1
当社のシミュレーション技術への取り組み
米田雅一
iIntroduction of our simulation technology Masakazu YONEDA
当社のシミュレーション技術は,前身である(株)芙蓉情報センターおよび(株)富士総合研究所の時代 を含めて約40年の歴史があり,流体・構造解析と半導体デバイス解析およびそれらのシミュレータ開発に おいて豊富な実績を有する.近年では製造業におけるCAE(Computer Aided Engineering),材料・創薬の分 子シミュレーション,スーパーコンピュータ「京」を用いた大規模流体計算等,業務分野は多岐に渡って いる.ここでは,多様化するニーズに向けた当社のシミュレーション技術および技術力向上への取り組み について紹介する.
(キーワード): シミュレーション技術,CAE,流体解析,構造解析,ハイパフォーマンスコンピューティング,
分子シミュレーション,計算力学技術者認定試験
i サイエンスソリューション部 デジタルエンジニアリングチーム 次長
2 1 はじめに
当部では,前身である(株)芙蓉情報センターお よび(株)富士総合研究所の時代を含めて約40年,
科学技術分野のシミュレーションをコア技術として 事業を展開している.特に,以前から「国産」の科 学技術計算プログラム開発に注力し,1980年代後半 からは,HPC(High Performance Computing)の先駆 けとして,汎用 EWS(Engineering WorkStation)や ベクトル計算機向けの半導体・デバイスシミュレー タ,流体解析プログラムの開発に取り組んできた.
1990 年後半から 3D-CAD の発展とハードウェア の高性能化・低価格化によって,製造業の現場では コンピュータ支援による開発・設計(CAE:Computer Aided Engineering)の導入が進み,現在は,構造・
衝突・振動・伝熱・流体・電磁場等の様々な現象に 対して,ISV(Independent Software Vendor)の商用 ソフトウェアを中心にCAEが実用化されている.特 に,自動車を中心とした輸送機器,重電,機械・精 密機器,電機・半導体分野などあらゆる製造業にお いて,シミュレーションは製品の開発・設計に必要 不可欠な技術となっている.
近年では,我が国の製造業の更なる競争力向上に 加え,将来的な持続的成長・発展可能な社会を目指 し,省エネルギー・CO2排出量削減,健康長寿(医 療・介護)の促進など,未来の産業構造・社会変革,
経済・社会的課題の解決に向けた研究開発の推進が 第5次科学技術基本計画に掲げられている.それに 伴い,科学技術分野さらには社会科学分野において,
シミュレーション技術が果たす役割は高度化かつ多 様化してきている.
このような状況のもと,みずほ情報総研サイエン スソリューション部では,約70名のメンバー(理工 系博士号取得者が全体の1/3)が「『科学』を活かし てお客さまとともに,より良い未来を創造する」こ とを目指して,材料・創薬・医療分野の先端科学分 野や「京」コンピュータなどのHPCを活用した計算 科学技術の研究開発の支援から,自動車などの製造 業におけるCAE,エネルギー分野における安全評価 解析,社会インフラ分野のエンジニアリング,科学 技術動向調査・政策支援などサイエンスを基盤とし たソリューションで,社会と産業の課題解決に向け たサービスを提供している.
2 シミュレーションへの取り組み
当部では,シミュレーション技術および科学技術 の専門性を活かし,「製造(ものづくり)」から「エ ネルギー」,「インフラ・防災」,「材料・創薬・医療」
に至るまで,幅広い分野への多様性を維持しながら 業務を展開している.さらに,「科学技術動向調査・
政策支援」では最先端の科学技術の知見に基づき,
これらの分野の技術動向調査や政策支援を行ってい る(図1).
図1 当部におけるソリューション分野
このように,科学技術分野における風上領域の調 査を実施することによって,例えば,技術開発ロー ドマップと課題解決目標の策定から,業界における 研究・製品開発に向けた課題抽出,テーマアップを 図り,お客さまが抱える直近あるいは中長期的な課 題のニーズを先取りしたソリューションを提案でき ることが当社の特徴であるといえる(図2).こうし た取り組みは,商用ソフトウェアの販売およびサポ ートが業務の中心となっているISVと差別化を図っ ている点である.
本技報では,それらの取り組みのなかで,以下に 示す分野のシミュレーション技術および解析事例に ついて紹介したい.
3
製造分野で注目されている形状最適化シミュ レーション
次世代エネルギー技術として普及拡大が期待 されている燃料電池ソフトウェア,リチウムイ オン二次電池のモデル開発
社会インフラ基盤を支える配管解析
津波等の防災分野に適用性が高い流体計算モ デルの開発
材料分野における先端的な分子レベルのシミ ュレーション
図2 当部における事業展開の一例
3 技術力向上への取り組み
前述のとおり,製造業をはじめとするものづくり 分野,社会基盤やエネルギー技術を支える社会イン フラ分野において,流体解析・構造解析・マルチフ ィジックス等の商用ソフトウェアやオープンソース が研究開発,設計・製造現場で実用化されており,
化学・材料・創薬分野においても研究開発に欠かせ ない技術として計算化学の有効性が認知されつつあ る.そのなかで,解くべき問題の抽出と適切なモデ リング,計算結果の信頼性・有用性をどのように保 証するかが大きな課題となっており,お客さまへの 満足度を獲得するための重要なスキルと位置づけて いる.
この課題の解決に向けた取り組みとして当部で注 力しているのが,シミュレーションソフトウェアの 信頼性と機能性,それらを活用して解析を行う技術 者のエンジニアリング力の向上である.特に後者に
ついては,一般社団法人日本機械学会の「計算力学 技術者資格認定試験」の制度1)を利用し,実際の業 務による教育も含めて個人のスキル育成を推奨して きた.
日本機械学会ホームページによると,計算力学技 術者資格認定試験の合格者数は図2に示すように,
CAEの市場への普及・拡大とともに順調に増加して おり,上級アナリストを含む上位資格を有する技術 者は2014年度末まで延べ1,400人を超えている.そ のなかで,上級アナリストは,
理論及び実務の両面において幅広く深い知識 と解析経験を有する人材
CAE 解析プロジェクトを企画・マネジメントで きる人材
高い倫理観を持ち,顧客や社会に対してプレゼ ンテーションできる人材
と定義され,シミュレーション技術とプロジェクト マネジメントを高いレベルで両立できる人材である が,当部ではこれまでに固体力学分野で3名,熱流 体分野で8名が上級アナリストの資格を取得してい る.今後も人材育成の取り組みの1つとして,若手 技術者を中心に上級資格の獲得を推進していき,お 客さまへ信頼と品質の高いソリューションを提供し ていく予定である.
4 おわりに
以上,シミュレーション技術のこれまでの経緯と 産業界等における活用の現状,当部のシミュレーシ ョン技術を活用したソリューションの概要,スキル 向上を含めた人材育成等への取り組みについて紹介 した.今後も,科学技術分野のスペシャリストの育 成,多様性の維持,シミュレーション技術への継続 的な研鑽を通じて,「お客さまとともに,より良い未 来を創造できる」国内随一のシンクタンクを目指し ていきたい.
引用URL
1) http://www.jsme.or.jp/cee/cmnintei.htm(2015年12 月1日アクセス)
4
(a)分野別・レベル別の合格者数の累計
(b)上級アナリストの合格者数の累計
図2 日本機械学会「計算力学技術者資格認定試験」の状況