技術報告
日TJMlHlHllllllllullH1111
燃料過多推進薬の燃焼速度特性 (第
2
報)駒井 巌■,内川俊彦暮,加藤一成●
Gl yc i dyl az i dePo l yme r( GAP)
日はよく知 られた高エネルギポ リマで.燃料過多推進薬の主原料 と して用いることができる2)。本研究ではGA
Pを主成分 とした燃料過多推進薬の燃焼速度特性をス トラ ン ドバーナによって評価 した。燃焼速度は少量の過塩素酸アンモニウム( AP)
を添加することによって 低下 した。A
Pとともに鉄化合物を添加 した場合は,圧力が比較的低い領域で燃焼速度が高くなった。A
Pの粒子径の効果について就験 した結果,燃焼速度調整剤が効果的である低圧領域では,A
Pの粒子 径が小さいほ うが,燃焼速度は高かった。 したがって,鉄化合物はA
Pの分解を促進することによって 燃焼速度を高めると考えられる。GA
P系燃料過多推進薬にA
Pと鉄化合物を添加すると,低圧領域の 燃焼速度が高くなった結果,燃焼速度の圧力指数が小 さくなった。また,燃焼速度の温度感度 も′トさくなった。
1.緒 言
空気吸込式推進システムに使用される固体燃料は自 立燃焼性の有無によって
2
種類に大別する事ができ, 自立燃焼性を有するものはその燃焼特性が推進薬に似 ていることと組成成分が燃料過多であることのために 燃料過多推進薬 と呼ばれ る。前報31では推進薬のバインダ成分 として広 く使われている
Hydr o x yトt er m i ‑ nat e dpo l y but adi e ne( HTPB)
を主成分 としたものに ついて評価を行った。本報ではGl yc i dyladdePo l y‑
me r( GAP)
を主成分とした燃料過多推進藩についての 報告を行 う。GA
Pは側鎖にアジ ドメチル基を有するよく知 られ た高エネルギポ リマであり,分解する際にアジ ド基が 多量の熱を発生するために生成エンタルピは他の一般 的なポ リマよりも高い。本報で使用 した燃料過多推進 薬の主成分は,末端に水酸基を有するGA
Pをイ ソシ アネー トで硬化 させたものである。GA
Pは生成エン タル ピが高いために酸化剤を付与せず とも発熱分解す る。また.GA
Pの主軌 ま炭化水素で構成 されている ため,分解生成物は可燃成分を相 当な丑を含んでい る。 このよ うに,GA
Pは空気吸込み式推進 システム に用いられる燃料過多推進薬に求められる二つの特性 を有する。GA
P系燃料過多推進薬は燃焼速度の圧力指数およ2 0 0 0
年2
月1
日受理●日本油脂 (株)愛知中 英所 武豊工場 研究開発部
〒
4 7 0 ‑ 2 3 9 8
愛知県知多耶武豊町字北小松谷61 ‑1 TEL0 5 6 9 ‑ 7 2 ‑1 9 5 4
F AXO 5 6 9 1 7 3 1 7 3 7 6
び温度感度が高い特性を有する41が,本報ではこの燃 焼速度特性を変更す るために穐々の検討を行った。
2 .
理論性能GAP
系燃料過多の理論性能 を計芥 した。 この計 芽で使われた燃料過多推進薬は水酸基を4
個有するGA
Pをhe x ame t hy l ened i i 8
0C ya
nat e( HD
I)で硬化 さ せたものである。計欝にはGo r do n
らによる化学平衡 計算プログラム・S)を使用 し,GAPI O O %
およびGAP9 0
%+AP1 0 %
の2
種類の組成の燃料過多推進薬につい て行った。ここでは,空気 と燃料の混合を仮定 し,各 混合比における燃焼温度および比推力を計昇 した。比 推力は燃料のみの消費丑に対する値 とした。よどみ状 態での空気のエンタルピは飛行速度と飛行高度によっ て変化する。本計井で仮定 した飛行条件は,速度マ ッ ハ2
,高度海面上である。計算結果を
Fi g . 1
に示す。GAP1 0 0 %
では,空気の 燃料に対する重畳比(f)が 5付近で燃焼温度 (Tr)が最 大となる. したがって,この付近の混合比が丑論比で ある。比推力(Ig)は右上が りの傾向を示 してお り,こ の点ではEが高い条件.つまり空気過多のほ うが運用 条件 として有利であると言える。酸化剤 として作用す るA
Pを加えると,燃焼温度が最大 となる fの値は若 干小さくなる。 この場合,空気過多の領域では燃焼温 度は低下する。その結見 L,も低下する。〜‑2 0
にお いてGAP1 0 0%
のしはおよそ91 0 8
で,T
rは約1 3 0 0 K
で あった。A
Pを1 0%
添加 した場合もは8 5 0 8
に低下 し,T
rも1 2 0 0 K
に低下 した。Ka y a k uGa k k a i s h i . Vo ) . 61 .No. 5 .2 0 0 0 ‑237‑
800
(J
)l
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4 00
200 A
0 5 10 1 5 20 25
E( ‑ )
Fi
g .1The o r e t i c alpe r f or manc eofGA
Pba8 edf ue l r
ic hpr o pe l l
a nt s
3
.チムニー型ス トラン ド燃焼試.
乗 鞍験器を使い圧
力0. 2‑
1 2 MPa
の範囲で燃焼速度 を測定 した。燃焼器の加圧 には窒素ガスを使用 した。 し
たがって,本耗験では理 論計芽で行った空気 との混合
による燃焼は模擬 してい ない。試験片の大きさは
5
×5×8
m で,側面には 燃焼抑制剤を塗布 した。燃焼速度の測定は統験片無い に
2 0 m
m間隔で挿入 した ヒューズワイヤによって行っ た。温度感度を測定す る試験
以外は燃料過多推進薬の 初期
温度は
2 9 3 K
とした。本研究で評価 した燃料過多推進薬
の組成 を
Ta bl e1
に示す。GAPI O O %(
組成A)
を基本組成 とし,燃焼速 度特性 を変更することを 目的 と
し
1 0%
のA
Pを加 えた (細戯 )。 さらに,A
Pの分解を促進す ると考えられ る 酸化鉄 (
Fe 2 08 )
とbi 8( et hyl f er r oc en
y
l)pr opane ( BEFP)
,の効果について調査した(組成
C〜G)
。 ま た,A
Pの粒子径の影響についても調査を行った(組成
H)
。組成A
およびB
の理論性能は前述 したとお りであ
る。 また,組成
C〜H
の理論性能 は酸化鉄若 しくは0. 5
1 5 10
50Pr e s s u r e
(MPa)Fi
B2Ef f e c tof APi nGAPba8 e df ue lr ic hpr o p
e l ・ l ant S
BEFP
の添加丑が さほど多 くないため組成
A
若 しくはB
でほぼ代表できると考えられ る0
4 .
結果4.I Fi g .
A2にGAPI
と考亨Pの影響O 0 %
の燃料過多推進薬 (組成
A)
とAP
を1 0 %
添加 したもの(組成B)
の燃焼速度を示すムA
Pを1 0 %
加 えることによって燃焼速度は低下する。燃焼速 度の低下が比故的低
圧力領域でより大きか ったため に.燃焼速度の圧力指
数は高くなった。組成
A
の圧力 指数は0 . 7
であったのに対 し,組成J3は
1 . 2
であった。A
Pを添加す ることによって,燃料過多推進薬の燃焼 により発生する熱の総
量は大きくなるが,低圧領域に おいては
A
Pの拡散火炎静は燃焼表面か ら遠い位置に あるのでそこで発生す
る熱の燃焼速度に対する寄与度 は大きくない。また
,A
Pの分解温度はGAPの分解温
Ta bl e1Fo r mu lat i o nさO ff ue lr
ic hpr o pe l hnt B Fo r mu lat i o n
iA B 4 i ‑ GAP
A
p(1
3)AP(
5 0 ) Fe2 03 BEFP
C
DE F G 0
0 9 1 0 0 9
1 0 0 9 1 0 t 0 t
o o 0 0 9 1 0 0 4 f ‑ GAP: t e t r a‑
且I nC t i o nalGAP A
P( 1 3 )
:1 3I LmC hS BAP AP( 5 0 ): 50ILm C I a8
8AP‑2 3
(gJ
u u
)a lt !J
B.Su J n
的壬 Fom) ul a t i onA
三
For mt J ) a t i onC
二
0. 5 1
51 0 50
P r e s s u r e( MP a )
Fk3Eue c to f bur 血ngr a t emod i f ie r si nGAPbas e d f
ue lr ic hpr o pe l l ant s
度よりも高いために,少量の
A
Pを添加 した場合は,GAP
の燃焼表面で発生す る熱量は減′トす る。 さら に.G
APの分解によって発生する熱の一部がA
Pの粒 子の加温に消費されるために低圧領域では燃焼速度が 低下するものと考えられる。一方.比牧的高圧領域で は,拡散火炎帯からの熱のフィー ドバ ックが大きくな るために,燃焼速度の低下は小 さくなったものと推定 される。4 .2
燃焼速度網基剤の効果本研究では燃焼速度調整剤(燃焼触媒)として酸化鉄 と
BEFP
を使用 した。鉄化合物はA
Pの分解温度を低 下させ,その結果,A
P系コンポジッ ト推進薬の燃焼 速度を高める効果があるために.燃焼触媒 として使わ れている。 また,鉄化合物はGA
Pの分解温度 も低下 させ,酸化鉄 とBEFP
を比較すると分解温度の低下はBEFP
のほ うが大きいと報告 されている6) 。GA
Pに酸 化鉄を添加 した場合 (組成C)とBEFP
を添加 した場合 (組成D)の試験結果をFi g . 3
に示す。いずれの場合も 燃焼速度は組成A
に較べ低下 した。燃焼速度低下の原 因はGA
Pの分解温度の低下による燃焼表面温度の低 下と発熱に寄与 しない燃焼速度調紫剤の添加による燃 料過多推進薬の発熱丑の低下が考えられるが,定量的 な評価は未だできていない。Fi8.4に
GAP/ A
Pに対する燃焼速度調整剤の効果を 示す。 これ を見ると,圧力5MPa
以下の領域におい ては燃焼速度綱車剤によって燃焼速度が高められたこ とがよくわかる。組成E
およびG
はそれぞれ酸化鉄おKa y a k L JGa k k a i s h i .Vo l . 61 .No. 5 .20 0 0
(
sJutu)a lt u
Bu!uJn的0. 1 0 . 5 1 5 1 0
P r e s s u r e
(M P a )
Fi
g . 4Ef f e c to fbu rni ngr at emod i 丘e r 8i nGAP / AP f
ue lr i c hpr o pe uant 8
よ
ぴBEFP
を3%
ずつ添加 した組成であるが, 燃焼速 度の変化はBEF
Pのほ うが大きかった。 また,B
EFP
の添加丑が 1%の場合(組成の も燃焼速度の変化は組 成
E
よりも大きかった。 したがって.BEFP
の効果は 酸化鉄の効果と比較するとかな り大きいと考え
ること ができる。ただ し,組成
F
とG
の燃焼速度の差はそれ ほど大きくないので,さらに多くの
BEFP
を添加する ことによるさらなる燃焼速度の増大はあま り望
めない であろ うと思わ
れる。
ここで特筆すべき事項は
,A
Pと燃焼速度調 整剤 を 組み合わせて使用することによって低圧領域における 燃焼速度の圧力指数がかなり小 さくなっている
ことで ある。 これは,ここで使用 した燃焼速度調整剤
が低圧 領域でより効果的であるためであると思われる
E.F
およびG
の燃焼圧力1MPa
以下における。組成圧力指 数は
0 . 2
以下であった。
燃焼速度調整剤を使用することによって,燃 焼速度 の変化の他に低圧の自立燃焼限界の変化が見ら
れた。
燃焼速度調整剤を含まない組成
B
は燃焼圧力lM Pa
未 満ではス トラン ド試敦では燃焼が持続せず,燃焼速度 の測定ができなかったO‑方,燃焼速度調整剤
を添加 した組成軌
F
および
Gでは0 . 2 MPa
でも燃焼が持続 し た。 これ らの組成の自立燃焼限界は縫線 していない
4 .3
APの粒子径 。 の影響燃焼速度調整剤の効果は
A
Pの粒子径に依存Fi g. 5
にBEF
Pの効果に対するA
Pの粒子径の影する。響を示 す。 ここでは,平均粒径
1 3〃m
と5 0〝m
のA
P‑23
につい(sJtn
ttZ
)aTtuBu!
tunq10 5
0. I 0. 5 1 5
1 0
P T C s s u r e( M P a )
Fi
B5Eqe c to fpar t i c l e8 i 之 eO f APi nGAP/ APf ue l r
ic hpr o pe l kntw it hBEFP
て就故を行った。その結果,粒径の小 さ
いAP
を使っ たほ うが燃焼速度が高い結果 となった。
先に述べたように,少丑の
A
Pを添加 した場合 はAP
は燃焼表面で吸熱することによって燃焼速度を低下さ せるので,粒径の小さい,つまり表面碑の大き
い
AP
を使用 したほうが燃焼速度は低 くなると考えられるD しか しながら
,A
Pの粒径が比故的大きい組成H
が組 成Fよ りも燃焼速度が低か った。 この結果はAP
とBEFP
による燃焼速度の増大がAP
の分解が促進 さ れることによって起 こっていることを示 して
BEFP
を添加す ることによってA
Pの分解温度いる。が低下 するために分解が促進 され.その結果
A
Pの分解生成 物 と
GA
Pの分解生成物の反応が燃焼表面近傍で起 こ るようになるため燃焼速度が増加すると考えられる
4 .4
温 0 度感度組成
B
の燃焼速度の温度依存性をFi g . 6
に示 す。試 験は燃料過多推進薬の初期温度2 2 8 K(
低温).2 9 3
K(
常 温)および3 3 3 K(
高温)に対 して行った。燃焼速度調亜 剤を添加 していないこの組成では,燃焼速度変
換機は 加えられませんで した。先に述べたように.こ
の組成 の常温での自立燃焼限界は
lMPa
程度であったが.
低温では
2MPa
であった。 また,高温におい ては1 MP
A以下の傾城で燃焼速度の圧力指数が負 となる領 域があり,耽験を行った圧力範囲内では自立燃
焼限界 は細線できなかった。燃焼圧力
2MPa
における燃焼
速度の温度感度(
O
.)
はLl %/
℃であった。(
J)!lstuuat 2 J
uBulnq
0. 1 0. 5 1 5 1 0
P r e s s u l e
(MP a )
Fi
86Bu m i ngr at eo fGAP/ AP f
ue lr ic hpr o pe na J l t i ndi q
e r e ntt e mpe r at t L r e S
(g JtHt
H)Olt2JBu!uJntL
0 . 1 0. 5 1
5 .
ま と めGA
PとA
Pを主原料 とする燃料過多推進薬で燃焼速 度調亜剤 と しての酸化鉄お よびBEFP
の効果 を評 価 した。GA
Pに少量のA
Pを添加す ると,燃焼速度は低下す る。 これは,A
Pの添加によ り燃焼表面で発生す る熱 は減少 し,気相で発生する熱は増加するが,気相にお ける発熱は特に試験を行った圧力商域では燃焼速度に ほ とん ど寄与 しないためであると考え られ る。A
Pを含有す る燃料過多推進薬に酸化鉄やBEFP
を 添加す ると,A
Pの分解が促進 され特に低圧領域の燃 焼速度が増大する。その結果,燃焼速度の圧力指数が 小さくなった。 また,酸化鉄やBEFP
の添加によって 燃焼速度の温度感度の低下 も確認 され た。理臨計芽の結果
GA
PにA
Pを添加す ることによって 比推力の面では若干性能が低下す ることがわかる。 し か しなが ら本研究では,A
Pと酸化鉄な どの燃焼速度調整剤を組み合わせることによって燃料過多推進薬の 燃焼速度特性を変更することができるため,より幅広 いシステ ム要求 に対応 できる可能性 が示 された と言 える。
文 献