• 検索結果がありません。

シャリンバイの初期の定着に及ぼす影響

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "シャリンバイの初期の定着に及ぼす影響"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

シャリンバイの初期の定着に及ぼす影響

畑   憲 治(首都大学東京理工学研究科)

宗   芳 光(小笠原亜熱帯農業センター)

加 藤 英 寿(首都大学東京理工学研究科)

可 知 直 毅(首都大学東京理工学研究科)

要   約

外来木本種であるモクマオウが、在来低木種であるシャリンバイの発芽に及ぼす影響を 野外実験によって評価した。父島洲崎のモクマオウが優占する林分と在来種が優占する林 分において、林床のリターの除去処理の有無を考慮して、2009 年 2 月にシャリンバイの種 子を蒔種し、シャリンバイの発芽個体数をカウントした。モクマオウ林では、リター除去 区の発芽個体数は、非除去区のそれよりも小さかった。実験開始から 8 ヵ月後のシャリン バイの発芽個体数は、モクマオウ林におけるリター除去区を除いて、蒔種した種子の約 70 %に達した。以上の結果は、シャリンバイの種子の発芽は、モクマオウ林において阻害 されている可能性が低いことを示唆した。

Ⅰ.はじめに

外来植物の侵入は、侵入した群集における在来植物の定着を妨げる可能性がある

(Loope

et al.,

1988; Vitousek, 1990)。このような外来植物の侵入の影響を定量的な情報に 基づいて評価することは、外来植物の適切な駆除、管理およびその後の植生回復を行う上 で重要である(Levin et al., 2003)。

外来木本種であるトクサバモクマオウ

Casuarina equisetifolia Frost.(Casuarinaceae)

(以下モクマオウ)は、小笠原諸島において広く分布している。モクマオウが優占する林 分(以下モクマオウ林)では、在来木本種の実生が欠如しており(Hata et al., 2009)、こ れは林床に堆積しているリターが在来木本種の定着を阻害している可能性がある。現地点 では小笠原諸島の二次林の優占種であるヒメツバキに関しては、モクマオウのリターがヒ メツバキの種子発芽と実生の初期成長を物理的に阻害している可能性が示唆されているが

(Hata et al., in press)、他の在来種に関しては知見がない。このようなリターの阻害作用は

(2)

種特異的である可能性があるため、モクマオウが及ぼす影響は在来種ごとに異なる可能性 がある。

シャリンバイ

Rhaphiolepis wrightiana Maxim.(Rosaceae) は、小笠原諸島の湿性立地の二

次林の亜高木層や低木層において優占している在来低木種である(豊田、2003)。モクマ オウ林におけるシャリンバイの稚樹の個体数は、在来林におけるそれよりも少ない(Hata

et al.,

2009)。そのため、シャリンバイに関しても、ヒメツバキと同様にモクマオウのリ

ターの堆積によって定着が阻害されている可能性がある。一方で、このようなモクマオウ 林におけるシャリンバイの稚樹の欠如は、単に種子散布が欠如しているだけである可能性 も否定できない。これらの可能性を検証するために、モクマオウ林とリターの存在が播種 したシャリンバイの種の発芽に及ぼす影響を野外実験において評価した。

Ⅱ.調査地と方法

1.調査地

実験は、小笠原諸島父島の洲崎地域に分布するモクマオウ林とモクマオウが優占せず在 来種が優占する林分(以下在来林)において 30 箇所ずつ設置した 5 × 5mの方形区内で実 施した(Hata et al., 2009)。2009 年 2 月に各方形区内に 1 × 1mの実験区を 1 個ずつ設置した。

野外に多数存在するクマネズミによるシャリンバイの種子の食害を防ぐために、各実験区 内に縦 25cm、横 20cm、深さ 10cmの金属製のケージを埋め込み、同じサイズのケージを 上に被せ固定し、その中で実験を行った。

2.実験方法

実験で使用したシャリンバイの種子は、2009 年 2 月に父島の各地に分布する約 40 個体か ら採取した。採取した種子は全てプールすることで、シャリンバイの親個体の間の差異の 効果を除外した。シャリンバイの種子は鳥類に食われて果実が消化され、糞に混じって散 布されることを想定して、実験開始前にその果皮を除去した。

2009 年 2 月に 1 × 1mの実験区内のすべてのリターを一旦除去し、果実を除去したシャリ ンバイの種子を 60 粒ずつ播種した。蒔種後、各林分 30 箇所の実験区のうち 15 箇所では、

除去したリターを元に戻し、残り 15 箇所ではそのままにした。

2009 年 4 月、6 月、8 月、10 月に発芽したシャリンバイの実生の数をカウントした。本研 究では子葉が完全に展開した時点で発芽とみなした。発芽した実生はカウント時に除去し た。

(3)

3.データ解析

全ての解析は、統計ソフト

R2.9.1(R Development Core Team, 2009)を用いて行なった。

シャリンバイの発芽率を処理間で比較するために、一般化線形交合モデル(Generalized

Linear Mixed Model, GLMM)を作成した。GLMM

における従属変数は、各調査時期にお

ける蒔種した種子数あたりの発芽個体数の累積値で、この誤差分散は二項分布を仮定した。

独立変数は、固定要因としての林分の違い(モクマオウ林と在来林)とリターの除去処理 の有無、ランダム要因としての各ケージである。固定要因である 2 つの独立変数とその交 互作用も含めて、考えられる全ての独立変数の組み合わせにおいて

GLMM

を作成した。

その際、2 つの独立変数の交互作用のみに含むモデルは作成しなかった。

得られた

GLMM

の当てはまり具合を比較するために、各モデルの赤池の情報量基準

(Akaike’s Information Criterion, AIC)を比較した。AICは、以下の式

AIC = -2 ×最大対数尤度+ 2 ×(パラメータ数)

で定義される(Akaike, 1987)。AICは、作成したモデルの当てはまり具合の指標であり、

AIC

の値が小さいほど、相対的により良いモデルと判断される。AICによるモデル選択で は、多重比較のような統計的検定を併用することは適切ではないため、本研究では 4 つの 処理(モクマオウ林+リターの除去なし、モクマオウ林+リターの除去あり、在来林+リ ターの除去なし、在来林+リターの除去あり)間での差の統計的な検定は行わなかった。

Ⅲ.結果

蒔種から 8 ヶ月が経過した段階で、モクマオウ林においてリターを除去した実験区を除 く 3 つの処理において、シャリンバイの累積発芽個体数の平均値は、蒔種した種子の約 70 %に達した(図 1)。モクマオウ林においてリターの除去をした実験区においても、その 平均値は約 45 %に達した。在来林におけるシャリンバイの累積発芽個体数は、リターの除 去処理の有無に関わらず、類似した時間的変化を示した。一方で、モクマオウ林における シャリンバイの累積発芽個体数は、2009 年 6 月以降において、リターの除去の有無によっ て異なる時間的変化を示した。

2009 年 4 月における累積発芽個体数を従属変数とする

GLMM

では、林分の違いとリター の除去処理の違いを独立変数に含むモデルの

AICが最も小さかった(表 1)

。6 月における 累積発芽個体数を従属変数とする

GLMM

では、林分の違いを独立変数に含むモデルの

AIC

が最も小さかった。8 月と 10 月における累積発芽個体数を従属変数とするGLMMでは、林 分の違いとリターの除去処理の違いおよび 2 つの交互作用を独立変数に含むモデルの

AIC

が最も小さかった。

(4)

2009 年 4 月では、在来林においてリターの除去しなかった実験区の累積発芽個体数が、

他の 3 つの処理におけるそれよりも大きい傾向があった(図 1)。6 月では、リターの除去 処理に関わらず、在来林における累積発芽個体数が、モクマオウ林におけるそれよりも大 きい傾向があった。その後、モクマオウ林においてリターの除去処理を行わなかった実験 区における発芽個体数が増加したことによって、10 月に段階では、モクマオウ林において リターを除去した実験区における累積発芽個体数が、他の 3 つの処理におけるそれよりも 小さい傾向があった。

0 20 40 60

2月 4月 6月 8月 10月 発芽個体数(60種子-1 )

図 1 各調査時期におけるシャリンバイの累積発芽個体数の変化。

値は平均値(±標準誤差)を示す。

△:モクマオウ林においてリターを除去した実験区、▲:モクマオウ林において リターを除去しなかった実験区、□:在来林においてリターを除去した実験区、

■:在来林においてリターを除去しなかった実験区

4月 6月 8月 10月

F + L + FL 167.8 197.8 195.4 186.1 F + L 165.9 195.9 197.4 192.1

F 173.3 195.2 199.5 197.0

L 189.9 220.4 211.5 197.8

帰無モデル 194.0 219.3 212.6 202.0

表 1 各調査時における累積発芽個体数を従属変数とする一般化線形混合モデル

(GLMM)の赤池の情報量基準(AIC)の比較。

相対的に値が小さいモデルほど、モデルの当てはまりが良いことを意味する。

F:林分の違い、L

:リターの除去処理の違い、FL:FとLの交互作用

(5)

Ⅳ.考察

本実験においてシャリンバイは、在来林だけでなくモクマオウ林においても高い発芽率 を示した(図 1)。小笠原諸島のシャリンバイの発芽率は 65-100%という報告もあり(宗ほ か、2008)、本実験の結果は、この先行研究の結果とも矛盾しない。同じ在来種であるヒ メツバキでは、モクマオウ林では種子の発芽が抑制されており(Hata

et al., in press)

、こ れとは異なる結果を示した。これは、モクマオウが優占することによる在来種への影響は、

種特異的であるかもしれないことを示唆する。今後、さまざまな種に対するモクマオウの 影響を比較する必要があるだろう。

洲崎のモクマオウ林の林床におけるシャリンバイの稚樹の密度は、在来林の林床におけ るそれよりも小さい(Hata

et al., 2009)

。モクマオウ林において播種したシャリンバイの 種子が高い発芽率を示したことは、モクマオウ林におけるシャリンバイの稚樹の欠如は、

初期の定着の阻害以外の要因、たとえば、種子散布の欠如などによって説明できるかもし れない。

モクマオウ林においてリターを除去した場合のシャリンバイの発芽率は、除去しなかっ た場合のそれよりも低かった原因の 1 つとして、土壌の水分環境が考えられる。種子の発 芽の有無を決定する主要因の 1 つとして水分環境が考えられる(種生物学会編、2009)。リ ターの堆積は、土壌中の水分保持の役割を果たすことがある(Becerra

et al.,

2004)。その ため、本実験では、リターの除去によって、除去した場所の土壌水分量が減少し、それが 結果的にシャリンバイの発芽率の低下を引き起こしたかもしれない。在来林におけるシャ リンバイの発芽率においてリターの除去の効果は検出されなかったのは、モクマオウ林と 比較すると土壌含水量が大きいこと(畑、未発表)、また在来林では自然条件下でのリ ターの堆積量が小さいので(Hata et al., 2009)、リターの除去の効果が小さかったことが 原因であるのかもしれない。

本研究は、途中経過であり、今後新たにシャリンバイの種子からの発芽が見られるかも しれない。特に、モクマオウ林においてリターの除去を実施した実験区では、累積発芽個 体数はいまだ増加傾向にあるようにも見ることができる(図 1)。今後、さらなる追跡調査 を実施した上で、発芽しなかった種子の生存や発芽能力の有無を確認することで、最終的 な発芽率を評価する必要があるだろう。

謝辞

本研究は、環境省地球環境研究総合推進費による「小笠原諸島における侵略外来植物の 影響メカニズムの解明とその管理手法に関する研究」(F-051、代表者:大河内 勇)のサ

(6)

ブテーマとして行った。

本研究を進めるにあたり、小笠原総合事務所国有林課、環境省自然保護局南関東地区自 然保護事務所、東京都総務局小笠原支庁土木課自然公園係および亜熱帯農業センターの皆 様には様々な便宜を図っていただいた。以上の方々にここに深くお礼申し上げます。

文   献

Akaike, H. (1987): Factor analysis and AIC. Psychometrika, Vol.52, pp. 317-332.

Becerra, P. I., Celis-Diez, J. L. and Bustamente, R. O. (2004): Effects of leaf litter and precipitation on germination and seedling survival in Beilschmiedia miersii. Applied Vegetation Science, Vol.7, pp.253-257.

Hata, K., Kato, H. and Kachi, N. (2009): Community structure of saplings of native woody species under forests dominated by alien woody species, Casuarina equisetifolia, in Chichijima Island. Ogasawara Research, Vol.34, pp.33-50.

Hata, K., Kato, H. and Kachi, N. : Litter of an alien tree, Casuarina equisetifolia, inhibits seed germination and initial growth of a native tree on the Ogasawara Islands (subtropical oceanic islands). Journal of Forest Research, in press.

Levine, J. M., Vilá, M., D’Antonio, C. M., Dukes, J. S., Grigulis, K. and Lavorel, S. (2003):

Mechanisms underlying the impacts of exotic plant invasions. Proceedings of the Royal Society of London B Biological Sciences, Vol.270, pp.775-81.

Loope, L. L., Hamann, O. and Stone, C. P. (1988): Comparative conservation biology of oceanic archipelagoes. Bioscience, Vol.38, pp.272-282.

R Development Core Team 2009 R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. ISBN 3-900051-07-0, URL http://www.R-project.org

宗芳光・佐藤澄仁・小野剛・河野章(2008):小笠原固有植物等の増殖技術の確立〜繁殖 法の検討〜. 小笠原亜熱帯農業センター平成 19 年度試験成績書、東京都.

種生物学会編(2009):『発芽生物学』総合出版、436p.

豊田武司(2003):『小笠原植物図譜増補改訂版』アボック社、522p.

Vitousek, P. M. (1990): Biological invasions and ecosystem processes: towards an integration

of population biology and ecosystem studies. Oikos, Vol.57, pp.7-13.

参照

関連したドキュメント

averaging 後の値)も試験片中央の測定点「11」を含むように選択した.In-plane averaging に用いる測定点の位置の影響を測定点数 3 と

Bでは両者はだいたい似ているが、Aではだいぶ違っているのが分かるだろう。写真の度数分布と考え

断面が変化する個所には伸縮継目を設けるとともに、斜面部においては、継目部受け台とすべり止め

が前スライドの (i)-(iii) を満たすとする.このとき,以下の3つの公理を 満たす整数を に対する degree ( 次数 ) といい, と書く..

この数字は 2021 年末と比較すると約 40%の減少となっています。しかしひと月当たりの攻撃 件数を見てみると、 2022 年 1 月は 149 件であったのが 2022 年 3

脱型時期などの違いが強度発現に大きな差を及ぼすと

前掲 11‑1 表に候補者への言及行数の全言及行数に対する割合 ( 1 0 0 分 率)が掲載されている。

捕獲数を使って、動物の個体数を推定 しています。狩猟資源を維持・管理してい くために、捕獲禁止・制限措置の実施又