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透明視の時空間特性と手がかり統合モデル [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)透明視の時空間特性と手がかり統合モデル キーワード:透明視,X 型接点,視覚探索,マスキング,時間的統合. 行動システム専攻. 光藤 宏行. 1. はじめに. 2. 視覚情報処理の基本課題は,断片的で多義的な網膜像 から3次元空間構造を復元することである.この課題に どのような処理機構が関わっているかを理論的・実験的に 解明することが視覚研究の目標である.本研究では,透 明視と呼ばれる,同一の視方向に‘ 2つの面が重なって ’ 知覚される現象(Metelli, 1974)をとりあげ,その時空 間特性を調べることにより,透明視の情報処理について の理論モデル ―透明視手がかりの統合モデル― を新 たに提案した.さらに,モデルの妥当性を示す証拠を示 した. 網膜像から得られる透明視手がかりは,刺激属性に基 づいて,X 型接点(Kersten, 1991) ・両眼網膜像差(Aker-. strom & Todd, 1988) ・運動情報(Snowden & Verstraten, 1999)の 3 つに大別できる.本研究では,これらの手がか りに関する従来の知見を整理した後,心理物理学的知見 に基づいて透明視手がかりの統合モデルを提案した.そ の後,視覚探索課題を用いた実験によって,迅速な並列 的処理過程が X 型接点に基づく透明視の生起に関与して いることを示した.この証拠は,統合モデルと理論的に 整合する.さらに視覚マスキング課題を用いた実験によっ て,透明視は迅速な図地分離過程と共通の下位機構をも つことを示した.この結果は,神経系による符号化の時 間的制約を考慮することによって,統合モデルの文脈で うまく解釈できる.. 透明視の手がかり統合モデル 従来,上記の透明視手がかりは個別の文脈で議論され. てきたため,これらの手がかりがどのように統合される かについては明らかではなかった. そこで本研究では, 従来の心理物理学的知見を整理し,X 型接点は他の手が かりより強力な透明視手がかりであると仮定したモデル を提案した.すなわち,このモデルにおいては,複数の 透明視手がかりの中でも X 型接点により大きな重みを与 える重みづけ統合が行われると仮定される.このモデル の利点は,透明視刺激を用いた多くの心理物理学的・現 象学的知見(両眼性奥行き手がかり,明度の知覚的推定, 運動方向決定問題,視覚的注意による物体選択など)を 比較的簡単に説明できるという点である.. 3. 視覚探索課題を用いた検討 透明視手がかりの中で X 型接点がもっとも強力である. とみなす本モデルの主な根拠は,手がかり符 号化の時空 間特性の違いである.しかし,X 型接点に基づく透明視が 迅速であるかどうかは先行研究からは不明確であるため (Watanabe & Cavanagh, 1992; Moore & Brown, 2001), 実験 1-3 では視覚探索課題を用いてこの点を検討した.視 覚探索課題は空間的に並列な処理過程を検討できる手法 であり,X 型接点に基づく透明視が探索成績に影響を及 ぼすことを示せるならば,X 型接点に基づく透明視には. !"#$%&'(). *+#$%&'(). 迅速な処理過程が関与していることの証拠となる.そこ で実験 1-2 では,透明視に基づく形態情報が探索成績を 向上させることができることを示すために,図形内の構. ,. -. 成要素の位置関係によって定義されるターゲットの探索 課題を行い,反応時間と正答率を記録した.その結果,透 明視が起こらない条件では探索は困難であったが,透明 視が起こる条件では探索は容易(効率的)であった(実 験 1,図 2).また実験 2 から,この効果は探索課題に用 いた刺激自体の特性ではなく透明視の効果によるもので. 図 1: A:透明視の生起する同一極性 X 型接点.B:透明 視の生起しない反対極性 X 型接点.. あることが確認された. 実験 3 では透明視に伴う明度情報(知覚的な反射率)が 探索効率を低下させるかどうかを検討するために,図形.

(2) 内の輝度変化で定義されるターゲットの探索課題を行っ. た(図 3).これらの結果から,X 型接点に基づく透明視. た.その結果,輝度変化は容易に探索される特徴である. は視覚探索課題の成績に大きく影響することが明らかと. にも関わらず,その輝度変化が透明面によってもたらされ. なり,X 型接点は視覚情報処理の並列段階で迅速に符号. ていると解釈される刺激布置では探索は非効率的となっ. 化される特徴であることが示された(Mitsudo, 2003).. , IJKLMN,. OJPQMN, ,. 4. マスキング実験 以上に述べた実験の結果から,X 型接点に基づく透明. 視には迅速な処理過程が関与していると考えられるが,視 56789, DEF9GH5, 56789, DEF9GH5, !"&##. 構を有しているのかについてはまだ明らかではない.す. 56789:;,. なわち,X 型接点を含む透明な物体は自然場面では稀で あり,そのような稀な特徴の処理に特化した機構を視覚. B,C,$. 系が有していると考えることは非合理的である. 実験 4-5 ではこの問題を解決するために,透明視は動 $##. %# !#. >?@,1A4. -./0,1234. 56789<=,. !"###. 覚系は‘ なぜ ’そのような手がかりの符号化に特化した機. #. %## !. $. !%. !. $. もつという仮説を提案し,この仮説を実験的に検討した. その計算論的根拠として,輝度の時間的統合(平均化)に よって形成される X 型接点は透明視の生起の X 型接点と. !%. '()*+,. 等しいことが挙げられる.図地分離機構は迅速な処理で. 図 2: 実験 1 の刺激と被験者 6 名の平均反応時間・誤答 率.A:統制条件.B:透明条件.誤差棒は標準誤差を表 す.Mitsudo(2003)を基に作成. & JKLMNO&. 的場面における迅速な図地分離機構と共通の下位機構を. あると考えられるので,図地分離と透明視の下位機構が (部分的に)同一であると考えるならば,X 型接点を迅速 に符号化する処理過程は生態学的に妥当であると考えら れる.実験 4-5 での被験者の課題は,時間的に近接した マスク刺激とともに短時間呈示されるターゲット(図 4). PKQRNO& &. の‘ 位置 ’ (図地分離課題)と‘ 見かけ ’ (同定課題)を報 告することであった.この2つの課題から,時間的統合 によって形成される X 型接点(図 5)が図地分離・透明. !"#$%& '()%*+!& !"#$%& '()%*+!& ,-1.. !"#$%?@&. )44#$% ,-./0# !"&'(#&)"#$%. G&H&I. ,-.... # !"#$% /... 0. ,.. CDE&;F>. 789:&;<=>. !"#$%AB&. .. 0.. ,. /. ,0. ,. /. *+#. 123# !"&'(&)"#$% )44#$%. ,0. 23456&. 図 3: 実験 3 の刺激と被験者 8 名の平均反応時間・誤答 率.A:統制条件.B:透明条件.誤差棒は標準誤差を表. 図 4: 実験 4・5 の刺激例.刺激は図地分離・透明視の静. す.Mitsudo(2003)を基に作成.. 的手がかりを含まない.Mitsudo(in press)を基に作成..

(3) !"#$%&. H;KLMN* !"" *+,-./01&. 1. 45&. 23,-./01&. &'6*+,-. 45&. 1. $#. 1. 7*8*9. 23* 45*. #" %#. '()&. " !"". ターゲット・マスクフレーム間のドットによって定義され ていた.マスクフレームにおける低コントラストのドッ トは実際は他のドットと同じコントラストであり,各フ レームは図地分離・透明視いずれの手がかりも含まない.. Mitsudo(in press)を基に作成.. &'()*+,-. 図 5: 実験 4・5 における‘ 非同期 ’X 型接点.X 型接点は. C;DE*. $#. 1. #". 1. 1. 1 %# ". 視にどのように影響するかを調べることができる. その結果,図地分離・透明視の静的な手がかりは利用 不可能であったにも関わらず,時間的統合によって形成 される X 型接点は図地分離を促進し(逆向マスキングの. &'()*+,-. !"" $#. 1 %#. 明視が起こることが同定課題の結果から明らかとなった. !"". 辺視条件,実験 5:図 7)の両方で確認された.したがっ て,時間的統合によって形成される X 型接点を利用する 迅速な図地分離機構は,透明視と共通の下位機構をもつ ことが示された(Mitsudo, in press).. &'()*+,-. ". が低い場合(中心視条件,実験 4:図 6)と高い場合(周. 1. 1. #". 減少,図 6A・7A),その成績向上が起こるときにのみ透 (図 6B-D・7B-D).この効果はターゲットの網膜偏心度. >;?@AB*. :;<=* 1. $# #". 1. %# " .0$. ./". .%$. %$. /". 0$. FGH*+IJ-. 5. まとめ. 図 6: 実験 4 の結果.A:図地分離課題の被験者 9 名の平 均正答率を,SOA(ターゲット・マスクフレーム間の刺. 本研究で行った実験 1-5 の結果は,X 型接点を迅速に符 号化できる機構が視覚系に存在することを仮定した透明 視手がかりの統合モデルの心理物理学的証拠であり,透 明視における情報統合に関する量的モデルの基礎となる と考えられる.このモデルにおける統合過程を詳細に検 討するためには,複数の透明視手がかりを同時に与えた ときにどちらの手がかりからの見えが優先されるかを定 量的に測定する必要がある.. 激立ち上がり時間差)の関数として示す.SOA が正の場 合は,ターゲットフレームがマスクフレームより時間的 に先行して呈示された.B-D:同定課題の結果.灰色の 領域は透明視が起きている条件を示す.誤差棒は標準誤 差.アステリスクは同一・反対極性条件間で有意差がみ られた条件を表す(p < .05)破線はチャンスレベルを示 す.Mitsudo(in press)を基に作成..

(4) 引用文献. G:JKLM+. '(6+,-.. [1] Akerstrom, R. A., & Todd, J. T. (1988). The per-. !. "##. ception of stereoscopic transparency. Perception & Psychophysics, 44, 421-432.. %$. !. [2] Kersten, D. (1991). Transparency and the coop-. 7+8+1. 23+ 45+. $#. erative computation of scene attributes. In M. S.. &$. Landy, & J. A. Movshon (Eds.), Computational Models of Visual Processing (pp. 209-228). Cam-. #. '()*+,-.. "##. bridge, MA: MIT Press.. B:CD+. [3] Metelli, F. (1974). The perception of transparency.. %$. !. !. $#. !. Scientific American, 230, 90-98.. !. ture and lightness based on phenomenal trans-. &$. parency influences the efficiency of visual search.. #. '()*+,-.. "##. Perception, 32, 53-66.. =:>?@A+. !. %$ $#. !. !. utilizes X-junctions generated by temporal integration in the visual system. Perception. [6] Moore, C. M., & Brown, L. E. (2001). Preconstancy. #. '()*+,-.. %$. [5] Mitsudo, H. (in press). Rapid image-segmentation and perceptual transparency share a process which. &$. "##. [4] Mitsudo, H. (2003). Information regarding struc-. information can influence visual search: The case of. 9:;<+. lightness constancy. Journal of Experimental Psy-. !. chology: Human Perception and Performance, 27,. !. 178-194.. $#. !. &$. tion transparency: making models of motion per-. !. !. ception transparent. Trends in Cognitive Sciences,. # /1%. /0#. /&%. [7] Snowden, R. J., & Verstraten, F. A. J. (1999). Mo-. &%. 0#. 1%. EFG+,HI.. 3, 369-377. [8] Watanabe, T., & Cavanagh, P. (1992). The role. 図 7: 実験 5 の結果.A:図地分離課題の被験者 6 名の平 均正答率を,SOA(ターゲット・マスクフレーム間の刺 激立ち上がり時間差)の関数として示す.SOA が正の場 合は,ターゲットフレームがマスクフレームより時間的 に先行して呈示された.B-D:同定課題の結果.灰色の 領域は透明視が起きている条件を示す.誤差棒は標準誤 差.アステリスクは同一・反対極性条件間で有意差がみ られた条件を表す(p < .05).破線はチャンスレベルを 示す.Mitsudo(in press)を基に作成.. of transparency in perceptual grouping andpattern recognition. Perception, 21, 133-139..

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