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プラスチック分析マニュアル202103簡略Hypリンクなし

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1 2021 年 3 月版(簡略 version)

プラスチックの分析マニュアル

産総研中国センター

まえがき

本マニュアルでは、高分子材料、特にプラスチックの分析についての手順や方法について、

成書やインターネットサイトからの情報をベースに、初心者向けにとりまとめた。主に機器 分析について記載したが、強度試験などの機械的性質については解説の必要が低いことか ら省略した。また、プラスチックには多種類の添加剤が含まれていることから、その分析に ついても取り上げた。

本マニュアルの構成は以下の通りである。

1.プラスチック分析の概要

2.プラスチック自体の分析 2.1 プラスチックの識別

FT-IR、DSC、熱分解 GC-MS、NMR 2.2 分子構造解析

GPC、NMR、熱分解 GC-MS、MALDI-TOF MS 2.3 高次構造解析

広角 X 線回折、小角 X 線散乱、パルス NMR、固体 NMR、FT-IR

3.プラスチックの劣化、変色、異物についての分析 3.1 酸化劣化

GPC、FT-IR、熱分解 GC-MS、MALDI-TOF MS、ESR、化学発光測定装置 3.2 クラック

SEM、GPC、EPMA 3.3 白化

SEM-EDX、SEM-EPMS

3.4 ブルーム・ブリード等の表面解析 FT-IR、XPS、TOF-SIMS、GPC

3.5 着色・変色の分析

ラマン分光光度計、熱分解 GC-MS、GC-MS、LC-MS

(2)

2 3.6 異物分析

FT-IR、熱分解 GC-MS、ラマン分光光度計、SEM-EDX、XPS、TOF-SIMS 3.7 界面の計測

TEM、AFM、エリプソメトリー、FT-IR

4.添加剤についての分析

熱分解 GC-MS、GC-MS、LC-MS、TOF-SIMS

資料1 材料分析機器 資料 2 ポリマーの種類 資料 3 添加剤の種類

参考文献等

1.西岡利勝・寶﨑達也 共編:「実用プラスチック分析」、オーム社 (2011)

2.春名徹 編著:「高分子添加剤ハンドブック」、シーエムシー出版 (2010)

3.「自動車部品の生産状況と材料調達 2015 年版」、アイアールシー (2015)

4 . JFE テ ク ノ リ サ ー チ 株 式 会 社 / ト ー タ ル ソ リ ュ ー シ ョ ン / 樹 脂 ・ 複 合 材 料 評 価

(https://www.jfe-tec.co.jp/composite_material/)

5 . 株 式 会 社 東 レ リ サ ー チ セ ン タ ー / 事 業 案 内 / 分 析 ・ 評 価 ( https://www.toray- research.co.jp/ )

6.株式会社島津テクノリサーチ/技術情報(https://www.shimadzu-techno.co.jp/)

7 . 株 式 会 社 住 化 分 析 セ ン タ ー / 技 術 資 料 ( https://www.scas.co.jp/technical- informations/)

8 . 株 式 会 社 ア イ テ ス / 表 面 ・ 材 料 ・ 異 物 ・ 汚 染 分 析

(https://www.ites.co.jp/chemistry/index.html)

9 . OKI エ ン ジ ニ ア リ ン グ / 化 学 分 析 ソ リ ュ ー シ ョ ン ・ 環 境 シ ス テ ム 技 術

(https://www.oeg.co.jp/)

10.日本電子株式会社/アプリケーションノート(https://www.jeol.co.jp/)

11.株式会社 UBE 科学分析センター/分析対象/材料(https://www.ube-ind.co.jp/usal/)

(3)

3 1.プラスチック分析の概要

最近は、全く新規のポリマーの開発は少なく、複数のポリマーの組み合わせ(ポリマーア ロイ)や強化材を混入した複合材(コンポジット化)により、機能化や機能向上を図ること が多い。また、プラスチックは射出や押出しなどの手法で成形され、さらに塗装やメッキな どで二次加工され、他のプラスチック部品や金属部品と接合され製品となる。このような加 工過程を円滑にするために滑剤や相溶剤などの添加剤が加えられることが多い。また、機能 性を上げるために可塑剤や着色剤を加えたり、環境耐久性のために紫外線吸収剤や酸化防 止剤を添加することも通常行われている。従って、プラスチックの機能に関する現象は、複 合的な要因で起こっている場合が多く、それらを解明するには複数の方法で分析する必要 があり、また予め想定される要因を予測して分析方法を絞ったほうがいい。また、添加剤の 種類や配合については企業のノウハウとされており、開示されることが少ないため、予備知 識を持ってから分析に当たるのが適当である。

以下では、プラスチック自体の分析を行う場合、プラスチックの劣化を解析する場合、添 加剤を分析する場合について、事例ごとに分析方法を整理した。

2.プラスチック自体の分析

プラスチックの機能は、構成されるプラスチックの種類だけではなく、高分子の鎖長や分 子量分布、分岐構造などが分子構造、さらには結晶性や分子・結晶の配向などの高次構造に よって決まってくる。従って、どこまで分析する必要があるか判断しながら進める必要があ る。劣化が問題になる場合は、分子構造、高次構造の変化やフィラー界面、添加剤のなどの 変質などが原因になる場合が多いため、元のプラスチックもその観点で分析する必要があ る。

2.1 プラスチックの識別

プラスチック製品は、ブレンドやアロイ化されたり、添加物が入っていることが多く、そ のような場合、定性分析には複数の分析法を用いる必要がある。基本的には FT-IR が使われ るが、市販のデータベースがあり、複雑でないプラスチックの定性には有用である。結晶性 高分子では、DSC による融点やガラス転移点測定により、ある程度識別が可能である。その 他、複雑な構成のポリマーには、熱分解 GC-MS でより詳細な分析が可能である。

分析機器 分析の実際 FT-IR

(資料 1-

⑦、⑫)

・分子の固有結合振動数と IR データベースから推定

(分析例 1)ポリマーの分類(参考文献 1,p.408, p.424, p.428, p.432, p.438, p.442)

吸収波長から、含まれる官能基等(C=O、CONH、O-H、芳香環、C-H)から、

(4)

4

グループ分けできる。また、タイプの異なるポリマー(例えばホモ PP とラン ダム PP 等)の詳細識別も可能である。

スペクトルの例として、市販のライブラリの他、下記のデータベースが利 用できる。

・産総研公開データベース

https://sdbs.db.aist.go.jp/sdbs/cgi-bin/cre_index.cgi

・Bio-Rad 無料データベース https://spectrabase.com/

DSC

(資料 1-

㉒)

・PE、PP、PS、PA、ポリエステルの詳細識別

(分析例 1)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポ リエステルの識別(参考文献 1, p.421, p.425, p.430, p.436, p.439)

高密度 PE(HDPE)、直鎖低密度 PE(LLDPE)、高圧法低密度 PE(HPLDPE)、超 低密度 PE(V-LDPE)の識別。

ホモ PP、ハイインパクト PP(ホモ PP、PE、EPR から構成される)、ランダ ム PP(エチレンとの共重合)、プロピレン/1-ブテン共重合体の識別。

汎用の GPS、ブタジエンゴムを共重合させたハイインパクト PS(HIPS)、メ タロセン触媒を用いて結晶性を有するシンジオタクチック PS(SPS)の識別。

1 種類のアミノ酸の縮合重合でできた PA と、ジアミンとジカルボン酸の共 縮重合で合成された PA の識別。

PET、PBT、PTT の他、非晶性の共重合体 PET-G の識別。

熱 分 解 GC-MS

(資料 1-

⑤)

・試料を熱分解し、ポリマー由来の熱分解生成物を GC-MS で分析し、構成モ ノマーを推定する

(分析例 1)熱分解 GC-MS によるナイロンの分析 -ナイロン-6、ナイロン- 6,6、ナイロン-6,10 の識別(島津テクノリサーチ、技術情報/構造解析)

https://www.shimadzu-techno.co.jp/technical/

FT-IR では 3 種の識別は難しく、DSC ではナイロン-6 とナイロン-6,10 の 識別が難しい。熱分解 GC-MS のパイログラムの解析から、3 種の構造に由来 する特徴的な熱分解物が確認された。

(分析例 2)熱分解 GC-MS による高分子材料の構造推定-市販ポリウレタン、

ABS 樹脂の分析(島津テクノリサーチ、技術情報/構造解析)

https://www.shimadzu-techno.co.jp/technical/

市販ポリウレタンをシングルショット法で熱分解し、その熱分解生成物を GC-MS で分析した。

(5)

5

(分析例 3)未知ポリマーの分析フロー(フロンティア・ラボ、技術情報)

http://www.frontier-lab.com/japanese/methodology/#overview01

GC-MS 分析を行い、F-search のライブラリから、添加物、ポリマーを定性 する。

NMR

(資料 1-

⑭)

・NMR は、高分子の立体規則性、共重合組成、共重合連鎖分布、異種構造(末 端基、分岐、異種結合など)の解析ができる。(参考文献 1、p.70)

(分析例 1)ポリスチレンの識別(参考文献 1、p.72、p.430)

スチレンのフェニル基など、モノマー単位に特徴的な1H-NMR シグナルが観 察される場合は、その積分強度比から、共重合組成が精度よく測定できる。

高分子の NMR スペクトルは、物質材料研究機構のサイトに保存され、登録 すれば利用できる。(https://polymer.nims.go.jp/)

2.2 分子構造解析

モノマーが同じであっても、触媒反応によって分子量や分子量分布、分岐構造は変化し、

それによってポリマーの機能は変化する。溶媒に溶ける場合には、分子量(分布)測定には、

粘度法や GPC が用いられるが、分岐や側鎖構造の詳細分析には、NMR、MALDI-TOF MS や GC- TOF MS が用いられる。

分析機器 分析の実際 GPC、SEC

(資料 1-

⑥)

・ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)

は同じで、分子量分布の測定に使われる。

(分析例 1)ポリエチレンの分子量をポリスチレンの分子量から換算(参考 文献 1、p.258)

NMR

(資料 1-

⑭)

・NMR は、高分子の化学構造に関する多くの情報が得られる。汎用プラスチ ックの立体規則性や異種構造について、報告されている。

(分析例 1)ポリエチレン、ポリプロピレンの詳細構造 (参考文献 1、p.421、

p.426)

ポリエチレン溶液の NMR により、側鎖の構造と定量ができる。

(分析例 2)ポリエステルの13C-NMR による構造決定(UBE 化学分析センター、

分析事例/高分子分析) https://www.ube-ind.co.jp/usal/

重クロロホルム溶液で室温下測定したポリエステルの 13C-NMR スペクトル とその帰属を示す。

熱 分 解 ・GC-TOF MS では精密質量を得ることができるが、ソフトイオン化法での精

(6)

6 GC-MS、熱

分 解 GC- TOF MS

(資料 1-

⑤)

密質量を測定すれば、精度の高い定性分析が可能になる。

(分析例 1)熱分解 GC-TOF MS による、酢酸ビニル樹脂の統合解析、アクリ ル樹脂の統合解析(日本電子、アプリケーションノート、MSTips No.275, No.300)

https://www.jeol.co.jp/applications/detail/1755.html https://www.jeol.co.jp/applications/detail/1874.html

電子イオン化 (EI)法で得られたフラグメントイオンの精密質量、電界イ オン化 (FI)法などのソフトなイオン化法で得られた分子イオンの精密質量 情報を統合し、定性の確度を向上できる。

日 本 電 子 社 の TOF GC 材 料 ・ 化 学 ア プ リ ケ ー シ ョ ン ノ ー ト ブ ッ ク

(https://www.jeol.co.jp/applications/detail/1086.html)には、GC-TOF MS によるポリマーの測定例が報告されている。ABS 樹脂(No.059、060)、ア クリル樹脂(No.101、122),ポリスチレン(No.106、80)、PEG(No.066)、ポ リフェニレンエーテル(No.102)

MALDI- TOF MS

(資料 1-

⑮)

・ソフトイオン化質量分析技術により、ポリマー材料を構成する個々の成分 までピークを分離して検出することができる。

(分析例 1)精密質量分析法によるポリマーの成分マッピング技術(佐藤浩 昭ら、ぶんせき、2019(1)、p.11-18 (2019))

混合物のマススペクトルデータを一括して処理し、組成分布を表現するた めに、KMD 法(Kendrick mass defect)が考案された。ポリマーの繰り返し 単位を Kendrick 質量の単位として、m/z を Kendrick 質量(KM)に変換する。

KM を四捨五入で整数にした整数 KM 値と KM 値の差を KMD とする。x 軸に整数 KM 値、y 軸に KMD を、ピーク強度をドットの大きさとしてプロットする。例 えば、ポリエチレンオキシド、二官能基性と三官能基性のポリプロピレンオ キシドのブレンドポリマーのスペクトルで、C3H6O のモノアイソトープを単 位として KMD プロットを描くと、水平なプロット群が 2 本(主査以外の構造 が異なる PPO)、傾きのあるプロット群(PEO)が 1 本得られる。主成分に隠 れた微量成分を見つけ出すのに有効である。

KMD 法の適用については、日本電子社のアプリケーションノートに、いく つかの適用例が報告されている。

(https://www.jeol.co.jp/applications/)、を KMD で検索

2.3 高次構造解析等

結晶性高分子の構造は、結晶構造と非晶構造が混在した構造をとり、この構造は成形条件 によって変化するだけでなく、経時変化も受ける。結晶は球晶型で、その中に薄片状の結晶

(7)

7

(ラメラ)が折りたたまれて存在するとされている。高分子の高次構造解析には、X 線散乱 法が重要で、広角 X 線散乱(回折)では、結晶化度や結晶サイズ、配向情報が得られ、小角 X 線散乱では、より大きいナノスケールの構造情報が得られる。その他、高次構造解析には、

TEM や AFM を用いる観察法や、高分子の空孔や自由体積を測定する陽電子消滅法も利用され ている。

分析機器 分析の実際 広角 X 線

回 折 ( 資 料 1-⑯)、 小角 X 線 散 乱 法

(資料 1-

⑰)

・広角散乱(回折、WAXD)はÅオーダーの構造の規則性(結晶性)、小角散乱

(SAXS)は 1-100nm 程度の構造規則性を調べることができる。高分子の小角 x線散乱による測定では、結晶性、非晶性の繰り返し構造や、多相系高分子 のミクロ相分離構造などがわかる。

(分析例 1)広角 X 線回折による結晶相転移の測定、結晶化度の測定、結晶 配向の解析(参考文献 1、p.115、p.300、p.302)

パ ル ス NMR、固体 NMR

(資料 1-

⑭)

・パルス NMR では 1H 核の緩和時間を測定することで、分子運動性を評価す る。結晶性高分子では、緩和時間の差を用いて、結晶、非晶、界面の 3 成分 に分離し、各々の比率を求めることができる。

(分析例 1)パルス NMR によるエポキシ樹脂の物性評価(住化分析センター、

テクニカルニュース、TN378)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

2液常温硬化型エポキシ樹脂の硬化状況の経時観察を行った。

・固体 NMR では固体状態にある分子や原子の NMR 信号を検出し、固体材料の 化学構造や分子のコンフォメーション、また分子運動性を調べることが出来 る。

(分析例 1)高温プローブによるスーパーエンプラの構造解析(東レリサー チセンター、技術情報、TRCNews、201606-03)

https://www.toray-research.co.jp/technical-info/trcnews/

400℃までの昇温条件で固体高分解能 NMR 測定が可能なプローブを用い、

溶媒に不溶なスーパーエンプラ PPS や液晶ポリマーの NMR 測定を行った。

FT-IR

(資料 1-

⑦、⑫)

・ポリマーフィルムは、機能性を持たせるため多層構造になっていることが 多い。顕微 FT-IR により層構造を評価できる。

(分析例 1)ポリマーフィルムの評価(住化分析センター、テクニカルニュ ース、TN326)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

(8)

8

厚さ 200μm のパッケージフィルム断面の顕微 FT-IR イメージング測定を 行った(Ge-ATR 法)。

3.プラスチックの劣化、変色、異物についての分析

プラスチックの不具合の事例が、滋賀県東北部工業技術センターのサイトにまとめられ ているが、樹脂の割れ、破損、成形加工時の不良、強度の低下、着色、異物などがある。

https://www.hik.shiga-

irc.go.jp/activities/tech_consul/cases/resin_and_elastomer/

また、機能性付与や劣化防止のための添加剤が複数添加されることが多いが、その成分や 組成については公開されることは少なく、添加剤に由来する不具合についても分析手法が 重要となっている。

劣化の原因としては、以下の要因が上げられる。

① 熱や光による酸化反応や熱劣化(酸素がない場合)

② 水による加水分解

③ 外部からの応力によるもの

④ その他、使用環境によるもの、例えば、薬品、電気的作用、放射線、微生物など 熱や光による劣化機構はかなり調べられており、各劣化過程の化学反応を抑えるための 添加剤も色々開発されている。資料 3 にも記載しているが、劣化過程は、ラジカルの反応に よるとされている。

酸化劣化 RH が解離→R・

R・+O2→ROO・

ROO・+RH→ROOH+R・ 連鎖反応で COOH の増加 ROOH→RO・+・OH 熱や光で促進

RO・がβ開裂し、R‘CHO(二級炭素)、R’COR‘’(三級炭素)となり、切断される。

ラジカル同士の結合で架橋して停止

光酸化劣化では、Chromophore(光で励起される物質)が光で励起、分解され RH から H を 引き抜き R・を生成する。Chromophore は、触媒残渣、COOH、C=O、不飽和基、など。

酸素がない場合は、ラジカル R・が重合の異常を引き起こし、フィッシュアイやミクロゲ ルの原因となる。高温となる成形加工時に発生することが多いが、酸素の有無によって劣化 過程も異なる。

加水分解

縮合系高分子(エステル結合、エーテル結合、アミド結合)の場合は、加水分解を受けや すいため、低分子化による劣化が生じる。成形加工時の乾燥などが、製品の性能に反映され ることも多い。

(9)

9

樹脂の機械的強度の劣化は、主鎖の切断による低分子量化が主な原因であるが、高分子は 結晶部、非晶部が混在した高次構造を持つため、低分子量化以外に、結晶化度や架橋構造の 変化なども性能の変化の原因となる。

応力による劣化(疲労劣化)は、応力によって分子鎖の切断が生じることで発生するが、

その他クラックやボイドの発生によって白化が生じることがある。成形時などで内部応力 がある場合には、ソルベントクラックが起こりやすい。

絶縁体の樹脂では、放電や表面電流による樹脂の劣化、金属の樹脂への浸透などが発生し やすい。放射線による劣化は、光酸化劣化と同じでラジカルの発生が発端となる。

本章では、劣化として、酸化劣化、クラック、白化、ブルーム・ブリード、着色・変色を取 り上げ、分析例を紹介する。また、異物分析、界面測定についても、計測法を紹介する。ま た、劣化は高分子の高次構造や添加剤の酸化にも関わってくるため、2 章、4 章も参考にさ れたい。

3.1 酸化劣化

分析機器 分析の実際 GPC(資料

1-⑥)

・加水分解を受けやすい縮合系高分子については、GPC で分子量分布を測定 する

(分析例 1)合成樹脂の劣化評価・分析手法(大武義人:空気調和・衛生工学、

80(1)、69 (2006))

ポリウレタンやポリカーボネートのようなエステル系樹脂は加水分解を受 けやすい。特にペレットの保管時に水分を吸湿していると、溶融した成形加 工時に加水分解を受けやすい。乾燥した PC ペレットと未乾燥の PC ペレット を用いて、成形後の分子量分布を GPC で測定した。未乾燥製品では、分子量 分布は低分子側に大きくシフトした。

(分析例 2)再生ポリプロピレンを用いた押出成形品に強度低下がみられた

(滋賀県東北部工業技術センターサイト、前述)

ポリオレフィンの酸化劣化により主鎖が切断された場合は、IR や GPC で評 価できる。劣化が進んでおらず、これらの手法で検出できない場合には、分 子量と極限粘度の関係をプロット(Mark-Houwink プロット)すると、評価で きる場合がある。本プロットでは、架橋の生成や酸化劣化による分岐構造の 生成が評価できる。例えば、同一分子量で未知試料の極限粘度が直鎖ポリマ マーより小さい場合、分岐があると考えられる。

FT-IR

(資料 1-

・酸化劣化により、樹脂中の官能基の生成や減少などの変化が現れるため、

IR で評価できる。

(10)

10

⑦、⑫) (分析例 1)FTIR による樹脂表面の劣化評価(島津製作所、分野&データ、

工業材料/マテリアル/CFRP/品質管理)

https://www.an.shimadzu.co.jp/apl/chemical/chem0903015.htm ABS 樹脂への紫外線の影響を、FTIR1 回 ATR 法を用いて調べた。

(分析例 2)太陽電池用封止樹脂の劣化評価(住化分析センター、テクニカ ルニュース、TN346)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

太陽電池封止材のポリエチレンビニルアセテート(EVA)を、キセノンラン プによる 362 時間照射試験と温度サイクル試験を実施した。

熱 分 解 GC-MS

(資料 1-

⑤)

・UV 照射装置と熱分解 GC-MS を組み合わせて、耐候性評価を行うことができ る

(分析例 1)熱分解 GC-MS による高分子材料の耐候性評価(島津テクノリサ ーチ、技術情報/有機分析)

https://www.shimadzu-techno.co.jp/technical/

ポリスチレン樹脂を合成空気雰囲気下で 100℃に加熱しながら 1 時間 UV 照 射を行い、発生するアウトガスを GC-MS 分析した。

(分析例 2)高分子材料の光、酸化、熱劣化評価 UV-Py-GC/MS(住化分析セ ンター、テクニカルニュース、TN349)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

紫外線-熱分解-GC/MS と発生ガス分析法(EGA-MS)を組み合わせて、劣化 時の発生ガス測定と劣化材料の定性を行った。

MALDI- TOF MS

(資料 1-

⑮)

・MALDI-TOF-MS と KMD 解析を組み合わせることで、ポリマーの構造解析や劣 化解析ができる

(分析例 1)MALDI-TOF-MS を用いた、紫外線照射による PET 樹脂の劣化のイ メージング質量分析(日本電子 アプリケーションノート MSTips No.307)

https://www.jeol.co.jp/applications/

KMD プロットの解説については、総説(佐藤浩昭:分析化学、67(10)、589 (2018))や 2.2 の MALDI-TOF MS の項も参照のこと。

ESR

(資料 1-

㉕)

・電子スピン共鳴(ESR)法は、ラジカルを分析対象とする

(分析例 1)ESR 法による高分子材料の評価(住化分析センター、テクニカル ニュース、TN463)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

(11)

11

電子線照射した高分子材料を ESR 法で測定した。

(分析例 2)高分子材料の解析における ESR の活用(日本電子 News vol.50 No.4、下記サイトをタイトルで検索のこと)

https://www.jeol.co.jp/applications/

LDPE、PP、PS、PC について、酸化防止剤をメタノールのソックスレー抽出 で除き、キセノンウェザーメーターで促進劣化処理を行った。ESR 測定およ び GPC による分子量分布測定を行った。

化 学 発 光 測定装置

(資料 1-

㉔)

・化学発光(ケミルミネッセンス)は、反応系の励起状態にある物質が、基 底状態に戻るときに放出される微弱な光で、この高感度検出により酸化劣化 を鋭敏に測定することができる

(分析例 1)ケミルミネッセンスによる高分子材料の酸化劣化評価(住化分 析センター、テクニカルニュース、TN323、324)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

安定剤の量が異なるポリプロピレン 3 種をロール混練機で 180℃で 1~30 分間混練し、そのケミルミ強度を測定した。

3.2 クラック

プラスチックのクラックには、成形加工時に発生するもの、使用中に発生するものがあり、

前者は例えば熱応力によるもの、加水分解による低分子量化などが考えられる。後者の原因 としては、内部応力があるときに溶剤と接触することで発生するソルベントクラック、オゾ ンによる劣化で発生するオゾンクラック、繰り返し応力で分子差鎖が切断されることによ る疲労によるクラック、異物の混入やボイドによる応力集中で発生するクラックなどが考 えられる(参考文献 1、p.531)。

最初に行うのは顕微鏡による破面観察で、クラックの原因により特徴的な破面が見られ る。例えば、ソルベントクラックでは鏡面状の破面が観察され、疲労クラックでは、繰り返 し応力の周期によって縞模様の破面になる。その後、成分分析によりクラックの原因となっ た溶媒の同定や、分子鎖の切断状況を化学的に行う。不具合の解消には、外的要因だけでな く、プラスチックの構造(結晶性、架橋度、分子量、高次構造など)や成形加工時の内部応 力の発生などの内的要因も考える必要がある。

分析機器 分析の実際 SEM(資料

1-⑲)

・破面の観察により発生原因を推定する

(分析例 1)ポリアミド成形品の破面の SEM 観察(参考文献 1、p.531)

破面を観察すると、一点を起点として破壊が伝播している様子が観察され

(12)

12 た。

(分析例 2)破面解析によるサルホン系樹脂材料の破壊原因の調査(ソルベ イ社技術資料)

https://www.solvay.jp/ja/binaries/Sulfone-Polymers-Fractography- Analysis_JA-295763.pdf

GPC(資料 1-⑥)

・疲労破壊では、分子鎖の切断が生じ分子量の低下が生じる

(分析例 1)硬質 PVC の疲労破壊(参考文献 1、p.534)

破面の SEM 画像から、ソルベントクラックによって生じた小さなクラック が応力集中を招き、疲労劣化が進行し破壊したと考えられる。

(分析例 2)プラスチック・ゴム成形品の破損破壊の原理と対策(大武義人:

ゴム協会誌、90(10)、482(2017))

疲労破壊では、ストライエーションと呼ばれる特徴的な縞模様が現れる場 合が多いが、見られない場合もある。繰り返し負荷をかけた場合の分子量低 下は、PC や ABS、硬質 PU、PMMA のストライエーション部分で観察された。

EPMA ( 資 料 1-④)

・元素分析を行うことで、腐食原因物質の浸透状況を分析できる

(分析例 1)残留塩素によるゴムの崩壊と表面粗れ(参考文献 1、p.536)

電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)により、塩素の浸透が 50μ m に達していることが確認された。

3.3 白化

プラスチックの白化は、材料の表面や内部で拡散反射(乱反射)が生じることが原因であ るが、成形加工時で発生する要因として、金属との擦れや水蒸気による表面の粗(あ)れ、

添加剤の結晶化などがあり、また経時変化では、劣化や傷による表面の粗れ、応力による内 部でのボイドの発生、等がある(参考文献 1、p.544)。発生原因の特定には、①実体顕微鏡 や電子顕微鏡による観察、②何らかの物体が原因の場合は、IR や SEM-EDX による成分分析 や、溶剤抽出しての GC、MS による定性分析を行う。

分析機器 分析の実際 SEM-EDX

(資料 1-

③)

SEM-EPMA

(資料 1-

・添加剤の影響の場合

(分析例 1)PP 成形品を熱処理すると部分的に白化(参考文献 1、p.545)

SEM-EDX により、観察すると同時に成分分析を行った。

(分析例 2)PP 複合材料の火炎処理後の白化(参考文献 1、p.547)

(13)

13

④) 火炎処理により、白化が発生した。SEM-XMA(EPMA と同じ)で測定すると、

Si、Mg が主成分で、タルク由来であった。

また、内部のボイドの観察には、超音波探傷や X 線 CT が利用できる。

3.4 ブルーム・ブリード等の表面解析

ポリマー表面に吹き出したものが固体の場合はブルーム、液体の場合はブリードと言わ れる。添加剤の場合はポリマーとの相溶性の問題があり、またポリマー成分のうち、結晶性 の低い成分(例えば LLDPE で短鎖分岐数が多い成分)、あるいは高分子が劣化して低分子に なり表面に出てくることがある。表面分析装置や FT-IR 等で分析可能であるが、微量の場合 などは分析の難しい場合もある。

分析としては、

① 物質の同定・・・抽出して FT-IR、GC-MS、LC-MS 等で定性分析および定量分析、あるい は熱分解 GC-MS で分析(添加剤の場合は、4.添加剤についての分析を参照)

② 微小領域での同定・・・顕微 IR、表面分析装置(下記の表参照)、電子顕微鏡などの表 面観察装置を利用

下記に表面分析で使用される代表的な表面分析装置の比較を、(株)アイテスの資料から 引用する。

https://www.ites.co.jp/chemistry/index/surface_analysis.html

表面分析装置の比較

装置 EDX(EDS) AES XPS(ESCA) TOF-SIMS

検出深さ 数μm 約 5nm 約 5nm 1-2nm

検出限界 0.1% 定性:0.1%

デプス:数%

定性:0.1%

デプス:1%

ppm

得られる情報 元素 元素

デプスプロファイル

元素 結合状態 デプスプロファイル

元素 有機物の化学構造 デプスプロファイル

最大試料サイズ 大きさ:~200mmφ 厚さ:数十 mm

大きさ:約 25mmφ 厚さ:約 7mm

大きさ:約 80mmφ 厚さ:約 10mm

大きさ:約 50mm 角 厚さ:約 10m 重さ:約 50g 以下 最小分析領域 約 1μm 以下 約 1μm 約 300μmφ 元素:5μm

有機物:50μm

分析対象 定量:半定量 定量:半定量 定量:半定量 定量:×

(14)

14 絶縁物:△

有機物:×

絶縁物:△

有機物:×

絶縁物:○

有機物:×

絶縁物:○

有機物:○

EDX(EDS):エネルギー分散型 X 線分析装置 資料 1-③ AES:オージェ電子分光分析装置 資料 1-⑩

XPS(ESCA):X 線光電子分光分析装置 資料 1-⑨

TOF-SIMS:飛行時間型二次イオン質量分析装置 資料 1-⑪

分析機器 分析の実際 FT-IR

(資料 1-

⑦、⑫)

・ブリード成分が多い場合

ブリードした成分を KBr 板に塗りつけ、IR により分析できる。

(分析例1)PVC 電線材料で緑青色に変色した液状成分(参考文献 1、p.463)

液状成分の IR スペクトルをとった。また、SEM-EDX の分析により、Cl、Cu、

微量の Zn の元素が検出された。THF による抽出-逆相 LC を用いて劣化した材 料と元の材料の添加剤定量分析を行った。

(分析例 2)アイソタクチックポリプロピレンラミネートフィルムの滑り性 低下(参考文献 1、p.470)

滑剤の種類やフィルムの作成条件に滑り性は大きく依存しており、これは 滑剤の表面への移行性が大きく影響していると考えられる。

XPS

(資料 1-

⑨)

・X 線光電子分光分析法(XPS)により、表面数 nm の元素の結合状態を観測

(分析例 1)細胞培養用プレートの表面改質状態変化(住化分析センター、テ クニカルニュース、TN442)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

表面改質したポリスチレン製細胞培養プレートの C1s ナロースキャンスペ クトルをとり、ピーク分離により官能基比率、(C-C、C-H、C=C):(C-OH、C- O-C):(H-C=O、C=O):(HO-C=O、RO-C=O)を算出した。

固体表面の修飾では、修飾基を定性分析できる。(住化分析センター、テク ニカルニュース、TN458)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

TOF-SIMS

(資料 1-

⑪)

・飛行時間型二次イオン質量分析法により、表面の添加物を測定

(分析例 1)ポリエチレン表面の定性分析(住化分析センター、テクニカルニ ュース、TN060)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

市販のポリエチレンフィルムと、それを 100℃で 24 時間加熱処理したフィ

(15)

15 ルムの表面解析を TOF-SIMS で行った。

(分析例 2)ポリエチレン表面の定性分析(住化分析センター、テクニカルニ ュース、TN152)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

TOF-SIMS により、防曇剤と滑り性との関係を調べた。

GPC

(資料 1-

⑥)

・低分子量のポリマー成分と添加剤からなるブリードの分析

通常のポリマー分子量分布測定カラムに、オリゴマー領域のみを分離でき るように、溶媒分離カラム(低分子量成分と溶媒のピークを分離できる)を 追加する。ブリード成分の GPC(SEC)測定で、複数の検出器の特徴から成分 を推定できる。

(分析例 1)直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)のブリード物の分析(参考文 献 1、p.469)

LLDPE フィルムの表面を THF に浸漬し、溶解成分を溶媒分離カラムを追加 した GPC で分離した。

3.5 着色・変色の分析

着色成分には、異物の混入、高分子の劣化による共役二重結合を持つ成分の生成、添加剤 の変性物、カビなどの発生、等が考えられる。一般に微量で、また未知物質であるため分析 が難しい場合が多い。

ポリマーの変色では、酸化劣化により発色団(>C=C<、>C=O、-N=N-、-N=O 等)が生成し、

さらに-OH、-OR、-NH2、-NHR、-SO3H、-COOH 等の助色団が着色を強める。ポリウレタンのよ うに助色団を含むポリマーは変色しやすい(CERI News、No.45、 p.4 (2005))。またカビ による着色や劣化も無視できない。

着色・変色の原因として、以下の表のようにまとめられる。(参考文献 2、p.225~229 か ら)

事例 原因

車の通りが激しい道沿いでの プラスチックの変色

フェノール系酸化防止剤が排ガス中の NOx によって酸 化され、スチベンキノンが生じ着色する。

暗所黄変 ABS 樹脂などで生じる。メカニズムは解明されていない が、加工時の熱酸化、初期の光酸化で生成したラジカル 種で進行すると考えられる。

PVC の光着色 劣化で脱塩酸が起こり、ポリエンなどの共役二重結合が 増加する。

ポリオレフィンの光着色 熱や光によって、構造中の水素が引き抜かれ、自動酸化

(16)

16

反応によって劣化が進行し、ポリエンが生成する。

ポリカーボネートの光着色 290nm 付近の紫外線を吸収し、フリース転移と言われる 光反応によってフェニルサリシレート構造、さらにジヒ ドロキシベンゾフェノン構造を生成する。

フィラーや顔料による変色 フェノール系酸化防止剤などのフェノール基を有する 添加剤は、フィラーや顔料に含まれる金属イオンとキレ ートを形成し、発色する場合がある。

フェノールの変色 フェノール系酸化防止剤が酸化されて生成するキノン 系化合物が有色のため。分解してフェノール基を生じる ポリマーも同様。

使われる分析機器としては、紫外可視吸光光度計、IR、ラマン分光光度計、分光蛍光光度 計、NMR、電子スピン共鳴装置(ESR)、SEC、LC/MS、GC/MS など。着色成分をある程度採取で きれば、GC/MS や LC/MS、NMR 等が利用できる。

分析機器 分析の実際 ラ マ ン 分

光光度計

(資料 1-

⑬)

・着色物質が抽出できない場合には、ラマン分光光度計や、分光蛍光光度計 が利用される。

(分析例1)ラミネートフィルムの変色部の分析(サーモフィッシャーサイ エンティフィック、News Letter M05006)

http://tools.thermofisher.com/content/sfs/brochures/M05006-JA.pdf 最新の顕微ラマン分光法では、焦点位置だけの光を検出器に導入すること ができる。これにより、多層フィルムの特定の層の着色について調べること ができる。

(分析例 2)加熱変色したプラスチックの評価(藤沢健:長野県工技センター 研報、No.5、M5-M8(2010))

市販の各種プラスチックペレット、フィルム 13 種を加熱変色させ、FT-IR の ATR 法およびレーザーラマン分光光度計でスペクトルを測定した。

熱 分 解 GC-MS

(資料 1-

⑤)

・成分の溶媒抽出ができない場合は、熱分解 GC-MS で成分の分析を行う

(分析例 1)透明フィルムの黄変原因解明(日立化成テクニカルレポート、

58 号、2015 年 12 月)

https://www.hitachi-chem.co.jp/japanese/

熱分解 GC×GC-MS により、車載ディスプレイモジュール用透明フィルムの 黄変部分を同定した。

(17)

17

(分析例 2)GC×GC-TOFMS および多変量解析を用いた黄色原因探索フロー

(LECO ジャパン、アプリケーションノート、No.1108)

https://www.leco.co.jp/category/support_resources/application/

specialreport_separationscience/13266/

ABS 樹脂を耐候試験で変色させ、熱分解温度 550℃で、GC×GC-TOFMS 分析 を行った。

抽 出 → GC-MS 、 LC-MS

(資料 1-

⑤)

・変色が、添加物の変性が原因の場合は、原因物質を溶出して、LC、GC で分 析可能である。

(分析例 1)ポリウレタンの黄変原因調査(材料科学技術振興財団、分析事例 から C0586 で検索)

https://www.mst.or.jp/

ポリウレタンの着色原因物質を抽出して LC 分離し、フォトダイオードア レイ(PDA、測定波長は UV/vis)検出器と MS により、スチルベンキノンの一 種が検出された。

3.6 異物分析

プラスチック中の異物は、外観の問題だけでなく、そこを起点とするクラックの発生など の原因ともなり得る。また、外界からの混入だけでなく、添加剤に由来する場合、スポット 的な重合異常や加工過程での劣化に由来する場合など考えられる。知りたいのは、混入や発 生のプロセスを突き止めることであるが、それにはまず成分を同定する必要があり、概ね以 下のような工程で分析が進められる。

① 光学顕微鏡や電子顕微顕微鏡による観察

② 観察から有機物と思われる場合・・・IR、顕微 IR(最小サイズ 10μm 程度まで)、顕微 ラマン(1μm まで)、熱分解 GC-MS

③ 観察から無機物、金属と思われる場合・・・SEM-EDX、EPMA、これらは 1μm サイズまで の元素分析が可能で後者は微量元素の定性に向く、XPS(ESCA、10μm 程度まで)、AES

(0.1μm サイズの元素分析)

また、TOF-SIMS は無機物、有機物の両方の元素分析に使用できる。

分析機器 分析の実際 FT-IR

(資料 1-

⑦、⑫)

・異物が有機物と思われる場合は、顕微 FT-IR が第一選択と言える

(分析例1)樹脂中異物分析へのアプローチ -樹脂フィルムの褐色異物に よる外観不良(東レリサーチセンター、TRCNews、2016 年 10 月号)

https://www.toray-research.co.jp/technical-info/trcnews/

(18)

18

UV 硬化型アクリル樹脂フィルム中の、直径約数十μm の褐色異物を分析し た。異物を切り出し顕微 IR のスペクトルを、正常部分のスペクトルと比較し た。さらに、異物の直接導入-質量分析(DI-MS)を行い、正常部分との比較 を行った。

(分析例 2)実験用手袋の凸部の分析(プラスチックス・ジャパン・ドットコ ム)

https://plastics-japan.com/archives/4123

手袋に凸部があり正常部よりも不透明。切り出して断面を光学顕微鏡で観 察した。断面異物部と正常部の FT-IR スペクトルをとり、その差のスペクト ルについて検索すると炭酸カルシウムがヒットした。

熱 分 解 GC-MS

(資料 1-

⑤)

・FT-IR と GC-MS を組み合わせることで、より詳細な定性分析が可能になる

(分析例 1)熱分解 GC-MS による異物の詳細解析(住化分析センター:テク ニカルニュース、TN426)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

最初に顕微 FT-IR により異物の定性分析を行い、次に異物の熱分解 GC-MS を行った。

ラ マ ン 分 光 光 度 計

(資料 1-

⑬)

SEM-EDX

(資料 1-

③)

・ラマン散乱は分子振動に伴う分極率の変化により生じ、双極子モーメント の変化で生じる赤外吸収とは補助的な関係にある。顕微ラマンでは、空間分 解能が高い。

・SEM-EDX は、対象を拡大して測定部位を決めることができ、微小領域の元 素の 2 次元マッピングも可能である。

(分析例1)樹脂中異物分析へのアプローチ -3層フィルム中間層への微 少異物の混入(東レリサーチセンター、TRCNews、2016 年 10 月号)

https://www.toray-research.co.jp/technical-info/trcnews/

3層フィルムの内部(中間層)に直径 5μm 程度の異物が存在していた。ミ クロトームで、微少異物の断面切削を行い、断面から直接顕微ラマンで測定 した。さらに異物中の元素を特定するため SEM-EDX 測定を行った。

XPS(資料 1-⑨)

・XPS は無機物の表面分析法の一つで、元素分析の他、化学結合状態分析が 可能である

(分析例 1)製品上の白色異物の分析(住化分析センター、テクニカルニュー ス、TN002)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

白色異物の XPS で、ワイドスキャンスペクトルをとったところ、酸素と窒 素が検出された。

(19)

19 TOF-SIMS

(資料 1-

⑪)

・TOF-SIMS は表面分析法の一つで、有機物、無機物の両方に適用できる (分析例 1)PVC フィルム中フィッシュアイの分析(住化分析センター、テクニ カルニュース、TN151)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

PVC に生じたフィッシュアイの断面をミクロトームで作成し、TOF-SIMS 分 析を行った。

(分析例 2)ウォーターマークの定性分析(住化分析センター、テクニカルニ ュース、TN405)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

樹脂に水溶液を滴下・乾燥してウォータ-マークを発生させ、TOF-SIMS で 測定した。

3.7 界面の計測

高分子は、しばしば混合されるか張り合わせて用いられ、また高分子同士だけでなく金属 や無機物と張り合わされることも多い。さらには、強度や機能性を付加するために、ガラス 繊維や炭素繊維等の充填物(フィラー)が混ぜられる場合がある。このような材料では、界 面が製品の性能に関与し、また劣化の状態が界面に反映されることも多い。界面の評価には、

顕微鏡を用いる観察的手法と分光学的手法があるが、ナノレベルでの分析になるため、高価 な設備が必要になる場合や特殊な前処理・解析が必要になる場合があり、この分野での研究 開発が今も進められている段階である。

下記の表には、いくつかの界面測定法を示すが、その他にも、中性子ビームを用いて界面 の厚さを測定する中性子反射率法、陽電子の消滅時間を測定して高分子の自由体積のサイ ズを推定する陽電子消滅法などもある。

分析機器 分析の実際 TEM(資料

1-⑲)

・エネルギーフィルターTEM(EF-TEM)により、高分子界面の局所構造を解析 できる

(分析例 1)電子顕微鏡による高分子界面と接着に関する研究(堀内伸ら:

高分子論文集、65(1)、58(2008))

TEM 解説は次のサイトに詳しい。

https://staff.aist.go.jp/s.horiuchi/

エネルギーフィルターを TEM に搭載し、非弾性散乱電子を分光することが できる。非弾性散乱電子は相互作用によりエネルギーを損失する特徴があり、

TEM 像が与える 2 次元イメージに加え、損失エネルギー情報を与え、元素組

(20)

20

成や化学結合状態に関する情報を得ることができる。

AFM(資料 1-⑳)

・原子間力顕微鏡では、表面の形状、表面物性の違いを観察できる

(分析例 1)PP とスチレン-エチレン・ブチレン-スチレントリブロック共重 合体(SEBS)の張り合わせ試料の界面付近を観察(参考文献 1、p.578)

平滑にした界面を探針でタッピングすることにより、粘弾性や粘着性の違 いによる探針の位相の変化を測定する。

エ リ プ ソ メトリー

・エリプソメトリーは膜厚を測定する装置で、異種高分子界面の厚さ測定に 応用できる

(分析例 1)PMMA とスチレン・アクリロニトリルランダム共重合体(SAN)の 張り合わせ試料の界面厚みの評価(参考文献 1、p.574)

エリプソメトリーは、平坦な膜表面に斜めから偏光した光を入射し、反射 光の偏光を波長ごとに測定し、光学モデルとシミュレーションから、膜厚や 屈折利率・消衰係数を求める方法。

この手法を PMMA と SAN を貼り合わせた試料に適用したところ、高分子の 相溶性が悪いほど、界面厚みが小さくなる。

エリプソメトリーの詳細な説明は、下記の堀場製作所のサイト等で見る事 ができる。分光エリプソメトリーでは数 nm の膜厚の測定が可能である。

https://www.horiba.com/jp/scientific/products-jp/ellipsometers/thin- film-metrology/

FT-IR

(資料 1-

⑦、⑫)

・FT-IR では、界面における化学結合状態の評価ができる

(分析例 1)異種材料の接着-界面の分析評価-(東レリサーチセンター、

TRCnews、2014 年 5 月号 No.9)

https://www.toray-research.co.jp/technical-info/trcnews/back.html 2液型エポキシ樹脂を2液混合し、被着材のポリアミド上に塗布し、120℃

1 時間加熱し試料とする。接着剤側から被着材へ乾式研磨しながら、FT-IR- ATR 法で計測する。

(分析例 2)複合材料中の界面相互作用の可視化(令和元年度 産総研材料・

化学シンポジウム ポスター p-7、および Watanabe, R. et al.: Compos.

Appl. Sci. Manuf., 128 105658 (2020))

顕微赤外分光法で得られたスペクトルデータをデータマイニングし、界面 相互作用を可視化した。

Disrelation スペクトルを定義し(詳細は文献参照)、そのスペクトル強度 を計算する。違う波長での変化のパターンが異なっているとき、その強度は

(21)

21

大きくなる。ポリプロピレンと相溶化剤の無水マレイン酸およびシリカを混 ぜてコンポジットを作成し、顕微 FTIR でスペクトル測定する。1715cm-1と 1695cm-1の波数で Disrelation mapping を行うと、シリカ表面の可視化がで きる。無水マレイン酸由来の C=O の伸縮が、シリカのシラーノール基との水 素結合により影響を受け、その部分が強調されたためである。

4.添加剤についての分析

添加剤の種類は、資料 3 に示したように、主に安定剤と機能付与剤に分けられ、安定剤は 熱や光による劣化(主に酸化劣化であるが、無酸素化での熱的劣化もある)を防ぐために加 えられ、機能付与剤は可塑剤や透明化剤のように、加工時や使用時における機能性をあげる ために添加される。塩化ビニルについては、添加物の配合が多く、独自の添加剤が販売され ている。販売メーカーは、BASF や ADEKA 等多数あるが、構造式や融点などが公開されてい ることが多いので、分析時の参考になる。

メーカーに関するサイト:

添加剤ドットコム(豊通ケミプラス運営)https://www.tenkazai.com/index.html ADEKA サイト https://www.adeka.co.jp/chemical/products/plastic/

総説:東レリサーチセンター、TRCNews2016 年 10 月号 03 https://www.toray-research.co.jp/technical-info/trcnews/

三輪怜史:ぶんせき、2018(7)、p.290.

分析機器 分析の実際 熱 分 解

GC-MS

(資料 1-

⑤)

・熱分解装置を付属した GC-MS

発生ガス分析法により、熱分解の揮発成分を GC-MS に導入し、高分子添加 剤ライブラリで定性分析する。

(分析例1)加硫ゴム中添加剤の分析(島津製作所、カタログ・技術資料/

技術資料/GCMS/テクニカルレポート、C146-0389)

https://www.an.shimadzu.co.jp/gcms/support/lib/tchrep.htm

島津社の高分子添加剤ライブラリ、フロンティア・ラボ社の F-Search を用 いることで、架橋剤、老化防止剤数種が同定された。

(分析例 2)ポリエチレン中添加物の分析(アジレントテクノロジー、アプリ ケーション、MS-200705-001、HP からアプリケーション No で検索できる)

https://www.chem-agilent.com/

熱分解プロファイルを、ポリエチレン自身の熱分解による影響を受けない よう設定することで、含まれる添加剤を確認することができた。

(22)

22 抽 出 →

GC-MS 、 LC-MS 等

(資料 1-

⑤)

・添加剤を抽出して、GC-MS あるいは LC-MS で定性・定量する

添加剤を定性・定量する場合、ソックスレー抽出や超音波抽出、あるいは 溶解/再沈殿法で抽出し、それから質量分析にかける方法がある。溶解/再 沈殿法は回収率が高いが、溶媒に溶けないポリマーもあるので、適用できな い場合もある。

・ポリマーの良溶媒例(貧溶媒には、ヘキサン、メタノールが使われる)

ポリカーボネート:THF、クロロホルム

ポリプロピレン、ポリエチレン:熱デカリン、熱トルエン、熱キシレン ポリスチレン:クロロホルム、THF、MEK

ポリアミド:HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)、ギ酸 ポリアクリル酸:メタノール

(分析例 1)プラスチック添加剤の分析(大阪産業技術研究所)

https://orist.jp/kouhou/technicalsheet_izumi/ の 18-22

ポリカーボネートを THF/メタノール系で添加剤を抽出し、GC-MS を行った。

その結果、重合禁止剤、酸化防止剤、熱酸化防止剤が同定された。

ポリプロピレンをトルエンに 110℃で溶解し、その後 60℃まで冷却しメタ ノールを加えて再沈殿させた。上澄み液を HPLC で分析し、酸化防止剤 2 種、

加工安定剤の熱分解生成物、熱酸化防止剤が検出された。

(分析例 2)高分子中の添加剤の分析(住化分析センター、テクニカルニュー ス、TN098)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

ポリプロピレンをソックスレー抽出し、それの FD-MS(電界脱離質量分析:

ソフトイオン化法の一つ)スペクトルをとり、酸化防止剤 3 種(フェノール 系、イオウ系、リン系)を検出した。

(分析例 3)ポリ塩化ビニル中の添加剤の一斉分析(河村葉子、他:食衛誌、

40(3), 189 (1999))

試料:ポリ塩化ビニル原体に、添加剤をアセトンに溶かし含浸させたもの 抽出:シクロヘキサン:2-プロパノール液(1:1)

GC-MS: HP 社製、DB-1 カラム、50-300℃、20℃/min

LC ー UV: TSKgel ODS-80Ts、アセトニトリル/水グラジエント、225nm 酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤 50 種の添加剤の回収率は 53.2~118%、

可塑剤 34 種の回収率は 69.3~119.5%、およびその他 5 種の添加剤の回収率

(23)

23

は 90~116%だった。紫外に吸収を持つ物質では、LC-UV の方が GC-MS よりも 感度、定量性が高い。

TOF-SIMS

(資料 1-

⑪)

・飛行時間型二次イオン質量分析法により、表面の添加物を測定

(分析例 1)ラップフィルム表面の添加剤分析(住化分析センター、テクニカ ルニュース、TN152)

https://www.scas.co.jp/technical-informations/technical-news/

TOF-SIMS スペクトルにより、フラグメントイオンや標準スペクトルから、

防曇剤の定性を行った。また存在量を比較し、滑り性との関係を調べた。(3.4 の TOF-SIMS の項にも引用)

(分析例 2)包装材料に用いられるプラスチックの添加剤分析技術(馬場園 和孝:工業材料、64(10)、59(2016))

青色食品用多層フィルムを溶媒抽出し、FD-MS により、少なくとも 1 種の フェノール系酸化防止剤と 2 種のリン系酸化防止剤が確認され、さらに防曇 剤、帯電防止剤、滑剤、顔料のフタロシアニン銅も確認された。

このフィルムを GCIB でスパッタエッチングしながら、TOF-SIMS で表面分 析し、正 2 次イオンの 3 次元マッピングを行ったところ、PE/(PE+PA6 混合 層)/PE/PA6 の構造が確認された。

(24)

24 資料 1 材料分析機器

材料分析に関わる分析機器を下記の分類で整理し、それぞれの分析機器の概略を表とし た。

参考資料:西岡利勝・寶﨑達也 共編:「実用プラスチック分析」、オーム社、2011.

分類 分析機器

組成分析 ①融合結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置

②蛍光 X 線分析装置(XRF)

③エネルギー分散型 X 線分析装置(EDX)

④電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)

⑤ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)、液体クロマトグラフ質 量分析計(LC-MS)

分子量分布 ⑥ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC/SEC)

表面分析 ⑦赤外分光光度計 ATR 法(FT-IR ATR 法)

⑧グロー放電発光分析装置(GD-OES)

⑨X 線光電子分光装置(XPS/ESCA)

⑩オージェ電子分光装置(AES)

⑪飛行時間型 2 次イオン質量分析計(TOF-SIMS)

化学構造解析 ⑫赤外分光光度計(FT-IR)

⑬ラマン分光光度計

⑭核磁気共鳴吸収装置(NMR)

⑮マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装 置(MALDI TOF-MS)

結晶性 ⑯X 線回折装置(XRD)

⑰小角 X 線散乱法(SAXS)

形態観察 ⑱X 線 CT

⑲走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)

⑳原子間力顕微鏡(AFM)

㉑触針式表面形状測定器 熱的性質 ㉒示差走査型熱量計(DSC)、

㉓熱重量示差熱同時測定装置(TG-DTA)

熱伝導測定装置 電気的特性 抵抗率計

劣化測定 ㉔化学発光測定装置

(25)

25

㉕電子スピン共鳴装置(ESR)

加速劣化試験装置 レオロジー特性 ㉖粘弾性測定装置 機械的特性 万能試験機

摩耗試験機 衝撃試験機

(26)

26 各分析機器の概略

(中国地域各県の開放機器については、情報が最新でない場合がありますので、開放機器 DB をご覧頂くか、各県の公設研究機関までお問い合わせください)

機器名 ① 誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置 分類 組成分析

測定項目 元素分析(多元素同時分析)

測定原理 プラズマ中で試料をイオン化し、励起状態から基底状態に戻るときの元素 の波長、強度を測定することで、元素の同定と定量を行う。

応用例 プラスチックを酸分解して試料とし、含まれる元素分析を行う。固体のま まレーザーアブレーションで微細化し、プラズマに導入して、元素分析を 行う。

開放機器

(中国地域)

広島県、山口県、鳥取県、島根県

備考 イオン化した元素を質量分析計で計測する ICP-MS もあり、ppt レベルの 多元素分析が可能。

機器名 ② 蛍光 X 線分析装置(XRF)

分類 組成分析 測定項目 元素分析

測定原理 試料に X 線を放射した場合、元素固有の蛍光 X 線が発生する。それを波長 分散型分光器(WDX)かエネルギー分散型分光器(EDX)により検出し、定 性、定量を行う。

応用例 前処理なく、プラスチック中の金属元素を同時分析できる。添加物、残留 触媒、不純物の定性や定量。

開放機器

(中国地域)

岡山県、広島県、山口県、鳥取県、島根県

備考

(27)

27

機器名 ③ エネルギー分散型 X 線分析装置(EDX)

分類 組成分析

測定項目 元素分析。SEM、TEM に装着すれば、微小領域の元素分析ができる。

測定原理 電子を物質に照射した際に放出される特性 X 線(蛍光 X 線)を測定し、元 素分析と定量分析を行う。

応用例 異物の分析 開放機器

(中国地域)

岡山県(SEM-EDX)、広島県(SEM-EDX)、山口県(SEM-EDX)、鳥取県(SEM- EDX)、島根県

備考 波長分散型 X 線分光器(WDX)は、エネルギー分解能がよい。

機器名 ④ 電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)

分類 組成分析 測定項目 元素分析

測定原理 電子線を物質に照射した際に放出される特性 X 線を WDX で測定し、元素分 析と定量分析を行う。

応用例 表面の元素分析(1~5μm)マッピング

SEM-EDX は観察主体で、EPMA は元素分析主体。

開放機器

(中国地域)

岡山県

備考 X 線マイクロアナライザーとも言う

機器名 ⑤ ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)

液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS)

分類 組成分析

測定項目 対象物に含まれる物質の組成・同定

測定原理 クロマトグラフィーで分離された物質のマススペクトルを測定し、物質の 同定を行う。

応用例 添加剤の同定(揮発性物質は GC、不揮発性物質は LC)、ブリードの同定 開放機器

(中国地域)

広島県、山口県、鳥取県、島根県(LC-MS)

熱分解 GC-MS は、広島県、山口県、鳥取県にあり。

備考 熱分解装置により、添加物、ポリマー本体を分け、それぞれ分析できる。

パイログラムの GC-MS データベースによりポリマーの識別が可能。

(28)

28

機器名 ⑥ ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)

分類 分子量分布 測定項目 分子量分布

測定原理 分子サイズによってゲル充填カラムでの溶出時間が異なることから、分子 量を推測する。

応用例 樹脂を溶媒に溶解してから、GPC を行う。

開放機器

(中国地域)

岡山県、山口県(高温 GPC)

備考

機器名 ⑦ フーリエ変換赤外分光光度計全反射法(FT-IR ATR 法)

分類 表面分析

測定項目 樹脂の官能基、分岐などの不規則結合、共重合連鎖、結晶化度。添加物の 同定。厚いサンプルや固体のコーティングの分析。

測定原理 試料を高屈折率のプリズムに密着させ入射角を臨界角より大きくとると、

試料とプリズム間で全反射が起きる。このとき、界面で光は試料側に少し だけもぐりこんで反射されてくるので、表面の吸収スペクトルが測定でき る。

応用例 プラスチックの識別(公開データベースあり)。劣化による構造変化。添 加剤の分析。ブリード、着色物の分析。

開放機器

(中国地域)

岡山県(顕微 IR)、広島県(顕微 IR)、山口県(顕微 IR)、鳥取県(顕微 IR)、島根県(顕微 IR)

備考 顕微 FT-IR により、μm サイズの異物分析などが可能。

機器名 ⑧ グロー放電発光分析装置(GD-OES)

分類 表面分析

測定項目 深さ方向の元素濃度分布(深さ数 nm~100μm)

測定原理 グロー放電領域内で、導電性・非導電性皮膜を高周波スパッタリングし、

スパッタされた原子の Ar プラズマ内における発光を分光測定する。

応用例 薄膜やめっきの表面分析に使われ、特に濃度変化の大きい界面近傍の分析 に有効。深さ方向の分析が迅速。

開放機器

(中国地域)

岡山県、広島県、山口県、鳥取県

備考

(29)

29

機器名 ⑨ X 線光電子分光分析装置(XPS/ESCA)

分類 表面分析

測定項目 表面の元素組成、元素の化学状態の情報

測定原理 試料に X 線を放射し、光電効果により放射される電子の運動エネルギーを 測定し、原子の同定と結合状態を推測する。

応用例 広域スペクトル測定により、表面に存在する元素を知る。特定元素の周辺 エネルギー領域を高エネルギー分解能で測定することで、化学シフトから 結合状態を推定する。

開放機器

(中国地域)

岡山県、島根県

備考

機器名 ⑩ オージェ電子分光分析装置(AES)

分類 表面分析

測定項目 材料表面の元素分析(深さ 0.3~5nm)、エッチングにより深さ方向の分布 測定も可能。

測定原理 オージェ電子(X 線や電子で内殻電子を放出した後、外殻から電子が内殻 軌道に遷移する時に、そのエネルギーを得て放出される電子)の運動エネ ルギーを測定し、表面の元素の定性、定量を行う。

応用例 固体表面の清浄度、組成、吸着種、薄膜等の分析 開放機器

(中国地域)

岡山県、山口県

備考 走査オージェ電子顕微鏡(SAM)が主流

機器名 ⑪ 飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)

分類 表面分析

測定項目 高分子の同定、構造解析、添加物の同定

測定原理 1 次イオンを試料に照射し、スパッタリングにより放出された 2 次イオン を質量分析し、固体表面の元素組成や化学構造情報を得る。

応用例 高分子の種類をスペクトルのデータベースから得る。ブリードアウトした 物質の評価や分布測定。

開放機器

(中国地域)

なし

備考

(30)

30

機器名 ⑫ フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)

分類 化学構造解析

測定項目 樹脂の官能基、分岐などの不規則結合、共重合連鎖、結晶化度。添加物の 同定。

測定原理 分子はその振動や回転運動に基づく固有の赤外吸収スペクトルを有し、そ の測定により構造を同定する。

応用例 プラスチックの識別(公開データベースあり)。劣化による構造変化。添 加剤の分析。ブリード、着色物の分析。

開放機器

(中国地域)

岡山県(顕微 IR)、広島県(顕微 IR)、鳥取県(顕微 IR)、島根県(顕微 IR)

備考 顕微 FT-IR により、μm サイズの異物分析などが可能。

機器名 ⑬ ラマン分光光度計 分類 化学構造解析

測定項目 化学結合の種類とその変化、化学結合の相対的濃度、結晶性、結晶格子の 歪み

測定原理 光照射した時、波長がわずかに異なるラマン散乱光が出る。ラマン散乱の 波長差が物質の分子振動エネルギーに相当する。物質の分子構造、結晶構 造を評価できる。

応用例 高分子の配向解析(偏光ラマンスペクトル)、バンドの強度や半値幅から 結晶性を評価

開放機器

(中国地域)

岡山県、山口県、鳥取県(顕微ラマン)、島根県(顕微ラマン)

備考 顕微ラマンでは 1μm サイズの測定可能

(31)

31 機器名 ⑭ 核磁気共鳴吸収装置(NMR)

分類 化学構造解析 測定項目 ポリマーの詳細識別

測定原理 原子核を強力な磁場に置くと、核スピンのエネルギー準位は分裂し、エネ ルギー差に相当する電磁波に共鳴する。周囲の磁場の違いによる共鳴周波 数の変化(化学シフト)、隣接する核との相互作用によるシグナルの分裂 から、化学構造情報を得る。

応用例 ポリプロピレンの立体規則性、側鎖や末端基の構造、ジエン系ポリマーの cis,trans の割合等。

開放機器

(中国地域)

鳥取県、岡山県(パルス NMR)

備考 パルス NMR では、緩和時間から分子運動性が評価でき、材料劣化の情報を 得ることができる。

機器名 ⑮ マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置

(MALDI TOF-MS)

分類 化学構造解析

測定項目 分子量の大きい高分子の質量分析

測定原理 イオン化されやすいマトリックスと試料を混ぜてレーザーを照射すると、

高分子でも分解を抑えてイオン化することができる。生じたイオンは飛行 時間型質量分析計で計測する。

応用例 ポリマーの分子量分布、周期的なピークからモノマーの構造あるいは共重 合体の構造、残基の化学構造

開放機器

(中国地域)

なし

備考

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