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大学教員と附属教員の連携によるESD授業の開発(2)―「滋賀県の調査」,「一膳の割り箸から」の授業開発―-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学教育実践総合研究(Bull. Educ. Res. Teach. Develop. Kagawa Univ.),21:97−106,2010

大学教員と附属教員の連携によるESD授業の開発(2)

―「滋賀県の調査」,「一膳の割り箸から」の授業開発―

伊藤 裕康・北岡  隆

* (社会科教育講座)・(附属坂出中学校) 760−8522 高松市幸町1−1 香川大学教育学部         *762−0037 坂出市青葉町1−7 香川大学教育学部附属坂出中学校

Developing Lessons for ESD in Collaboration with

an Attached School Teacher and University Teacher(2)

Hiroyasu Ito and Takashi Kitaoka

Faculty of Education, Kagawa University, 1-1 Saiwai-cho, Takamatsu 760-8522

Sakaide Junior High School Attached to the Faculty of Education, Kagawa University,

1-7 Aoba-cho, Sakaide 762-0037 要 旨 大学教員と附属教員の連携によるESD授業,「世界自然遺産『屋久島』探訪」(以上 (1)),「滋賀県の調査」,「一膳の割り箸から」の授業開発(以上(2))を報告する。年間を 通した連携による授業開発の継続により,①大学教員と附属教員とが対等に学びあう関係が 構築され,②「意味」ある大学と附属との連携に学部生や院生を媒介とするFD活動の充実 の必要性が示唆され,③ESD授業開発に関わる基本的知見を得られた。 キーワード ESD 水 授業開発 大学教員と附属教員の連携 C・T授業

Ⅰ はじめに

 前稿「大学教員と附属教員の連携によるESD 授業の開発(1)」では,「世界自然遺産『屋久島』 探訪」の授業開発の概要を報告した。本稿では, 続けて「滋賀県の調査」と「一膳の割り箸から」 の授業開発を報告した後,前稿「大学教員と附 属教員の連携によるESD授業の開発(1)」と 合わせてのまとめを行う。

Ⅱ 「滋賀県の調査」開発の概要(2008年度)

1 授業開発に際して 1)平成20年度中学校学習指導要領移行への 対応  現行(平成10年度学習指導要領)の中学校社 会科地理的分野での日本の諸地域学習では,学 校所在地の都道府県を含む2つ又は3つの都道 府県を選択して,学習することになっている。 平成20年度中学校学習指導要領社会科では,日 本をいくつかの地域に区分し,それぞれ7つの 考察の仕方を基にして,地域の特色をとらえさ せることとなった。2008年12月11日付け「小・

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中学校学習指導要領Q&A(教師向け)」では, 次のように述べている。  具体的には,現行の地域的特色をとらえる視点 や方法を身に付けさせる学習から地誌的な学習内 容を中心とした学習に再構成するとともに,世界 の扱いを充実させています。このことをふまえ, 所要の授業時数を確保するとともに,世界や日本 の諸地域学習に関する教材を準備し,地図帳や多 様な資料を十分に活用しながら,指導を行うこと が必要となります。  これを読む限り,たとえば現行の都道府県の 調査に関わる学習をどのように地誌的学習に再 構成していくのかが明確には分からない。移行 期間では現行学習指導要領の趣旨を活かしつ つ,平成20年度学習指導要領のねらいに迫る授 業づくりが求められている。そこで,「持続可 能な社会」という視点をふまえ,現行学習指導 要領社会地理的分野の内容の(2)イ都道府県と, 平成20年度学習指導要領社会地理的分野内容の (2)ウの(エ)環境問題や環境保全を中核とし た考察とをリンクさせる授業構成を考えてみた い。具体的には,滋賀県の調査で,多面的多角 的な思考をさせつつ,「持続可能な社会」とい うテーマに迫る授業を構想した。 2)ESDに関わる地理授業の開発  平成20年度学習指導要領下で求められる「持 続可能な社会を形成する観点」に基づく授業は, ESDを踏まえることが肝要である。「持続可能 な開発」は,一般には「国連環境と開発に関す る世界委員会」(ブルントラント委員会)報告 書で示す「将来世代のニーズを満たす能力を損 なうことなく,今日の世代のニーズを満たすよ うな開発」と捉えられる。世界の人々が人間ら しい生活ができつつ,将来の世代がその能力を 発揮するのに必要な資源があるよう,経済開発 の他,社会開発(健康・教育・福祉の充実,文 化振興,公平性の向上等)や環境保全がバラン スよくなされる開発である。  ESDは,人類が挑戦すべき今後の重大な課 題を主要学習課題とするだけに,傍観者的でな く,自己の課題として考える授業にしたい。し かも,環境,経済,文化,社会の観点から総合 的に扱うことが求められる。平成20年度中学校 学習指導要領解説社会編でも,「世代間の公平, 地域間の公平,男女間の公平,社会的寛容,貧 困削減,環境の保全と回復,天然資源の保全, 公正で平和な社会などが持続可能性の基礎とな るものであり,環境の保全,経済の開発,社会 の発展を調和の下に進めていくことが必要であ ることを理解させる」となっている。先にも述 べたように,地理的分野で「持続可能な社会を 形成する観点」に基づく授業を考える場合,内 容(2)ウ (エ)「環境問題や環境保全を中核 とした考察」が最も該当する。この内容を授業 化する際も,「産業や地域開発の動向,人々の 生活などと関連付け」て考えさせたい。 2 単元「水から考える滋賀県」について 1)ESDの主要課題である「水」の視点から  近畿地方に属する滋賀県は,面積4017㎞2 香川県の約2倍強,人口約137万人で香川県の約 1.3倍である。日本最大の湖琵琶湖(面積670㎞2 を有し,古くから琵琶湖とともに歩んできた県 である。滋賀県内の河川はすべて琵琶湖につな がり,瀬田川をのぞくすべての河川は,周囲の 山地から琵琶湖へとそそぐ河川である。これは 琵琶湖を中心とした滋賀県が周囲をすべて山地 で囲まれた独特の地形であることに起因する。 唯一琵琶湖から流れ出す河川瀬田川は,宇治川, 淀川と名を変え,滋賀,京都,大阪,兵庫,奈 良の2府3県の約1400万人に水道水を供給する。 琵琶湖が京阪神の水瓶と呼ばれる所以である。 近頃はマザーレイクとも呼ばれている。  京阪神の水瓶である琵琶湖の水源開発が, 1950年代後半以降の京阪神地域での工業用水や 生活用水の需要の急増により唱えられるように なった。1956年,京都府・大阪府・兵庫県と建 設省近畿地方整備局などによる琵琶湖総合開発 協議会が結成された。以後,水を供給する側の 滋賀県と下流域の府県との利害が対立する。琵 琶湖大橋の建設をめぐる問題や開発事業が環境 破壊であるとした訴訟が何度か起こり,10年間 で完了予定であった開発事業は,25年目の1997 年にようやく完了した。このように淀川水系上

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流の滋賀県と下流の京都府・大阪府・兵庫県と が対立しながら,水資源の開発と環境保全の問 題が展開されている。この他に,開発と琵琶湖 の水そのものの汚染問題も起きている。琵琶湖 では,1970年代になるとその湖水の汚染が深刻 な課題となった。そこで工場の排水制限はもと より,生活排水の問題の指摘から,合成洗剤の 使用禁止にも取り組み,環境保全に対する主体 的な意識づくりを積極的に進めてきたのが滋賀 県である。上流と下流との対立の歴史をふまえ た現在,大戸川ダム建設をめぐる問題では上流 と下流が対立するのではなく,流域圏として協 力して考えていこうという取り組みが見られ る。さらに,琵琶湖・淀川の水質保全について, 上流から下流までの行政が連携して取り組む事 業も行われている。  ここには「持続可能な社会」の形成につなが る未来を見据えた人々の取り組みがある。滋賀 県の姿を「水」に視点をあて学習することは, これからの社会を担う生徒にとり,地理的内容 (地形や河川の特徴)の学びだけでなく,開発 と環境の問題の学びでも,意義深い学習が可能 であると考えた。 2)現行の小学校社会科との関連など  香川県の小学校で採用されている東京書籍 の「新編新しい社会5下」では,「環境を守る ためにわたしたちができること」という2ペー ジの項目がある。その中で琵琶湖の環境問題が 取り扱われている。学習事項としては琵琶湖疎 水,水質汚染の問題,マザーレイク21計画,淀 川流域が一体となって協力しての取り組みの必 要性などが取り上げられている。なお,小学校 における琵琶湖の環境に関わる学習は,大阪書 籍の教科書「小学社会5下」でも8ページにわ たり取り上げられている。学習事項としては, 琵琶湖のまわりの土地観察,琵琶湖の豊かさや 美しさと抱える問題,琵琶湖の開発と環境保 全,琵琶湖の生態系の問題などが取り上げられ ている。本プランでは東京書籍の学習事項を活 用し,小学校と中学校の発達段階を考慮して, 大阪書籍の学習事項をふまえ,それをさらに深 化・発展させるように心がける。  現行の学習指導要領下で,滋賀県の学習を考 えるならば,水不足という地域問題を抱える香 川県についての学習で生まれた水への問題意識 を滋賀県の学習につなげることが可能である。 香川県では主に利水の視点から学習を進める。 滋賀県の学習では,利水の学習は勿論のこと, 琵琶湖における洪水と人々の闘いの歴史などか ら治水の学習,琵琶湖と地域住民をつなぐ河川 レンジャーの活動などからの親水の学習へと広 げることが可能である。 3)単元「水から考える滋賀県」指導計画 (1M=10分) 学習の流れ 時間 主な学習の内容 滋賀県についての基本 的情報を確認する。 5M ・地形図や地図帳から,滋賀県の位置や琵琶湖の基本的情報,滋賀県の地形,気候を確認し,気づいたことを白地図に記入する。 地形のようすから琵琶 湖の特徴と洪水の歴史 を知る。 5M ・河川に着目し,地形的特徴から多数の河川が流れ込み,流れ出す河川は1 本しかない琵琶湖の特色に気づき,かつて頻繁に洪水が発生し,人々が琵琶 湖の治水対策を行ってきたことを知る。 治水 滋賀県の産業と琵琶湖 の関係を考える。 5M ・滋賀県の稲作中心の農業の特色を他県との比較を通して明らかにし,その理由を考えることで琵琶湖との関係をまとめる。 ・滋賀県の工業の発展と水のつながりを調べ,琵琶湖の工業への寄与の度合 いについてまとめる。 利水 琵琶湖の恵みと生活文 化の関係を考える。 5M ・「フナずし」「えり漁」を題材として,地域に根ざした文化と琵琶湖の関係を考えることで,産業面も含め,地域の生活に根ざした琵琶湖の姿をとらえさ せる。 利水 近畿地方での琵琶湖の 存在について考える。 5M ・琵琶湖総合開発事業について調べ,琵琶湖の水は滋賀県だけの問題でなく,近畿地方全体で考えられてきたことについてまとめる。 治水 利水 親水 淀川流域と琵琶湖周辺 地域との関係について 考える。 5M ・大戸川ダム建設をめぐる問題では,上流と下流が対立するのではなく,流 域圏として協力して考える取組が見られることを知る。さらに,琵琶湖・淀 川の水質保全では,上流から下流までの行政が連携して取り組む事業も行わ れていることを知る。その事例として,河川レンジャーの活動等も取り上 げ,今後の地域社会を形成する上で流域単位での取組の重要性に気づくこと ができる。 親水

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の特色を考えられる。 4)指導案例 ① 目  標  なぜフナ寿司が滋賀県の伝統的郷土料理とし て残ってきたかを考えることを通して,滋賀県 ② 学習指導過程 5)「水から考える滋賀県」の授業開発のその後  滋賀県の調査の学習として「水」をキーワー ドとして,滋賀県の地域性を明らかにすること は十分可能であった。だが,平成20年度学習指 導要領は,幾つかの地域区分を7つの考察の仕 方を基にして,地域的特色を捉えさせる。「水」 をキーワードとして近畿地方の学習を考える 際,本実践のように環境問題や環境保全を中核 とした考察を実践した場合,次の課題が明らか となった。かつて地誌学習として近畿地方を取 り上げていた際,必ず紀伊山地の自然や林業を 学習していたが,この点が抜け落ちてしまう。 これでは近畿地方の姿を捉えさせる学習として は不十分である。そこで,2009年度は「水」と 関わりの深い「緑」もキーワードに加え,紀伊 学習内容及び学習活動 指導上の留意点 1.滋賀県の特産品や郷土料理について知 る。 2.学習課題を設定する。 3.予想する。 4.フナずしについて知り,なぜ独特の食文 化が存在しているのか資料から考える。 5.世界におけるなれずしの分布を知る。 4.えり漁について説明を聞く。 5.滋賀県の伝統文化と琵琶湖の関係をまと める。 ・香川県の特産品や郷土料理と比べて気付きを出させる。 ・拡大写真から気づいた点を発表させ,学習課題設定する。 ・資料から分かること,これまでの学習で知ったことを書か せる。 ・班で意見交換し,まとめる。 ・世界におけるなれずしの分布を紹介し,そこから共通性を 発見させ,国内で滋賀県だけに残ってきたことについて考 えさせる。 ・琵琶湖の恵みの大きさを押さえる(稲作,魚,交通(塩))。 ・写真からえり漁についてどのような漁法か考えさせる。 ・簡単に説明する ・えりに使われる竹,葦も琵琶湖付近の産物であることを確 認する。 ・各自に自分の言葉でまとめさせ,発表させる。その中のキー ワードを用いて琵琶湖の恵みの大きさをおさえる。 フナずしから琵琶湖と人々の暮らしの関係を考えよう。 『12歳から学ぶ滋賀県の歴史』より

小僧寿しHPより

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山地の林業も学習できる単元に組み替え実践し た(生徒のまとめシート参照)。

Ⅲ 「 一 膳 の 割 り 箸 か ら 」 開 発 の 概 要

(2009年度)

 本授業は,日本社会科教育学会第59回研究大 会(香川大会2009.11.22.23)の関連行事として 開発したものである。 1 授業を公開するに際して 1)本題材について  本授業では,環境の視点を基軸にし,割り箸 を生産する中国での状況や東南アジア諸国での 森林伐採の現状を考える。これらの国々のよう に過剰伐採が進む地域が存在する一方,我が国 【生徒のまとめシート(一例)】

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では林業従事者は減少し,手入れが行き届かず 放置されている森林の存在も踏まえ,これらの 現状をどうとらえ,どのような取り組みが必要 なのかを考えることを通して,持続可能な社会 の実現の重要性と課題について理解させようと するものである。  また,ウッドマイレージという新しい概念1) をもとに,我が国や世界各国の森林の現状を見 つめ直し,木材をはじめさまざまな商品(製品) の輸入にともなうエネルギー消費も環境を考え る上での視点の一つとなることについても理解 させたい。  本授業の題材である「割り箸」は,生徒は 勿論,だれにとっても身近なものである。「割 り箸」をめぐっては,以前から,割り箸利用 が,前稿に掲載した表1の「天然資源」や「環 境」と関わる森林破壊になるか否かという論争 がある。森林のさまざまな公益機能が我々の生 活を支えることを知れば,この問題の大切さが わかってくる。中国産割り箸は,皆伐によって 生産されるか,ロシアからの輸入材による生産 であることを考えれば,森林破壊につながると も言える。一方,国産の割り箸は,端材や間伐 材を利用した森林資源の有効活用である。表1 の「貧困削減」に関わる経済格差や貧困の克服 の点でも,割り箸生産で生活の糧を得る人々が おり,地域経済を潤していることから,一定の 貢献をする。本授業では取り上げなかったが, 表1の「文化」の点でも,割り箸利用を伝統的 な文化として評価するか,使い捨て文化の象徴 として評価するかで,割り箸廃止の対応も変わ る。さらに,漂白や防カビ剤の残留が問題視さ れる中国産割り箸は,表1の「健康」に関わる 食の安全とも関わっている。このようにESD の社会・文化,環境,経済の3領域を踏まえな いと本当の割り箸問題は見えてこない。  日本が割り箸を輸入する中国の木材の現状を 知るとともに,日本ほか先進諸国の木材輸入の 現状を知ることから,日本の林業生産のあり方 について考えさせる。日本,中国,マレーシア といった異なる地域の置かれた立場の違い,現 代世代と未来世代といった世代間の立場の違い を踏まえて,持続可能な社会の実現の重要性 と,実現には解決すべき多くの課題があること について実感させるために有効な題材である。 2)大学教員と附属学校教員との連携の視点  本題材においては,香川大学の中国人留学生 の視点を出発点とし,ウッドマイレージ等の新 たな視点を大学教員が提示し,その授業化を附 属教員との協業で行った。附属学校であるとい う利点を活用しながら,授業づくりを協業で行 うことは,大学教員が指導する側で附属教員が 指導を受ける側というのではなく,ともにその 利点を生かしながら,研究実践を進めようとす るものである。大学教員が研究者としての視座 から,研究の方向性を示したり,新たな研究に 示唆を与え,附属教員は実践者として,その授 業化など具体化を図りながら,新しい社会科の 授業の創造を行う。またその実践をもとに,研 究者として大学教員による価値付けや分析に基 づきながら授業の内容を吟味していく。こうし たサイクルの中で研究が進められるといった関 係の構築を目指して実践を続けている。 3)授業対象の生徒について  本日の授業対象となる生徒は,本校3年生24 名(男子12名,女子12名)である。3年生は社 会科の学習において,1・2年生時に地理的分 野,歴史的分野の学習を終えている。また,地 理的分野や公民的分野の学習の中で,環境問題 についての学習を経験している。生徒の中に は,総合的な学習の時間でも環境に視点をあて た学習を行った者もおり,環境問題について一 般的な知識は持っている。  今回の授業にあたり,3年生120名から希望 者を集めており,学習に対して積極的に取り組 む者が多い。 2 授業の実際  授業目標と指導過程を以下に示す。次頁の指 導過程の破線以下を公開し,2時間構成とし た。 1)目標  一膳の割り箸から,我が国の現状と輸入先であ

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る中国の現状を知り,木材に関する新たなウッド マイレージの概念を理解させる。その上で日本の 環境団体,日本に木材を輸出する国の業者,中国 の木材輸入業者の3つの立場から日本の木材 輸入のあり方について話し合うことを通して, 持続可能な社会の実現の重要性とともにその 課題や難しさについて考えることができる。 2)学習指導過程 ※指導案中□は生徒に発見,確認させたい知識 学習内容及び学習活動 指導上の留意点 1 割り箸は環境にやさしいかどうか考える。 2 日本の割り箸の現状を知る。 ○ 国内では間伐材が利用され,森林保護にも役立っている。 ○ 日本の割り箸の輸入は約99%が中国からである。 ○割り箸について知っていることや感じていることな どについても発言させ,学習前の生徒の認識を表出 させておく。 ○国内の間伐材を使った割り箸生産を紹介し,環境  との関係について,感じたことを発表させる。 ○日本国内で消費される割り箸の数から,年々,輸入 に頼る割材が増加していることを確認し,国内の割 り箸生産の状況についても考えさせる。 ○国内産の間伐材を利用した割り箸に対して,現在最 も多く使用されている中国の割り箸の現状について 理解させる。 ○中国人留学生の話から皆伐による森林破壊は,人々 の生活に多くの影響を与えていることに気づかせた い。 ○中国での割り箸のとらえ方について中国人留学生の 話(割り箸について警告する資料の翻訳)を聞き, 日本との違いについて気づかせたい。 ○中国での割り箸生産は間伐ではなく皆伐で行われ, 年間約1700万本の木が切られていることになる。 ○中国の割り箸による森林破壊は全体の内の一部であ ることを確認する。 ○日本の木材輸入先を確認し,日本が世界中から木材 を輸入していることに気づかせる。 ○地図帳の東京を中心とする正距方位図法を見て,日 本の木材輸入先の位置を確認する。 ○ウッドマイレージの概念は,輸入木材の量と産地か ら消費地までの輸送距離を乗じたものとしておさえ る。 ○アメリカ,ドイツ,日本の3か国の木材輸入を比較 し,輸入量ではアメリカの半分以下である日本が ウッドマイレージの換算ではアメリカをはるかにし のぐことから,日本の森林経営の問題点を考えさせ たい。 ○日本の森林面積割合の高さに着目させ,木材を大量 に輸入せずとも,国内で自給可能ではないかという 思いを持たせる。 ○それぞれの立場の生徒に,その置かれている状況な どを示したカードを配布し,考えさせる。 ○教師3名がそれぞれの立場について,状況等につい て,以下の点から考えさせる。 立場1 地球環境問題の解決に向け,豊富な国産材の 使用と森林の保全を目指している。 立場2 日本への輸出によって,生計が成り立ってい ることもあり,輸出が減ることは生活の悪化 を招く。 立場3 中国では大量の木材を必要とし,日本が輸入 を減らせば,木材の安く手に入れたいと考え ている。 ○教師は3つの立場の者が集まった会議(6∼7名× 4グループ)の際に,各グループをまわり,それぞ れの立場の都合や利益に加え,地球全体の視点や持 続可能な社会の実現の視点から考える助言を行う。 ○未来世代へと発信させる形をとることで今後の地球 環境問題への関心を高めたい。 ○持続可能な社会の実現は,多くの国や地域が関わる 問題であり,様々な側面があることに気づかせ,問 題の難しさを投げかけたい。 3 割り箸の輸入先である中国の現状(環境問題) について考える。 (1)中国での黄砂現象や洪水の状況から森林伐採の 状況を知る。 (2)中国の割り箸による森林破壊を警告する資料を 見て考える。 ○皆伐による森林破壊は,環境を破壊し,人々の生 活に重大な影響を与える。 4 日本の木材輸入の現状を知る。 (1)我が国の木材輸入先 (2)日本・アメリカ・ドイツの木材輸入状況から, 他国に比べ日本が遠方より木材を輸入している ことに気づく。 (3)輸入量と輸送距離を踏まえた概念であるウッド マイレージについて知る。 ○ウッドマイレージで考えると日本は世界1位となる。 輸送にかかるエネルギー消費は大きく,環境問題の 一つとなっている。 5 日本では今後どのような対応が必要か考える。 (1)各国の森林面積割合の推移についてのグラフを 見る。 (2)3つの立場から考えさせ,今後の日本の木材生 産のあり方を考える会議を行う。   立場1  日本の環境団体   立場2  伐採企業の労働者(マレーシア)   立場3  中国の木材輸入業者 ①自分の立場で考えをまとめて書く。 ②同じ立場の8∼9名が集まって,自分たちの立場 の考え方をまとめる。 ③それぞれの立場の2名ずつが集まり,日本の木材 輸入量の削減について会議を行う。 6 会議を終えて,そこで感じたことや考えたことを もとに未来の世代の人に向けてメッセージを書く。

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3)授業後の検討会の概要  討議の柱は,①ESDの教材化について,② 本題材「一膳の割り箸から」について(授業, 学習指導レベルの教材支援等),③大学教員と 附属学校との連携である。討議は附属坂出小学 校型授業リフレクションの方式を採用し,多く の方の意見をお聞きできる形をとって行った。 検討会での内容は以下の通りである。 ① ESDの教材化について Q A Q A 意 意 A 意 Q A Q A Q A (ESDについて) ・終わりがどういう形になるのか注目していた。困ったなあと  いうもやもや感で終わっていいのか教えてほしい。 ・もやもや感はない方がよい。とことんもやもやして,腑に落  ちてくれればよいが,そこまではいかなかった。 ・生徒の立場を当事者意識に。生徒の社会参加も取り入れるの  がESD。この後の生徒はどうなっていくのか。 ・状況設定をもっと丁寧にする必要があった。参加実行につい  ては, 捉え方がさまざま。社会科では,社会認識形成がま  ず大切。合意形成までをねらったが不十分だった。参加実行は,本時はねらっていない。 ・もやもや感は残るのは当然。関心をもってくれればよい。 (ウッドマイレージについて) ・ウッドマイレージ初めて聞いた。勉強になった。 ・新しい取り組みとしてはおもしろい。前半での意味と,後半では違った。 ・グラフの読み取り難しい。誰が提唱しているかで,怪しい資料になっていることもある。 ・ウッドマイレージを扱ったのは初めて。資料の信憑性についても検討し,距離の視点をどうする かによっても変わる。詳しい計算式は難しいが,「量×距離」で算出する。今後研究し,教材化 を進めたい。 (3つの立場について) (よかった) ・多面的な立場からの思考はよかった。 (問題を感じる) ・3つの立場がなぜあの立場なのか。日本の生産者の立場を入れなかったのはなぜ? ・悩んだところ。すぐに決まったのは,国内の環境団体。国産材を使いましょうという立場。次 は,外国の伐採業者。それは困るという立場。3つ目を中国の輸入業者にしたのは,中国は世界 一の輸入業者になる。中国の輸入業者が悪いのではなく,日本はたくさん中国から家具などを 買っている。そうすると伐採が増える。そこまで考えさせたかったがいけなかった。 ・中国は輸出業者なのではないか。話し合いまでの資料の捉え方が大切。 ・少しつなぎが乱暴すぎた。世界の森林破壊を考える際は,輸入業者として取り上げた方が効果 的。 ・立場の立たせ方。大人の立場ではなく,子どもに近い立場に立たせた方がよかったのでは。いき なり3つの立場で解決策を考えるのは難しい。一つ一つをしっかり考えた上で議論すべきだっ た。 ・3つの立場を共有化する段階が必要だった。 ② 本題材「一善の割り箸から」について,授業,学習指導レベルの教材,支援等 意 意 Q A Q A ・中学3年生であれだけ話し,討論が成立していたのがよかった。理由は,日頃からの教育があろ う,ウッドマイレージや未来予測(オープンエンド)の社会科にしたこともよかった。 ・身近な素材から入ったのはよい。社会認識形成では,身近な物から入るのはよい。 ・割り箸で通した方がよかったのではないか。生徒の思考が割り箸でしていた子どもと,木材一般 になった子どもがいた。香川で割り箸を扱うのなら,他の立場もある。 ・輸入の在り方なのか,生産の問題なのか。 ・割り箸で2,3時間の授業ができる。ジャパンは木の国。中国の割り箸は 漂白している。そん なテーマもある。 ・資料の読み取りについて。女の子が割合のグラフを量と捉えて発言したが,流れた。なくてもよ い資料だったのでは。 ・すぐに指導できなかったのは反省するが,大切にしたい資料だった。

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4)授業を終えて  授業開発には多大な労力を要したが,大学教 員と附属教員だけでなく,学部生や院生をも巻 き込んだ授業づくりを進めることの有効性を実 感することができた。教材の改善点(役割設定 を見直して単元化を進める必要性,世界の森林 資源の現状と課題を深く把握させる必要性,身 近な生活問題を地球規模の問題と構造化させる 手だての案出など)が見えてきた。そこで,文 字通り「一膳の割り箸から」に基づき,世界の 森林問題が構造的に捉えられ,公立学校でも実 践可能な授業の開発を進めて行きたい。

Ⅳ 終わりに

 研究の成果として,次の3点を挙げる。  ① 大学と附属学校が同等の立場と権利・義 務で行うC・T授業(collaborated teaching) をめざし,年間を通した協働による授業開 発を継続して試みる中で,大学教員と附属 教員との対等に学びあう関係の構築が出来 てきている。  ② 学部生や院生を媒介項としたFD活動を 充実していくことが,「意味」のある大学 と附属との連携に繋がることも分かってき た。  ③ ESD授業の開発に関わる基本的知見を 得ることが出来た。ESD授業開発では, A.環境,社会・文化,経済の3視点か ら,B.当事者の立場に立ち,C.合意形 成を図る授業づくりが有効であることが分 かった。Aの環境,社会・文化,経済は, ESDで取り上げるべき三領域である。B は,ESDに関わる諸問題は,誰でも接点 (関係)のある社会問題であり,誰もが当 事者性を有するからである。地球環境問題 は「当事者の自覚の有無にかかわらず,そ の問題の質が社会的であることによってそ の問題がすべての当事者に影響を及ぼす」 とともに,「同時に無自覚・無関心と言っ た動向も含めて,当事者の動向は社会問題 に確実に影響を与える」(豊田1998,101)。 ESDに関わる諸問題の探究は,学習者に 学習が社会や自分と関わるという思いを 持たせられる。その点で,生徒が学ぶ「意 味」の感じられる授業になる要件を有する。 ESDは未来を考える教育であり,まだ答 えの出ていない問題をどう解決するかを考 えるものである以上,教員は答えを教えら れない。学習者自身が探すしかない。ここ に,学習者自身が学習を作る当事者性が生 まれ,上手く実践すれば生徒が学ぶ「意味」 の感じられる授業となる。さらに,ESD に関わる「まだ答えの出ていない問題」は 社会論争問題である。合意形成を図り,問 題解決しなくてはいけない。ここに,Cの 授業が求められる。  正答のないESDに関わる諸問題の探究は, 教育内容面から,教育方法面から,当事者性の 高い授業の可能性が拓かれる。逆に,ここが教 員にとってESD 授業の困難点となる。教員が 答えを教える,通常の授業が成立しないからで Q A ・ 98年大洪水をきっかけに,政策をとり始めた。 ・森林と割り箸の関係をしっかり考えるとよかった。 ・中国は森林の割合を占める割合が少ない。長江,砂漠地帯を取り上げて実感させるとよかった。 ・中国と日本の関係を中心にしてはどうだったか。開発と環境に焦点化すればよかった。 ・プロジェクターを使った授業について。一斉に見せる。個々が資料を持つ。うまく組み合わせて 時間短縮を。 ・割り箸に従事しているからやめられないという授業を去年して,今年は違うことをしたかった。 ③ 大学教員と附属学校教員との連携 意 A 意 ・楊さんの話は,臨場感があってよかった。 ・資料準備不足を反省している。これからもがんばります。(大学院留学生) ・体験からくる言葉は重い。体験経験は大切。 ・コラボはよい。(多数)

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ある。基本的なスタンスは,先のA∼Cを踏ま え,何か一つの結論(答え)を出そうとせず, 子どもと教員が共にESDに関わる諸問題への 認識を深めることをめざし,その上でとりあえ ずの応え(暫定的な答え)を考えることである。  研究の課題として,開発したESD授業は改 良の余地が多い。既に若干述べたように,それ ぞれのESD授業を開発し終え,マイナーチェ ンジはして来ている。今後は,PDCAサイクル により授業プランのより精緻化に努めて行きた い。 註 1)ウッドマイレージとは,1994年にイギリスの消 費者運動家ティム・ラングが提唱したフードマイ レージを木材に応用した指標であり,木材の量と 木材の産地と消費地までの輸送距離を乗じたもの である。詳細は,ウッドマイルズ研究会(2007) 『ウッドマイルズ 地元の木を使うこれだけの理 由』,農山漁村文化協会,を参照。 文献 滋賀県中学校教育研究会社会科部会 編(2005)『12 歳から学ぶ滋賀県の歴史』,サンライズ出版, 200p. 豊田正弘(1998)「当事者幻想論」,現代思想Vol.27 −2,pp.100−113

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