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主観視点映像を用いた高度外科手技教育システムの試作
Trial production of advanced surgical procedures education system using a subjective point of view videos
1W100046-1 市原
紘平 指導教員 河合 隆史 教授Kohei Ichihara Prof. Takashi Kawai
概要:脳死ドナーからの多臓器摘出はわが国において特徴的である(1)が、手術の難易度が高く現場での教育が困難 である。同手術の手技を教育目的に撮影・公開することは、個人情報保護やドナー家族からの許可の取得という 観点から現実的に難しい。また、仮に撮影が許可されたとしても、多いときには
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名以上の医師が摘出手術に参 加するため十分な撮影視野を得ることが難しいことに加え、手術の重要部分が胸腔・腹腔の深部で行われるため、手術手技を理解するための撮影は極めて困難といえる。そのため本研究では、
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次元コンピュータグラフィックス(3DCG)によるアニメーションを、手術手技理解のために最適な手段の一つと捉え、胸腔・腹腔の空間的な情報と
同時に、医師の動作や臓器の変形といった時間的な情報の表現に取り組んでいる。さらに製作したアニメーショ ンの有効な提示方法として、広視野角のヘッドマウントディスプレイ(頭部装着ディスプレイ、Head MountedDisplay; HMD)を用いることに着目し、システムを試作した。システム評価実験において、術者の視点の映像を HMD
で提示することで、手技の内容が分かりやすいといった意見が参加者から得られた。キーワード:3DCG、HMD、教育、外科、手技理解
Keywords: 3DCG, HMD, Education, Surgery, Procedure learning
1. 3DCG
アニメーション製作過程アニメーションの製作にあたり、大動物(豚)を用い た臓器摘出のシミュレーションを行い、立体ビデオ カメラで収録した。編集・分析した収録映像から、
術式の過程を医師の作業毎に「シーケンス」という 単位で分類した。全体の術式は、複数のシーケンス から構成されることになるが、ここでは
3DCG
アニ メーション全体の構成を、「シナリオ」と定義した。術式における一つのシーケンスは、医学教育上の意 味を持つ一連の作業となるが、これは複数の動作に よって遂行される。そのため、シーケンスの下分類 として、医師による一つの動作を「ステップ」と定 義した。各ステップのアニメーションを製作するた めに、シナリオには使用する器具や手技の内容がま とまっている。また、収録映像の抜粋やスケッチな どが付加されており、視覚的な理解もできるように なっている(図
1,2)。これにより製作を進める上で必
要となる情報を一覧し、製作中随時確認できるよう にした。これらの情報を元に作業を分担し3DCG
ア ニメーションの製作を行った。臓器と手のモデルの 形状や大きさ、色調、他臓器との位置関係などは、脳死移植専門医監修の元、適宜修正を加えていった。
図
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シナリオ資料の例:収録映像図
2
シナリオ資料の例:スケッチ2 2.
外科手技主観視点映像教育システム手の動作や術式の流れをより直感的に理解できる ようにするため、実際の手術において術者が見てい る視点の映像を製作した。製作においては手術シミ ュレーションの収録映像から術者の視点の位置を分 析・推定し、3DCG アニメーション製作ソフトウェ ア上で映像をレンダリングする際のカメラの位置と した。視点の位置はステップにより異なるため、ど の位置から見ても不自然でない
3DCG
モデルの配置 やアニメーションを製作しなければならず、カメラ を一点に固定してレンダリングする場合よりも精密 な作業が必要であった。本研究で用いた広視野角のHMD
で視聴した際、現実の視野と相違ない自然な 視野やモデルの大きさとなるよう、カメラの設定を 行った。3DCG アニメーション製作ソフトウェアで 映像素材をレンダリングした後、本研究で使用したHMD
において左右の目に正常な映像が投影される よう映像の最適化を行い、外科手技主観視点映像教 育システムとした。3.
システム主観評価実験主観視点映像教育システムを製作する上で重要と なる要素を抽出するため、評価実験を行った。製作 した手技アニメーションを
HMD
を用いて参加者に 視聴させ主観評価を行わせる。参加者は医学を専門 としない大学生である。視聴後、7 件法で映像の品 質を評価するアンケートおよび、映像の印象に関す るインタビューを行う。参加者には同じ内容のアニ メーションで、視差の付いた立体映像のもの(3D)
と 視差の付いていないもの(2D)を提示した。2D
の映像 を先に提示するか、3D
を先にするかは参加者により 異なり無作為に決定するが、両順序同数の参加者に 対して行った。7
件法アンケートの結果の一部をグラフ化した(図3)。質問項目 3
「臓器と手や器具との位置関係が分かる」や、質問項目
4「腹腔内の広さや奥行きが分か
る」、質問項目6
「どのような手技を行っているか分 かりやすい」といった、空間的な物体の位置関係や 手技の理解に関する質問項目で、3D
条件の方が僅か に2D
条件を上回ったが、全ての質問項目において2D/3D
間の有意差は見られなかった。インタビューでは、「自分で実際に見ているような感じがして手の
図
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件法アンケートの結果(抜粋)動きが分かりやすい」、「視野が現実と同じ感じなの で臓器と手などの位置関係が把握しやすい」といっ た意見が主に得られた。一方で「液晶のドットが見 えてしまい気になる」という意見も多く得られた。
特に
3D
の映像では2D
よりも「臓器などに存在感が ある」、「映像に臨場感がある」といった意見が多く あった一方、「視差が強いので疲れる」といった意見 もあった。4.
まとめ手技アニメーションの視聴方法として広視野角の
HMD
を用いることで、より高い教育効果が見込め ることが、参加者に対するインタビューから示唆さ れた。一方で立体感の付加や、液晶の解像度の問題 など、製作上留意すべき点やハードウェア上の課題 も明らかとなった。また、映像中のシーンの変わり 目で視点が動く際に没入感が途切れてしまうという 意見も多くあったことから、視点が変わる際の表現 への工夫や、ヘッドトラッキングを用いることによ り、没入感をさらに高められることが示唆された。今後は、より教育効果の高い、高臨場感な手術の 仮想体験型教材への発展を目指し、表現の高度化に 加え、ヘッドトラッキングや使用者自身の手とのイ ンタラクションなども検討していきたい。
参考文献