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中国独立学院における「応用型人材育成モデル」の展開に関する研究
キーワード 人材タイプ、機能分化、応用型人材育成モデル、大学教育の諸側面への満足度、学生認知と期待 教育システム専攻 潘 秋静 1.目次 序章 研究背景と目的 第一節 研究背景、目的、課題、意義 第二節 理論の検討と仮説設定 第三節 研究方法 第一章 中国高等教育システムの拡大と独立学院の位置づ け 第一節 中国における「応用型教育」の発展と独立学院 の位置 第二節 「応用型人材育成」政策への対応 第三節 「応用型人材育成」労働市場の人材ニーズへの 対応 第四節 「応用型人材育成」と機能分化 第二章 独立学院における「人材育成モデル」の展開 第一節 先進国における「応用型人材育成モデル」の国 際的展開 第二節 中国における「応用型人材育成モデル」の経緯 と定義 第三節 独立学院における「応用型人材育成モデル」の 構築 第三章 教育プログラムにおける人材育成モデルの分析 第一節 教育理念と人材育成目標 第二節 専攻の設置 第三節 カリキュラムの設定 第四節 教師組織の構成 第五節 小括 第四章 学生調査から見た人材育成モデルに関する認知、 期待、評価 第一節 機関類型と人材養成タイプの対応 第二節 独立学院の「応用型人材育成モデル」とその効 果に関する学生の評価 第三節 「応用型人材育成モデル」における大学の諸側 面への満足度 第四節 低満足度の項目から見た「応用型人材育成モデ ル」への評価 第五節 総合評価の規定要因分析—一般大学、重点大学と の比較考察 第五章 結論と今後の課題 第一節 結論 第二節 今後の課題 2.概要 序章 1-1 目的と背景 序章では、本研究の目的やその背景、課題、研究の方法 について述べる。中国高等教育は大衆化に伴い、高等教育 は、量的のみならず、大学の目的.システムの制度的構造. 機能、教育内容、人材養成の機能育成される人材の類型に 関する質的な変化も生じている。特に、2008 年の「自立化」 と 2013 年の「独立難」という危機と挑戦を直面している独 立学院は人材育成について、そのミッションを探索し、多 くの研究者は「応用型人材」及び「応用型人材育成モデル」 を提唱している。 本研究は、応用型人材育成を教育目標とした独立学院で は人材育成モデルがどのように展開されているのか、「応用 型人材育成モデル」の実際の達成状況はどうなるのか。ま た、独立学院が「応用型人材」育成において、重点大学、 一般大学及び高等職業学校を比べて、どのように機能して きたのか、学生、教職員への検証することを目的とする。 1-2 仮説の設定 理論検討を行い「国際標準教育分類」(2011 年)を踏まえ て、「学術型人材」、「応用型人材」、「技術型人材」という三 つの人材モデルに焦点をあてる教育タイプに分類された。 中国の大学機関には「研究型大学」と「教育型大学」の機 能分化が生じている。研究型大学は、「211 プログラム」と 「985 プログラム」である「重点大学」を指す。教育型大学 は「一般大学」、「独立学院」及び「高等職業学校」を含ま れる。以上の理論検討を踏まえ、図1に示すように、「独立 学院は「応用型人材」育成において優れている」という仮 説を設定した。2 1-3 研究方法 独立学院における「応用型人材」の育成、「応用型人材育 成モデル」の実行に関する公表データ、文献、政策、資料 収集を行う文献研究を踏まえ、大学管理者、教員、卒業生 にインタビュー調査を行い、教育プログラムにおける「応 用型人材育成モデル」の特徴、卒業生の評価を考察する。 また、学生アンケート調査を行い、在籍学生の立場から、 大学教育諸側面教育に対する満足度、学生の評価から教育 目的の達成状況を明らかにする。それらを通じて、独立学 院における「応用型人材育成モデル」の展開状況及その規 定要因を考察する。サンプルの概要は表1に示す通りであ る 第一章 中国高等教育システムの拡大と独立学院の位置づ け 本章では、まず、中国における「応用型教育」の発展と 定義と独立学院と関連性を検討した。応用型人材とは、事 物の発展規律を社会実践活動の中で応用させることを通し て、社会利益を作る応用型人材である(薛、尹、2009)。20 世紀 90 年代後期に入り、経済の発展と高等教育大衆化によ る、応用型高等教育が新しい時期を迎えた。高等教育の大 衆化及び応用型人材の不足を契機とし、同じ時期で、「独立 学院」が新しいタイプの高等教育機関として登場し、急速 に発展してきた。「独立学院」における「応用型人材育成」 の必要性と適切性について、本研究は「政策への対応」、「労 働市場の人材ニーズへの対応」、「大学機能分化」という三 つの観点を検討した。 第二章 独立学院における「人材育成モデル」の展開 本章では、ドイツのデュアルシステム、アメリカの CBE(competence-based-education)システム、イギリスの サンドイッチシステムといった「応用型人材育成モデル」 の定義、特徴及び効果の考察を通じて、中国における「応 用型人材育成モデル」の構築に参照しうるモデルの特徴を 明らかにした。中国における「応用型人材育成モデル」は 「一定的な標準構造様式と運行方式を通して、知識を基礎 にし、能力を重点にし、サービスを目的にして、知識、能 力、素質三者を協調的に発展させることを重視し、学習、 実践及び職業技術を相互結合させることを実現する」(孔、 2006)。この理論、原則に沿った、独立学院における応用型 人材育成モデル」には主に四つのタイプがある(王、2010)。 より詳細は表 2 に示す通りである。 第三章 教育プログラムにおける人材育成モデルの分析 本章では資料調査と教職員に対するインタビュー調査を 行い、嘉庚学院を事例として独立学院における「応用型人 材育成モデル」の特徴を考察した。簡単に言えば、独立学 院は「労働市場の需要を重視しながら、「学生中心」とする 研究型大学 重点大学 一般大学 独立学院 学術型人材 技能型人材 本科教育 マス教育本科教育 専科教育 図1 人材育成において機関別機能 教育型大学 高等職業学校 応用型人材
大衆化教育
エリート教育
一年生 二年生 三年生 四年生
嘉庚学院 地方
厦門大学
誠毅学院 地方
集美大学
一般大学 集美大学 地方
なし
73
21
57
2
153 76.5%
重点大学 厦門大学 教育部
なし
56
77
42
5
180 90.0%
合計
217
213
171
60
661 82.6%
サンプル
表1 サンプルの概要と回収状況
学年
回収数 回収率
独立学院
88
115
72
53 328 82.0%
機関
所属
母体大学
表2 独立学院における「応用型人材育成モデル」 類型 タイプ1 タイプ2 タイプ3 タイプ4 3+1 2+2 1+2+1 3+1、2+2 特徴 最初の3年間は 校内で理論知 識と専門知識 を勉強する; 最後の1年間は 学生企業への 実習、卒業論 文等特別研究 を行わせる。 校内勉強3年+ 校外実1年 最初の2年間は 汎用知識を勉強 させるために、 は教養課程を設 定する;最後の 2年間は専門課 程と実践課程を 設定する。 大学一年生に、教養課 程を設定し、学生に外 国語、パソコン操作技 能、数学、国語などの 基礎知識を勉強させ る;2年生と3年生の 時、専門知識を習得さ せる;4年生になる と、企業へ実習しなが ら、卒業論文或は特別 研究を完成する。 最初の3年間(或は2 年間)は学生に大学 で理論知識、専門知 識、技能を習得させ る;残り1年間(或 は2年間)は姉妹学 校へ留学させる。卒 業した時、両方の学 位証明書をもらえる プログラムもある。 性質 産学連携教育 産学連携教育 産学連携教育 交換留学教育 適用学校 集美大学誠毅 学学院等 河北工業大学城 市学院等 江南大学太湖学院等 浙江大学城市学院、 厦門大学嘉庚学院等 独立学院における「応用型人材育成モデル」 出典:王 2010「独立学院における「応用型人材育成モデルに関する研究」、各適用学校のホーム ページによる作成した。3 「因材施教」の素質教育を行う」という教育理念を確立し、 「基本技能」、「創造能力」、「実践能力」、「自律能力」を備 える高い総合素質である複合型、応用型人材を育成させる 教育目標を取り組んでいる。その人材育成目標を達成する ために、「産学連携教育」と「交換留学プログラム教育」と いう 2 つの取組みによって、「応用型人材育成モデル」を展 開している。また、教育プログラムにおける「応用型人材 育成モデル」は、主に 3 つの特徴がある。第1に、専攻の 設置における地域の発展と労働市場の需要にむけて応用性 が高い専攻を設置している。第2に、カリキュラムの編成 において、教養教育、専門教育、技能教育という三つの教 育によって構成される。第3には、教員の構成である。独 立学院の教員は、母体大学の教員、独立学院の教員、校外 の企業の管理者や高レベル応用型人材、専門人材により構 成されている。 あわせて、卒業生に対する、大学教育、知識の有用性、 人材タイプという観点から独立学院の人材育成モデルへの 評価について質的調査を行った。結果として、短期利益か ら見れば、専門知識より教養知識、技能の有用性が高くと 評価された。また、卒業生が職場で応用できる実践知識、 技能へのニーズが高いことも分かった。独立学院が「実践、 技能知識の習得」という面で学生のニーズを満足していな い状況も存在していると推測することができた。この結論 は後述第四章で検証された結果と一致している。 第四章 学生調査から見た人材育成モデルに関する認知、 期待、評価 本章では、「学生調査」を通じて、実証的に「応用型人材 育成モデル」に関する学生の認知と期待、評価検討した。 以下の結果をまとめた。 4-1 機関類型と人材育成タイプの対応性と仮説の検証 第一節では、重点大学、一般大学、高等職業学校の人材 育成タイプの比較考察を通じて、独立学院における応用型 人材育成の適切性を考察した。統計的検定を行い、以下四 つの仮説が支持された。 Ha₁:独立学院は「応用型人材」の育成において優れている ○ Hb₀:独立学院は重点大学より、「学術型人材」の育成にお いて優れているとは言えない ○ Hc₀:独立学院は高等職業学校より、「技術型人材」の育成 において優れているとは言えない ○ Hd₀:高等職業学校は独立学院より、「応用型人材」の育成 において優れているとは言えない ○ すなわち、独立学院が「応用型人材」育成において一般 大学、重点大学、高等職業学校より優れているといえる。 また、機関別により育成された人材の特徴について、「学 術性」、「応用性」「技術性」という三つの指標を基づいて構 成された特色プロフィール(三角形)から見れば(図 2)、 独立学院により育成される人材が「低学術性」、「高い応用 性」、「中技術性」という特徴がみられた。 4-2 人材育成モデルの展開実態とその効果 仮説が支持されたことを踏まえ、独立学院の人材育成モ デルの展開実態とその効果を考察した。また学生による総 合評価の規定要因も分析した。 第二節では、「今まで大学で学んだことは、「満足の行く 仕事の獲得」、「長期的キャリアの展望」、「人格の発達」と いう三つの方面に役立つかどうかということを指標として 応用型人材育成」の効果を考察した。結果として、「長期的 キャリアの展望」、「人格の発達」という長期的な収益より、 学生が短期に見える収益を重視していると推察できる。 また、長期的キャリアを展望する上で役立っていること について、出身地において、農村部出身の学生より、都市 部出身の学生が「応用型人材育成モデル」の適切性に対し、 高い評価を持っている。農村部出身の学生が大学で学んだ 知識の有用性への要求とニーズが相対的に高いとみられた。 父親の最終学歴別において、父親の学歴が高いほど、学生 が「長期的キャリアを展望する上で役立っている」と思う 学生が多いとみられた。母親の場合も同じな傾向がみられ た。それは、都市部と農村部の経済的格差と独立学院で高 い学費と関連すると推察される。 第三、四節では「応用型人材育成モデル」における大学
4 教育の諸側面への満足度実態の考察を通じて、学生は「専 門課程の設定」、「教養課程の設定」、「教員の質」、「理論知 識の習得」という四つの項目への満足度が他の項目より高 いと分かった。それは、独立学院における「カリキュラム の設定」と「教師組織の構成」の特徴とは緊密な関係があ ると考える。その一方、不満足である上位 5 位の指標は、「応 用型人材育成モデル」の展開の影響について、カイ二乗検 定を行った結果、有意差が見られた。5 つの満足度の低い項 目の中で、「学生の希望に沿った学習内容」と「人材育成モ デル」の間に、大きな差異が見られた。次は、「職業、実践 知識の習得」であった。 第五節では、一般大学、重点大学との比較考察を通じて、 各大学に関す総合評価の規定要因を分析した。その中で、 共通要因としての「人材育成モデル」に対する満足度が高 いか、低いかということが三つの機関の総合評価に対して も影響を与えていることが分かった。大学ランク、特性、 機能の差異によって人材育成目標及び人材育成モデルも異 なる。重点大学は「研究型人材」育成を目標とする「研究 型人材育成モデル」を展開しているため、総合評価が 73.6% で、一番高いとみられる。独立学院は「応用型人材」育成 を目標とする「応用型人材育成モデル」を展開しているた め、総合評価も 67.9%で高く見られた。その一方、人材育 成において目的が曖昧である一般大学では、総合満足度は 42.1%であり、相対的に低いことが分かった。この比較か ら見れば、「人材育成モデル」が大学の総合評価に重要な役 割を果たしていると推測できる。特に、「応用型人材育成モ デル」の展開は新しい高等教育システムである独立学院の 発展、社会的地位及び卒業生の就職競争力を高めることに 大きく左右していると考える。 第五章 結論と今後の課題 本研究で得られた分析結果として、独立学院は「学術型 人材」、「技術型人材」より、「応用型人材」の育成において 優れているという機能が明らかになった。しかし、「応用型 人材」を教育目標とする「応用型人材育成モデル」の展開 実態と目標の達成状況の考察から見れば、独立学院は一定 的な成果がある。一方、「学生中心」性と「知識、技能の習 得」といった面であまり評価されていなかった。その結果 も卒業生へのインタビュー調査から得られた結果と一致し ている。つまり、「応用型人材育成モデル」に対する学生認 知と学生期待間で、ギャップが存在しているといえよう。 また、独立学院の人材育成の成果、教育目標の達成程度を 高めるために、大学総合評価の規定要因としての人材育成 モデルの限界、不足点を重視しなければならないと考える。 本研究は主に学生の立場から「応用型人材育成モデル」 の教育成果を考察したが、教育成果を測定する最も有効な 方法は企業からの評価、卒業生からの評価と考える。従っ て、卒業後の進路、卒業の状況、卒業生や企業に対する調 査によって、「応用型人材育成モデル」の効果を検討するこ とは、今後の重要な課題である。今後、それを踏まえ、企 業から独立学院の学生に対する能力の要求を考察してみた い。 主要参考文献.資料 国連教育科学文化組織(2011)「国際標準教類」 鮑威(2006)『中国の民営高等教育機関―社会ニーズ との対応―』東信堂 孔繁栄(2006)「応用型大学を作る道」(建设应用型大学之 路)北京大学出版社 薛立軍、尹慶民主編(2009)『応用型人材培養の探索と実践』 (应用型人材培养的探索与实践)知識権利出版社 王析(2010)「独立学院の応用型人材育成モデルに 対する研究」(关于独立学院应用型人才培养模式的研 究)大連理工大学 潘懋元(2006)『応用型人材育成理論と実践』(应用型人才 的培养理论与实践研究)厦門大学出版社 許為民.林偉連(2008)独立学院の発展と運行研究』(独立学 院的发展与运行研究)浙江省出版社 広島大学高等教育研究開発センター編、(2006)『学生から 見た大学教育の質—授業評価からプログラム評価へ』 (OEC 研究シリーズ 18)、広島大学高等教育研究開発 センター