正規分解法による固有振動モード別の減衰推定に関する研究 —実構造物振動データを用いた検証— [ PDF
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(2) && (t) は, すなわち,(4)式における x && (t) = x && (t) + Extra (t) ・・・(5) y. 正規分解 人力加振試験データのアンサンブル平均後. && (t) :実構造物の振動試験データ (但し y. 加速度計測データに平均操作を行った波形に対するスペ. の加速度波形を正規分解した。図 3-1,2,3 にそれぞれの. && (t) :モード波のみの組合せによる加速度波形 x. クトルを示す。図 4-1,2,3 は,これをそれぞれ正規分解. Extra (t) :ガイシ,個材振動,人力加振外力等). して求めた1次,2次,3次の一般化座標の波形についての. となり,(4)式は次の様に Extra 成分を含む一般化座標. スペクトルである。 正規分解前後を比較すると1次,2次,. &p& (t) となる。. 3次成分に正規分解できている。. && (t) = T y&& (t) p. = T ( x&& (t) + Extra (t)) = T x&& (t) + T ⋅ Extra (t) ・・・(6). このため(6)式により得られた &p& (t) は,Extra 成分の寄 与を受ける事になり,各モード波形のみを抽出すること が出来ない。また,人力加振試験計測波形は加速度計3 つから得られた加速度波形であるため,高次のモード成. [ 図 3-1:加速計(K2)平均操作後 振幅スペクトル ]. 分も Extra 成分となる。 アンサンブル平均による Extra 成分の影響低減 前節でExtra成分の説明を行ったが,本報告では1つの手 法例として,人力加振試験における以下2つの性質を仮 定することにより,Extra 成分の影響低減を図る。 ・前節で定義した Extra 成分は,ガイシ,送電線,個材. [ 図 3-2:加速計(K4)平均操作後 振幅スペクトル ]. 振動,人力加振時の加振外力,4次モード以上のモード 波形,etc から成るが,それらは全ての人力加振試験デ ータにランダムに含まれていると仮定する。 ・それぞれの振動試験データにおいては,ほぼ1次,2 次もしくは3次のピークが存在するが,加振状態によっ [ 図 3-3:加速計(K6)平均操作後 振幅スペクトル ]. てその状況は異なる。 上記2つの性質を仮定すると,各試験データ(サンプ ル)のアンサンブル平均をとることによって, 1次, 2次, 3次モードの成分が相対的に大きくなり, Extra 成分の 影響を以下の様に少なくすることが出来る。 例えば,1自由度の運動方程式において,ζ:減衰定 数(ζ << 1 ) , ω :固有角振動数, F(t) :期待値ゼロ. [ 図 4-1:正規分解後 1 次モード振幅スペクトル ]. のランダム確率過程外力とすると, && (t) + 2ζ ω x& (t) + ω 2 x(t) = F(t) ・・・(7) x. における一般解は,. 1 − ζ2 ≅ 1. とおくと自由振動解. D(t) と,ランダムダム外力 F(t) による強制振動解 R(t) の和で次の様に表される。. x(t) = Ae −ζ ω t cos( ω t − ϕ ) +. t. ∫0 F (t) h(t. −τ )d τ [ 図 4-2:正規分解後 2 次モード振幅スペクトル ]. = D(t) + R(t) ・・・(8) (ここにh(t) :インパルス応答関数) 応答x(t) の期待値E[x(t)] は次式の様になる。 E[x(t)] = E[D(t)] + E[R(t)] ・・・(9) ここで,外力 F(t) は期待値ゼロとしているため,. E[R (t) ] = となる。4). t. ∫0 E[F (τ) ]h ( t −τ)d τ = 0・・・(10). [ 図 4-3:正規分解後 3 次モード振幅スペクトル ]. 22−2.
(3) 減衰定数の算出. 前節で得られた正規分解後の波形. に,RD 法および自己相関法を直接もしくはAR 近似して用. 10.0%. い減衰波形を算出し,最小二乗法による近似手法で減衰. 9.0%. 次が 150 回,2 次が 350 回,3 次で 600 回であり,RD 法の適 用後には矢澤 6)の報告により,重ね合わせ回数によらず 精度の良い減衰算定が可能である対数減衰率による近似. 8.0%. 減衰定数(%). 定数を求めた。なお,RD 法に関する重ね合わせ回数は 1. 7.0% 6.0% 5.0% 4.0% 3.0%. 2.7%. 2.5%. 2.0%. 手法を最小二乗法による近似と別に用意した。 また,正規. 2.0%. 1.9%. 1.9%. 1.0%. 分解と比較するため,バンドパスフィルターを用いて同. 2.5%. 2.4%. 1.8%. 1.2%. 1.1%. 0.0% 0type 1. 様の手法で減衰の算定を行った。表 1 に減衰算定に用い. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. [ 図 5-1:1 次モード成分 各算定手法による減衰定数 ]. た各手法の組合せを示す。上記した手法を用いて波形ご とに 1 次,2 次,3 次モードの減衰定数を求めた結果を,順. 10.0% 9.0%. に図 5-1,2,3 に示す。 ットした図 5-1,3 によると,減衰定数の各 type ごとの平 均値は 1%∼3%の間に収まっているが,正規分解法を用 いて算定した type1∼4 は,バンドパスフィルターを用い. 減衰定数(%). 8.0%. 1 次,3 次モード成分の減衰定数を算定した結果をプロ. 7.0% 6.0%. 5.7%. 5.0% 4.0%. 4.1% 3.7%. 3.7%. 3.0%. 2.6%. 2.5%. 2.0%. て減衰定数を求めた type5∼8 に比べると,ばらつきが小. 1.9% 1.6%. 1.0%. さくなった。しかし,2 次モード成分の減衰値の算定に関. 0.0%. しては,計測された加速度波形が図 3-1∼3-3 に示される ようにピーク(山)が割れる現象が確認され,全ての手法. 0type. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. [ 図 5-2:2 次モード成分 各算定手法による減衰定数 ]. でばらつきが非常に大きくなった。 また,各モード成分の 減衰定数算定において正規分解法と AR 近似を用いた自. 10.0%. 己相関法を組み合わせた手法では他の算定手法に比べて. 9.0% 8.0%. 減衰定数(%). 非常にばらつきが少なかった。 [ 表 1:減衰算定における各手法の組合せ ] type 各モード摘出の手法 減衰波形の取得方法 減衰曲線の近似手法 type1 対数減衰率 RD法 type2 正規分解法 最小二乗法 自己相関 type3 直接 法 type4 AR法 type5 対数減衰率 RD法 type6 バンドパスフィルター 最小二乗法 自己相関 type7 直接 法 type8 AR法 type9 対数減衰率 人力加振試験による減衰波形 type10 最小二乗法. 7.0% 6.0% 5.0% 4.0% 3.0%. 2.9% 2.4%. 2.0%. 2.7%. 2.7% 2.3%. 2.3% 1.6%. 1.2%. 1.0% 0.0%. type 0. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. [ 図 5-3:3 次モード成分 各算定手法による減衰定数 ]. 4.強風時計測波形への適用. 正規分解. 対象構造物,対象データ 本論では人力加振試験による. 強風時に計測された加速度波形を正規分解した。正規. 計測波形へ正規分解法を適用した例と比較するため,. 分解前の加速度波形の振幅スペクトルを図 6-1,6-2 に,. 1996 年の台風 12 号通過時に計測された加速度波形に正. 正規分解後の波形の振幅スペクトルを図 7-1,7-2 に示す。. 規分解法を適用した。対象波形は塔高 214mの大戸ノ瀬. 固有モードマトリックスに 1 次と 2 次モードの形状を含. 戸海峡横断懸垂型鉄塔において高さ方向 2 点に設置され. ませたために,1次成分の抽出時には2次成分を,2次成分. た加速度計で計測された線路直交方向成分波形を用いた。 の抽出時には 1 次成分を完全にカットできているが,高 また,正規分解法で使用する固有モードマトリックス. 次モード成分(3 次以降)はカット出来ていない。なお,. (Φ )および剛性マトリックス( K )は,先に 3.で述べた. 強風時計測波形に関しては,十分なデータ量が得られな. 手法を用いて求めた。. かったために,人力加振試験への適用で用いた平均操作 を行わなかった。 22−3.
(4) [ 図 6-1:最頂部計測点加速度波形による振幅スペクトル ]. [ 図 7-1:正規分解後 1 次モード振幅スペクトル ]. [ 図 6-2:第 2 計測点加速度波形による振幅スペクトル ]. [ 図 7-2:正規分解後 2 次モード振幅スペクトル ]. 減衰定数の算出 人力加振試験計測波形におけるモード. 5.まとめ 正規分解法を人力加振試験で計測された加速度波形,. 成分の減衰算定と同様の手法を用いて,1 次,2 次モー ド成分の減衰定数を求めた。但し,強風時応答波形に関. および 1996 年の台風 12 号通過時に計測された加速度波. しては,計測された 5 分間の全波形データを用いて減衰. 形に適応した。その際,鉄塔塔体の低次振動以外のガイ. 定数を算出したため求まる減衰定数は 1 手法に対して 1. シや個材振動成分の影響を考慮に入れなければならない. つである。以下表 2 に減衰定数算定の各手法の組合せと. ことを示した。人力加振試験データへ正規分解を適用し. 得られた減衰定数値を示す。表 2 によると,1 次モード. た際には,その成分を低減する算定例を示し,1次,2. 成分の減衰定数は正規分解法を用いた各手法で 3%∼. 次,3次モード成分の抽出を行ったところ,それぞれの. 7%の間,バンドパスフィルターを用いた場合 2.5%∼. 単一モード成分を精度良く抽出することが出来た。 また,. 9%の間でばらついた。2 次モード成分の減衰値は,1 次. 正規分解後に得られた単一モード成分における減衰定数. モード成分の減衰定数算定に比べて小さく, 1%代後半を. を求めたところ,バンドパスフィルターを用いた場合よ. 中心に各手法でばらつきをみせた。また 1 次モード成分. り,正規分解法を用いた方が減衰値算定の際に,小さな. については正規分解法およびバンドパスフィルターを用. ばらつきを示すことを確認した。また強風応答時計測波. いた両手法において単一モードを抽出した後に,自己相. 形に正規分解法を適用した際に,加速度計の設置数の不. 関法と AR 法を組み合わせた手法で減衰を算出した場合. 足から高次モード成分を十分にカット出来なかったため,. (type4,8),他の算定手法で算出した値より大きくなる. 求められた減衰定数に影響が生じた。今後,正規分解法. 現象が確認されたが,2 次モード成分の減衰算定時には. を用いることを想定した計測を行う際には, 加速度計(変. このような傾向は見られなかった。. 位計)の設置数について考慮した上で加振試験もしくは. また,2 次モードについては正規分解後に RD 法と最小. 強風時の計測を行うことが望まれる。. 二乗法による近似および自己相関法を直接あてはめた場 合における減衰定数が非常に小さくなっており,減衰波. 参考文献. 形に若干の高周波数成分が確認され,正規分解時に計測. 1)児玉他;多自由度系時刻歴波形のモード別波形抽出法について, 日本. 点の不足から高次モード成分(3 次モード成分以上)をカ. 建築学会九州支部研究報告,2001. ット出来なかった影響が現れているものと思われる。. 2)高橋;多自由度系モデルの風応答時刻歴波形のモード別波形抽出法に ついて, 九州大学修士課程修了論文,2001. [ 表 2:減衰算定における各手法の組合せ,および減衰定数 ] type type1 type2 type3 type4 type5 type6 type7 type8. 各モード摘出の手 法 正規分解法. バンドパスフィル ター. 減衰波形の取得方法 減衰曲線の 1次モード2次モード 近似手法 減衰定数 減衰定数 対数減衰率 4.16% 1.20% RD法 3.12% 0.29% 最小二乗法 4.75% 自己相関 直接 0.73% 法 6.95% 1.62% AR法 対数減衰率 5.46% 3.31% RD法 2.51% 2.10% 最小二乗法 5.84% 自己相関 直接 1.97% 法 1.95% AR法 9.12%. 3)前田他;多自由度系構造物の時刻歴応答波形のモード別波形抽出法に ついて no.1,2, 日本建築学会大会報告 20083,84,2001 4)田村他;RD 法による構造物のランダム振動時の減衰評価, 日本建築学 会構造系論文報告集 454,1993. 22−4.
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