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アンビエントインテリジェンスの 住宅分野への応用事例

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アンビエントインテリジェンスの 住宅分野への応用事例

1. はじめに

 ロボットと言えば,人間型ロボット を思い浮かべる方がおられると思う.

カメラ,マイクを搭載し,触覚センサ で人や物などとの接触を検知,それら セ ン サ か ら 得 ら れ る デ ー タ を コ ン ピュータで処理,判断したうえで,頭,

手足やスピーカなどのアクチュエータ を駆使して動く.これにより人を支援 してくれる存在である.

 一方,このようなロボットシステム を,人が住まい活動する環境側に埋め 込む場合を考えてみる.すなわち,環 境側に各種センサを組み込み,そこか ら得られるデータを参照して環境の中 で行動する人の状況を検知,推定し,

そのもとで人に対してサービスするシ ステムである.近年,このような,い わば環境型のロボットシステムを研究 対象とする,アンビエントインテリ ジェンスと呼ばれる研究分野がある.

本稿では,このアンビエントインテリ ジェンスを住空間に応用する例につい て紹介する.

2. 住宅設備ネットワークベース の住環境知能システム

 住宅には,いわゆる火災感知器や,

留守中のペットを見守ったり,車庫の 状況をモニタしたりするカメラも設置 されつつある.人の存在を検知する人 感センサも,人が居れば自動で照明が 点いたり,トイレの便蓋が自動で開い たり,のように導入されつつある.

 一人暮らし高齢者が定常的に湯沸し ポットを利用する状況を,遠隔に住む 家族がさりげなくモニタできるサービ スもある.これは電気ポットをセンサ 代わりに利用している例と捉えること ができる.すなわち住人が家の中で触 れる機器,たとえば照明,エアコン,

テレビ,インターホンなどをネットワー クで繋ぎ,住人の操作事象を集めれば,

ある程度,住人の行動を推定できるで あろう.また,先のカメラや人感,さ らにインターホンに内蔵されているマ イクや,温度,湿度などのセンサもネッ トワークに繋げば,環境側の状況もあ る程度推定できると考えられる.

 一方,照明は光,エアコンは温熱,

テレビやステレオなどは音環境を住人 にフィードバックするアクチュエータ として捉えられる.すなわち,図 1に 示すように,住宅設備ネットワークか ら集まるセンサデータや操作事象をも とにユーザの状況を推定し,そのもと で光,温熱,音環境をユーザにとって 快適に制御することが考えられる.そ こでパナソニック(株)の研究部門で は,住宅設備ネットワークをベースに した住環境知能システムを研究してき ている(1)

3. 住環境知能システムにおける エージェントの設計

 図 1の光,温熱,音環境を快適に 制御すれば住人は快適になるが,その 維持にはコストがかかるので,住人の

期待効用,すなわち快適性とそれに払 うコストのバランスを考慮した知的制 御が重要な課題になる.そこでわれわ れは,図 1に示すように住人の期待 効用を最大化し,ユーザの代わりに住 宅設備を制御するエージェントを導 入,その設計,開発に取り組んでいる.

 期待効用を求める準備として,コス トを払うことで得られる快適性に対す る満足度を効用値で表現し,これに よって住人の価値観,たとえば快適性 重視あるいは省エネ性重視などをあら かじめ表す.一方,センサデータには あいまい性が含まれ,そのもとでの住 人の状況推定にも不確実性が含まれ る.すなわちエージェントは,不確実 性のもとで住人の期待効用を最大にす る住宅設備の制御決定が求められる.

そこで不確実性のもとでの意思決定プ ロセスをグラフ表現する“インフルエ ンスダイアグラム”を用い,エージェ ントの制御決定プロセスを設計してい る.インフルエンスダイアグラムは,

不確実性のもとでの判断が要請される 経営トップの意思決定分析用ツールと しても使われており,ベイジアンネッ トの拡張として知られている.

 エアコンの温度設定を例にエージェ ントを設計し,エージェント制御によ る評価実験を行ったところ,設定温度 一定に比べて快適性と消費電力の両面 で上回る傾向があることを確かめた.

4. おわりに

 3 章で紹介したエージェントは,一 人の住人の代わりに住宅設備を制御す るものである.しかし,現実には住人 一人の場合も,価値観の異なる複数の 住人が同時に存在する場合もある.後 者の場合,エアコン一つの制御にして も,ある一人にとって都合のよい制御 は他の人に都合がよいとは限らず,い わゆる競合が発生し得る.現在,図 2 に示すように,複数の住人各々にエー ジェントを割り当て,ユーザの代わり に競合を検出し,互いに対話,交渉し て競合を解消するマルチエージェント システムについて研究を進めている.

 また,消費電力データを分析すれば 家の中での稼動機器がわかり,それを もとに人の生活行動が推定できるの で,一人暮らし高齢者の見守りサービ スに応用する試みもあり(2),参考にし たいと考えている.

(原稿受付 2011 年 11 月 24 日)

〔西山高史 パナソニック(株)〕

( 1 )西山高史・ほか,住環境知能システムのた●文 献 めのマルチエージェントモデルの提案,第 55 回システム制御情報学会研究発表講演会 講演論文集,in CD-ROM(2011-5)

( 2 )http://www.netmil.jp/index.html 照明

エアコン

テレビ インターホン

エージェント

設備の制御 パラメータ

各種センサ ユーザ

・センサデータ

・操作事象

図1 住宅設備ネットワークベースの住環境知能システム

交渉 制御

エージェント

エージェント

・自分の温冷感特性,

価値観を教示

・空調制御を一任

・他エージェントと交渉 エージェント

図 2 マルチエージェントシステムのイメージ

─ 32 ─

102 日本機械学会誌 2012. 2 Vol. 115 No.1119

参照

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