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理科教育分科会
1.はじめに
学部・付属小・中学校の理科教官の共同研究テーマとして,本分科会では,理科教材の 中で問題をはらんでいるものをとりあげ,共同討議による分析と実践検討とを結びつけて 追求してみようということに方針を決め,まず溶解関連教材をしらべることにした。溶解 関連教材はもちろん小。中学校にわたって配列されているが,手始めに小学校3年の教材
をとりあげ,次第に全体に及ぶよう計両をたてたわけである。
この関係の教材の内容を考えると,その中心は何といっても,物が「とける」という現 象を,どれだけ本質的に子どもたちにっかませることができるかにある。そこで,まず
「とける」という現象の分析を共同討議によって,できるだけ明らかにしょうとした。わ れわれが使う「とける」という言葉は,必ずしも一義的に鮮明なものとはいえない。いわ ゆる「やまとことば」としての「とける」の意味は,単なる「溶解」の外に,生活と結び ついて,いろいろな状態をさしていることがある。しかも子どもの認識においては,その ような生活的次元における概念の解釈も大切にしていかなければならない。
このような考えから,始めに「とける」という概念の分析を行ない,つぎに単元「ほう さんのとけ方」の研究授業を通して反省・分析をしてみたのである。以下十分なまとまり はないが,順次,結論的なことがらをのべていく。
2。研究内容
(1)化学教材における「とける」の意味の分類 。ある一一つの物質が崩れる。
e o e
(熱によって相が変化する。はじジ)から一i様で相の変化を「とける」と e e
①「とける」 いう。)
。ある一つの物質に他の物質が散らばる。(AがBの中に一様に分散する
e e e e
ことを「とける」という。熱によってとける速さが変化する。)
②雛蹴票門門欝イ本の金属幡
③瞥蹴鷺怨∴灘∵1矯0齢な鋼
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④とける
教育研究所紀要第一・一一・号
化学教材において「とける」という場合,上記のように,
るとけ方」に大別できるし,
溶け方」 「透明的溶け方」に大別できよう。これらのどの場合を扱っているか,全体と部 分の関係をはっきりさせたいものである。
。ハンダという合金となる。
と
・NaCIが水の中に一様にとけ,食塩水という透明な溶液となる。(真の溶液)
・固体の液体化(例)雪がとける等 。コWイド的溶け方(例)せっけん等 ・合金的溶け方(例)はんだ等 ・透明的溶け方(例)食塩水等
「崩れるとけ方」と「散らば またこれを,「固体の液化」 「コロイド的溶け方j 「合金的
(2) 「とける」と物質
①物質固体
流体{:二一{:鰍∴緊なVNo
②とける
物質と液体,液体と溶液の関係など,きちんとおさえた上で,「とける」についての教 材の位置づけもしたいものである。そして,溶け方には,法則性があり,溶ける量には…
定の限度があることをしっかりおさえさせたい。また,液体には,物を溶かす性質もある ことをおさえたいものである。
(5) 「とける」教材での指導上の留意事項 ①かたまりがどうなったかに留意する。
「とける」指導にあたっては,「かたまりがどうなったか。」に留意したい。「溶ける」
e e e 一
で「透明」のみ重視しすぎると,コUイドとしてとける場合はとけないことになるし,金 属はとけないことになってしまう。つぶ・かたまりから「とける」をとらえさせたい。
障一
科 教 育 分 科 会 109
②とける・まざる・とうめい・ちんでん・はくだくなどの現象のイメージ化に留意する。
「とける・まざる・とうめい・ちんでん。はくだく」などの語のもつ意味をはっきりさ せたい。さらに,それらの現象のイメージが想像できるようにしたい。そして,先行経験 を学習指導に利用する場合,現象のイメージを活用するようにしたい。
特に, 「とけた一→なくなった」というとき,形状。かたちがなくなったようにみえる のであって,原子。分子・コロイド状の大きさがあり,質量はそのままである。そこで,
概念にまちがいないよう留意しながら,忘れることのできない事物現象のイメージ化をし たいものである。
③わかり・おぼえ・役立てられるよう事物現象が概括できるよう留意する。
「とけた一ヴなくなった」というときの認識のさせ方についても,今までの学糟経験(学 校での学習経験=先行経験)をよりどころとし,計画化された指導で,まちがいのないよ うに認識を深めたいものである。この先行経験についても,「すっきりとした,はっきり したもの」を活用したいわけであるから,次の学習への利用のことも杉えて,「とけたと きのイメージ」と同時に,「とけたときの概括」のし方にも留意したいものである。
指導者は,児童生徒が,とけたときのつぶのゆくえ,しずんだときのつぶg球態,沈澱
拳
物とうわずみ液等々について,どう事物現象を概括しているか,実態分析を必要とする。
児童生徒が,いろいろの概括のし方をしているときはヅその共通するものをさがし,すっ きりざせ,教材そのものにそくした概括のし方も指導したいものである。
(4) 研究授業の分析検討
(1) 第3学年2紅;1.lll!科学習指導案 39681213(金)
指導者 久 賀 谷 泉
)
@ 元 ほうさんのとけ方。ほう酸は,水の漏度が変わると溶ける量が変わることを理解させる。
指導の計画 第1次 水に溶けないで残ったほう酸は,水を暖めると溶けること……1時
(2
111宸P:i.{ヨ)問(本時)
第2次湯に溶けているほう酸は湯が冷えるにつれて,粒になって見えてく ること……1時「田
関 連 2年(せっけんのとけ方)3年(食塩のとけ方)5年(水溶液の性質)
本時の指導
(1) 1:1標 。ほう酸は水に少し入れると溶けるが,たくさん入れると溶けないで残
lIO
教育研究所紀要第一一号るものがあることに気づかせる。
。水の底に残ったほう酸は,暖めると溶けてしまうことに気づかせる。
。ほう酸は,水の温度が高いほど,たくさん溶けることに気づかせる。
(2) 準備資料 ほう酸,シャーレ,虫めがね,ビーカー,温度計,かくはん棒,アル コールランプ,三脚,アスベストつき金あみ,マッチ,スタンド,ス プーン,せっけん水,砂,土,水,試験管(立)その他
(3)展 開
ね ら い
学習内容と活動孫E 召 意 事 項
・少しなら溶けるが たくさんでは溶け ないものがあるこ とがわかる。
。底に残ったほう酸 は暖めると溶ける ことがわかる。
・水の温度が高いほ どたくさん溶ける ことがわかる。
「,水におけるほうさんの灘ナる
量を調べる。
・このほう酸(少量とって)を水 に入れたらどうなるでしょう。
。少し入れる。一溶ける。
・(多量の)このほう酸を水に入,
れたらどうなるでし・う。 i
・たくさん入れてみる一溶けなi
いものがある。
2.沈澱したほう酸の溶かし方にi
ついて調べる。 i
・水の底に残ったほう酸をとかi すことはできないだろうか。 1 ・あたためる一溶ける。 、
の溶ける量がどう変わるか調べiるQ i
.水に入れるほう酸をぱい,i 2はい,3ばいと多くすると■
讐讐の温度は融}
・1ぱい一400Cぐらい2はいi 一・…Cぐらい3ば・・一…c
ぐらい。 i ・反対に湯の温度が40。C,60。 i
S溶解度と溶解速度とを混同しな いよう,教師が意識的に取り扱
う。
<溶解度(溶ける量)を変える条 件としての温度
溶解速度(溶ける速さ)を変え る条件としての温度・擬搾・粒 の形状〉に特に留意する。
・実験器具の使い方としての基礎 的な技能の指導にあたる。
i・量的な取り扱いは,さじで何ば い,という程度で測らせる。
13.水の温度を変えると,ほう酸i
l
I
1・事物現象そのものから問題意訓
C,80。Cと高くすると,ほうi・物の性質の特徴・物と物の聞にi 酸の溶け縄は,多くなるでしi
ようか。 ・
。40。C−1ばいすぐとける, 1
ミ60。C−2はいすぐとける,80QiC−3ばいすぐとける。 i
4.塒のまとめと次蹴つい刊
知る。 }
・すっかりとけたはずなのにどi うして白く底に残ったか。
をもたせ,先行経験を生かし,1
充分考え,じ・くり懇できるiよう配慮する。 i
Iこのため,せっけん水・砂・土i
の沈澱した水などを臆する。iI IIIi Ili I I
翻1回1目三引
とけた 底にし 底にし i
まま むず ずむ i i
起る変化e関係・条件などにつ1 いて鰍させるよう踊する詞11
1理 科 教 育 分 科 会 111
(2)授業の実際から(イメージ化・概括化する場合の留意点)
o
とける指導 の留意点
児童生徒は,
⑦とける速さ(撹律・粒の形状畷轟渡・圧力)
⑦とける量(限度 温度)
⑰粉の分散の様子(ひろがっていく様子)
㊤とけるときの変化の様子
㊥とけた状態のおさえ
⑳とけたと,けないの決め手(にごり・透明)
「とける」 「とけない」を現象的にとらえるとき,次のようなことを問題
にする。従:って,上述のようなことに留意する必要:があると:考えられる。
⑦もとにもどる一もどらない。
④しずむ一一一一しずまない。
㊥すきとおっている一一にごっている。
㊤つぶが小さくなる一大きくなる。
㊧つぶの数がふえる一少くなる。
㊨かたち,状態がかわる一もとにもどる。
例えば,せっけんを水に入れる。つぶはもとにもどらず,色がついたままの現象から,
とけたという。砂,土は水に入れ,しばらくおくと底にしずむ。そこで,とけないとい う。水に入れたほうさんは,少量ならつぶがみえなくなり,すきとおって,とけたとい う。なまりが液体になるととけたといい,雪がとけたというように。
② 「とけた」と「とけない」の往復学習をさせたい。
とけ方には,いろいろあるが,共通して言えることは,「ひろがっていく」ことであろ
一 e 一 e e 一
う。かたちがなくなる,すきとおる,いうがっく,等々については,物質のとけ方によっ てちがうが,ひろがっていることは,共通していよう。そこで,「とけた」と「とけない」
の往復学習をさせることによって,「ひろがっていく」ことの現象のイメージ化・概括化 をはかりたいものである。
③溶媒の立場からと,溶質の立場からのみ方をかえた指導をする。
「とけた」「とけない」の往復学習と同様に,「とける」教材については,現象のみ方と して,例えば,「ほうさんのとけ方」についていうなら,「水の方からみる」と「ほうさ んの方からみる」の二つの立場をかならずとりたいものである。
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教育研究所紀要策一一一一一号3.む す び
研究を進めていくうちに,さまざまな問題点がで,どれも解明をせまられ,構造化の坐 要をせまられた。そして,まとまったほんの一部分について,記述してみたわけである が,くわしくは,これからつづけて研究していくわけなので,次回にまわしたい。