第二言語習得における学習継続意識と 学習者要因の関連性について
―韓国語を学習している日本人学習者を対象に―
高 朝 順
1.はじめに 1 − 1. 目的
本研究の目的は第二言語を学習する際、学習に影響を与えている学習者要因 が学習継続にどのように影響しているのか、また、学習者要因の相互作用があ るかないか、あるとしたらどういう相互作用をしているのかを明らかにするこ とである。これらを明らかにすることによって、学習者の学習意欲を高め、学 習継続をさせることができる教授法、教材開発を促進させることができるだろ う。
1 − 2. 本研究の立場
言語習得には様々な要因が関わり合っているが、それを大きく 3 つに分ける ことができる。林他(2006)のモデルから引用すると、以下のとおりである。
Ⅰ.社会文化的要因―多言語・多文化との接触、多言語・多文化社会に対する 態度、言語政策、バイリンガル・マルチリンガリズムへ の期待など
Ⅱ.学習環境要因―フォーマル(教師特性、教授法、教材など)
―インフォーマル(目標言語との接触、目標言語話者との接 触)
Ⅲ.学習者要因―年齢、適性、動機、態度、性格、情緒、母語、教育経験など こういう要因が関わりあって、習得過程に影響を与え、それが言語的所産と 情意的所産に産出されるという。社会文化的要因は学習言語の選択に大きな影
響を与えている。しかし、学習言語を選択したとしても、学習の継続や成果を 左右するのは学習者要因であろう。例えば、学習する意思があるかないか、異 文化に対して肯定的な態度をとっているかどうか、活発な性格を持っているか どうかなどである。
第二言語習得研究は大きく、二つに分けて考えることができる。一つは、言 語の習得過程そのものに焦点を当てた研究、もう一つは、学習者及び習得にか か わ る 諸 要 因 に 焦 点 を 当 て た 研 究 で あ る。(林 2005 に よ り、再 引 用 Larsen-Freeman 1991)学習者要因の研究は後者に該当するものであるが、主 に動機、態度、不安、適性などの要因と到達度との関係を、統計的手法を用い て探る量的な研究が中心であった。(林他 2006)また、これらの研究は複数要 因の研究というより、個々の要因と到達度との関係についての研究が多かっ た。近年になって学習者要因相互の研究も多くなっているが、主に学習成果と の関係が中心である。
ところで、今までの研究が到達度を中心にみた研究だったとしたら、これか らは熟達する前の段階のことも考える必要があると思われる。どの言語も、
⑴第二言語として学習を始める人が多い一方、辞める人も多いだろう。辞めて しまう理由としては社会文化的な要因も、学習環境の要因もあろうが、学習者 要因が大きいと言えるのではないだろうか。また、今までの研究ができる学習 者だけを中心にみてきたとしたら、これからは学習者全体をみて、どういう理 由で継続できないのか、どういった学習者要因が継続に影響しているのかを探 る必要性があるだろう。継続の解決としてドルニェイ(2005)は、学習段階ご とに適切な動機づけで学習意欲を与えることが重要であると述べている。その 段階ごとに、また学習環境、学習者の状態によって状況は異なるとのことだ が、学習者要因の何がどのように影響しているか、また学習者の個別性により どのように異なるかについてドルニェイは明確にしていない。
以上の問題意識から、本稿では学習者要因のうちの達成動機、目標言語開始 動機、文化に対する態度がどのように相互作用しているか、また、こういった 学習者要因の相互作用が学習継続意識にどのように影響しているかを明らかに するための一つの段階として、学習者要因と学習継続意識の相関関係を考察す
る。
2.分析項目
2 − 1.学習継続意識
学習継続意識を問う 7 項目。(選択項目 6、自由記述項目 1)
2 − 2.学習者要因の項目
① 達成動機
学習者の「何かを成し遂げたい」という気持ちが学習継続に影響していると 考え、達成動機という項目を入れた。これは堀野・森(1991)によって作成さ れたもので、23 項目から成る。
② 目標言語開始動機
当該の第二言語の学習開始の動機を問うための 20 項目。調査項目は文化的 な面、道具的な面に分けることができる。李(2003)と久保(1997)を参考に して作成した。
③ 文化に対する態度
学習に影響を及ぼすと考えられる態度には、学校に対する態度、授業に対す る態度、文化に対する態度などがあるが、ここでは文化に対する態度のデータ を分析に用いる。具体的には「自国文化に対する態度」「学習言語文化に対す る態度」「異文化に対する態度」についての計 17 項目である。小西(1994)を 参考にした。
評定尺度は 7 件法である。(1.まったくあてはまらない〜7.非常にあては まる)
3.調査協力者
S 大学の外国語クラスの、韓国語(コリア語)を学習している学習者、133 人(男性 34 人、女性 99 人)。年齢は 10 代後半から 20 代前半である。国籍は 全員日本である。
4.調査期間
2011 年 7 月に実施した。
5.結果
今回の調査は韓国語クラスの初級と中級クラスのご協力を得て行われた。ク ラスレベルと学年のクロス集計を〈表 1〉に示す。
1(0.8) 中級
133(100) 1(0.8)
36(27.1) 24(18.0)
45(33.8) 27(20.3)
合計
〈表 1〉 人(%)
94(70.7) 0(0.0)
35(26.3) 17(12.8)
16(12.0) 26(19.6)
初級 クラスのレベル
39(29.3) 1(0.8)
1(0.8) 7(5.3)
29(21.8)
合計 その他
4 年生 3 年生
2 年生 1 年生
5 − 1.学習継続意識
学習継続意識は前述の通り、学習継続の意思があるかないかを問う項目であ る。質問項目としては、
① 一回学習した言語は忘れないように続けたいと思う
② 韓国語が難しくなってもあきらめずに続けたいと思う
③ 韓国語の興味がなくなったらあきらめると思う(逆転)
④ 韓国語の必要性がなくなったらやめると思う(逆転)
⑤ 社会人になっても、韓国語の学習への意欲は失わないだろう
⑥ 韓国語が上手になっても、さらに努力していきたい
の 6 項目である。③と④の「逆転」とは数値が大きくなるにしたがって評価 が下がる項目のことで、分析に際して他の項目に合わせて変換した。項目の信 頼性はα係数 .84 である。
5 − 2.学習者要因の因子分析
学習者要因の相関をみるために各要因を別々に因子分析を行った。(いずれ も最尤法、プロマックス回転)
5 − 2 − 1.達成動機
堀野・森(1991)で作成された達成動機項目は下位尺度として「自己充実的 達成動機」と「競争的達成動機」から構成されている。
今回も堀野・森(1991)の下位尺度と同じく因子分析をした結果、スクリー プロットから固有値の変化が第 2 因子と第 3 因子で大きく、因子解析からも 2 因子が適当だと考えた。固有値が 0.35 以下の 3 項目を省いて、再度プロマッ クス回転で因子分析をした結果が〈表 2〉である。
.05 .67 何でも手がけたことには最善をつくしたい
−.20 .68 人に勝つことより、自分なりに一生懸命やることが大事だと思う
−.05 .68 こういうことがしたいなあと考えるとわくわくする
.04 .78 難しいことでも自分なりに努力してやってみようと思う
Ⅰ
〈表 2〉 達成動機の因子分析(最尤法・プロマックス法)の負荷量
項目内容
ちょっとした工夫をすることが好きだ
.16 .53 決められた仕事の中でも個性を生かしてやりたい
.05 人と競争することより、人とくらべることができないようなことをして自分を .56
いかしたい
.12 .59 いつも何か目標を持っていたい
.20 .61 何か小さなことでも自分にしかできないことをしてみたいと思う
−.06 .62 みんなに喜んでもらえるすばらしいことをしたい
.19 社会の高い地位をめざすことは重要だと思う
.79
−.33 成功することは、名誉や地位を得ることだ
−.19 .45 結果は気にしないで何かを一生懸命やってみたい
−.09 .46 いろいろなことを学んで自分を深めたい
−.02 .48 今日の一日何をしようかと考えることはたのしい
.07 .52
.44 .01 どうしても私は人より優れていたいと思う
.45
−.01 今の社会では、強いものが出世し、勝ち抜くものだ
.48 .27 世に出て成功したいと強く願っている
.55 .06 就職する会社は、社会で高く評価されるところを選びたい
.60
−.09
勉強や仕事を努力するのは、他の人に負けないためだ .64
Ⅱ
第 1 因子は「難しいことでも自分なりに努力してやってみようと思う」「こ ういうことがしたいなあと考えるとわくわくする」などの負荷量が高く、堀 野・森(1991)の下位尺度の名のように 1.「自己充実的達成動機」と名づけ る。第 2 因子は「成功することは、名誉や地位を得ることだ」「社会の高い地 位をめざすことは重要だと思う」の負荷量が高いことから 2.「競争的達成動 機」と命名する。各因子のα係数は第 1 因子のα=.87、第 2 因子のα=.77
で信頼性は確認されたと言えよう。
5 − 2 − 2.目標言語開始動機
学習開始動機についても同様に 20 項目の因子分析をした。
その結果 4 因子が抽出された。項目は⑵「統合的動機」「道具的動機」を基 本にして構成したので、2 因子を抽出することもできたが、「統合的動機」は 細分化する必要性があると判断して 4 因子を抽出した。その結果を〈表 3〉に 示す。
.66 韓国語でいい成績を取りたいから
.08 .06 .08
Ⅳ
−.11 .75 これからはある程度韓国語ができるほうがいいから
−.10 .94 韓国語の資格があると役立つから
Ⅰ
〈表 3〉 目標言語開始動機の因子分析(最尤法・プロマックス法)の負荷量
項目内容
.16 .86 .13 韓国に旅行したいから
.10
−.12 .77 .63
進学や留学のために必要であるから −.18 .18 .27
−.04 .03
−.07
Ⅲ
.06 .01 .44
−.08 趣味として勉強したくなったから
.33
−.06 .68
−.15 韓国人の友達がほしいから
−.25
−.06 .84 .43 韓国の食べ物が好きだから
−.11
.00 .10 韓国の歴史や伝統文化に興味があるから
.13 .70
−.09
−.08 韓国の政治に興味があるから
.05 .79 .47 .06 韓国のゲームに興味があるから
.11 .72 将来の仕事に役立つから
.45 .08
−.11 韓国のテレビニュースをみたいから
.05 .59 .19
−.02 韓国のスポーツ選手が好きだから
−.01 .60 .02 .11 韓国の漫画を読みたいから
−.24 .65
−.10 .07 .42 韓国のテレビドラマをみたいから
.67 .02 .23
−.01 韓国のファッションに興味があるから
.77
−.07
−.08 .23 韓国の若い歌手が好きだから(ex.少女時代、東方神起など)
.14
Ⅱ
.60
第 1 因子では「韓国語の資格があると役立つから」「これからはある程度韓 国語ができるほうがいいから」の負荷量が高いので、道具的な面を重視して、
学習したことを生かそうとしており、1.「実用的な動機」と命名した。第 2 因 子は「韓国に旅行したいから」「韓国の食べ物が好きだから」などの負荷量が 高く、一般文化の要因が多く流動性が少ないと考え、2.「流動性の少ない動 機」と命名した。第 3 因子は「韓国のゲームに興味があるから」「韓国の政治 に興味があるから」の負荷量が高いことから、韓国の文化に興味があり、さら
に一つの特定分野に接していくことを予測して、3.「特定分野に対する動機」
と命名した。第 4 因子は「韓国の若い歌手が好きだから」「韓国のファッショ ンに興味があるから」の負荷量が高く、こういう項目への反応はいつも同じで はなく、流行という変わりやすい側面を持っているので、4.「流動性の多い動 機」と命名した。各項目のα係数は第 1 因子α=.85、第 2 因子α=.83、第 3 因子α=.82、第 4 因子α=.81 であった。
5 − 2 − 3.文化に対する態度
文化に対する態度の項目は自国文化に対する態度、学習言語文化に対する態 度、異文化に対する態度という 3 つの尺度に構成したので、因子抽出の因子数 を 3 にして因子分析をした。スクリープロットからも固有値の変化が第 3 因子 と第 4 因子の間で大きかったので、3 因子構造が良いと思われる。ここでも 0.35 以下の 2 項目を省いて、再度プロマックス回転で因子分析をした結果を
〈表 4〉に示す。
日本人はポジティブなイメージだ
−.03 .12 .60 日本人は親切だ
−.04
−.05 .67 日本はアジアを代表する国だ
項目内容
〈表 4〉 文化に対する態度の因子分析(最尤法・プロマックス法)の負荷量
日本の文化は他国に比べて優れている .76
Ⅲ .04
.88
−.15 韓国人のように考えたり、行動したりするようになりたいと思う
.15
−.02 .51 日本人は秩序を尊重する
−.01 .06 .55 日本は活気がある
−.17 .18 .55
Ⅱ
−.17
.41 韓国人について知るようになればなるほど、韓国語を話せるようになり −.02
たいと思う
.06 .61 .09 韓国人はとても信頼できる
.03 .67 .13 韓国語を聞いたり、話したりすると落ち着く
.01 .78 .02 韓国の文化は見習うことが多い
−.07
.48 .04 .10 韓国だけではなく他の文化にもとても興味がある
.71 .05
−.07 機会があれば外国で暮したいと思う
.98
−.07 .01 いろんな国の人と友達になりたい
.39
Ⅰ
日本人であることが誇らしい .70 −.01 .06
第 1 因子は「日本の文化は他国に比べて優れている」「日本人であることが 誇らしい」などの負荷量が高く、1.「自国文化に対する態度」と命名する。第
2 因子は「韓国人のように考えたり、行動したりするようになりたいと思う」
「韓国の文化は見習うことが多い」の負荷量が高いので、2.「学習言語文化に 対する態度」にする。第 3 因子は「いろんな国の人と友達になりたい」「機会 があれば外国で暮したいと思う」の負荷量が高いことから 3.「異文化に対す る態度」と命名する。また、各因子のα係数は第 1 因子α=.81、第 2 因子α
=.82、第 3 因子α=.76 で 、信頼性は確認されたと言えよう。
5 − 3.学習継続意識と達成動機
以下では学習継続意識を中心に、上で分析した結果との関係を見ていく。各 項目に以下のように通し番号をつけておく。
ア.学習継続意識 イ.達成動機
1.自己充実的達成動機 2.競争的達成動機 ウ.目標言語開始動機
3.実用的な動機 4.流動性の少ない動機 5.特定分野に対する動機 6.流動性の多い動機 エ.文化に対する態度
7.自国文化に対する態度 8.学習言語文化に対する態度 9.異文化に対する態度
「学習継続意識」の 6 問の得点の合計を標準化したものと、5 − 2 の因子分 析で得られた「達成動機」の下位尺度の得点を合計して標準化したものとの相 関係数を求めた。その結果を〈表 5〉に示す。
.36**
イ.達成動機
― ア.学習継続意識
〈表 5〉
**p<.01
イ.達成動機 ―
ア.学習継続意識
ア.「学習継続意識」とイ.「達成動機」には r=.36(p<.01)で有意な相 関が見られた。
次に下位尺度の 1.「自己充実的達成動機」と 2.「競争的達成動機」の関係 とア.「学習継続意識」の偏相関係数をみた。その結果を〈表 6〉に示す。
―
.自己充実的達成動機
**p<.01
〈表 6〉
ア.学習継続意識 ―
1 .44**
2
−.05 .12
―
.競争的達成動機
ア
1.「自己充実的達成動機」は r=.44(p<.01)で有意な正の相関が見られ たが、2.「競争的達成動機」は r=−.05 で相関が見られなかった。この結果 から、学習者は誰かと競争しなくてはならないことから生まれる動機より、自 己を満足させて、充実できるよう学習を継続することが考えられる。
5 − 4.学習継続意識と目標言語開始動機
「目標言語開始動機」も因子分析で得られた下位尺度の得点を合計して標準 化したもので相関係数を求めた。
言語学習に限らず、動機というのは行動を起こさせるものとして非常に重要 な要因である。その中でも、言語学習は短時間ではなく、長時間を要する学習 であることから、どういった動機を持っているかが学習を持続させるのに重要 な要因の一つであるとも言えよう。
ア.「学習継続意識」とウ.「目標言語開始動機」の相関関係の結果を〈表 7〉に示す。ア.「学習継続意識」とウ.「目標言語開始動機」の間は r=.56
(p<.01)で有意な正の相関が見られた。これは、ウ.「目標言語開始動機」が
学習を継続しようとする意思と関わりがあると言えよう。
**p<.01
〈表 7〉
ア.学習継続意識 ―
ウ.目標言語開始動機 .56**
― ウ.目標言語開始動機
ア.学習継続意識
さらに、ウ.「目標言語開始動機」の 4 つの下位尺度とア.「学習継続意識」
との偏相関係数をみた。その結果を〈表 8〉に示す。ア.「学習継続意識」と 相関があるのは 3.「実用的な動機」r=.18(p<.05)、4.「流動性の少ない動 機」r=.36(p<.01)である。これはア.「学習継続意識」には、一般的な文 化とも言える食べ物が好き、友達がほしいという動機と実用的に使いたいと思 っている動機との間に関わりがあることを示していると言えよう。
また、下位尺度相互の相関関係について述べると、4.「流動性の少ない動 機」と 6.「流動性の多い動機」の間に r=.41(p<.01)で強い相関が見られ て、5.「特定分野に対する動機」と 3.「実用的な動機」の間も r=.43(p<
.01)で強い相関を示している。4.「流動性の少ない動機」は一般的な文化と して普遍性の高いものだと言える。その反面、6.「流動性の多い動機」は流行 を追い求め、変わりやすい面を持っている。4.「流動性の少ない動機」と 6.
「流動性の多い動機」は、ともに「大衆文化的な面」を持っているので、どち らに興味を持って学習するにしても、相互に影響しやすいことが予測できる。
5.「特定分野に対する動機」と 3.「実用的な動機」の相関からは次のよう なことが考えられる。特定分野に興味を持っている学習者は自分の興味のある 分野を知るために、他の学習者より努力を必要としており、他の学習者より学 習言語に接することが多いことにより、学習レベルも上がることが考えられ る。そして学習レベルが上がるとそれを道具として使いたいと思う気持ちも 徐々に強くなるだろう。また、実利的な動機を目的とした場合、特定分野の知 識を要することも考えられる。例えば、韓国と関連がある就職先だと、韓国の 経済、政治などの知識が必要であろう。これは「特定分野に対する動機」が
「統合的動機」の中に入りながら、その一方で「道具的動機」の部分も持って
いることから「実用的な動機」と強い相関を示したと言える。
5
― .13
6
*p<.05、**p<.01
〈表 8〉
ア.学習継続意識 ―
3 .18*
.実用的な動機 ―
.特定分野に対する動機
.41**
.06
―
.流動性の少ない動機
.36**
4
.06
.07 .43** .06 .17
―
.流動性の多い動機
ア
また、ここで考えられるのはア.「学習継続意識」との関わりである。〈表 8〉をみると、4.「流動性の少ない動機」と 3.「実用的な動機」はア.「学習 継続意識」と有意な相関があるが、6.「流動性の多い動機」と 5.「特定分野 に対する動機」は「学習継続意識」と相関がなく、4.「流動性の少ない動機」
と 6.「流動性の多い動機」、5.「特定分野に対する動機」と 3.「実用的な動 機」の間には強い相関がある。強い相関が見られることは移動しやすく、影響 しやすいと考えられる。これは「学習継続意識」とは直接的な関わりがない動 機を持って学習を始めたとしても、学習するうちに相関を示している動機に変 われば学習を継続しようとする意識を持つことができると言えるのではないだ ろうか。こういった関連性からは学習者指導の方向性も分かりやすくなること が考えられる。
5 − 5.学習継続意識と文化に対する態度
エ.「文化に対する態度」とア.「学習継続意識」の相関係数の結果を〈表 9〉に示す。エ.「文化に対する態度」も因子分析で得られた下位項目の得点を 合計して標準化したものである。エ.「文化に対する態度」とア.「学習継続意 識」の相関は r=.44(p<.01)で有意であった。これは、文化に対する態度 が積極的で肯定的だと学習継続意識にも影響を与えていることであろう。
**p<.01
〈表 9〉
ア.学習継続意識 ―
エ.文化に対する態度 .44**
― エ.文化に対する態度
ア.学習継続意識
次に、下位尺度の 7.「自国文化に対する態度」8.「学習言語文化に対する 態度」9.「異文化に対する態度」とア.「学習継続意識」の偏相関係数を算出 した。〈表 10〉に結果を示す。〈表 10〉をみると、ア.「学習継続意識」と 7.
「自国文化に対するする態度」には有意な相関が見られなかったが、8.「学習 言語文化に対する態度」とは r=.47(p<.01)で有意な正の相関が見られた。
また、9.「異文化に対する態度」も r=.26(p<.01)で有意な正の相関が見 られた。以上のことから、言語学習をする上で継続したいという意識を持たせ るには、「文化に対する態度」が関連しており、その中でも「学習言語文化に 対する態度」と「異文化に対する態度」に関連していると言えよう。
―
.自国文化に対する態度
−.06 7
― ア.学習継続意識
〈表 10〉
*p<.05、**p<.01
9
−.04 .22*
.26**
― 8
.47**
.学習言語文化に対する態度 ― .13
.異文化に対する態度
ア
5 − 6.学習者要因の相関関係
ア.「学習継続意識」を含む学習者要因の下位尺度の偏相関係数を算出した。
その結果を〈表 11〉に示す。
3
*p<.05、**p< .01
〈表 11〉
ア.学習継続意識 ―
1 .13
.自己充実的達成動機 ―
9 .05
.実用的な動機
.23*
―
.競争的達成動機
−.18 2
.19*
.02 −.07 .22*
.00
― 8 .27**
.29**
.05 7
−.02 .09 .24* 6
― .07 .32**
.異文化に対する態度
.09
−.21* .03 5 .00 .06
−.03 4
.05 −.01 .23* −.07
.流動性の多い動機
.00
―
.学習言語文化に対する態度
.19* .20* .08
.特定分野に対する動機
−.07 .21*
−.02
― ア
−.03
−.11 .45**
.00
―
.流動性の少ない動機
.09 .17 .14 .13
―
.37**
.自国文化に対する態度 ― .10 −.06
〈表 11〉からはいくつかのことが言える。
まず、ア.「学習継続意識」と相関を示している尺度は 3.「実用的な動機」r
=.19(p<.05)、4.「流動性の少ない動機」r=.19(p<.05)、8.「学習言語 文化に対する態度」r=.27(p<.01)である。3.「実用的な動機」は道具とし て使いたいということから目標があることで継続しようとするだろう。4.「流 動性の少ない動機」は他の動機ほど目標、必要性としての動機性は大きくない ところもあるが、一般的な文化に対する興味であり、一時的な流行に従ったも のではなく、個人の趣味としての動機であることから安定していることが考え られる。また、8.「学習言語に対する態度」は学習している言語の文化に肯定 的な態度を示すことが学習を持続させるためには必要であることだと言える。
1.「自己充実的達成動機」は 4.「流動性の少ない動機」r=.20(p<.05)、
6.「流動性の多い動機」r=−.21(p<.05)、8.「学習言語文化に対する態度」
r=.29(p<.01)、9.「異文化に対する態度」r=.22(p<.05)と相関があっ た。動機の中で、6.「流動性の多い動機」とは負の相関が見られるが、これは 何か流行しているものより、自分の興味を持っていることで満足感を得ようと 追求していることが考えられる。また、他の尺度の相関からは、興味の範囲が 広く、自分が行うことに対しては、批判、否定をするより、理解して自分のも のにしょうとすることが推測できる。
次に、他の尺度と相関関係が多かったのは 8.「学習言語文化に対する態度」
である。これとア.「学習継続意識」との有意な相関については先に指摘した が、それ以外に 1.「自己充実的達成動機」r=.29(p<.01)との相関も強い。
これは、学習言語文化に肯定的な態度を持っていることが、学習者が自分の学 習に満足感、達成感を得ることも多くなることだと言えよう。また、ターゲッ ト言語の文化、学習言語母語話者に対する態度が学習を持続しようとする意識 と何等かのつながりがあることだと言える。
さらに、3.「実用的な動機」r=.23(p<.05)、6.「流動性の多い動機」r=
.21(p<.05)も 8.「学習言語文化に対する態度」と有意な相関を示してい る。3.「実用的な動機」は目標がはっきりしており、学習言語母語話者と話 す、学習言語に接する頻度を多くすることで8.「学習言語文化に対する態度」
が肯定的になると言える。また、6.「流動性の多い動機」は、今流行している 歌、タレントなどに対する興味を意味しているものであろう。こういう動機を 持っている学習者は興味を持っている対象に憧れて、マネしたいと思い、行動 することが考えられる。それは他の動機より学習言語、学習言語母語話者に示 す態度が肯定的でそれが動機と共にできているとも言えよう。
6.まとめ
以上のように「学習継続意識」は学習者要因との相関が見られた。その中で も「目標言語開始動機」の相関が強く、どうして学習を始めたかという要因が 重要だと言える。また、下位尺度の相関関係の考察から次のようなことが考え られる。
1.「学習継続意識」と正の相関を示している「実用的な動機」「流動性の少な い動機」「学習言語文化に対する態度」から
→ 学習を継続させるためには、何かの目標を与えて、学習言語文化に対して 肯定的な情報を与える必要がある。
2.「自己充実的達成動機」と正の相関を示している「流動性の少ない動機」
「学習言語文化に対する動機」「異文化対する動機」と、負の相関を示している
「流動性の多い動機」から
→ 学習と学習言語文化に接することに学習者自身が満足と達成感を感じるこ とが重要である。
3.「流動性の少ない動機」と「流動性の多い動機」の正の相関及び「特定分野
に対する動機」と「実用的な動機」の正の相関から
→ 「目標言語開始動機」の間に強い相関を示しているものがあり、それはお 互いに移動しやすい。
学習を始めた動機は学習を行う上で重要なことであるが、その動機が学習を いつまで促すかははっきりしていない。今回のデータからは学習を継続しよう とする意識には、学習言語の文化に対する肯定的な態度が必要であること、一 般的な文化とも言える動機と具体的な目標及び必要性との間に関わりがあるこ となどが明らかになった。また、「目標言語開始動機」の間に相関があること から、直接には「学習継続意識」と関わりがない動機をきっかけにして、学習 者が相関のある動機を取り込むことができれば、それを「学習継続意識」に反 映させることも考えられる。これは学習者指導とも関わりがあることで、動機 の変化は学習者内面の変化もあるが、外面から変化させることもできると考え られる。すなわち、教師がどういった指導をするか、どういった情報を与える かによって、学習者内面の変化を促進することができるものだと言えよう。そ れは、学習者が学習継続意識と直接な関わりがない動機、もしくは、それと弱 い関わりの動機しか持っていなかったとしても教える側がコントロールするこ とができるということではないだろうか。
以上のことから、学習者要因にはどういう側面があって、それがどういうふ うに関わり合い、学習継続意識に影響しているかの一端が見られたと言えよ う。
今回は一つの段階として学習者要因の中、「達成動機」「目標言語開始動機」
「文化に対する態度」を因子分析して、「学習継続意識」と相関やその要因の下 位尺度の相関関係も検討した。今後は性格の要因、不安の要因の相関をみるこ とで、「学習者要因」と「学習継続意識」の関連性について探りたい。
(注)
⑴
ここでの「第二言語」とは、「第二言語としての日本語教育」、「外国語と しての日本語教育」というときの「第二言語」と「外国語」の両方の意味として使用している。
⑵
第二言語学習の動機づけとして「統合的動機づけ」「道具的動機づけ」が ある。「統合的動機づけ」は、目標言語話者への肯定的な態度を示し、目 標言語話者への統合を目標として第二言語を学習する場合であり、「道具 的動機づけ」とは手段的な態度を示し、実際的な理由で第二言語を学習す る場合である。 (倉八 1994 により)本稿では「統合的動機」「道具的動機」と表記する。
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