原
著
化繊タオルの含有化学成分の有無が全身清拭の
保温・保湿性に及ぼす影響
Thermal and Moisture Retention Effects of Specific Chemical Components Contained in Synthetic Towels on Complete Bed Baths
宮脇健介
) Kensuke Miyawaki松村千鶴
) Chizuru Matsumura深井喜代子
) Kiyoko Fukai 本研究の目的は,化繊タオルの含有化学成分の有無が全身清拭の保温・保湿性に及ぼ す影響を比較することである.男子学生 16 名を対象に,異なる日に同じ方法で,成分含 有タオルと成分除去タオルを用いて全身清拭を行った.評価指標は深部温,皮膚温,心 拍変動,皮膚の水分量・油分量・pH,血圧,POMS-J 短縮版,VAS(覚醒度とリラッ クス度),素材の肌触りのリッカートスケールを用いた.その結果,両者ともに清拭前後 において覚醒度の低下とリラックス度の増大,POMS-J 短縮版のઅ項目の評点の低下, 最終的な深部温と前胸部の皮膚温の上昇に,それぞれ有意差がみられた.成分含有タオ ルでは,終了直前に右前腕の皮膚温の一時的な低下がみられたが,その時点の群間に有 意差はなく,保温性については両者ともほぼ同等であった.成分含有タオルは成分除去 タオルにくらべ,終了直後の水分量の有意な上昇がみられたため,一時的な保湿効果が 認められた. キーワード:化繊タオル,含有成分,全身清拭,保温性,保湿性The present study,involving synthetic towels with and without specific chemical components,aimed to compare the thermal and moisture retention effects of complete bed baths. The subjects were 16 male college students who received complete bed baths using synthetic towels with and without specific chemical components by the standard protocol on different days. The assessment indices were the core and surface skin temperatures, heart-rate variability,moisture/oil contents and pH of the skin,blood pressure,scores of Profile of Mood States-Brief Form Japanese Version(short version of the POMS-J), scores of wakefulness,and level of relaxation based on the Visual Analogue Scale,and the Likert scale was used to assess the texture of towels. For both types of towel,there were significant decreases in wakefulness experienced by the subjects following cleaning and the mean scores for the three question items of the short version of the POMS-J,and there were significant increases in the level of relaxation,core temperature,and skin temperature at the precordium. When using towels with chemical components,the skin temperature of the right forearm temporarily decreased immediately before the end of cleaning,but there were no significant differences between the 2 types of towel,and they had a similar moisture retention effect at that point. However,immediately after cleaning, towels with chemical components temporarily showed a higher moisture retention effect, as the moisture content significantly increased.
受付日:2019 年 月 19 日 受理日:2021 年 月 12 日
)三宅医学研究所附属三宅リハビリテーション病院 Miyake Medical Institute Group,Miyake Rehabilitation Hospital
)香川県立保健医療大学保健医療学部看護学科 Department of Nursing,Faculty of Health Sciences,Kagawa Prefectural University of Health Sciences )東京慈恵会医科大学大学院医学研究科 School of Nursing,The Jikei University
連絡先:宮脇健介 三宅医学研究所附属三宅リハビリテーション病院 〒760-0018 香川県高松市天神前 5-5 TEL:087-431-2101(代) FAX:087-835-1886(代) E-mail:[email protected]
Key words:synthetic towels,contained components,complete bed baths,heat retain-ing properties,moisture retainretain-ing properties
Ⅰ.緒言
全身清拭は看護者が行う専門技術として確立された 技術である.看護実践の場では全身清拭は簡略化さ れ,溜め湯を使わず蒸した綿タオルで済まされること も多い(城生 1995).しかしながら,綿製の蒸しタオ ルは再生タオル(使用後,洗浄と消毒を行って再生し たもの)であっても細菌が少なからず検出されること が実証されている(朝野・大崎 2007;松村・深井 2014c).こうした背景から,最近では,特に施設内で 行われる清拭には化繊タオルが使われている(鎌田・ 菅原 2016). 化繊タオルの使用で問題となるのは,従来の綿タオ ルとくらべて清拭効果が劣らないかという点である. 先行研究では,両素材には物理的形状の違いがあるも のの,ほぼ同等な肌触り感と保温性のある清拭効果を もつことが実証されている(松村・深井 2014a).た だ,この先行研究では,素材の物理的性質を比較する ために,化繊タオルからプロピレングリコール(保 湿・潤滑・乳化・防腐成分),エタノール・フェノキ シエタノール・パラオキシ安息香酸メチル(防腐・殺 菌成分)といった化学成分が除去されていた.特に化 繊タオルに含まれるアルコール成分の気化による皮膚 表面の熱損失が,清拭の保温性に影響すること,保湿 成分が清拭の保湿性に影響することが予測される.ま た,これらの清拭効果への影響が主観的にも影響を及 ぼす可能性がある.さらに,重傷者や長期療養者と いった皮膚が脆弱した対象には,これらの清拭効果へ の影響が顕著に現れることが懸念される.根拠に基づ いた効果的ケア技術の発展を目指すならば,化繊タオ ルに含有された化学成分が保温・保湿性に及ぼす影響 を実証する必要がある. そこで,本研究では,前述した化学成分が含有され た化繊タオル(以下,成分含有タオル)と,これらの 化学成分が除去された化繊タオル(以下,成分除去タ オル)の違いによる全身清拭の保温・保湿性に及ぼす 影響を,実験的に比較検討することを目的とした.Ⅱ.研究方法
ઃ.研究デザイン 本研究は,同一被験者に対して成分含有タオルと成 分除去タオルの系統の全身清拭を無作為で異なる日 に実施し,清拭効果の比較を行う準実験研究デザイン で遂行した. .研究対象とサンプルサイズ 被験者数は本研究と同じ評価指標を多く用いて清拭 実験をしている先行研究(松村・深井 2014a)を参考 に,男子学生 16 名を対象に,予備実験を実施し算出 した.検定の有意水準を 0.05,有意差を見逃す片側 確率を 0.84 と設定し,測定データのうち標準偏差が 大きい最高血圧の,最大値,最小値,標準偏差から算 出した結果,13 を得た.これに,名を追加し 16 名 を被験者とした(浜田 2012).なお,被験者は,皮膚 の創傷やアレルギー体質がなく健康な標準的体格 (BMI:21.5±1.9)の男子学生(年齢:20.9±2.1)と した. અ.実験方法 ઃ)化繊タオルの選択とその特徴 化繊タオルには,保温性と肌触り感が優れている (松村・深井 2014b)不織布タイプの薄型(SPC 製) を用いた.このタオルはレーヨン,ポリエステルを材 料とした薄型の緻密な構造であり,製造過程で前述し た化学成分の混合溶液と精製水が配合された化学物質 が投入され,製品完成時にこれらの化学成分が化繊の 表面全体を塗膜する形状となっている.これらの化学 物質は医薬品・医療機器等の品質,有効性および安全 性の確保等に関する法律(薬機法)で承認されており, 皮膚障害を引き起こす可能性はないとされている. )化繊タオルの準備 先行研究(松村・深井 2014a)では,化繊タオルを 90℃に熱したドライオーブンとアイロンで高温加熱処 理し,完全に乾燥させることで,皮膚刺激レベルの物 質を除去できることが確認されていた(外部委託:株 式会社ファルコライフサイエンス).本研究では,アイロンで高温加熱処理した後に,タオル枚の重量を 測定し,完全に乾燥していることを確認した.成分含 有タオルと成分除去タオルの清拭効果を比較するため に,それぞれの素材の大きさ,重量,含有水分量を以 下のように統一した.すなわち,40 cm×18 cm の大 きさのタオルを枚重ねにし,13 cm×8 cm に折り畳 んで清拭実施者の手掌におさまる大きさにした.タオ ルの重量は枚g,枚に重ねて 15 g とし,成分除 去タオルに含ませる水分量については,成分含有タオ ルと同量の 33 ml とした.枚重ねをセットとし, 人あたりの清拭にはセット使用することとし, セットで 264 ml の水分を含ませた.これらを恒温 (83.8±5.8℃)の清拭車内に保管し,使用前には セットずつ前腕内側での温度確認と温度測定を実施し た.清拭実施中,成分含有タオル 55.6±5.5℃,成分 除去タオル 59.2±3.9℃を保った. અ)清拭方法 清拭用のベッドをつ準備し,シーツに被験者の体 温が残らないようベッドを交互に使用した.清拭は技 術の統一を図るため,同一者が実施した.タオルは, それぞれ部位ごとに交換し回に拭く長さは約 23〜25 cm とした.拭く強さについては,予備実験で 0.57± 0.04 kgf/cm2と設定した.さらに,事前にトレーニン グを実施したうえで,本研究の清拭を行った.被験者 には,最初に左側臥位をとってもらい,背部に熱布タ オルを 30 秒間貼用した.その後,タオルを取り除き 新しいタオルで後頸部から腰部あたりまで側腹部から 脊椎にかけて左右往復ずつ拭いた.その後,仰臥位 になり両上肢,頸部,胸・腹部,両下肢の順に各往 復ずつ拭いた.以上のような顔面・陰部・臀部以外を 拭く方法に統一した.拭く強さについては,予備実験 で 10 名の被験者を対象に拭く圧を測定し,その平均 と標準偏差を算出した.また,熱布タオルの貼用時間 については,予備実験で背部に熱布タオルを貼用し, 貼用時間分から時間短縮を図り,最も保温効果が得 られた 30 秒を採用した. આ.データ収集方法 ઃ)主観的指標の測定 清拭の心理的効果を評価するために,気分プロ フィール検査(Profile of Mood States:以下,POMS) (McNair et al. 1992)の日本語短縮版(以下,POMS-J
短縮版)(横山 2005)と,覚醒度とリラックス度の Visual Analogue Scale( 以 下,VAS )( Fred 1923;
Hayes & Patterson 1921)を用いた.POMS-J 短縮版 は,①抑うつ−落込み,②活気,③怒り−敵意,④疲 労,⑤緊張−不安,⑥混乱,のつの下位尺度からな り,短時間で変化する清拭前後の気分が測定できる. POMS-J 短縮版には計 30 の質問項目があり,それぞ れ段階で回答する(0−4 点).POMS-J 短縮版の評 点は各項目の素得点から算出した標準化得点(T得 点)とした〔T得点=50+10×(素得点−平均値)/標 準偏差〕.T得点は素得点が平均点のとき,50 点とな る.覚醒度とリラックス度のつの VAS について は,100 mm の水平な横線の,左端を「まったくそう でない」,右端を「大いにそうである」とした.清拭 前と清拭終了 30 分後に,研究者の人が VAS を被 験者にみせ,左端から右に向かって線上をペンでなぞ り,被験者が指定した位置に垂線を引いた.さらに, 素材の肌触りの感触については先行研究(Larson et al. 2004)から抽出し,清拭終了 30 分後に尋ねた.評 価項目は,柔らかい,温かい,肌触りがよい,拭き心 地がよい,爽快感がある,フィット感がある,汚れが 落ちた感じがする,であり,「まったくそうでない; 点」〜「大いにそうである;点」の段階のリッ カートスケールで評価した. )客観的指標の測定 ()深部温・皮膚温 深部温は熱流補償式体温計(コアテンプ CM-210, テルモ社製),皮膚温は連続測定電子体温計(テルモ ファイナー CTM-303,テルモ社製)を用いて測定し た.深部温の体表プローブ(深部温プローブ PD1, テルモ社製)は,皮膚に密着しやすく,周囲を清拭す る部位である臍直下に,体表プローブのセンサー部分 が直接皮膚に接触しないように つ折りガーゼ枚で 覆って貼付した.皮膚温の体表プローブは前胸部(両 乳頭部の中間点),右前腕(内側の肘関節と手関節の 中間点),右第 指腹部,左足底第趾の ヵ所に, それぞれ貼付した. ()心拍変動の周波数解析 心拍変動の周波数解析(以下,心拍変動)は心電図 (MemCalc/Tarawa,GMS 社製)を用い,胸部点 誘導で測定した. ()皮膚の水分量・油分量・pH 皮膚の水分量(Corneometer® CM825,Courage+
Khazaka 社製),油分量(Sebumeter®SM810,Courage
+Khazaka 社製),pH(皮膚 pH 計®PH900,Courage
骨端側 1/4 の上部 50 mm を中心とする幅 40 mm×40 mm)で測定した.頸部は掛物をめくる必要がないた め,皮膚温,自律神経活性への影響が少ない部位と考 え選択した.測定順序は皮膚の水分量・油分量・pH の順序とした.皮膚の水分量と pH は回の測定ごと に少しずつずらし回測定し,その平均値をその時点 の測定値とした.皮膚の油分量は回測定し,その時 点の測定値とした.皮膚の水分量については,角層の 水分量に応じて異なる静電容量による角層の水分量を 間接的に算出するもので,各層の水分量が多いほど静 電容量は大きくなる.これを相対値で数値化したもの が計測値となる. ( )血圧 血圧は電子血圧計(HEM-737 ファジイ,オムロン 社製)を用いて,左上腕で測定した. ઇ.実験手順 被験者には実験開始時間前からの飲食を禁止し た.また,被験者は実験前に更衣室で下着の上から寝 衣と短パンを着用し,移動時はスリッパを履いた.続 いて,別室で被験者に実験の概要を説明し,現在の健 康状態を確認した.次に,被験者を清拭環境下(室温 24.3±1.7℃,湿度 43.2±4.3%,照度 35.1±6.1 Lux, 騒音 46.4±4.9 dB)の個室に誘導した後,ベッド上 に臥床した状態で,タオルケット枚を足先から肩ま で掛けた.その後,被験者に深部温および皮膚温の各 プローブ,心電図用電極をそれぞれ装着した. 実験は図ઃの手順で行った.プローブ類を装着して 12 分間の安静臥床の後,清拭を分間行い,清拭終 了後に 30 分間安静臥床し,全行程を 50 分とした.安 静臥床時はタオルケット枚を足先から肩まで掛けた 状態とし,被験者は閉眼した.深部温,皮膚温,心電 図はベッド上安静開始時点から清拭終了 30 分後まで 50 分間連続記録した.皮膚温,深部温については, 50 分間連続測定したなかの清拭実施直前,終了直前, 終了 15 分後,終了 30 分後を測定値とした.最初の安 静臥床中に POMS-J 短縮版,VAS 評価を実施した. そして清拭実施直前に血圧,皮膚の水分量・油分量・ pH を測定した.清拭が終了したら清拭終了直後,終 了 15 分後,終了 30 分後に血圧,皮膚の水分量・油分 量・pH を測定した.また,終了 30 分後に POMS-J 短縮版と VAS 評価,素材の肌触りの感触の評価を実 施した. 被験者全員に,異なる日の同じ時間帯(9:00〜 16:00 の間)に回の清拭実験に参加してもらい, それぞれ成分含有タオルと成分除去タオルを使用し清 拭を実施した.回の清拭実験に使用するタオルの順 序は無作為に決めた. ઈ.データ解析方法 収集したデータの解析には統計解析ソフト SPSS Ver.24.0 for Windows を用いた.心電図は最大エン トロピー法により自律神経活性値を求めた(Mem-Calc/Tarawa,GMS 社製).周波数解析で求めた心拍 変動の低周波成分(low frequency component:以下, LF)を 0.04〜0.15 Hz,高周波成分(high frequency component:以下,HF)を 0.15〜0.40 Hz とした.LF と HF の比(LF/HF)を交感神経活動,HF を副交感 神経活動の指標とした.心拍数(heart rate:HR), 副交感神経活性(HF),交感神経活性(LF/HF)は, 実施前(安静開始後分から分間),終了直前(清拭 開始後分から分間),終了 15 分後(清拭終了後 11 分から分間),終了 30 分後(清拭終了後 23 分から 分間)の各区間のそれぞれ安定した分間のデータ を解析した.これらのデータは,清拭実施前を基準と して終了直前,終了 15 分後および 30 分後で時系列的 図ઃ 実験プロトコル
に比較するとともに,成分含有タオルと成分除去タオ ルの測定時点ごとに各データの変化量を群間比較した. 深部温,皮膚温においては,清拭実施前を基準とし て,終了直前,終了 15 分後および 30 分後の時系列変 化と,両者のそれぞれの測定時間ごとの変化量の群間 比較を行った.皮膚の水分量・油分量・pH において は,清拭実施前を基準として,終了直後,終了 15 分 後および 30 分後の時系列変化と,両者のそれぞれの 測定時間ごとの変化量の群間比較を行った.さらに, 清拭実施前後の気分を POMS-J 短縮版および VAS で 比較した.また,清拭実施後における両者の肌触りの 感触を比較した.統計解析にはノンパラメトリック検 定を用いた.測定値の群内比較は Friedman 検定を行 い,清拭実施前の安静時を基準値とした変化量を用い た群間比較には Wilcoxon の符号付き順位検定を用い た.また,清拭実施後における両者の肌触りの感触の 比較には,χ2検定を用いた.有意水準はいずれの検 定においても%未満とした. ઉ.倫理的配慮 研究協力者には,文章と口頭により,研究の趣旨と 方法,羞恥心や安全性への配慮,データの匿名化,研 究参加は自由意思であること,途中辞退できることを 説明した.その後,バイタルサインの測定と問診を行 い皮膚の創傷やアレルギー体質の有無等,健康状態を 確認した.研究協力への同意が得られた者を最終的に 対象とした.本研究は香川県立保健医療大学倫理審査 委員会の承認(承認番号 204)を得て行った.
Ⅲ.結果
ઃ.主観的評価指標による比較 成分含有タオル,成分除去タオルの清拭終了後の肌 触り感を比較すると,いずれの項目についても両者に 大差は認められなかった(表ઃ).つぎに,清拭実施 前後の覚醒度とリラックス度を VAS で比較すると, 両者ともに,覚醒度は終了後に有意に低下し(P< 0.01)(図 2a),リラックス度は終了後に有意に上昇 表ઃ タオルの肌触りの感触の主観的評価 項目 回答 成分含有タオル 成分除去タオル χ2値 n n 柔らかい 大いにそうである 2 2 どちらともいえない 13 12 0.37 まったくそうでない 1 2 n.s. 温かい 大いにそうである 7 11 どちらともいえない 9 5 2.03 まったくそうでない 0 0 n.s. 肌触りがよい 大いにそうである 4 4 どちらともいえない 11 11 0 まったくそうでない 1 1 n.s. 拭き心地がよい 大いにそうである 3 3 どちらともいえない 12 13 1.04 まったくそうでない 1 0 n.s. 爽快感がある 大いにそうである 4 5 どちらともいえない 12 11 0.16 まったくそうでない 0 0 n.s. フィット感がある 大いにそうである 4 2 どちらともいえない 12 12 2.67 まったくそうでない 0 2 n.s. 汚れが落ちた感じがする 大いにそうである 6 4 どちらともいえない 9 12 1.83 まったくそうでない 1 0 n.s. 注)表中の数値は人数を示す.[成分含有タオル(n=16),成分除去タオル(n=16)] 注)χ2乗検定. 注)n.s.は not significant を示す.した(P<0.01)(図 2b).さらに,清拭実施前後の 気分を,POMS-J 短縮版で比較すると,両者ともに 「緊張−不安」,「活気」,「疲労」の評点が有意に減少 しており(P<0.01),さらに,成分除去タオルでは 「抑うつ−落込み」「怒り−敵意」の評点が有意に減少 していた(P<0.01).それに対して,成分含有タオ ルでは,「抑うつ−落込み」の評点が有意に上昇して いた(P<0.01)(表). .客観的評価指標による比較 成分含有タオルと成分除去タオルを用いた全身清拭 が,生体に及ぼす影響についての分析結果を,生理指 標ごとに検討した.深部温・皮膚温は図અ,心拍変動 は図આ,皮膚の水分量・油分量・pH は図ઇに示す. ઃ)深部温・皮膚温 深部温,前胸部の皮膚温は,両者ともに,清拭実施 前から終了 30 分後まで深部温は 1.1℃,前胸部の皮 膚温は 1.0℃,それぞれ上昇し続けた(図 3a, b).右 前腕の皮膚温は成分含有タオルのみ終了直前に 0.1℃ 低下し,その後は両者とも最終的に 0.9℃上昇した (図 3c).右第 指腹部の皮膚温は,両者ともに終了 直前に一旦低下したが(成分含有タオル 1.1℃,成分 除去タオル 0.9℃),その後,終了 30 分後まで両者と もに上昇した(成分含有タオル 1.4℃,成分除去タオ ル 1.1℃)(図 3d).左足底第趾の皮膚温において, 最終的に成分含有タオルでは 3.5℃上昇しており,成 分除去タオルでは,4.0℃上昇した(図 3e).いずれ の項目においても,群間比較では有意差は認められな かった. )心拍変動 いずれのタオルを用いても,心拍数は終了 15 分後 まで低下傾向を示したが,成分含有タオルのみ終了 図 清拭実施前後における覚醒度とリラックス度の VAS 値の変化 注)表中の数値は Mean±SE で示す. 注)介入前後の比較には,Wilcoxon の符号付き順位検定を 用いた. **P <0.01. 表 清拭実施前後における POMS-J 短縮版による 比較 実施前 終了後 緊張−不安 ** 11.5±4.1 5.9±3.6 ** 11.3±3.4 5.2±3.3 抑うつ−落込み ** 2.6±1.4 3.7±2.1 ** 4.8±2.4 3.7±2.1 怒り−敵意 0.0±0.0 ** 0.0±0.0 2.2±2.2 1.1±1.1 活気 ** 21.3±5.7 19.6±6.2 ** 21.9±5.9 19.1±5.7 疲労 ** 12.7±3.3 11.6±3.3 ** 19.5±5.6 15.1±4.4 混乱 18.0±4.2 16.3±3.2 13.3±1.6 13.3±1.6 注)無地セルは成分含有タオル(n=16),灰色セルは成 分除去タオル(n=16),数値は Mean±SD で示 す. 注)介入前後の比較には,Wilcoxon の符号付き順位検 定を用いた. **P<0.01.
15 分後に有意に低下し(4.9 bpm),その時点の群間 比較でも,成分含有タオルの方が成分除去タオルにく らべ有意差を認めた.最終的に心拍数は,成分含有タ オルではわずかに上昇したが,成分除去タオルでは有 意に低下した(3.7 bpm)(図 4a).両者ともに,最 終まで副交感神経活性(HF)に大きな変化はなかった (図 4b).また,成分含有タオルでは終了直前に交感 神経活性(HF/LF)が有意に上昇した後,最終まで わずかな低下と上昇を示したが,成分除去タオルでは 最終まで交感神経活性(HF/LF)のわずかな上昇と 低下を繰り返した(図 4c). અ)皮膚の水分量・油分量・pH 成分含有タオルでは終了直後に水分量は 9.8 有意に 上昇した後,低下したものの最終的には清拭実施前と 同程度を維持した.一方,成分除去タオルでは終了直 後に水分量が 4.9 上昇したが,最終的には清拭実施前 より低下した.群間比較では,成分含有タオルの方が 成分除去タオルにくらべ,終了直後の水分量の上昇に 有意差が認められた(図 5a).また,両者ともに,終 了直後の油分量は有意に低下し(成分含有タオル 8.9 μg/cm2,成分除去タオル 7.3μg/cm2),その後,成 分除去タオルのみ終了 15 分後に,さらに油分量が低 下(1.5μg/cm2)し,終了 30 分後まで低値を示して いた(図 5b).また,成分含有タオルでは終了直後か ら終了 30 分後まで pH に大きな変化はなかったが, 成分除去タオルでは終了直後に pH が 0.3,その後も 0.1 の上昇に有意差が認められ,最終的には低下した (図 5c). આ)血圧 血圧の変化については,両者ともに最高血圧,最低 血圧〜mmHg の範囲の変化であり,一定の傾向 はみられなかった.
Ⅳ.考察
本研究では,保温・保湿性において,含有化学成分 の有無による結果の相違が認められた.以下,先行研 究で得られたエビデンスと比較しながら,その理由に ついて考察する. ઃ.含有化学成分の有無によるタオルの保温効果の比較 両者ともほぼ同様な肌触り感であり,覚醒度の低下 図અ 清拭前後の深部温と皮膚温の変化 注)○成分含有タオル(n=16) ●成分除去タオル(n=16),数値は Mean±SE で示す. 注)Friedman 検定後,事後比較は介入前とその後の値を Wilcoxon の符号付き順位検定で行った. *P<0.05,**P<0.01. 注)群間比較は not significantとリラックス度の増大,POMS-J 短縮版の項目の 評点の有意な減少,最終までの深部温と前胸部の皮膚 温の上昇,終了 15 分後までの心拍数の低下がみられ た.通常,不織布タイプの化繊タオルは素材が緻密な 構造で通気性が低く,熱を漏らさず保温性が持続する 性質がある.さらに,成分除去タオルでは POMS-J 短縮版の「抑うつ−落込み」「怒り−敵意」の評点の 有意な減少,終了 30 分後までの心拍数の有意な低下 がみられ,心地よさがもたらされたことが推察され た.一方,成分含有タオルでは,POMS-J 短縮版の 「抑うつ−落込み」の評点の有意な上昇,終了直前の 交感神経活性(HF/LF)の有意な上昇が認められ, 安定しない気分状態であったことが推測された.タオ ルの肌触り感については,両者とも同様の素材である ため,ほぼ同等の結果が得られた.つまり,触・圧刺 激による結果の相違はなかったと考える. 成分含有タオルは成分除去タオルにくらべ,清拭実 施前のタオルの温度が約 3.6℃低かった.成分含有タ オルに含有されるアルコール類の沸点は,プロピレン グ リ コ ー ル( 沸 点 188.2℃ ),エ タ ノ ー ル( 沸 点 78.4℃),フェノキシエタノール(沸点 247.0℃)で ある.恒温(83.8±5.8℃)の清拭車内から,成分含 有タオルを取り出す際に,最も沸点の低いエタノール が気化し,タオル自体の温度が一気に低下したことが 予測される.また,成分含有タオルでは,終了直前の 右前腕の皮膚温にごくわずかな低下がみられており, 皮膚表面に残留した微量のエタノールがさらに気化し た可能性がある.特に,ヒトの末梢部には動静脈吻合 図આ 清拭前後の HR,HF,LF/HF の変化 注)○成分含有タオル(n=16) ●成分除去タオル(n=16), 数値は Mean±SE で示す. 注)Friedman 検定後,事後比較は介入前とその後の値を Wilcoxon の符号付き順位検定で行った. *P<0.05,**P<0.01. 注)群間比較 †P<0.05. 図ઇ 清拭前後の皮膚の水分量・油分量・pH の変化 注)○成分含有タオル(n=16) ●成分除去タオル(n=16), 数値は Mean±SE で示す. 注)Friedman 検定後,事後比較は介入前とその後の値を Wilcoxon の符号付き順位検定で行った. *P<0.05,**P<0.01. 注)群間比較 †P<0.05.
が豊富に存在しており(Hales 1983),外的要因によ り皮膚表面温度が低下しやすい傾向にあった(入來 1989).しかしながら,皮膚温については,いずれの 部位も群間に有意差が認められていない.つまり,成 分含有タオルに含有されるエタノールの気化によりタ オル自体の温度が低下した可能性,また,清拭時に微 量に残留したエタノールの気化により皮膚温が一時的 に低下した可能性はあるが,両者の保温効果に差が生 じるほどではなかった. 成分含有タオルでは,POMS-J 短縮版の「抑うつ− 落込み」の評点の有意な上昇,終了直前の交感神経活 性(HF/LF)の有意な上昇が認められた.手関節に 冷感暴露を行い血圧と心拍変動の変化を観察した先行 研究においては,10℃の冷水において,実施前とくら べて,収縮期血圧,拡張期血圧の有意な上昇,副交感 神経活動の低下,交感神経活動の上昇傾向が認められ ている(横井・青木 1998).本研究においては,成分 含有タオルについて,血圧の変動に有意差はなく,終 了直前の右前腕の皮膚温の低下はごくわずかであっ た.つまり,成分含有タオルにおいては,含有される 微 量 の ア ル コ ー ル 成 分 の 気 化 に よ る 熱 損 失 が, POMS-J 短縮版の気分に影響を与えたことは否めな いが,終了直前の交感神経活性(HF/LF)の有意な 上昇に影響を与えた可能性は低いと考える. 以上のように,成分含有タオルに含有される微量の アルコール成分の気化による熱損失が清拭効果に影響 を与えた可能性はあるが,両者はほぼ同等の保温効果 があったといえる. .含有化学成分の有無によるタオルの保湿効果の比較 両者の皮膚表面の水分量を比較すると,成分含有タ オルは成分除去タオルにくらべ,終了直後に有意な上 昇を示した.さらに,成分含有タオルの方が成分除去 タオルにくらべ,最終まで水分量が保持されやすい傾 向にあった.皮膚表面の角層の皮脂膜には,水分の蒸 発を防ぐバリア機能としての役割がある(Matoltsy et al. 1968).さらに,化繊タオルに含有されている プロピレングリコールが,皮膚の表面に水分を吸着さ せる働きをしたために,角層が膨潤し,清拭直後の水 分量の有意な上昇,最終までの水分量の維持につな がったと推測する.角層の水分量の低下は,皮膚表面 の柔軟性の減少と乾燥をまねき(Hardy 1990;Hardy 1996),皮膚バリア機能を低下させる.皮脂膜は脂肪 酸と汗の乳酸が存在することから弱酸性に保たれてお り,皮膚に柔軟性や弾力性を与えている(松尾・犬飼 1988).pH が上昇すると,皮膚のバリア機能に負の 影響が生じる(波多野 2011).つまり,成分含有タオ ルでは,終了 15〜30 分後まで皮膚の油分量,pH が 一定に保持されていたことから,清拭後にプロピレン グリコールは皮膚表面の水分を保持し,バリア機能を 低下させない働きをした可能性がある.一方,成分除 去タオルでは終了 15 分後の油分量が終了直後より低 下しており,終了 15 分後までの pH が上昇し続けた. 通常,乾燥傾向にある皮膚は内部からの水分蒸散をコ ントロールできないため pH は漸次上昇する(橋本・ 佐伯 2003).すなわち,成分除去タオルでは皮脂や表 皮内にある天然保湿因子や角質細胞間脂質まで除去さ れ,皮膚表面が保湿されない状態であった可能性は否 定できない.しかしながら,終了 15〜30 分後の水分 量・油分量・pH の群間に有意差はないため,成分含 有タオルは成分除去タオルにくらべて,保湿性の持続 性については,大きな差があったとはいい切れない. 以上のように,成分含有タオルの方が成分除去タオ ルにくらべ,終了直後の水分量は有意に上昇した. よって,保湿性については,一時的な効果が認められ たといえる.
Ⅴ.結論
化繊タオルの含有化学成分の有無による全身清拭に おいて,保温性については,両者ともほぼ同等の結果 であった.保湿性については,成分含有タオルは成分 除去タオルにくらべ,終了直後において,一時的な保 湿効果が認められたが,持続性については大きな差は なかった.Ⅵ.研究の限界と今後の課題
デ ー タ 解 析 に お い て,主 観 的 指 標 で あ る VAS, POMS-J 短縮版については,測定時点の被験者の気 分が反映されるため被験者によりばらつきが大きく, 群間比較を実施していない.これは,研究の限界とい えよう. 本研究では,健康な男子学生を対象としたため,皮 膚への影響は少なかった可能性がある.成分含有タオ ルを看護実践の場に適応する場合,重傷者や長期療養 者といった,皮膚が脆弱した対象においても,本研究 結果と同様の結果が得られるのか,悪影響がないのか,について明らかにしていく必要がある.今後は, 安全で快適な素材を用いた清潔ケアの提供を目指すた めに研究データの蓄積を積み重ねていきたい. 謝辞:本研究の実施に協力してくださいました,皆様に は心より深く感謝申し上げます.本研究は香川県立保健医 療大学大学院保健医療学研究科における修士論文の一部と してまとめたものである. 文献 朝野和典,大崎能伸(2007):自治医科大学附属病院における Bacillus cereus group 血流感染症アウトブレイクに関する国 立大学附属病院感染対策協議会による改善支援調査報告書. http: //www. jichi. ac. jp/hospital/cereus/kaizensienchosahouko-kusyo.pdf(参照 2016 年月日)
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