奈良教育大学学術リポジトリNEAR
小学生における学習回避動機と学習意欲の研究
著者 杉村 健, 北村 隆, 鈴木 常葉, 多喜 裕美
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 26
ページ 43‑53
発行年 1990‑03‑01
その他のタイトル A Study on Study‑Avoidance Motive and Study Volition in Elementary School Children
URL http://hdl.handle.net/10105/6680
小学生における学習回避動機と学習意欲の研究^
杉 村 健・北 村 隆・鈴木常葉・多喜裕美
(心理学教室)
要旨:小学校2,4,6年生の学習回避動機、内発的意欲、達成意欲について、
学年差と性差、学業成績との関係、そして回避動機と意欲の関係を調べた。
①学習回避動機得点は4年生が最も高くて、学習意欲(内発、達成)得点は4 年生が最も低く、特に男児が顕著であった。学習回避動機得点が高い者および 学習意欲得点が低い者は成績が悪く・特に6年生で有意差があっれ②学習意 欲得点の高い者は知能がすぐれており、特に6年生で有意差があっれ③学習 回避動機得点と学習意欲得点の間には有意な負の相関があった。
キーワード:学習回避動機、内発的意欲、達成意欲、学業成績、知能
子供の学習動機を的確にとらえ、学習指導に役立てるには、 なぜ勉強するのか という学習 接近動機とともに、 どんなときに勉強がいやになるのか という学習回避動機も問題にすべき であるという考えから、先の研究(杉村・清水,1989)では、従来の学習動機を調べる質問項目
(杉村,1968.1973.1985)に加えて、新たに学習回避動機を調べる項目を作成し、小学校2年生、
4年生、6年生に実施した。学習回避動機に関する主な結果は次の通りであった。①宿題が多い とき、問題がむずかしいとき、授業時間が延びたとき勉強がいやになるというのが、小学生に共 通する学習回避動機である。②宿題が多いとき、授業が延びたとき勉強がいやになると答えた者 は2年生から4年生にかけて増加し、当てられて答えを間違えたとき、問題がやさしいとき、手 をあげても当ててもらえなかったとき勉強がいやになると答えた者は、学年とともに減少する。
③学業成績のわるい者、知能の低い者の方が学習回避動機が強いが、学業成績や知能と学習回避 動機の関係は学年や教科によって異なっている。④当てられて答えを間違えたとき、先生に口七ら れたとき勉強がいやになるというのが小学生を通じて成績の悪い者の特徴である。その研究では 学習回避動機を調べるのに17項目を用いたが、その後、この尺度の内的一貫性を高めるために 項目分析を行って4項目を削除した(杉村・北村,1990)。
本研究の第1の目的は、学習回避動機尺度を用いて、学習回避動機の学年差と性差、それに学 習回避動機と学業成績、知能との関係を調べることである。
学習動機と学習意欲(やる気)の間には強い関係があると考えられるが、1976年に奈良県で
A Study on Study−Avoidan㏄Motive and Study Vo1ition in Elem㎝tary School Children
..sakeshi SUGIMURA,Takashi KITAMURA,Tokoha SUZUKI and Hiromi TAKI
(助・舳・枇・〃・ツ・ん・J・砂,Mα・ασ舳・・吻ψ肋・αε1・π,〃α・α)
開催された第27回放送教育研究会全国大会を契機に、学習意欲を調べる質問項目を作成し本。
それは、①新しいことに自発的に取り組む内発的意欲、②困難なことを最後までやりとげる達成 意欲、③計画を立てて実行する計画性と実行意欲を調べることができる30項目からなっている
(杉村,1985)。この調査項目を用いて、学習意欲と学業成績、知能、原因帰属などとの関係を研 究した結果(上田・杉村・玉瀬,1976.1977;杉村,1982.1984)・3つの意欲のうち・内発的意 欲と達成意欲が重要であることがわかった。そこで本研究では、これら2つの意欲について学年 差と性差を検討し、学習意欲と学業成績、知能との関係を再度調べることにした。これが本研究 の第2の目的である。
本研究の第3の目的は、新たに作成した学習回避動機尺度と内発的意欲および達成意欲尺度の 相互の関係を調べることである。学習回避動機と2つの学習意欲の間には負の関係が、内発的意 欲と達成意欲の間には正の関係があると予想され孔
方 法
調査対象 表1に示したように、本研究の調査対象は小学校2年生、4年生、6年生各3学 級ずつで、男女合計309名である。
表1 調査対象の内訳(人数)
学 隼
2 4 6 合計
男児
落
44 S2
49 T0
67 T7
160 P49
合計 86 99 124 309
調査内容 11〕学習回避動機一どんなときに勉強がいやになるかを問う13項目の質問から なっている。この13項目は、先の研究(杉村・清水,1989)で用いた17項目についてG−P分 析を行い4項目を削除したものである(杉村・北村,1990参照)。
①宿題が多いとき勉強がいやになる。
②問題が難しいとき勉強がいやになる。
③当てられて答えを間違えたとき勉強がいやになる。
④先生に叱られたとき勉強がいやになる。
⑤宿題を忘れたとき勉強がいやになる。
⑥先生の機嫌が悪いとき勉強がいやにな孔
⑦親に叱られたとき勉強がいやになる。
⑧授業時間が延びたとき勉強がいやになる。
⑨テストの点が悪かったとき勉強がいやになる。
⑩気分が悪いとき勉強がいやになる。
⑪授業がわからないとき勉強がいやになる。
⑫手をあげても当ててもらえなかったとき勉強がいやになる。
⑮授業がっまらないとき勉強がいやになる。
12〕学習意欲一モの調査項目のもとは奈良県立七条養護学校(工976)に発表されたものである が、その後、上田・杉村・玉瀬(i976)と杉村(1985)にも示されている。本研究では、3つの 意欲のうち内発的意欲と達成意欲の項目を用いる。
<内発的意欲>
①勉強をしようと思うと、頭やお腹がいたくなることがありますか。目 ②親に言われなくても・自分から進んで勉強していますか。
③先生に言われなくても、自分から進んで勉強していますか。
④勉強をして、新しいことを知るのが楽しいですか。
⑤勉強したいことや知りたいことが・たくさんありますか。
⑥新しいことをっぎっぎと勉強したいと思いますか。
⑦勉強でわからないことがあると、自分で調べますか。
⑧授業中、すすんで発表しますか。
⑨テレビやラジオで勉強したことについて、もっとくわしく調べてみたいと思いますか。
⑩学校で勉強したことについて、もっとくわしく調べてみたいと思いますか。
(Rは逆転項目)
<達成意欲>
①授業中、本やノートに落書きをしますか。日
②授業時間が長すぎて、いやになることがありますか。R ③勉強がおもしろくないと、やる気がなくなってしまいますかべ ④わからない問題があると、あきらめてしまいますか。R ⑤授業中、わからないことがあると先生にたずねますか。
⑥もっと勉強して、よくわかるようになろうとがんはっていますか。
⑦できなかった問題を、もう一度考えなおしますか。
⑧勉強をはじめたら最後までがんぱりますか。
⑨勉強がむずかしくても、最後までがんばりますか。
⑩やさしい問題よりも少しむずかしい問題の方が、やる気がおきますか。
(Rは逆転項目)
(3)学業成績一1学期末の国語、社会、算数、理科の成績(素点)を調査校から提出しても らった。教科ごとの素点は分布の幅が狭いので、学業成績の測度として、4教科の合計点を用い
た。
14〕知能検査 日文武GIT総合学年別知能検査小学2年周、4年月、6年月を用いた。いず れもA式(言語式)とB式(非言語式)から構成されてい乱
手続き 著者と心理学専攻の3,4回生が午前中に各々の教室で実施した。まず、知能検査 を手引に従って実施し、そのあとで調査を行った。学習回避動機の場合は回答用紙に「はい」一〇、
「いいえ」一×と書いてある下に、1から13までの番号がある。調査者が番号と質問項目を読み 上げて、○か×かで答えさせた。学習意欲の場合は「はい、いつも」一○、「はい、ときどき」一
△、「いいえ」一×と書いてあり、その下にアとして横に1から10まで、イとして横に1から10 までの番号がある。アは内発的意欲、イは達成意欲の回答に用いられる。調査者が番号と質問項 目を読み上げ、○、△、×のいずれかで答えさせた。調査は1989年10月17日(火)に行った。
結 果 と 考 察
学習回避動機 先の研究(杉村・清水,1989)では・項目ごとに承認率(「はい」の割合)
の学年差と性差、学業成績や知能との関係を検討したが、この尺度の内的一貫性が確かめられた ので(杉村・北村,1990)、本研究では13項目のうちの「はい」と答えた項目数を・その個人の 学習回避動機の測度とした。従って、この得点はO点から13点まで分布する。
l1)学年差と性差 表2は、学年別、男女別に学習回避動機得点の平均とSDを示したもの であ孔3(学年)×2(性)の分散分析を行った結果、学年の主効果がF(2,303)=21,40,ρ<、O1、
学年と性の交互作用がF(2,303)=7.72,ρ<.O1で有意であった(MSeはいずれも9.49)。学 年の有意な主効果については、2年生と4年生、4年生と6年生、2年生と6年生の間にそれぞ れρ<01で有意差があった。表から明らかなように、4年生が最も高く、次に6年生、2年生 の順になっている。学年と性の有意な交互作用について単純効果の検定を行ったところ、2年生 では有意差がなかったが、4年生ではρ<.O1で女児よりも男児が高く、6年生ではρ<.05で男 児よりも女児が高かった。
表2 学習回避動機得点の平均とSD 学 年
2 4 平 均
6
男児4.57(3.55)8,12(3.60)5.1O(3.OO) 5.93 女児4,05(2.68)6.18(2.83)6.56(2.58) 5.60
平 均 4.31
7,15 5.83
5.76学習回避動機は偉点が高いほど勉強がいやになるという気持ちが強く、望ましくない状態を示 すが、後に述べる学習意欲は得点が高いほど意欲が強く、望ましい状態を示すものである。表2 を見ると、2年生の得点が最も低くて4年生の得点が最も高くなっており、学年の進行による直 線的な増加を示していない。他の学年と比べて特に4年生が高いことは、どのように考えたらよ いのだろうか。他の小学校においても同様な結果が得られるならぱ、これは、一般的な現象であ るといえる。その場合には、小学校の3,4年生にみられるといわれている反抗期的な特徴や、
教科内容が難しくなったり複雑になったりすることに原因があると考えられる。調査校に特有な 現象と考えられる場合には、教師や親の学習指導の仕方や子供への接し方などが関係しているか もしれない。それにしても、4年生男子が他と比べて特に高く、13項目中の62%に当たる8項 目について「はい」と答えている。これらについても、一般的現象なのか調査対象校特有のこと
なのかを明らかにし、その原因を探る必腰がある。
12)学業成績との関係一学習回避動機と学業成績との関係を調べるために、学習回避動機得 点が高い者から約30%の者を選んで上位群、低い方から約30%の者を選んで下位群を構成した。
2年生ではそれぞれ26名ずつで、上位群は6点から13点の者、下位群はO点から3点の者であっ た。4年生では30名ずつで、上位群は8点から13点の者、下位群はO点から5点の者であった。
6年生では37名ずつで、上位群は7点から12点の者、下位群はO点から4点の者であった。
表3は、学習回避動機の上位群と下位群について、事業成績(4教科の素点の合計)の平均と
⑰を示したものである。この表から明らかなように、どの学年でも上位群の学業成績が下位群 よりも悪く、 検定の結果は6年生の差がρ<、O1で有意であった。
表3 学習回避動機と学業成績(合計素点の平均とSD)
回 避
動機 2
学 年
4 6
上位群 331.81(62.47) 326.81(41.07) 343.35(44.74)
下位群 354.87(42.90) 別3.50(35.15) 372,14(18.58)
差 一23.06 一16.69 −28.79・.
.. マ<.O1
念のために、学業成績の合計素点で先に述べた基準により上位群と下位群を構成し、学習回避 動機得点の平均(SD)を求めて群差の検定を行った。2年生の上位群は3.69(3.03)、下位群は 5.12(3.75)であり、4年生は同じ順に6.10(2.92)と7.77(3.35)、6年生では4.95
(3.07)と6,76(2.70)であっれどの学年でも成績上位群の学習回避動機得点が低く・ 検定の 結果、4年生ではρ<.1O,6年生ではρ<.05で有意差があった。また、全員の資料について学 習回避動機得点と学業成績の合計素点との積率相関係数を求めたところ、2年生から順に、一29、
一.10、一、25となり、2年生と6年生ではρ<.O1で有意であった。6年生については上位群、
下位群による分析と対応するが、2年生の場合は相関は有意であるが、群差は有意ではなかった。
しかし、表3の群差の大きさは相関係数の大きさと対応しているので、上位群、下位群による分 析と相関係数とはほぼ対応する結果であるといえる。
制 知能との関係一表4は、学習回避動機の上位群と下位群について、知能指数の平均とSD を示したものである。どの学年も上位群の知能が下位群よりも低いが、 検定の結果はいずれも 有意差がなかった。知能指数によって上位群と下位群を構成した場合も、学習回避動機得点の平 均は2年生の上位群が3.85(2.96)、下位群が5.27(3.42)、4年生では7.37(3.19)と7.10(3,44)、
6年生では5.22(3.27)とa24(3.01)であって、いずれも有意差がなかった。学習回避動機得 点と知能指数との積率相関係数は、2年生から順に一.11、一.00、一.13となり、いずれも有意 ではなく、上位群、下位群による分析と対応するものであった。以上の結果から、学習回避動機 と知能の闇には、どの学年も有意な関係がないと結論することができる。
表4 学習回避動機と知能(IQの平均とSD)
回 避
動機 2
学 年
4 6
上位群 ユ04.96(18.96) 104.81(15.43) 1㏄.76(18.11)
下位群 109.92(17.71) 105.g3(15.61) no.4g(1g.18)
差 一4.96 1.12 −3.73
内発的意欲 (1〕学年差と性差一望ましい回答を2点、望ましくない回答をO点、その中 間をi点として採点した。従って、内発的意欲得点の最高は20点、最低はO点である。表5は、
内発的意欲得点の学年別、男女別の平均とSDを示したものである。3x2の分散分析を行った 結果、学年の主効果がF(1,303)=33.42,ρ<.O1、性の主効果がF(1,303)=5.58,ρ<.05で有 意であった(MSeはいずれも13.68)。学年の有意な主効果については、2年生と4年生、4年 生と6年生、2年生と6年生の間にそれぞれρ<O1で有意差があり、2年生が最も高く、次に 6年生、4年生の順になっている。性の有意な主効果は男児よりも女児の方が有意に高いことを
示す。
妻5 内発的意欲得点の平均とSD 学 年
2 4
男児 13,41(3176) 9.02(4.57)
女児 14.81(2.58) 1O.76(3.09)
平均 14.11 9.89
平 均
11.52 (4.00) 11.32
11.40 (3.47) 12.32 11.46 11.82
内発的意欲は得点が高いほど意欲が強く、望ましい状態にあることを示す。学年をこみにする と男児よりも女児の方が得点が高く、女児の方が意欲的であるといえる。男女をこみにした場合、
2年生から4年生にかけて著しく減少し、4年生から6年生にかけて増加している。先の研究
(杉村,1985)では、平均は2年生から11噴に14,12,12となっており、2年生と6年生はほぼ一 致するが、本研究の4年生は著しく低い。本研究では、3学年のうちで4年生が最も低くて望ま しくない状態にある。4年生に一般的にみられる現象か調査校特有の現象がは決め難いが、先の 研究と合わせて考えると、調査校特有の現象がもしれない。全体的にみて、平均値では内発的意 欲得点が減少すれば学習回避動機得点が増加しており、両者の間の有意な関係が示唆される。こ の点については後で詳細に分析する。
12)学業成績との関係一内発的意欲得点が高い方から男女をこみにして約30%の者を上位群、
低い方から約30%の者を下位群とした。各学年の上位群と下位群の人数は学習回避動機の場合 と同じである。2年生の上位群は16点から20点までの者、下位群は2点から12点の者であり、
4年生では同じ11頃に12点から18点の者と2点から8点の者、6年生では13点から20点の者と 1点から1O点のものであった。
表6は、内発的意欲の上位群と下位群について、学業成績(4教科の素点の合計)の平均と SDを示したものである。どの学年も上位群の学業成績が下位群よりも良いが、t検定の結果は
6年生の差がρ<.O1で有意であった。これは学習回避動機の結果と対応するものである。
妻6 内発的意欲と学業成績(合計素点の平均とSD)
内発的
意欲 2
学 年
4 6
上位群 343.16(52.03) 332.78(42.18) 370.24(21.12)
下位群 322.81(58.69) 316.60(46.72) 348,68(40.31)
差 20.35 16.18 21.55
ρ<.O1
学業成績の合計素点を用いて上位群と下位群を構成し、内発的意欲程点の平均(SD)を求め て群差の検定を行った。2年生の上位群は14.85(3.00)、下位群は13.00(4.12)、4年生は同じ 順に11.1O(3.20)と8.93(4.78)、6年生では12.89(3.90)と10.24(3.04)であった。どの学
年も成績上位群の内発的意欲が高く、 検定の結果、4年生ではρ<.10,6年生では ρ<01で有意差があった。全員の資料について、内発的意欲得点と学業成績の合計素点との積 率相関係数は、2年生から順に.18、.25、.26となり、4年生はρ<.05,6年生はρ<.01で有意
な相関があり・上に述べた結果とほぼ対応するものであっれ
13〕知能との関係一表7は、内発的意欲得点の上位群と下位群について、知能指数の平均と SDを示したものである。 検定の結果、2年生と4年生では有意差はなかったが、6年生は ρ〈05で下位群よりも上位群の知能が有意に高かった。知能指数によって上位群と下位群を構 成した場合も・内発的意欲得点の平均(SD)は・2年生の上位群が14.27(2.86)・下位群 13.46(3.58)、4年生では同じ順に10.30(3.74)と9.33(4.01)、6年生では12.92(4.11)と 1046(311)であり、 検定の結果は6年生のみρ<.01で有意差があった。内発的意欲得点と 知能指数との積率相関係数は、2年生から順に.05、.1O、、25で、6年生のみρ<.01で有意であっ れこれは・上位群・下位群による分析と対応する結果であっれ
妻7 内発的意欲と知能(IQの平均とSD)
内発的
意欲 2
学 年
4 6
上位群 105.92(17,94) 103.80(13.12) 114.46(18.17)
下位群 103.79(20.47) 100.73(16.OO) 104.92(15.28)
差 2.13
3,07 9.54
.ρ<.05
達成意欲 ω学年差と性差一内発的意欲と同様な採点を行い、学年別、男女別の平均と SDを示したものが妻8である。分散分析の結果、学年の主効果がF(2,303)=32.41、性の主効 果がF(1,303)二26.15、交互作用がF(2,303)=4.83で、いずれもρくO1で有意であった(MSe はすべて13.49)。学年の有意な主効果は4年生よりも2年生がρ<.01で有意に高く、6年生と
4年生の間では有意差がないことを示す。性の有意な主効果は男児よりも女児が有意に高いこと を示す。単純効果の検定では、2年生と4年生はともにρ<.01で男児より女児が高いが、6年 生では有意差がなかった。
妻8 達成意欲得点の平均とSD 学 年
2 4
男児 13.39(3.13) 8.76(4.51)
女児 15.62(2.26) 12.50(3.48)
平 均 工4.51 10.63
平 均
6
10.97 (4.12) 工1.04 11.49 (3.51) 13.20 11.23 12.12
内発的意欲と同様に、男児よりも女児の方が意欲的であり、また、男女をこみにした場合、2 年生から4年生にかけて著しく減少し、4年生から6年生にかけて増加している。先の研究(杉 村,1985)で得られた平均は、2年生から1順に14,12,11であり、2年生と6年生は本研究と
ほぼ一致するが、4年生は本研究の方が著しく低い。いずれにしても、この調査校では4年生の 男児が達成意欲も内発的意欲もともに著しく乏しいことが明かである。平均値でみると、達成意 欲得点と内発的意欲得点の学年と男女による変化はよく似ており、両者の間に有意な関係が示唆
される。
12〕学業成績との関係一内発的意欲縛点と同様にして上位群と下位群を構成した。2年生の 上位群は16点から20点の者、下位群は8点から13点のものであり、4年生では同じ順に12点 から18点の者と0点から8点の者であり、6年生では13点から18点の者とO点から9点の者
であった。
表9は、達成意欲の上位群と下位群について、学業成績の平均とsDを示したものである。ど の学年でも上位群の学業成績が下位群よりも良く、ε検定の結果は6年生の差がρ<.01で有意で あった。学業成績の合計素点を用いて上位群と下位群を構成した場合、達成意欲得点の平均
(SD)は、2年生の上位群が15115(2.71)、下位群が14.00(3.52)、4年生では同じ順に 12.10(3.58)と9.23(4.36)、6年生では13,27(3.61)と9.54(3.95)であった。どの学年も上 位群の達成動機得点がより高く、 検定の結果、4年生、6年生ともにρ<.01で有意差があった。
達成意欲得点と学業成績の合計素点との積率相関係数は、2年生から順に11,15,40で、6 年生のみρ<.01で有意であった。これは、上位群、下位群の結果とほぼ対応するものであった。
表9 達成意欲と学業成績(合計素点の平均と8D)
達 成 意 欲 2
学 年
4 6
上位群 348.15(47.00) 337.80(38.40) 375.35(17.26)
下位群 329.11(56.43) 322.83(39,82) 338.16(49.50)
差 19.04
14.97 37.19..
ρ<.01
13〕知能との関係一表10は、達成意欲俸点の上位群と下位群について、知能指数の平均とSD を示したものである。 検定の結果、2年生と4年生では有意差がなかったが、6年生ではρ<
.O1で、下位群よりも上位群の知能指数が有意に高かった。知能指数によって上位群と下位群を 構成した場合も・達成意欲得点の平均(SD)は・2年生の上位群が14.85(2.56)・下位群が13,85
(3.29)、4年生では同じ順に11.00(3.44)と10.17(0.77)、6年生では12.70(3.μ)と9.81
(4.03)で、 検定の結果は6年生のみρ<.O1で有意差があった。達成意欲得点と知能指数の積 率相関係数は、2年生から順に.05、.08、.35で、6年生のみρ<.01で有意であっれこれは上 位群、下位群による分析と対応する結果であった。
表10達成意欲と知能(IQの平均とSD)
達 成 意 欲 2
学 年
4 6
上位群 109.23(16.52) 104,83(14.81) 116.22(18.05)
下位群 104.38(17,99) 1OO.67(14.61) 103.76(17.79)
差 4.85
4.16 12.46・.
ρ<.01
学習動機と学習意欲の関係 先に述べたように、学年別、男女別の平均値でみると、学習回 避動機得点(表2)が相対的にみて高いと、内発的意欲搏点(表5)と達成意欲得点(表8一)も 相対的にみて低いという関係がある。また、内発的意欲得点が相対的にみて高いと、達成意欲得 点も相対的にみて高いという関係がある。このような関係が個人内においていも存在するならば、
学習回避得点と内発的意欲得、点及ぴ達成意欲得点の間には有意な負の関係があり、内発意欲得点 と達成意欲得点の間には有意な正の関係があると予想される。この予想を確かめるために、それ ぞれについて積率相関係数を算出した。
学習回避動機得点と内発的意欲得点との相関係数は2年生から順に一、17、一.24(ρ<.05)、
一.28(ρ<.01)であり、達成意欲得点との相関係数は同じ順に一.25(ρ<.05)、一.44(ρ〈.01)、
一.39(ρ<.O1)であった。予想されたように、すべて負の相関が得られ、回避動機と内発的意 欲の2年生以外はすべて有意であった。内発的意欲得点と達成意欲得点との相関係数は2年生か
ら順に.36(ρ<.01)、。71(ρく。1)および.71(ρ<.O1)であり、予想されたようにすべて有意
であった。
なお、学業成績と知能指数の積率相関係数は、2年生から順に.39、.45、.63(いずれもρ<.01)
で、学年とともに知能と学業成績の関係が強くなることを示す。また、5つの変数について主因 子法による因子分析をした結果、どの学年も第1因子では学習回避動機、内発的意欲、達成意欲 の負荷量が著しく高く、第2因子では学業成績と知能の負荷量が著しく高かった。このことから、
動機・意欲の因子と能力の因子が存在することが明かである。
要 約
小学校2・4,6年生309名について、①学習回避動機および学習意欲(内発、達成)の学年 差と性差、②学習回避動機および学習意欲と学業成績および知能との関係、③学習回避動機と学 習意欲・学業成績と知能の関係を調べた。
ω学習回避動機得点は4年生が最も高くて2年生が最も低く、学習意欲得点は2年生が最も 高くて4年生が最も低かった。
12〕学習回避動機得点は4年生の男児が特に高く・学習意欲得点は全体的に女児が高いが・4 年生の男児は特に低かった。
13)学習回避動機得点が高い者は学業成績が悪く、特に6年生では有意差があったが、どの学 年でも知能との有意な関係はみられなかった。学習意欲得点の高い者は学業成績および知能がす
ぐれており、特に6年生では有意差があった。
(4〕学習回避動機得点と学習意欲篶点の間には有意な負の相関があり、内発的意欲と達成意欲 の間には有意な正の相関があった。学業成績と知能の間にも有意な正の相関があり、その値は学 年とともに大きくなった。
4年生、特に男児の結果については、それが調査校特有のものか一般的現象か再検討しなくて はならない。どの学年でも、学習回避動機、内発的意欲それに達成意欲が、学業成績の規定因と して重要である。特に6年生で顕著であるが、低学年から学習回避動機を弱め、学習意欲を強め るような子供への接し方を工夫する必要があ孔
引 用 文 献 奈良県立七条養護学校 1976あゆみ2号、
杉村 健 1968小学生の学習動機 奈良教育大学教育研究所紀要,4,29 34
杉村 健 1973へき地における小学生の学習動機 奈良教育大学教育研究所紀要,9,91.98.
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杉村 健 1984小学生における原因帰属.学習意欲及ぴ成績の予想 奈良教育大学教育研究所 紀要,20,73−79.
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<付記> 本研究を行うに当たり、磯崎郡川西町立結崎小学校の協力を得ました。資料の収集に は心理学教室の4回生と3回生の協力を得ました。心より感謝します。