の国際民間環境 装置や規定をおいてはいない。前述のあざらし保  機構の強力な反発を浴び,いくつかの協議国らは

(5)

とくにフランスとオーストラリアが同協約に対す  法である南極条約と関連協約とが南極問題におい る支援を撤回し鉱物探査を含んだ南極でのすべて  て最も解決困難な領有権問題を巧みに回避し各国 の人間活動を規制する包括的な体制の定立を要求  が自国に有利に解釈し得る余地を与えることによっ するにいたり,南極資源問題は開発から保護へと  て,妥協可能な点について相互に協力,調和が可 回帰する新しい局面を向かえるに至った(棚。    能であったという事実に起因する(注3°)。南極条約

一部協議国らの署名拒否によって同協約は自動   第4条を綿密に分析してみると,同条のいかなる 的に効力を発生し得なくなり,1990年チリで協議  規定も南極の領有権と関連する3つの類型の国家 国の特別会議が開催された。この時も南極鉱物賓  の立場を否定するものとは解釈されず,また条約 濠に対する現実的な接近を主張する米国,ソ連,   有効期間中のいかなる活動や行為も南極大陸の領 日本等と開発禁止を支持するフランス,オースト  土的権利の主張や支援,または否定の根拠と認定 ラリア,イタリア等の主張が鋭く対立したが,当  され得ないということである。実際にこのような 時ノルウェイの代表であるAndersonが両側の主  不明瞭な規定によって,領有権主張と同様,各国 張を土台にし妥協案(Anderson案)を作成した。  の利害が尖鋭に対立する問題に対しても何等の影 これは新しい体制樹立のために次期協商の草案と  響を及ぼすこと無く,既存の南極体制を維持,発 して採択された。その後スペインのマドリッドで  展し得たということである。要するに,この条項 1991年4月と10月にかけて2回に渡る特別協議で  はそれぞれ自国の法律的な利害によってその内容

も激論が展開され,米国等の消極的な態度にも拘  を解釈し得る余地を残しておくことによって,立 わらず環境保護という時代的潮流に合わせ,「環  場の異なる諸国が,各々その権利と地位を保障さ 境保護規定書」が採択され,署名,発効され   れているということだ。したがって南極条約当事 た(遡。      国らはこの条項によって,南極の法的地位に対し これは言わば,鉱物資源活動においてもこれを    お互いに同意していないことを同意する と言 母体とする新しい法的体制が形成される可能性を  うことが可能である(注31)。

強く示唆していると考えられる(注29)。        このような接近方式は南極条約のみならず,関 6.南極条約体制に対する評価      連協約であるあざらし保護協約,海洋生物資源保

南極条約が発効されて以来,これを基盤として  護協約,鉱物資源活動規制協約に対してもそのま 形成,発展してきた南極条約体制は,過去30余年   ま援用されている。

間南極管理と関連のある新しい状況に直面しなが   次に,南極条約体制,つまり南極条約と関連協

ら,同条約が規定し得なかった資源活動規制の法   約は南極大陸を運営,管理するに当たっても二重

的な枠を提供する一方,南極地域に対する協議国   的構造を持っ ている。これは,南極条約の原署名

の権限と責任を拡大してきた。         国と追加して協議国の地位を獲得した国家は南極

また,南極条約体制は,同体制に対し加入国家   問題に対する排他的政策決定をしているというこ

の数も絶えず増加し,南極条約の場合,原署名国   とを意味する。単純に条約に加入した国家は定期

12ケ国に過ぎなかったが,過去30余年間締約国数   的な会議に参加し,投票権を行使し得ず,南極関

は43ケ国(1996年末現在)に増加し,原署名国だ   連政策の討論や運営と関連のある勧告事項の決定

けが持っていたいわゆる協議国の地位も14ケ国に,  採択過程から排除される。これらに対する協議国

追加的に付与された。このように,南極条約体制   地位の賦与は全体的に 科学基地設置または科学

が持っている特色と限界に関してはいくつかの点  探査隊の派遣のような南極地域での実質的な科学

で批判的な分析が可能であると考えられる。    的研究活動を遂行している期間 の間だけ可能で

まず,南極条約体制が過去30余年間成功的に維   ある(醐。このような協議国の特権的な地位はあ

持,発展してくることができたのは,何よりも母  ざらし保護協約,海洋生物資源保護協約,および

(6)

鉱物資源活動規制協約でもそのまま認定されてお  領土主権を享有するとは言っても,それは国家に り,これらが,今まで国際社会で「排他的グルー  対し無制限的な行動の自由を与えるものではなく,

プ」(exclusive group)として批判を浴びてきた  または,隣…接国やその国民に不当に有害な方向に ことも,このような特権的権限行使に起因す  その領土が利用されることを防止しなければなら る(欄。       ない義務を持っているだけではなく,ひいては,

非同盟諸国を中心として南極への「人類の共同  周辺国の大気圏や公海を汚染させる産業活動等や 遺産」概念の適用を検討すべきだという主張や,  核実験を抑制しなければならない(醐。

国際社会全体が管理に参加し得るように,新たな   国際法上累次確認された同原則によって,各国 レジームを樹立しなければならないという声が高  は環境汚染を引き起こす行為をしてはならない作 くなってきたのは,このような脈絡から出発して  為または不作為の義務を持ち,これは南極地域に きたのである(温)。いわゆる「新国際経済秩序」   もそのまま適用されることである。しかし,この に基づく国際管理方式や南極に対する「世界公園」  ような抽象的な一般国際法上の原則や関連国際法 指定案などがまさにそれである(圃。        (例えば海洋法協約上の海洋環境の保護と保存)

このように南極条約体制に対する再評価を通し  規定は,行きすぎた一般性と環境保護のための規 た問題提起および新たな提案は条約体制運営にお  制基準の暖昧性によって特定地域の具体的状況に いていくつか開放的な措置を取らせる契機になり,  おいて,環境被害と汚染の是非を巡って常に国際 このような一連の措置と共に体制内に可能な多数  紛争が発生する余地を抱えているのである(醐。

の国々を参加させることによって,南極の一元的   南極条約の発効以後,国際的な環境保護に対す 管理の可能性を多少高めたと考えられる。実際に   る関心の増大に伴い,条約協議国による70項余り 過去30年以上,南極条約体制は比較的平穏な運営   の環境および生物資源保護の関する勧告(Re一 により国際社会の平和と安全に一定の貢献をして  commendation)を始め,前述したような諸協約 きたことは否認し得ない事実であり,一般的に広  の採択はそのような問題点を補完するための措置 く認められていると思われる㈱)。したがって,  と看倣すことができる。特に南極体制の関連協約 南極の環境保存と生態系保護を中心とする新しい  のなかで最も広範囲な環境保護規定をおいている 南極条約体制への改編という新たな課題を抱えて  鉱物資源活動規制協約は,南極での資源開発活動 いる現存の体制は相当の期間持続すると展望され  が同地域の環境と関連生態系に悪影響を及ぼさな る。       いように詳細で細かい一連の環境条件を明示して はいるものの,結局前述したように南極の鉱物開 三.新たな南極制度と環境保護      発と環境保護とは命題が互いに一致していないと

1.南極に対する既存の環境保護措置       いう国際世論が拡散するにつれ,これは事実上廃 南極条約を締結した当時には,他の国家はいう  棄され包括的な環境保護のための新しい体制,つ までもなく条約当事国も南極の環境保護よりはこ  まりMadhd議定書が採択されたのである。

の大陸を通して得られる莫大な規模の資源にだけ  2.環境保護に関するMadrid議定書体制 関心があった状況であったため,環境保護のため   (1)成立背景

の直接的な規定をおいていなかった。つまり,南   1988年鉱物資源協約がi採択されて以来,南極条

極環境保護はこの時期には国際的な関心事ではな  約協議国のみならず南極条約体制に属していなかっ

かった。したがって,この場合に適応可能な規範   た多数の国家も南極の環境破壊に深い憂慮を表す

的規制装置といえば,環境汚染に関する一般国際  中で,フランスおよびオーストラリアの2ケ国が

法上の原則や関連国際法規定の部分的な条項にな  鉱物資源条約の署名に反対する立場を公式的に表

るだろう。今日,すべての国家は自国領土に対し  明してきた。南極鉱物の開発は必然的に脆弱な南

(7)

極環境や生態系を破壊させるため(曲),鉱物開発  を含んだ南極の固有の価値の保護は,南極条約地 活動を許容する協約の代わりに南極環境および関  域でのすべての活動を計画かつ実施するに当たり 連生態系を保護するための包括的な措置が必要で  考慮すべき基本的な事項であると規定し,南極の あるという共同の提案をしたのである。      すべての人間活動から南極環境およびその生態系,

これらの動きは,環境に対する国際的な関心の   南極の野生性,そして美的,科学的な価値を保護 増加と伴って直ちに大きな呼応を得て,この問題  することを宣言している㈱)。要するに,環境に に取り組むための特別協議国会議が召集され   関する基本原則を定めた第3条は本議定書の核心 た(注4°)。同会議の論議では新たな独自的協約の必   的な内容であると言えよう(注 )。依って,南極で 要1生および南極条約体制の既存の構成要素と新し  の活動は次のようにいくつかの新たな原則下で実 く採択される措置の関係を設定するいくつかの立  施しなければならないことになっている。第1に,

場を巡って各国の見解に論難があったが,結局環  南極条約地域における活動は,南極地域の環境・

境保護を支持する国際的な支持に後押しされ1991  生態系に対して悪影響(adverse impacts)を限 年南極条約を補足する議定書という形で単一の文  定する(limit)よう計画されかつ実施されなけ 書として「環境保護に関する南極条約議定書」が  ればならない。これは,若干の悪影響はやむをえ マドリット会合で採択された脚)。この議定書は  ないものとして考えられており,どの程度に限定 既存の南極条約体制で欠如していた環境保護規定   するかは明らかではないが,悪影響を限定する義

を補充し南極大陸で行われるすべての形態の活動  務を締約国は負うことになっている(醐。

を単一の基準に依って規制するという点で重要な   ここで,環境に及ぼす悪影響とは気候,天気,

意義を持っている。      気流,水質,大気,陸地,氷河,海洋環境の重大

(2)Madrid議定書体制の主要内容        な変化および重要な自然地域に対する逆効果又は

(a)構 成      段損等を意味し,南極条約地域での活動は不作用 同議定書は前文と本文27ケ条に加えて仲裁裁判   を回避し計画・実施されなければならない(欄。

に関する付表と5つの付属書で構成されている。  ここで用いられた文言も,やはりかなりの幅を持っ 特に議定書の基本的な立場は,南極が専ら平和的   たものであり,具体的な要件は明確とは言えない。

な目的でだけに利用されえるように南極条約体制  ただ,南極環境への損害という概念は,本質的に を強化する必要から作られるものであるというこ  生態系に関する概念であり,経済的・財産的な評 とを強調しており,またこれは,南極条約の補充  価に依存するものではない(注47)。

的な性格を持っているものとして条約の効力を修   第2に,すべての南極での活動は,南極の環境 正したり変更するのではなく,南極条約体制の他  に対するその影響を事前に評価(prior assessment)

の法律的文書から発生する議定書当事国の権利や   し,判断するために十分な情報に基づいて計画さ 義務を損傷させないことを明確にしている磁)。  れ実施されなければならない。然も,その判断に したがって,この議定書は南極条約体制の範囲外   当たっては,活動に範囲,その影響など詳細な事 にあるのではなく同体制内で南極環境の保護を包  項について十分に考慮することとされている(注娼)。

括的に規制する法的文書であることを明示してい    第3に,実施中の活動の影響についての評価 る。      (予測された影響の検証を含む。)を行うため,又,

(b)環境に関する基本原則       南極地域の内外での活動が南極地域の環境や生態 同議定書の環境保護に関する基本原則を規定し  系に及ぼしうる予測されなかった影響を早期に探 ているのは第3条である。同条はまず,南極環境  知することを容易にするため,定期的かつ効果的 とこれに依存する生態系の保護と南極の野生性と  な監視を行わなければならない(欄。

美的価値および科学的研究遂行地域としての価値   第4に,ひいて南極活動は,科学的な研究に優

(8)

先順位を与え南極の科学的な研究遂行地域として  研究を除く他,禁止する。」とされている。この の価値を保存するための方向で遂行されなければ  短い簡潔な規定の意義について,まず,議定書を ならない。科学的な研究プログラム,旅行,その   採択した特別協議国会議で採択された最終議定書 他のすべての政府および非政府間主体の活動によっ  においても明記されたr議定書の発効するまでの て行われる南極活動は以上のような基本原則によっ   問,……南極鉱物資源活動に関する現行の規制は て実施されなければならない。万一,これらの活  継続すべきである」との一節を想起する必要があ 動が南極環境および生態系に害を与える影響を及  る。また,氷の採取が南極鉱物資源活動に当たら ぼす場合には修正,中止,又は取消しされなけれ   ないことも同最終議定書において確認された。さ ばならない(注5°)。       らに,議定書発効後50年を経過した後いずれかの

環境原則に関するこれらの規定は実質的には前   南極条約協議国が要請すれば,議定書の運用検討 章で述べた鉱物資源協約第4条で由来するもので,  会議が開催される。しかし,第7条の規定は,南 南極環境とそれに依存する生態系および関連生態  極鉱物資源活動についての「法的拘束力のある体 系を保護するために,環境影響評価,環境事故に  制」が有効とならない限り継続するため,鉱物資 対する監督および対応能力の要求等の多く点で類   源活動は少なくとも50年は禁止される(醐。

似している(湘)。      (e)機構

もっとも,鉱物資源協約が単に南極での鉱物活    まず,南極条約協議国会議は南極環境および生 動だけを規制対象としていたのに対し議定書は南  態系の包括的な保護のための一般的な政策を樹立 極で行われるすべての人間活動をその対象とする  し,議定書の実施のために南極条約第9条による 点で異なっている。      措置を採択する。そして,同議定書の運営および

(c)国際協力      実施に関し助言や勧告を行うことを主任務とする 議定書の当事国は南極環境保護に関する科学的,  機構として環境保護委員会の設立を規定している。

技術的,教育的な価値がある協力計画の推進,環   この委員会は,環境保護と関連のあるさまざまな 境影響評価を準備中の他当事国に対する援助,他  再検討並びに分析機能を遂行するために設置され 当事国への有用な情報の提供,基地およびその他  る勧告的な機構として,議定書の本文と付属書の の施設の位置選択時の他当事国との協議,自国の  履行と関連し,各当事国に助言し,勧告を公式化 活動活動から影響を受ける南極地域隣…接国との協  することをその機能としている。具体的には環境 力等を行わなければならない義務を負っている。  措置の効率性と刷新ないし改善,追加付属書の必 このため,各当事国はまず,南極の環境とその  要性,環境影響評価手続きの適用と履行,環境非 付属物および関連生態系に関する協カプログラム  常事態時の対応手続き,保護区域制度の運営と改

を増進させ,他当事国にすべての潜在的な環境危  善,議定書の履行と関連する科学的研究(環境監 険に関する情報や南極環境に損害を及ぼしうる自  視)等に対し助言をするようになっている(注55)。

己の影響を最小限にするよう必要な努力を傾けな   委員会は上記の機能を行うに当たって,議定書に ければならない。又,南極条約協議国会議で合意   依拠する環境保護措置およびその手続きを再検討 された措置の履行のために努力し,その活動を計  する役割を果たすことになる。言い換えれば,委 画し,実施するに当たって有用な情報を可能な限  員会はこれを通じ,現実的に発生する環境問題に り互いに提供しなければならない(齪)。      対応しこれを早期に警告し,環境義務を違反する

(d)鉱物資源活動の禁止      恐れのある国家にその事実を事前通告することに 本議定書のもう一つの注目すべき規定は鉱物資   よって,適応可能な措置を遵守させようと牽制す 源活動の禁止を定めた第7条である。それによる  る役割を果たすことである(注56)。

と,「鉱物資源に関するいかなる活動も,科学的   (f)環境影響評価

(9)

議定書第8条によるとすべての南極活動は南極   議しなければならず,議定書の署名,批准,受諾,

環境または関連生態系に対する事前影響評価のた  承認,加入そしてその後いつでも国際司法裁判所 め,第1付属書に明示された手続きによることに   と仲裁裁判所の中で一つ,または両者の紛争解決 なっている。評価の対象になる活動は科学的な研  手続きを書面で選択することができ,このような 究計画,観光,そのほかのすべての政府および非   宣言を行っていない国家や同宣言の効力がそれ以 政府活動と関連補給支援活動等の南極地域内で遂   上自国に無い国家は,仲裁裁判所の権限を受諾し 行されるすべての活動を包含し,よって非政府的  たこととみなす。また,紛争当事者間ではその解 な探査活動南極基地での活動軍事要員または装備   決手続きに関し,合意に達していない場合にも同 等もこれに該当する。ここで主なポイントは,南  紛争は仲裁裁判所に付託される(注61)。

極環境および生態系に対する活動の影響によって   仲裁裁判のために各当事国は3人以上の仲裁官 些細な(minor)または一時的な(transitory)   を指名でき,訴訟を開始した時には仲裁官名簿か 影響(許容影響)を基準とし,それ以下であるか,  ら自国民の一人を任命し,これを書面で他紛争当 それともそれ以上であるかの3段階の範壽に区分  事国と総長に通報する(注62)。

されている点である(注57)。まず,予備段階の手続   一方,仲裁裁判所は紛争当事国らの権利保存の きで許容影響未満であると判断された場合には,  ために必要であると判断される暫定措置を指示す 申請された南極活動を継続し得るが,そうでない  ることができ,南極環境の重大な被害を予防する 場合は初期環境評価が準備されなければならない。  ためにも適切であるとみなされる暫定的な措置を その結果,申請された活動において環境影響が許   とることができる。この場合,すべての紛争当事 容影響以下と判断されれば,監視を含む適切な手   国は最終決定が下される前までは,これに従わな 続きによって南極活動は継続することができ  ければならない。もちろん判決は最終的な効力を

る(楓。しかし,初期環境評価によって提案され  持ち,紛争当事者のみならず訴訟に参加したすべ た活動が些細なまたは一時的なものではなくそれ  ての当事者にも拘束力を持つ圃)。

を超過し影響を及ぼすものと決定されれば,包括   3.主要国の動向

的な環境評価が準備されなければならない。これ   議定書の当事国は,同議定書の遵守を保障する は,提案された活動の目的,位置,期限,代案と  ためにその権限内で法律,規則,行政行為,履行 その結果・初期環境状態と未来の環境状態予測,  措置を採択するなど,適切な措置を取らなければ 同影響を予測するに用いられた方法と技術,提案  ならない義務を持っており,上記の措置は他のす された活動の直接的な影響の性質,程度等に対す  べての当事国に通報されるようになっている。

る評価,監視計画と事前警告措置等を包含す    採択当時,すべての協議国の批准完了によって る(凶。それでこのような厳格な評価項目に基づ  1998年半ば,発効された同議定書は国内的な立法 き,ある提案された活動が元来のように継続され  措置義務に依拠し,各国は自国なりの国内的な実 るかまたは修正された形態によるかに対する決定   施のために関係法令を制定している。南極関連国 は,その他の関連する考慮事項を含む包括的環境   内法に対し,各国はその目的に従い様々な類型の 評価に基づいてくだされることになる。もちろん,  法制度を混用し採択しており,本稿では,その中 一旦このような過程を経て南極活動が開始される  に南極活動が活発な3ケ国の主要法令に関する動

と,それによる影響を評価し立証するために適切  向を簡単に要約してみることにする。

な監視を含む手続きが取られるのである(注6°)。     まず,米国の場合を見ると,Madrid議定書の

(9)紛争の解決       国内的な実施のための法律案が1996年6月10日,

議定書の各当事国は議定書の解釈,適用に関す   南極環境保護法の形で制定された(樹。これは,

る紛争発生時,その解決方法の選択のため相互協  既存の南極保存法(1978年),南極保護法(1990

(10)

年)等を改正する形で米国議会で通過された。南  措置をつくるためであることを宣言している。同 極保存法第2条の改正を通じ立法趣旨で同法律は   法律は国際的な協力を通じ,南極地域の環境生態

「米国に対しMadrid議定書を適用するための立  系および固有の価値を保護するために南極活動計 法権限を設けるためである」ことを分明にしてい  画を確認制度を確立し,同地域での行為の制限に る。       関する措置をとることによって議定書の履行を国 特に南極環境保護議定書の履行に関する法   内的に受容し,人類の福祉に貢献することをその

(1993年)を通して,同議定書が米国の環境的お   目的としている〔注67)。

よび資源的な管理が国益になる観点からとても重    日本の場合も南極地域での科学的調査を除外す 要であり,よって米国は全地球的な次元の環境問   る鉱物活動を禁止し,動植物の捕獲や持ち込み等 題に必須的な南極の環境保護に関する規定を内容   の制限,廃棄物の管理,南極特別保護地区および とする同議定書下の義務事項を充足する包括的な   史跡記念物保護等,議定書およびその付属書に立 措置を施行する新たな法的な措置を準備しなけれ  脚した様々な国内的措置を同法に反映してお ばならない必要性を認定するほか,同法はその法   り(曲),このような諸般南極活動に対す確認命 的な根拠を確立するための目的を持っているとし,  令,監督等は環境庁長官の所管事項としてい 具体的に南極で禁止される不法活動を列挙してい  る(注69)。特記すべきことは,Madrid議定書は南 る。すなわちこれらは議定書に合致されない方法  極条約協議国の中で日本が最も遅く批准手続きを で南極で行われる科学調査活動,補給活動,南極   完了したことによって,日本の批准後30日が経過 鉱物資源開発に資金またはその他の支援行為,許   した1998年1月14日発効されたという点であ

可期間や規制事項の違反行為などである〔注65)。    る(注7°)。

次にノルウェーは1995年,全部で8ケ章で構成   韓国の場合も同じ協議国として国内的立法措置 され比較的に詳細な「南極での環境保護に関連す  が至急であるが,現在関係実務作業班を構成し,

る規則」を制定した。同法によると南極での活動  1999年中に立法を推進しており,隣の中国もすぐ は,生態系,気候,大気,水質,氷河や海洋環境  立法化されると見られる(注71)。

および生物学的,科学的,歴史的価値などに対す

る影響を最小化するように遂行しなければならな  四.結 び

いとし,また,科学的な研究活動外の鉱物資源活   1959年に締結された南極条約とその後の一連の 動は禁止され,その場合,何が科学的な研究活動   南極関連協約は,部分的に南極環境保護規定を設 であるかはノルウェー極地研究所がこれを判断す   けているが,効果的な環境保護に充分ではなく,

ることになっている〔注66)。      また一貫性が欠如していると指摘されてきた。そ そのほかに環境影響評価,土着動植物群に対す  のような背景で前述したMadrid議定書が締結さ る有害な活動禁止,汚染および廃棄物の管理など  れたのである。同議定書はすべての人間活動から に関し,特にMadrid議定書の実施のための比較  南極環境と生態系を保護する単一の基準を提示し 的充実した内容を含んでいる。特記すべきことは,  ており,少なくとも50年程度は南極で鉱物活動を 南極活動における各種規制,許可,免許等にノル  禁止するという約束をしている。しかし,この議 ウェー極地研究所が広範囲な権限を行使し,監視  定書も南極環境の保護のために包括的な南極活動 機能を遂行するという点である。最後に日本の場  規制をするという本来の趣旨にも関わらず,いく 合をみると,「国際公共財」である南極の保護の  つかの主要な問題点を抱えている。ここでは,こ ために1997年5月28日南極地域の環境の保護に関  のような問題点を分析しそれを克服する方案を模 する法律を制定,公布しMadrid議定書の的確か  索し結論にしたい。

つ円滑な実施を確保するために必要な国内的担保    まず,議定書は環境保護において注目すべき進

(11)

展を見せてはいるものの,実際運用面で実効性を  を決定する機関を明示しなければならないだろう。

疑わせる不備な点が発見され,特に環境被害に関   次に指摘すべきことは,南極での国際協力問題 する具体的な責任と制裁規定が欠如している(注72)。  である。議定書は南極活動を包括的に規制するた よって,議定書は環境被害発生時にそれに対する  めの国際条約の一部やそれの協商過程で採択に至 評価方法,訴訟の主体,環境被害に責任のある国   るまでの全過程が協議国を中心に行われた。

民に対する国家責任の限度等に関し沈黙している。  Madrid議i定書も南極環境の包括的規制を通じそ また,ここでの責任が活動を実施する者の責任で  の汚染を防止するという善意の趣旨にも関わら 凱 あるかそれとも国家の責任であるかの是非も明確  大多数の国家を協商および採択過程で排除させる ではない(注73)。もっとも,議定書第16条では責任   ことによって,普遍的意思を反映し得なかったこ に関する手続きと規則を別途に立案するようにし  とである。環境保存はある一国の努力では成果を ており,5年にわたる法律専門家会議での論議に  挙げにくく,地域的,国際的な共同体の参加と協 も関わらず現在(1998年)までも実質的な進展を  力が無ければならず,このような国際協力を統一 成し遂げておらず,この問題は同作業が成案され  的に調整するための制度的措置が必要である(注76)。

ればある程度克服され得ると考えられる(注74>。    このような閉鎖性の欠陥を克服するためには,議 次には紛争解決手続きにおける問題として,   定書の門戸を開放し最大限多数の当事国が参加す Madrid議定書は前述の鉱物資源協約より弱化さ  るようにし,体制の運営においてもその体制外の れた紛争解決手続きを規定している。既存の南極   国々の基本的理解を充足させる多様な努力が行わ 体制は適切な紛争解決手続きが不備であり,強制  れなければならない。南極環境は人為的な国境で 的で拘束力のある紛争解決制度が必要であると指  分離されない一つの統一した生態学的単一体であ 摘され,そのような要求により新たな条約体制が  るため,その殿損の防止と保存のための努力も全 樹立されたが,むしろ鉱物資源協約より一歩後退  体的に統合されなければならない。

した手続きを導入することによって包括的な環境 規制制度としての立地を相当に弱化させたという  注

批判がある。したがって,最近の国際法上の強制  (1)Peter J. Beck, The international politics 的な紛争解決方式を喜ばしく受諾する傾向と同様    ・fAntarctic, Croom Helm Ltd., L・ndon,

拘束力のある紛争解決手続きの確立が望ましいで   1986,pp.213〜218.

あろう。       (2)F.M. Aubum, Antarctic Law and Politics,

また環境影響評価においてもその評価基準と決   1982,p.99.

定権限等が明確ではない。前述したように環境影  (3)Niegel Wace, Antarctica:anew tourist 響の程度による3つの範囲の活動を区分する具体   destination, 10 Applied Geography,1990,

的で単一な基準が設けられておらず,よって,こ   p,327,

れは議定書の効力を弱化させる結果をもたらし得   (4)長田祐卓, 南極條約体制の新展開. 駿河台法學,

る。議定書上の南極活動の影響評価に対しても,   第7巻1号,1993,p.33.

協議国会議がどのような権限を持っているかとい  (5)Peter J. Beck, supra n・te(1), p10.又,南極 う点が不明確であり,環境保護委員会の機能も諮   の自然環境の特性に關して詳細は.Barvara 問に留まる関係で,このような規定方式は南極活   Mitchell and J・hn Tinker, Antarctica and 動を行う当事国に解釈の裁量を広く許容すること   Its Resources, IIED, Lond・n,1980を参照。

になる(注75)。これは,環境影響評価制度の意義を   (6)崔鍾範金奇順,自然環境と國際法,汎洋肚出版部,

半減させることであるため,議定書は明確な評価   1994,P287.

基準を設け環境に影響を及ぼす活動の継続の是非  (7)長田祐卓,supra note(4), p36.日本國立極地研

(12)

究所,南極観測,1990,p.14.       ⑳ 同協約第1條,同條でいう南極牧束線は大膿,南

(8)崔鍾範,金奇順,op,cit., p.287.      緯50度〜60度付近で,海水が牧束(牧敏)する不連

(9>P.C.Jessup&H.J. Taubenfeld, Controls     績帯であり,南極海域から流れる冷たく監度が高い for Outer Space and the Antarctic Analogy,   海流が牧束し,深海流が生じる南極海の比較的に狭 1957.p.174ポーランドもWashington會議に参加    い付近海域である。極前線帯(Polar Front Zone)

することを希望したが招待されなかった。        とも言われるこの収束線が南大洋の表面境界線をな 働A,van der Essen, The Arctic and       している。韓國海洋研究所, National strategies A。tarcti, R,gi・n・・,AHandb・・k・n th・   f・・th・N・w A・tarcti・Treaty R・gim・,1996・

New Law of the Sea, Vol.1, Ed., R.J.       p.21, note(39).

Dupuy&D.Vignes,1991, PP.544〜549.     ¢1)同協約第2條3項

⑳ Lee kimball, Antarctic Issues Today. 25th   囮 K. Sherman and A. Ryan, Antarctic International Conference on East Asia and     Marne Living Resources , Oceanus, Vol.31,

the Law of the Sea, IIED,1984, pp.1〜2.       No.2,1988, p.63.

⑫ 南極條約第5條.      ¢3)Lee Kimba11, supra note(11), p.3.

個Peter J, Beck, The Antarctic Treaty System   ¢4)Recommendation冊一14,韓國海洋研究所, op.

after 25 Years. World Today,1986.11, Pユ96.   cit.,1996, p.31.

⑳池島大策, 南極條約髄制と海洋法(二) ,季刊海   ¢5)Article 62, Handbook of the Antarctic 洋時報VoL70,1993.9, pp.23〜24も同旨,       Treaty System, US Department of State,8th

㈲ The British Antarctic Survey Natural        ed.,1994, p.277.

Environmental Research Counci1,A Visitor s   ¢6)朝日新聞,1989年2月2日字.

Introduction to the Antarctic and its       ¢7)Williarn M. Welch, The Antarctic Treaty Environlnent,1984, pp,8〜9.      System:is it adequate to regulate or

(1⑤19世紀始め以來南大洋で捕獲対象になった生物資    eliminate the environmental exploitation of 源はあざらし類以外に鯨もあったが,鯨は高度の移    the globe s is last wildemess , Houston 住性動物であるため,捕鯨の規制に閲する協約は南    Journal of International Law, Vol.14, No.3,

極條約とは別途に世界的に適用され,南極海はその   1992,pp.630〜631.

適用海域の一部に該当する。B.A. Boczek, The   囲F, Francioni, The Madrid Protocol on Protection of the antarctic Ecosystem:A     the Protection of the Antarctic Environment ,

、t。dy i・i・ternati・nal・n・i・・nm・nt・11・w ,  T・xa・lnt・rnati・nal L・w J・u・nal・V・1・28・

Ocean Development and Internationa!Law,    1993, P.47.

Vol.13, No.3,1983,p.390.       ¢9)韓國海洋研究所, op. cit,1996, p.33.

働林司宣, 南極條約膿制の課題とその將來 ,國際   岡池島大策,supranote(19), pp.40〜41.

問題,日本國際問題研究所,No.352,1989.7. p,38.  G1)G. Triggs, The Antarctic Treaty Regime:

(1釣 M.Howard, The Convention on the       A Workable Compromise or a Plugatory of Conservation of Antarctic Marine Living     Anlbiguity? , Case Western Reserve Journal Resourses:AFive−year Review ,      of International Law, VoL17,1985, p.200.

International and comparative Law Quarterly,  岡南極條約第9條2項・

Vo1、38, p.104.      岡特に,この問題は條約膿制外の第3世界國家によっ

⑲池島大策, 南極條約鵬制と海洋法(三) ,季刊    てもっとも頻繁に指摘されてきた非難の標的であっ

海洋時報,Vol.71,1993.12, pp.36〜37.        て,當時,國連総會でマレーシア首相の次のような

(13)

主張はそのような不満をよく要約している。 南極問    p.377.

題に封ずる政策決定構造は現代國際社會の現實を適   62)同議定書第6條1,2,3項.

切に反映していない。二重参加構造を特性とする現   岡 同議定書第25條2項

在の南極燈制の排他性は國際社會で認められない…   働池島 大策,supra note(47), p32。

UN G. A., Question of Antarctica:Views of     S.K,N.Blay, op. cit., P。395.

States, UN Doc. A/39/58B(part H),1984,    岡 同議定書第11,12條

Vol. H,p.110.       岡崔鍾範,金奇順, op. cit, P.300.

岡林司宣, 國連における南極問題 ,國際法外交雑  ¢7)S.KN.Blay, supra note(51), P.386.,特にご 誌第84巻4号,1985,pp.444〜446.         こでの3段階の医分等においても議定書は前述した 岡林 司宣, 南極條約睡制の課題とその將來 ,國    鑛物資源協約と共通された態度を見せている。

際問題,日本國際問題研究所,No.352,1989,7,    (謝 第1付属書第1,2條 p44〜45.       働第1付属書第3條 岡池島大策,supra note(19), p,41.        ㈹ 第1付属書第4,5條

㈱L.Oppenheirn/H. Lauterpacht, International  ㊨1)同議定書第18,19,20條 Law,8th ed.,1955, vol.1,p291, Corfu     囮 同議定書附則第2,3條 Channel Case(Judgelnent),1.C.J Reports,   圃 同議定書附則第6,11條

1949,P.22.       ㊨4)Antarctic Environment Protection Act of

㈱ B.A.Boczek, supra note(16), p.390.         1996.

岡環境問題に封する世界的な關心が高まり,南極に   ㈹The Act of 1993, Arts.2,5.

關連する論議が活獲な中,不幸にも1989年を前後と  ㈹ Regulations Relating to Protection of the し起った一連の海難事故はこの種の事故に封ずる極    Environment in Antarctica of 1996, Arts.4,5.

地域の環境の脆弱性を一層知らしめる結果となった。  ㈲ 同法律第1條 長田祐卓,supra note(4), p.44.         岡 同法律第13〜20條

㈲ATCP Recommendation XV−1        圃 同法律第5〜12條,20〜23條

㈲W.M. Welch, op. cit., pp.636〜640.      ㈹大藏省印刷局, 南極環境保護議定書締結に伴う國 囮環境保護に關する南極條約議定書前文,第4條。    内法整備 ,時の法令,1998.3.p.35,

㈹同議定書第3條1項       ㈹大韓民國外交通商部,第22次南極條約協議當事

㈹Sir Arthur Watts, International Law and    國會議参加報告書,1998.7, p.43.

the Antarctic Treaty System,1992, p.277.    ㈱ Sir Arthur Watts, supra note(44), p.284.

㈲同議定書第3條2項(a)      ㈲長田 祐卓,op. cit., pp.50,52〜53.

⑯ 同議定書第3條2項(b)      ⑯S.K.N. Blay, op. cit., pp.391〜392.

㈲池島大策, 南極條約髄制と海洋法(4) ,季刊海洋  ㈲林 一郎, 南極條約髄制の新たな展開 ,明治大學 時報,vol,72,1994, p.30.       大學院紀要,第31集,1994, p.306.

㈹ 同議定書第3條2項(c)       ㈹ 韓國海洋研究所,supra note(20), p.110.

㈲ 同議定書第3條2項(d),(e)

㈹ 同議定書第3條4項

缶1)S,K. N. Blay, New Trends in the Protection of the Antarctic Environment:

The 1991 Madrid Protocol. American

Journal of International Law, vol.86,1992,

(14)

追記

李永鎭教授は,韓國國立忠北大學校法科大學教授で 国際法を専攻している。

李教授は,1998年4月から12月まで茨城大学人文学 部社会科学科の外国人研究員として在籍され,その年 来の研究テーマである宇宙法および南極保護法に関し て茨城大学内外の文献資料を精力的に渉猟され多大の 成果を挙げられた。本稿は日本滞在中に構想され,帰 国後の1999年7月に脱稿されたもので,今回本誌に掲 載が叶って李教授のみならず私も大変喜んでいるしだ

いである。

本稿の論旨および問題の所在などについて滞在中に も幾度となく李教授と議論し,脱稿後の原稿に目を通 して言い回しや脱字について若干訂正したが,いうま でもなく本稿に対する学術的評価はすべて李教授に与 えられるべきものである。

この分野の研究は少人数の篤学に依っている現状に あり,李教授の貢献は韓國内外に多大であると聞いて いるが,本稿は新たな寄与をなすものと期待している。

【田村武夫1

参照

関連したドキュメント

「 雇用契約 は、労働者 と雇用者 との間で労働 条件 に関 して締結 され た契約

[修士] 修士学位論文内容要旨 Abstract

豪雪地帯対策特別措置法 過疎地域対策緊急措置法 奄美群島坂興特別措置法 沖縄振興開発特別措置法 後進地域の開発に関する

284 第 2 節 国際的な規制枠組みのあり方

日本では、アフリカの地域的人権保障に関しては、加盟国以外に個人が委員会に通報す

ずれも

 この合意をうけて7月10日から12日まで南北経済協力推進委員会第10回会議が

例外的措置〜その2〜 GATT第20条(一般的例外) この協定の規定は、締約国が次のいずれかの措置を採 用することまたは実施することを妨げるものと解してはな らない。ただし、それらの措置を、同様の条件の下にあ る諸国間において任意の若しくは正当と認められない差 別待遇の手段となるような方法で、または国際貿易の偽