偏光の測定
目次
1 直線偏光の測定 1
1.1 道具立て . . . 1 1.2 ブリュースタ角 . . . 3 1.3 旋光度 . . . 3
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直線偏光の測定1.1
道具立て基本的な偏光測定を行うための道具立てと各器具の特性を説明する。
1.1.1 ホルダー類
マグネットベースは磁石によって鉄製の台に吸着するが,レバーを動かすことによって着脱ができるように なっている。レバーを操作するときは必ず両手を使うこと。さもなければ,器具が倒れて破損する可能性が 高い。
ロッドスタンドは正確にはめ合わされた棒とパイプである。止めネジをきつく締めすぎてロッドに傷が付く と動かなくなる。ネジをゆるめる際,重力によって落下しそうな物には手を添えるなどの注意が必要。
回転ホルダーはネジによって回転をロックすることができるようになっているが,ロックしたまま無理に回 そうとすると,摺動部が傷ついて使用不能になるので注意すること。角度目盛は2つの状態の間の相対的な角 度を測るのに役立つだけである。角度目盛に付いていることがあるバーニヤは10分割ではないので間違えな いように。
1.1.2 半導体レーザー
可視レーザーダイオードをレンズや駆動回路と組み合わせ,回転ホルダーに取り付けて偏光の向きを変える ことができるようにしてある。半導体レーザーの出力光は直線偏光に近いが,より純粋な偏光を得るためポラ ロイド偏光板がいっしょに取り付けてある。偏光の向きはポラロイド偏光板の長辺の向きに等しい。回転ホル ダーの角度目盛り0で,偏光の向きは水平に近いが厳密には違う。
出力光の強さは数ミリワット以下であり,レーザービームが皮膚に当たっても熱さは感じないが,直接目に 入ると重大なダメージを及ぼすことも考えられるので注意。
使い終わったら電源を切るのを忘れないこと。 電池を電源にしている場合は,電圧が5Vの上下2.5%以 1
内に入るように調節してある。 その範囲を外れるのは電池が消耗していることを示す。 レーザー光の波長は
635nmでヘリウムネオンレーザーとほとんど同じである。
1.1.3 検光子,偏光フィルター
グラントムソン偏光プリズムまたはポラロイド偏光板を回転ホルダーに取り付けたもの。グラントムソン偏 光プリズムはカルサイト(天然の弗化カルシウムの結晶)で作られていて,ある向きの直線偏光は表面での反 射などによる小さなロスを除いてそのまま通すが,それと直交する向きの直線偏光は横にはねてしまってほと んど通さない。このときいろいろな原因によって生じる漏れ光は10−5程度しかない。この値を消光比という。
ポラロイド偏光板は分子が特定の方向に配向した高分子フィルムで,ある向きの直線偏光を吸収して1/1000 以下に弱めるが,それと直交する向きの直線偏光は50%程度通す。
偏光フィルターの消光比は微妙な傷や汚れによって悪化するので,手などで表面に触れることは厳禁である し,使用しないときはカバーをかけておく。汚れを取り除く場合は,傷がついたり汚れが残ったりすることが 無い方法でおこなわなければならない。
1.1.4 光センサー
resister silicon photodiode battery
(1.5V)
voltmeter
+-
light
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 2 4 6 8 10
ïRlå
ïRl¬
d³~º(V)
õx
光の強さを測る光センサーにはシリコンフォトダイオードを使う。シリコンフォトダイオードの光電流は入 射光強度に比例しているので光電流を測れば光強度がわかる。フォトダイオードの感度は波長によって異なる が,635 nmでは約0.4 A/Wである。
光電流を抵抗器に流してその電圧降下を電圧計で測るようにしている。電流計よりも電圧計の方が高精度が 得やすいからである。この場合,図中のグラフのように抵抗によって感度が異なる。電圧降下が約1.9Vを越
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えると,ダイオードに順方向電流が光電流と逆方向に流れ,飽和が起きる。したがって,光が強い場合は飽和 を防ぐために抵抗を小さくする必要がある。逆に光が弱くて電圧計の感度が不足し相対誤差が増える場合は抵 抗を大きくする。抵抗器には抵抗値と精度がカラーコードで表示してある。
フォトダイオードの中は窓を通して見ることができる。 その中の四角い黒い部分がフォトダイオード素子 の本体であり,レーザー光の全パワーを測るために光ビームの全体が常にこの部分の中央にあたるようにしな ければならない。レーザーと光センサーをむやみに離すとビームがセンサーからそれ易いので注意。
光センサーはレーザー光以外の光にも影響を受けるので,その影響を除く工夫も必要である。 測定時には 外光を減らすために穴の開いた蓋をセンサーに付けると良い。
1.2
ブリュースタ角1.2.1 反射の法則
光はガラス板の表と裏の両面で反射しどちらの反射率も同じである。反射率は入射角と偏光の向きおよびガ ラスの屈折率に依存する。屈折率が大きいほど反射率が大きい。また,偏光の向きが入射面に垂直な光の方が 平行な光よりも反射率が大きい。入射面とはガラス表面の法線と入射光線とを含む平面であり,入射角とはガ ラス表面の法線と入射光線との間の角である。反射角は入射角に等しい。
1.2.2 ブリュースターの法則
入射面に平行な偏光を持つ入射光はp偏光という。p偏光に対しては反射率がゼロにるような入射角があ る。それをブリュースター角という。ブリュースター角の正接(tan)は相対屈折率に等しい。反射光が消える には,入射角がブリュースター角になっていることと入射光の偏光が入射面に平行であることの両方の条件が 成り立っていなければならない。この現象を利用すれば,直線偏光の偏光方向はガラス板1枚でわかる。
任意の偏光を持った光をブリュースター角で入射させると,反射光は入射面に垂直な偏光方向をもった直線 偏光になる。これはs偏光である。
厚さ数mmの透明度と平面度の良いガラス板を,表面が鉛直になるように,回転ホルダーに取り付けてあ り,回転ホルダーを回すことによって入射角を変えることができる。反射光がレーザーに戻るように調整する と,入射角0の基準が決まる。レーザーは回転ホルダーに取り付けてあるので,入射光の偏光の向きはレー ザーを回転することで変えることができる。反射光が消えるのは,白い紙などに反射光をうつしてそれを目視 して確認すれば十分である。ただし,最終的に部屋の照明を落とす必要はある。
異なる材質のガラス板のブリュースター角を測れば,材質による屈折率の違いを検出することができる。
1.3
旋光度1.3.1 円偏光複屈折性
天然の蔗糖溶液や酒石酸溶液は右回り円偏光と左回り円偏光とで屈折率が異なる。これは分子の形状(キラ リティー・対掌性・両手の)に起因するもので光学活性という。この種の物質を化学的に合成すると,2種類 の立体異性体が同じ割合で混ざっているラセミ体ができるが,生物が合成し利用する天然のアミノ酸や糖類は どちらか片方の異性体しかない(ホモキラリティー)。
水晶のような固体結晶でも光学活性をもつものがある。2種類の水晶は右水晶,左水晶という。
ファラデー効果といって,等方性の物質でも磁場をかけることによって光学活性を生じる。これは物質中の
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電子が光によって動くとき,ローレンツ力の影響で右回り円偏光と左回り円偏光の作用が異なることによる。
これは磁場による「ゼーマン分離」である。
右回り円偏光の回転しているベクトルを右回りにαだけ回転させるのと,その位相をαだけ進めるのは同 じである。左回り円偏光では,ベクトルを右回りにαだけ回転させるのと,その位相をαだけ遅らせるのは 同じである。したがって,両方の円偏光のベクトルを右回りにαだけ回転させると,右回り円偏光の左回り円 偏光に対する位相差は2αだけ変化する。偏光状態は位相差で決まるので,逆に,円偏光の位相差が2αだけ 変化すると,ベクトルはαだけ回転することになる。
任意の偏光は右回り円偏光成分と左回り円偏光成分の重ねあわせであらわせるので,右回り円偏光成分の左 回り円偏光成分に対する位相差が2αだけ変化すると,もとの偏光はその向きがαだけ回転する。これを「旋 光角」,あるいは「旋光度」(optical rotation angle)という。
1.3.2 溶液の比旋光度
溶液の旋光度を正確に測るには,同じ容器に濃度0の液を入れた場合を基準とし,それらの溶液を通って出 てきた光の偏光方向の差を旋光度とする。溶液の濃度の違いによる変化だけを測定するのである。
JIS(日本工業規格)によれば,光源に向かい合っている観測者からみて,偏光面が時計回りに回転している 場合を「右旋」といい正の旋光度であらわし,反時計回りの場合を「左旋」といい負の旋光度であらわす。右 旋の分子にはd-を付け,左旋の分子にはl-を付けて呼ぶことが多い。
旋光度を溶液の長さと質量濃度(溶質質量/溶液体積)で割った値を「比旋光度」(specific optical rotatory
power)という*1。比旋光度は長さに無関係,濃度にもほぼ無関係な量で,溶液環境中の溶質の各分子の性質
である*2。旋光度a,溶液の長さx,溶液中の溶質の質量密度ρ(または溶質の質量mと溶液の体積V)によっ て,比旋光度αは次のようにあらわされる。
α= a xρ = aV
xm
慣習により,ρ = 1 g/cm3, x = 10 cm, a = 1° の場合の αを比旋光度の単位として使う。これは 10−2°·m2/kgとなるが,dm(デシメートル)=0.1 mやdag(デカグラム)=10 gを使えば,
10−2°·m2/kg=°·dm2/kg=°·cm2/dag
とも書けるから,°·dm2/kgか°·cm2/dag を使うのがよい。実験データからの計算には次の式が便利。
α/(°·dm2/kg) =α/(°·cm2/dag) = a/°
{x/10 cm} · {ρ/(g/cm3)} = {a/°} · {V/cm3} {x/10 cm} · {m/g} αに測定温度と光の波長を付けて,
α20◦C
546nm = +66.5◦·cm2/dag
のように書きあらわすことも多い。波長の値のかわりに原子発光のスペクトル線名が書かれることもある。た とえば,D はナトリウムのD 線(590nm)のことである。
*1‘specific’は「単位質量あたり」という意味で使われる。
*2 比旋光度の次元は(面積/質量)で,意味合いは,単位質量の溶媒により入射光の偏光状態の変換が起こる衝突の断面積である。
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