論文内容要旨
論文題名 強制呼吸での腰方形筋断面積の左右対称性と前額面上の姿勢,
呼吸機能の関係
掲載雑誌名 理学療法科学(第33巻・第3号・2018年)掲載予定
専攻名 生理系生理学(生体調節機能学分野) 氏名 本間 友貴
【背景と目的】腰方形筋は一側が収縮すると腰椎の側屈,骨盤の挙上,両 側が収縮すると腰椎の伸展に作用し,腰椎の安定化に重要な役割を果たす.
また,強制呼気において呼気補助筋として胸郭を下制する作用と,第 12 肋骨部で横隔膜の付着部を安定させる作用があり,呼吸時にも作用する.
しかし,腰方形筋の片側の過剰収縮が生じた場合、腰椎の側屈や骨盤帯の 非対称性につながり,前額面上の姿勢および呼吸作用に影響を与えること が推測される.したがって,腰方形筋の左右非対称性と姿勢や呼吸機能と の関係を検証することは,呼吸リハビリテーションにおける有益な評価指 標や治療根拠を付加する可能性がある.本研究では,健常成人を対象に腰 方形筋の断面積を計測し,腰方形筋断面積の左右対称性と前額面上の姿勢,
胸郭運動,肺機能との関係性を検討することを目的とした.
【対象と方法】対象は健常成人男性 20 名とし,測定課題は端坐位での強 制呼吸とした.腰方形筋断面積の測定には超音波診断装置を使用し,第3 腰椎棘突起レベルでの短軸像を左右同時に計測した.胸郭側方偏位量と胸 郭拡張率の測定には3次元動作解析装置を使用した.体表に貼付した赤外 線反射マーカから胸郭中心点と骨盤中心点を算出し,胸郭中心点と骨盤中 心点の X 座標上の差を胸郭側方偏位量として算出した.胸郭拡張率は剣 状突起レベル,第 10 肋骨レベルで計測した.肺機能の測定にはボディプ レチスモグラフを使用し,肺活量,最大吸気量,予備呼気量,機能的残気量,
全肺気量,残気量,残気率を測定した.呼吸筋力の測定には電子式診断用ス パイロメータを使用し最大吸気筋力および最大呼気筋力を測定した.
【結果】腰方形筋断面積の左右対称性と胸郭側方偏位量,剣状突起レベル および第 10 肋骨レベルの胸郭拡張率,呼吸筋力との間には有意な正の相 関が認められ,機能的残気量,全肺気量,残気量,残気率との間には有意 な負の相関が認められた.
【結論】本研究結果より,腰方形筋断面積が左右対称に近づくことで,腰 方形筋の両側作用により下部体幹の前額面上の捻じれが減少し,胸郭可動 性の拡大や呼気筋力が発揮しやすい状態をもたらすことが示唆された.こ の左右対称な腰方形筋によってもたらされる下部体幹の状態は,胸郭を深 く,強く動かすことができるため,その結果,残気量の減少に寄与する可 能性がある.姿勢と呼吸の関係については,特に高齢者やCOPD患者が陥 りやすい胸椎の後彎,円背姿勢などの矢状面上の不良姿勢と呼吸機能の関 係を検討した報告が多い.その中で,本研究で示された腰方形筋断面積の 左右対称性と前額面上の姿勢や呼吸機能との関係性は,呼吸リハビリテー ションにおける新たな評価指標や治療介入として応用できる可能性があ ると考える.